表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された俺だけが、魔物の感情を見ることができる ~役立たずスキル《閲覧》で助けた魔物たちに慕われました~  作者: 浦嶋亀タロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/13

《閲覧》ゴブリン

 翌朝。

 ラグナスの空は澄み渡り、町には朝早くから多くの冒険者が行き交っていた。

 武器を担ぐ者。

 大きな荷物を背負う者。

 傷だらけで帰ってくる者。

 その全員が一つの場所を目指している。

 ラグナスダンジョン。

「待たせた。」

 待ち合わせ場所へ着くと、昨日パーティを組んだ狼獣人が壁にもたれて腕を組んでいた。

「いや。」

「俺も今来たところだ。」

 相変わらず無表情だ。

 その肩へ、スウがぴょんと飛び乗る。

「ぷる!」

 狼獣人は少しだけ驚いた表情を浮かべる。

「……懐かれたな。」

「人懐っこいんだ。」

 スウは嬉しそうに身体を揺らしている。

 《閲覧》

---

【スウ】

Lv.10

状態:健康

感情

・おはよう!

・きょうも がんばる!

---

「そういえば。」

 歩き出そうとしたところで俺は足を止めた。

「昨日は聞きそびれたけど。」

「名前、教えてくれ。」

 狼獣人は少しだけ間を置き、

「……ガルド。」

 短く答えた。

「俺はレン。」

「知ってる。」

「え?」

「昨日、受付が呼んでた。」

「あぁ……。」

 思わず苦笑する。

「改めてよろしく、ガルド。」

「ああ。」

 ガルドは小さく頷いた。

 ◇

 町を出て十分ほど。

 巨大な石壁に囲まれた建造物が見えてくる。

 中央にはぽっかりと開いた巨大な穴。

 その奥へ続く石階段。

 あれがラグナスダンジョンだった。

 入口では衛兵が冒険者証を確認している。

 受付を済ませ、俺たちはゆっくりと地下へ降り始めた。

 ひんやりとした空気が肌を撫でる。

 壁には淡く光る鉱石が埋め込まれ、薄暗い通路を照らしていた。

「初めてだから、一階層だけにする。」

 ガルドが前を歩きながら言う。

「欲張るな。」

「生きて帰ることを最優先にする。」

「分かった。」

 盾を構えるガルドの背中は、どこか安心感があった。

 慎重。

 昨日受付嬢が言っていた言葉だ。

 だが俺には、それは欠点には見えない。

 命を預けるなら、こういう仲間の方が頼もしい。

 しばらく歩くと、小さな物音が聞こえた。

 ガサッ。

 ガルドは即座に盾を構える。

「来る。」

 茂みの陰から現れたのは、小柄な緑色の魔物。

 ダンジョンゴブリンが二匹。

 俺は反射的に《閲覧》を使う。

---

【ダンジョンゴブリン】

Lv.8

状態:健康

感情

・ころす

・しんにゅうしゃ

・ころす

---

「……!」

 思わず息を呑む。

 フェンリルとは違う。

 スウとも違う。

 感情があまりにも単純だった。

 殺す。

 侵入者。

 殺す。

 それしかない。

 迷いも、恐怖も、怒りもない。

 ただ侵入者を排除するという意思だけが並んでいる。

「どうした。」

 ガルドが小声で聞く。

「いや……。」

「森の魔物とは全然違う。」

「森?」

「あ……いや。」

 慌てて誤魔化す。

「雰囲気が。」

 ガルドはそれ以上聞かなかった。

「来るぞ。」

 ゴブリンが一斉に飛び出した。

「ギャアア!」

「俺の後ろに!」

 ガルドが盾を前へ突き出す。

 ゴンッ!

 ゴブリンの剣が盾へ弾かれる。

 その隙に片手剣が閃いた。

 一匹。

 続けてもう一匹。

 無駄のない動きだった。

 わずか数十秒。

 二匹のゴブリンは動かなくなった。

 ガルドは剣についた血を払い、静かに息を吐く。

「怪我は。」

「ない。」

「スウは?」

「ぷる!」

 元気よく返事をする。

 ガルドは小さく頷いた。

「よし。」

「先へ進む。」

 その姿を見ながら、俺は一つ確信した。

 ガルドは臆病なんじゃない。

 戦うべき時と、退くべき時を知っている。

 だから生き残ってきた。


 少し歩くと、ガルドが足を止めた。

「今日はここまでにする。」

「もうか?」

「初探索だ。」

「欲張る必要はない。」

「一階層を覚える。」

「それだけで十分だ。」

 俺は少し驚いたが、すぐに納得した。

 確かに、このダンジョンは森とは違う。

 命の危険が常に隣にある。

 まずは生きて帰ること。

 それが一番大切なのだろう。

 俺たちは入口へ引き返し始めた。

 その時だった。

 ダンジョンの奥から。

 ――ゴォォォォォン……

 地鳴りのような低い音が響く。

 ガルドの足が止まる。

 その表情が初めて険しくなった。

「……なんだ?」

 低く呟いたその声は、わずかに緊張を帯びていた。

 静まり返った通路に、不気味な振動だけが響き続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ