第七章 やおよろず屋のある箱
「はいはい。皆様、食料品は地下でござい。日用品は二階、三階、四階でござい。その他はその上、地下へは右の階段から上の階へは左の階段からお願いいたしやす!」
入って正面の受付台で叫ぶのは地味な着物を着た恰幅の良い中年のおばさんだった。
そしておばさんの声に従ってお客さんたちは右と左の階段へ別れていく。
その流れに取り残され、あっと言う間に静かになったその場でぽつんと立っていると、当然ながら受付のおばさんの注目を浴びることとなった。
「お兄さん、お姉さん、いったいどうなされました?」
キネムが床を軋ませて歩き、「お聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。お客様は神様ですから」
「僕たちは大切な物を探しています。やおよろず屋にはそれがありますか?」
「大切な物? そりゃぁ色々と揃っておりますよ。しかもそんじょそこらの店にはない物も取り揃えております。お兄さん方は何が大切なのですか? 異国のご飯? お洒落な御召し物ですかい?」
「私たちが欲しいのは、ただ大切な物です」
「ほっほ。面白い。この世に大切でない物がございますでしょうか? ほっほ。とりあえず、お探しの物が見つかるまで店内を散策してはいかがです?」
おばさんがパンパンと手を叩くと受付の奥のふすまが開いて、黒い九官鳥の入った鳥かごを手にした腰の曲がったお爺さんが表れた。
「何か御用か?」
「こちらの方々は何やら大切な物と言う抽象的な物をお探しのご様子。一緒にお探し差し上げて下さいな」
受付のおばさんに言われたお爺さんは私たちを見ると、静かに受付のカウンターの端から出てきて「どうぞこちらへ」と私たちを誘う。
キネムと私は「よろしくお願いします」と頭を下げて、後に続いた。




