第十話 失われた記憶を求めて! その3
「詳しいことは知らないけど、仲違いの理由は食べ物に関係することらしい」
食べ物の恨みは怖いって言うけど、それは本当かもしれない。それはともかく、元は同じ邪神討伐機関XXXの仲間であるが、なにやら〝食べ物〟の問題で敵対しているっぽいわね。聖なる猫の会と大天使教会は――。
「うわ、意地汚い! 食べ物くらい仲良く食べればいいのに……」
「だが、そうも言っていられないと思う。あの二匹を争う結果となった食べ物に関して言うならば……」
「へえ、どんな食べ物なのさ?」
「あの二匹は他のメンバーと違い元人間ではない。だけど、人間を超える叡智を得た背景には、〝とあっる果実〟が関わっているらしい」
「ハハ、旧約聖書に出てくる知恵の実とか?」
「さてね。そこまでは僕にも判らない――というか、知らぬが仏ってヤツさ」
知らぬが仏ねぇ。そうヘルメスが言うけど、なんだかんだと気になるわね。元人間であった過去を持つ他のメンバーと違う生粋の獣であった聖なる猫の会のリーダーのカイムおよび大天使教会のリーダーさんとやらが、私達人間を超える叡智を得た背景が――。
「ま、なんだかんだと、殉教者の遺品倉庫とやらに行くわよ。あそこの管理者は、私の姉――ミカエルだから、なんとか説得してみせるわ」
「あのミカエル先生が!? うーむ……」
サマエルの姉といえば、私が通う○○県立光桜学園に勤務する教員のひとりである。んで、後日、知ったんだけど、彼女が現役の魔法少女であることを――え、年齢に問題があるだって? ま、まあ、そこらへんは暗黙の了解ってことで……。
「ふーむ、ミカエル先生は大天使教会のメンバーねぇ。そんな理由から、アンタも仲間入りさせられたってわけね?」
「ミカエル姉さんがいるからって理由で仲間入りなんかしないわ。私は自由をこよなく愛する女だからね。そんなわけで掟や戒律に縛られてたまるかっつーの!」
「てか、大好物のドーナッツに釣られて入会しかけたっつうことを俺はしっかりと覚えているぜ、ニヒヒヒ♪」
「あ、コラ! それは内緒よ、キョウタロウ!」
「…………」
うへぇ、大好物のドーナッツに釣られそうになったのか、アンタ! プププッ……愛猫兼使い魔のキョウタロウから笑えるエピソードを聞いたわ。とりあえず、メモメモっと♪
「ま、とにかく、殉教者の遺品倉庫へ行くわよ! ついて来てっ!」
「あ、逃げた。追いかけよう、沙希!」
「う、うん!」
サマエルはまるで逃げ出すかのように、聖なる猫の会が運営する猫カフェの外へと移動する。まあいいや、ついて行ってみるかぁ――。
「そういや、殉教者の遺品倉庫って場所は、どこにあるわけ?」
「ええと、大天使教会が管理している殉教者の遺品倉庫がある場所は、確か浪岡自然公園内にある図書館の地下だったかなぁ? まあいい、あそこへレッツゴーよ!」
そういえば、浪岡自然公園内には、心霊スポットである姫神塚古墳の側に図書館があったわね。ついでに、姫神塚古墳から出土した古代の鎧兜や剣なども展示されていた気もする――ん、あそこの地下に殉教者の遺品倉庫があるってことは、図書館を管理運営しているのは大天使教会なのか?
「沙希、丁度いいところで会った! お前の家に匿ってくれ!」
さて、聖なる猫の会が管理運営する猫カフェの外に出ると同時に、タツこと太田辰巳と出会う。てか、匿ってくれだって!?
「ああ、なるほどね」
タツが匿ってくれって言っていた意味がすぐに判る。なにかしらの薬品の入った薬瓶を持ったタツの相棒ことエリザベートがやって来たことだし……う、微妙だが変なニオイがする!?
「ヒ、ヒィ、来た! 俺はそんな薬品を飲まないからな! その前に、俺は新薬を試飲するための実験同物にするなァァ~~!」
「ハハハ、気になるな☆ さ、ぐぃ~と一気飲みしましょう!」
「だが断る!」
「てか、私に周りで鬼ごっこ? 鬱陶しいんですけど……」
「「ぶへらっ!」」
むぅ、ちょっとだけ鬱陶しいかも――てなわけで、一瞬だけホッキョクグマに変身し、タツとエリザベートに顔面に正拳突きとばかりに肉球を叩きつける。え、やりすぎだって? こうでもしないと大人しくならないからいいのよ、にぱ~☆
「アタタタァ……ん、そういや、お前らはどこへ行くんだ? 暇だからつき合おうかなぁと思っているんだけど?」
「ん、浪岡自然公園の図書館よ。ほら、姫神塚古墳の近くにあるでしょう?」
「ひ、姫神塚古墳!?」
「ん、どうしたの?」
「いや、なんでもない、なんでも……」
姫神塚古墳と口にした途端、タツの顔色が青ざめた気がする。なにか気不味いことでも言ったかなぁ?
「実はついさっきあそこで……」
「わ、なにも言うな、エリザベート! コイツらはなにも関係ないわけだし!」
「ふむ、確かになぁ……」
ん、姫神塚古墳でなにかあったわけ? まあ、どうでもいいんだけどさ。さ、タツとエリザベートも加わったことだし、改めて浪岡自然公園内にある図書館へ向かうとしよう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「よし、到着っと! ふう、元通りに戻って安心したぜ」
「うん、冥界化の名残りはないようだ」
「冥界化?」
「ああ、なんでもない。気にしないでくれ。もう過ぎ去ったことだからな」
「ふーん、そうなんだ」
気にするなってタツは言うけど、それは無理な話ね。私の〝鼻〟を誤魔化すなんて無理無理♪ かすかにだけど、死臭のような不快なニオイが漂っている。これは死の世界――冥界のニオイってヤツなのかな? ま、タツがもう過ぎ去ったって言っているから、これ以上は突っ込まないでおくかなぁ。
「図書館は姫神塚古墳の西側だったわね?」
「うん、それじゃ行きましょうか――」
「わあああ、助けてっ!」
「む、誰か来た? 幽霊?」
さ、図書館へ行こう――と、思った矢先、行き手を遮るかのような騒がしい巫女さんの姿をした亡霊を追い回す落ち武者の亡霊って感じに輩が現れる。ああ、コイツの姿が見えるのは、私達くらいなので騒ぎにならないのが幸いかも……と、そんなことを言っていられるか!
「熊マグナム! 熊ファントムッ!」
「グ、グギャバアア!」
「ウオオ、何故、生キタ人間ガ我々ヲッ!」
巫女さんの姿をした幽霊を追いかける落ち武者の亡霊に対し、私は右拳、左拳をホッキョクグマのものに変化させながら、交互に打ち放つ! ドゴオオオッ! と、落ち武者の幽霊は宙を舞い勢いよく地面に脳天から落下する――が、倒すにいたらず! むぅ連中はピンピンしている。これだから実体のない輩は面倒だ。魔道書の死霊秘法に記されていた連中のような実体のない輩を叩きのめす拳術を会得したけど、攻撃がHITしても当たった瞬間、威力そのものが分散されてしまうし……。
「ヒ、ヒギィ……コ、コイツァヤベェ! 逃ゲルゾ!」
「ヒィィ! 実体ノナイ俺達ヲブン殴レル生者ハ危険ダナ!」
「オオウ、逃ゲルガ勝チダナ! 俺達ハ怨霊ジャネェシ、アアイウ生者ハ厄介ダ!」
「むう、逃げ出した!」
落ち武者の亡霊は、ヒィと喉の奥で悲鳴をあげると、私の目の前から一目散に逃げ出す。情けない奴、反撃をしてくる気はないのかしら?
「うーん、手応えはあったけど、倒すまでにはいたらなかったわ。これだから実体のない輩は困るのよね」
「死霊秘法に記された霊体撃破法を見直さなきゃね、沙希」
「う、うん! しかし、あんな物騒な亡霊が公園内にいるなんて……」
「ホ、ホントに物騒だな! うんうん!」
「…………」
タツは絶対になにか隠していそうだ。それにエリザベートが冥界とか言ったことと関係がありそうね。さて、逃げていった落ち武者の亡霊に追い回されていた巫女さんの姿をした亡霊ってもしかして――。
「アンタって鳴神姫でしょう?」
「はわわ、なんで判ったの!?」
むぅ、図星のようだ。しかし、私はラッキーだわ。その姿を見た者に幸運を運んでくるってウワサに鳴神姫と出会えたのだから~☆ あ、でも、そんな私より先に鳴神姫と接触していたタツに幸運を奪取された気がするんですけど……。




