第七章 やおよろず屋のある箱
階段を三つ上って四階へ。たくさんの人がごった返す中、お爺さんは関係者以外立ち入り禁止のロープをくぐる。
そこからエレベーターに乗って十三階に着くと人気が無くなりランプの勢いの弱い廊下はまるで洞くつ探検のようで、埃っぽい臭いが鼻の奥を刺激する。
「大切な物とは一体どのような物をお考えでしょうか?」
長い長い廊下でお爺さんが訊いてきた。私は盛り上がったお爺さんの背中を見つめながら「分からないんです」と答える。
「まったくですか?」
「ええ、まったくです」
「それは困りましたな」
「こちらにはありそうにないですか?」
キネムの言葉にお爺さんは足を止める。
「お客様、やおよろず屋に用意できないものはございません。過去には火星の土や河童の右腕なんてものもご用意したことがございます。それにしても大切な物ですか。漠然とした物でございますな」
「アレヲ試シタラドウダ」
不意にカゴから九官鳥が鳴いた。
「あれとは?」
「アア、アレダ。開カズノ箱ダ」
「開かずの箱。ふむ、そうかそれがあったな」
お爺さんと九官鳥の会話が見事に成り立っているのに驚いていると、お爺さんが今までより軽い足取りで歩きだす。
「これは面白い」とキネムは顔に楽しげな色を浮かべてつぶやいた。
しばらく行くとお爺さんはようやく足を止め、近くの引き戸を開けた。
建てつけが悪いらしく何度もガタガタと音を立てて引っかかった戸の向こうには天井まで積まれたガラクタの山。
「確か、この部屋だったな。お二方、申しわけありませんが私が戻るまでこいつを預かっていてはもらえませんか?」
私たちに九官鳥を預けたお爺さんは部屋の中へ入ると二つくしゃみをした。
廊下にいても埃のすごさが分かって、九官鳥の入ったカゴを抱いたまま私は漏れてくる埃から逃げるため二、三歩後ずさった。




