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第十話 失われた記憶を求めて! その2

 今は亡き正義(?)の大魔術師マダム弓子がリーダーを務めていた邪神討伐機関XXXの生き残りでもある元人間を自称する動物達によって組織された邪神討伐組織ってヤツは、私が住む○○県S市内にも、けっこうあるんだなぁ、と思わず感心してしまう。んで、特に活動範囲が広いのが猫の邪神討伐帰還――聖なる猫の会だ。



「え、ここって聖なる猫の会が運営する猫カフェなの?」



「うむ、そのとおりだ。ああ、俺達が元人間だってことは一般客には内緒な? ついでに、しゃべることができるっつうことも秘密な!」



「そ、そりゃもちろん! てか、茜がいる……猫耳メイドさんだァァ~~!」



 猫がしゃべるとか、元人間だって言ったところで普通の人間が信じるかどうかは微妙である。妄想だとか、嘘を吐くなって一掃される気がする。それはさておき、私達は邪神討伐機関のひとつ――聖なる猫の会が運営する猫カフェへとやって来る。



「お仕事、お疲れ様~☆」



「あうあう、沙希ちゃん! 恥ずかしいから見ないで!」



「フフフフ、可愛いからいいじゃん。てか、胸を強調した感じの衣装だねぇ……」



「アハハ、そうかなぁ? エヘッ♪」



「ピキピキ……」



「ん、どうしたの、沙希ちゃん?」



「いや、なんでもない……」



 さて、我が家の居候でもあるシャム猫の霧崎ジョーの姿が、そんな猫カフェの店内に見受けられる。あああ、猫耳カチューシャと胸元を強調しているメイド服姿の親友の蓮田茜の姿も見受けられるわ! く、茜の巨乳を見ていると、イライラするのは何故だろう……?



「そうそう、ここの店員さんは人間に化けた化け猫らしいわよ」



「え、マジで!? うーん、じゃあ、スタッフの中には人間がひとりのいないわけね」



 私が今いる猫カフェのスタッフの中には人間がいないようだ。猫カフェというわけで、そこら中に猫の姿が見受けられるわけだが、まさか店員も実は人間に化けた猫だったとはねぇ……。ああ、人間に変身できる者は、ごく一部の聖なる猫の会のメンバーらしい。



「わ、地味な女のコの姿になった!」



「こ、これが私の本当の姿なんです。ちなみに、あっちゃんの力を借りないで自力で変身できるか試していたら、偶然、お友達のサマエルさんに会ったんです」


 

 シュルシュルシュルと三嶋愛梨の姿が、長身痩躯で清楚な大人の女性って感じの姿から、小柄で地味な眼鏡少女の姿に変わる。なるほどね。てか、サマエルの友人っぽいわね。あっちゃんとは一緒にいるアヒルことアフロディーテの愛称のようだわ。



「猫カフェは心が癒されるわね。猫好きにとっては天国(ヘヴン)だわ」



「そう言ってるけど、黒猫のキョウタロウ以外の使い魔がアンタが着てるTシャツの襟首から顔を出しているわよ!」



 猫好きを自称するサマエルだけど、上着の襟首からニュルンと黒い蛇と白い蛇が顔を出しているわね。使い魔二号、三号ってところかしら?



「ふむふむ、ローマ帝国に関して気になっているのね。そこの狼女は――」



「ああ、ついでにコイツをどこで手に入れたのかも忘れてしまっていてな……」



「ふ~ん、その年季の入った鉄の十字架も気になるわけね。さてと、愛梨ちゃん、出番よ!」



「あ、うん、判った。あっちゃん……変身します!」



 さてと、三嶋愛梨とアフロディーテに狼姫は、何故かローマ帝国に関して気になっている――と、眉をひそめ右手の人差し指をビンッと押っ立てながら説明する。ついでに、今、私達が座っている一番奥の目立たない席のテーブルの上に、ドンッともうひとつの気になるモノである鉄の十字架を狼姫は置く。ちなみに、そんな鉄の十字架の大きさは十センチくらいだろうか?



「ああ、また大人の姿に……ん、でも、さっきとは雰囲気が違うぁ」



 三嶋愛梨が再び変身する。彼女の場合、変身すると肉体年齢が十歳ほど変化するのが特徴のようだけど、さっきとは雰囲気そのものが違うような気がする? さっきは清楚な美人って感じだったけど、今度は野性的(ワイルド)な肉食系女子って感じの雰囲気だ。それに目つきも変わる。ギンッと天空から獲物に狙いを定める猛禽類の鳥のような鋭さが宿ったかのように――。



「さっきは愛梨ちゃんが単独で変身していたけど、今度は合体変身ってヤツね。ほら、その証拠とばかりに胸の大きさにも変化が見受けられるでしょう?」



「アハハ、そういうわけ。今に私はアヒルのあっちゃんと合体した状態なんです。あ、朱莉って気軽に呼んでください」



「そ、そうなんだ! それで雰囲気が違うわけね……ピキピキ」



 合体変身ねぇ。そういや、アヒルのアフロディーテがいつの間にかいなくなっているわねっつうか、胸の大きさにも変化が見られるわけね。スレンダーな体格がグラマーなグラビアアイドルみたいに――む、むぅ、巨乳を見ると腹が立つのはなんでだろう? 苛々する、ピキピキ……。



「つーか、アンタってさ。お笑い芸人みたいだね」



 合体変身や巨乳を云々、言う前に愛梨の物腰は、まるでひとりでボケとツッコミの両方をやってのけるお笑い芸人みたいだ。



「お笑い芸人ちゃうわ!」



「うんうん! あっちゃんと合体しているから仕方がないんです! そんなことはさておき、十字架に右手を置いて……準備完了!」



「おう、なにをするつもりなんだ?」



「今から、この十字架をサイコメトリーしてみます!」



「サイコメトリー?」



「愛梨ちゃんは、この私――超絶美形女神アフロディーテ様と合体している状態だと、物体に残された持ち主の残留思念を――〝記憶〟を読み込むことができるようになるのよ」



「ま、まあ、そういうことだからさ。今から、この十字架に残っている残留思念を読み込んでみるわね。あ、みんなにも見えるようにしてみますね!」



 へえ、サイコメトリーねぇ。上手くいけば狼姫の過去が判るかもしれないわね。お、ドンッと狼姫から手渡された鉄の十字架に朱莉の右手が触れた途端、光が……赤い光の奔流が鉄の十字架を中心に拡散していく!



「う、うう、なんだ、この映像は!? も、森の中……ん、あれは?」



「女の人だ。大きな白い犬を連れた女の人が誰かに追いかけられているわね」



「そんなの女の人を追いかけているのは、馬の鬣(たてがみ)のような装飾についた兜をかぶった武装した男達だ。古代ローマの兵士って感じね」



「つーか、なんだ、あの女……わらわにそっくりではないか!」



「ああ、ホントだ! 大きな犬と一緒に馬の鬣のような装飾のついた兜をかぶる武装した男達から逃げる女の人の容姿は、アンタにそっくりじゃん、狼姫!」



 わ、私が見ているのは、狼姫が持っていた鉄の十字架に残されていた残留思念が映像化したモノなの!? とにかく、大きな白い犬を連れた狼姫そっくりの女の人が、馬の鬣のような装飾が見受けられる兜をかぶった武装した男達に追われている様子が、ドンッと目の前で展開している!



「ん、武装した男のひとりがなにか言っているわね」



「なんて言っているのか判らないわ」



「え、ええと、『この異教徒め!』って言っているわ!」



 私にはなんて言っているのかさっぱりだれど、愛梨には判るようだ。流石は私達にも見られるようにと、鉄の十字架に宿る残留思念を映像化し、拡散させている張本人ってところかな?



「ああ、大きな白い犬が武装した男に飛びかかったわ!」



「飼い主を守るためね。忠犬ってヤツだわ! ああ、でも、蹴り飛ばされた! ワンちゃんピンチ!」



「うう、また男達が……『死ね!』って叫んでいる! ヒッ……男のひとりがブン回す剣がワンちゃんを! ああ、別の男が槍を振り回している……ああ、その穂先がっ!」



「く、ホッキョクグマに変身して乱入したい気分だわ!」



 うう、目の前で展開する見るに堪えない光景に対し、私は思わず乱入したくなる! く、鉄の十字架に残る残留思念――過去の出来事でなければ……。



「あ、ああ、もうダメ! これ以上は読み込めない!」



「ふむ、この先の映像は封印されているわね。くぅ~気になるわ!」



 愛梨が苦しそうにサイコメトリーを取りやめる。んで、アフロディーテ曰く、この先の映像は封印されて見ることができないとか――く、肝心なところで!



「見る方法ならあるよ。そうだなぁ、その十字架は〝なにかしらの物体〟の一部みたいだから、その他の破片を見つけることができれば、きっと封印は解けるはずさ」



「あ、ヘルメス! アンタいつの間に?」



「フフフ、ひっどいなぁ、僕という相棒がいることを忘れるなんてさ☆ ま、とにかく、その十字架の破片を探すことだね」



「さ、探せだと! だが、どこにあるのか、わらわにはさっぱりだぞ!」



 ブーン、という羽音とともに小妖精が――ヘルメスが、私の右肩に舞い降りてくる。そんなヘルメス曰く、狼姫の過去を紐解く鍵(キー)となる鉄の十字架は、なにかしらの物体の一部のようだ。うーん、あの映像の続きを見たければ、その他の破片を見つけなきゃいけないのか――。



「あそこにある可能性が……」



「うお、なんだと!」



「あくまで予想だけどね。殉教者の遺品倉庫へ行けば……」



「殉教者の遺品倉庫?」



「うん、タダ大天使教会って邪神討伐機関が運営する教会の中にあるのよ。てか、アンタが属す聖なる猫の会との仲が悪い組織だからさぁ……」



「ちょ、敵対関係になる組織ってわけ!?」



 おい、私はいつ聖なる猫の会のメンバーになったわけ? まあ、それはともかく、ちょっとした光明が!? と、サマエルの話だと、なんだか面倒な展開になりそうだ。聖なる猫の会以外の邪神討伐機関が運営する〝教会〟とやらに出張らなくちゃいけないっぽいし、おまけに聖なる猫の会とは敵対関係のようだし――。

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