《閲覧》似たもの
ラグナスの大通りを歩く。
石畳の道には露店が並び、獣人やエルフ、ドワーフたちが楽しそうに買い物をしている。
その間を、小さな魔物たちが当たり前のように歩き回っていた。
「ぷる!」
スウも嬉しそうに俺の周りを跳ね回る。
子どもたちがスウを見つけると、笑顔で駆け寄ってきた。
「スライムだ!」
「かわいい!」
ぷにぷにと身体を触られ、スウも楽しそうに身体を揺らす。
《閲覧》
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【スウ】
Lv.10
状態:健康
感情
・みんな やさしい!
・たのしい!
・ここ すき!
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思わず笑みがこぼれる。
人間の町なら、スウは討伐対象だった。
それが、この町では子どもたちの遊び相手だ。
「……本当に、不思議な町だ。」
そう呟きながら歩いていると、大きな建物が目に入る。
入口には大きく剣と盾の紋章。
「ここが……。」
ラグナス冒険者ギルド。
深呼吸を一つして中へ入る。
中は想像以上に広かった。
酒場を兼ねたホールには多くの冒険者が集まり、依頼書を眺めたり、仲間と談笑したりしている。
俺が入った瞬間、何人かの視線がこちらへ向いた。
「人間?」
「珍しいな。」
「門を通ったのか。」
小さなざわめきが広がる。
気にしないように受付へ向かった。
「いらっしゃいませ。」
受付の女性は俺を見ると一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに営業用の笑顔へ戻った。
「ラグナスへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「依頼を受けたいんですが。」
「承知しました。」
受付嬢は一枚の資料を取り出す。
「ラグナスはダンジョン都市です。」
「冒険者への依頼の多くは、ダンジョン関連になります。」
「魔石や素材の採取、魔物討伐、未踏区域の調査などですね。」
やっぱりそうか。
町へ入る前から冒険者が多いとは思っていた。
「それと。」
受付嬢は少し表情を引き締める。
「ダンジョンへの単独潜入は禁止ではありません。」
「ですが、非常に危険です。」
「最低でも二人以上での探索を推奨しています。」
「……パーティか。」
「はい。」
俺は軽く頭を下げると、依頼掲示板へ向かった。
壁一面に貼られた依頼書。
採取依頼。
魔石回収。
魔物討伐。
護衛依頼。
どれもダンジョンばかりだ。
「一人じゃ厳しいな……。」
俺は近くにいた冒険者へ声を掛けた。
「あの。」
「パーティ、一人空いてませんか?」
犬獣人の男は俺を見るなり困ったように笑う。
「悪いな。」
「人間とは組まない主義なんだ。」
二組目。
「すみません。」
「今回は遠慮しておく。」
三組目。
「他を当たってくれ。」
「……そうですか。」
仕方ない。
分かってはいたことだ。
誰も責める気にはなれなかった。
ふと、ギルドの隅へ目を向ける。
そこには一人の狼獣人が座っていた。
年齢は俺とそう変わらないだろう。
装備はしっかりしている。
それなのに、誰も近付こうとしない。
新人らしき冒険者が声を掛けようとすると、
「あいつはやめとけ。」
近くの冒険者に止められていた。
気になった俺は受付へ戻る。
「あの人、何かあったんですか?」
受付嬢は少し困ったように笑う。
「あの方ですか……。」
「実力はあるんです。」
「ですが、これまで三回パーティを追放されています。」
「三回も?」
「慎重すぎるんです。」
「危険だと思えば、依頼よりも仲間の安全を優先して撤退を提案する。」
「そのせいで、臆病者とか役立たずと言われてしまって……。」
「今では誰も誘わなくなりました。」
「……。」
その言葉が胸に刺さる。
役立たず。
追放。
つい昨日まで、俺も同じだった。
気付けば足は自然と狼獣人の方へ向いていた。
「隣、いいか?」
狼獣人は一瞬だけこちらを見る。
「好きにしろ。」
短く答え、またテーブルへ視線を戻した。
俺も椅子へ腰掛ける。
「一人なのか?」
「ああ。」
「実は俺も。」
沈黙。
気まずい空気が流れる。
そんな中、スウだけは狼獣人をじっと見つめていた。
《閲覧》
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【スウ】
Lv.10
状態:健康
感情
・このひと さみしそう
・でも やさしい におい
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スウがそう感じるなら。
きっと悪い人じゃない。
「俺、人間だけど。」
「知ってる。」
「嫌じゃないのか?」
狼獣人は少しだけ肩をすくめる。
「別に。」
「俺も嫌われ者だからな。」
思わず笑ってしまった。
「一人で潜るつもりだったんだろ。」
「ああ。」
「死ぬぞ。」
「……分かってる。」
再び沈黙。
すると狼獣人が初めて小さく笑った。
「利害は一致したな。」
「え?」
「俺は前衛が欲しい。」
「お前はパーティが欲しい。」
「それだけだ。」
俺も自然と笑みがこぼれる。
「よろしく。」
右手を差し出す。
狼獣人は少し驚いた表情を浮かべた後、その手を握り返した。
「ああ。」
「よろしく。」
二人で受付へ向かう。
「パーティ登録をお願いします。」
受付嬢は少し驚いた表情を浮かべた。
「まさか……。」
「お二人でですか?」
「ああ。」
受付嬢は嬉しそうに微笑む。
「承知しました。」
「それでは、明日からのダンジョン探索、頑張ってください。」
ギルドを出る頃には、夕日がラグナスの街を赤く染めていた。
スウは俺たち二人の間を嬉しそうに跳ね回る。
《閲覧》
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【スウ】
Lv.10
状態:健康
感情
・あたらしい なかま!
・みんなで がんばる!
・たのしみ!
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追放されて失った居場所。
まだ、この町で受け入れられたわけじゃない。
それでも。
隣を歩く仲間の姿を見て、少しだけ思った。
ここからなら、もう一度やり直せるかもしれない。




