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ある夜の物語  作者: 星六
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第七章 やおよろず屋のある箱


工藤さんと別れて市場に戻ると、教えてもらったやおよろず屋を目指した。


市場は相変わらずの盛況ぶりで、もう午前零時に近いっていうのに人がいなくなる気配がない。

それを不思議に思いキネムに訊くと、月光市場と言うのはひと月に二夜しか開催されないので今晩は夜通しこんな調子だろうとのことだった。



うまく北へ向かう人の流れに乗って進んでいくと、掘っ立て小屋のようなチープな建物の向こうに歴史のある旅館のような木造の巨大で背の高い建物が見えてきた。建物の屋上からは文字の書かれた赤いのぼり旗がいくつも上がっていて、近づくと『やおよろず屋』の文字を確認することが出来た。


 店先にはそれはもう大勢のお客が順番待ちをしていて、門からあふれ出るほどの行列だ。

とてもじゃないけど今夜中に店内へ入れるとは思えない。


ところがだ。少し待つと店の入り口の二枚の引き戸が両方へガラララと開き、排水溝に吸い込まれる水のように客が店内へ入っていく。

そして数十人をのみ込んだ店はまた引き戸がガラララと鳴って口を閉じた。


並んでいるとそれが数分おきに行われて私たちはすぐに歴史を感じさせる立派な門をくぐり、引き戸の前まで来ることが出来た。

引き戸の上半分は磨りガラスだから中の様子は分からないけれど、オレンジ色の暖かい光とたくさんの人の影が揺れ、聞き取れないほどの多くの声が飛び交っているのは分かる。

そしてまた数分建つと引き戸がガラララと開いた。


「入ってくだせぇ」

「入ってくだせぇ」


戸を開けたのは江戸時代の丁稚奉公の図でみたような和装に前掛けをした同じ背格好、似た容姿の二人の小さな女の子。


ねじりはちまきを頭に巻いた二人は私たちを含む大量の人を店へ招き入れると「ここまででござい」「ここまででござい」と戸を閉じ、顔を見合わせてケラケラと笑った。




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