表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された俺だけが、魔物の感情を見ることができる ~役立たずスキル《閲覧》で助けた魔物たちに慕われました~  作者: 浦嶋亀タロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/13

《閲覧》似たもの

ラグナスの大通りを歩く。

石畳の道には露店が並び、獣人やエルフ、ドワーフたちが楽しそうに買い物をしている。

その間を、小さな魔物たちが当たり前のように歩き回っていた。

「ぷる!」

スウも嬉しそうに俺の周りを跳ね回る。

子どもたちがスウを見つけると、笑顔で駆け寄ってきた。

「スライムだ!」

「かわいい!」

ぷにぷにと身体を触られ、スウも楽しそうに身体を揺らす。

《閲覧》

---

【スウ】

Lv.10

状態:健康

感情

・みんな やさしい!

・たのしい!

・ここ すき!

---

思わず笑みがこぼれる。

人間の町なら、スウは討伐対象だった。

それが、この町では子どもたちの遊び相手だ。

「……本当に、不思議な町だ。」

そう呟きながら歩いていると、大きな建物が目に入る。

入口には大きく剣と盾の紋章。

「ここが……。」

ラグナス冒険者ギルド。

深呼吸を一つして中へ入る。

中は想像以上に広かった。

酒場を兼ねたホールには多くの冒険者が集まり、依頼書を眺めたり、仲間と談笑したりしている。

俺が入った瞬間、何人かの視線がこちらへ向いた。

「人間?」

「珍しいな。」

「門を通ったのか。」

小さなざわめきが広がる。

気にしないように受付へ向かった。

「いらっしゃいませ。」

受付の女性は俺を見ると一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに営業用の笑顔へ戻った。

「ラグナスへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「依頼を受けたいんですが。」

「承知しました。」

受付嬢は一枚の資料を取り出す。

「ラグナスはダンジョン都市です。」

「冒険者への依頼の多くは、ダンジョン関連になります。」

「魔石や素材の採取、魔物討伐、未踏区域の調査などですね。」

やっぱりそうか。

町へ入る前から冒険者が多いとは思っていた。

「それと。」

受付嬢は少し表情を引き締める。

「ダンジョンへの単独潜入は禁止ではありません。」

「ですが、非常に危険です。」

「最低でも二人以上での探索を推奨しています。」

「……パーティか。」

「はい。」

俺は軽く頭を下げると、依頼掲示板へ向かった。

壁一面に貼られた依頼書。

採取依頼。

魔石回収。

魔物討伐。

護衛依頼。

どれもダンジョンばかりだ。

「一人じゃ厳しいな……。」

俺は近くにいた冒険者へ声を掛けた。

「あの。」

「パーティ、一人空いてませんか?」

犬獣人の男は俺を見るなり困ったように笑う。

「悪いな。」

「人間とは組まない主義なんだ。」

二組目。

「すみません。」

「今回は遠慮しておく。」

三組目。

「他を当たってくれ。」

「……そうですか。」

仕方ない。

分かってはいたことだ。

誰も責める気にはなれなかった。

ふと、ギルドの隅へ目を向ける。

そこには一人の狼獣人が座っていた。

年齢は俺とそう変わらないだろう。

装備はしっかりしている。

それなのに、誰も近付こうとしない。

新人らしき冒険者が声を掛けようとすると、

「あいつはやめとけ。」

近くの冒険者に止められていた。

気になった俺は受付へ戻る。

「あの人、何かあったんですか?」

受付嬢は少し困ったように笑う。

「あの方ですか……。」

「実力はあるんです。」

「ですが、これまで三回パーティを追放されています。」

「三回も?」

「慎重すぎるんです。」

「危険だと思えば、依頼よりも仲間の安全を優先して撤退を提案する。」

「そのせいで、臆病者とか役立たずと言われてしまって……。」

「今では誰も誘わなくなりました。」

「……。」

その言葉が胸に刺さる。

役立たず。

追放。

つい昨日まで、俺も同じだった。

気付けば足は自然と狼獣人の方へ向いていた。

「隣、いいか?」

狼獣人は一瞬だけこちらを見る。

「好きにしろ。」

短く答え、またテーブルへ視線を戻した。

俺も椅子へ腰掛ける。

「一人なのか?」

「ああ。」

「実は俺も。」

沈黙。

気まずい空気が流れる。

そんな中、スウだけは狼獣人をじっと見つめていた。

《閲覧》

---

【スウ】

Lv.10

状態:健康

感情

・このひと さみしそう

・でも やさしい におい

---

スウがそう感じるなら。

きっと悪い人じゃない。

「俺、人間だけど。」

「知ってる。」

「嫌じゃないのか?」

狼獣人は少しだけ肩をすくめる。

「別に。」

「俺も嫌われ者だからな。」

 思わず笑ってしまった。

「一人で潜るつもりだったんだろ。」

「ああ。」

「死ぬぞ。」

「……分かってる。」

再び沈黙。

すると狼獣人が初めて小さく笑った。

「利害は一致したな。」

「え?」

「俺は前衛が欲しい。」

「お前はパーティが欲しい。」

「それだけだ。」

俺も自然と笑みがこぼれる。

「よろしく。」

右手を差し出す。

狼獣人は少し驚いた表情を浮かべた後、その手を握り返した。

「ああ。」

「よろしく。」

二人で受付へ向かう。

「パーティ登録をお願いします。」

受付嬢は少し驚いた表情を浮かべた。

「まさか……。」

「お二人でですか?」

「ああ。」

受付嬢は嬉しそうに微笑む。

「承知しました。」

「それでは、明日からのダンジョン探索、頑張ってください。」

ギルドを出る頃には、夕日がラグナスの街を赤く染めていた。

スウは俺たち二人の間を嬉しそうに跳ね回る。

《閲覧》

---

【スウ】

Lv.10

状態:健康

感情

・あたらしい なかま!

・みんなで がんばる!

・たのしみ!

---

追放されて失った居場所。

まだ、この町で受け入れられたわけじゃない。

それでも。

隣を歩く仲間の姿を見て、少しだけ思った。

ここからなら、もう一度やり直せるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ