《閲覧》スウ
翌朝。
木漏れ日が森を照らし、小鳥の鳴き声が静かに響く。
焚き火はすっかり灰になっていた。
荷物をまとめながら、昨日のことを思い返す。
レオンは現場を見ただけで、薬草を使ったことまで見抜いていた。
あいつは勘で話す男じゃない。
証拠を積み重ね、答えへ辿り着く。
昨日は誤魔化せた。
だが、次は分からない。
もし俺がフェンリルを助けたことが知られれば、討伐の妨害をしたとして罪に問われるかもしれない。
「……しばらくはリーフェルには戻れないな。」
小さく息を吐く。
それに、あの町では魔物は討伐するものだ。
俺のように助けようとする考え方は、きっと理解されない。
レオンたちだけじゃない。
他の冒険者も同じだろう。
俺にはもう、あの町に居場所はない。
そんな時、ふと思い出す。
以前ギルドで聞いた話だ。
この先には、亜人が暮らす町がある。
人間は歓迎されない。
それでも、ギルド登録された冒険者なら立ち入りは認められているらしい。
中には魔物と共に暮らす亜人もいる、と酒場で聞いたことがあった。
噂話かもしれない。
それでも、今の俺には他に当てがない。
「……行ってみるか。」
そう呟くと、足元で小さく身体が揺れた。
「ぷる。」
自然と《閲覧》を使う。
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【スライム】
Lv.10
状態:健康
感情
・ごしゅじんと いっしょで うれしい
・きょうも やくに たちたい
・ぼく がんばる
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「……。」
思わず見返した。
昨日までとは違う。
レベル1だった頃は、
・みず
・くるしい
そんな短い言葉しか見えなかった。
今は違う。
ちゃんと考え、気持ちを伝えようとしている。
「レベルが上がると、こんな風に変わるのか……?」
答えは分からない。
だが、一つだけ分かることがあった。
こいつは、俺と一緒に旅をするつもりらしい
「行くぞ。」
「ぷる!」
一人と一匹は街道を歩き始めた。
森を抜け、緩やかな坂を登る。
スライムは楽しそうに跳ねながらついてくる。
しばらく歩いたところで、俺は足を止めた。
「そういえば。」
しゃがみ込み、小さな青い身体を見る。
「お前、名前がないな。」
「ぷる?」
不思議そうに身体を傾ける。
昨日のことを思い出す。
フェンリルの血を吸い、血痕を消してくれた。
あれがなければ、親子は討伐隊に見つかっていたかもしれない。
「血を吸うスライム。」
「スウ…。」
「今日から、お前はスウだ。」
一瞬だけ動きが止まる。
そして。
ぷるっ!
勢いよく俺の胸へ飛びついてきた。
《閲覧》。
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【スライム】
Lv.10
状態:健康
感情
・スウ……
・ぼくの なまえ
・ごしゅじんが つけてくれた
・うれしい!
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「気に入ったみたいだな。」
「ぷる!」
俺は小さく笑った。
「よろしくな、スウ。」
スウは何度も嬉しそうに身体を揺らした。
昼を過ぎる頃。
街道の先に、高い石造りの城壁が見えてきた。
近づくにつれ、その大きさに思わず足が止まる。
「……ここか。」
人間の町とは違う。
門の上には獣耳を持つ見張り。
角を生やした者。
長い耳を持つ者。
様々な亜人が城壁の上からこちらを見下ろしていた。
スウがそっと俺の足元へ寄ってくる。
《閲覧》。
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【スウ】
Lv.10
状態:健康
感情
・いっぱい いる
・ちょっと こわい
・でも ごしゅじんが いるから だいじょうぶ
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「俺も少し緊張してる。」
そう言うと、スウは安心したように身体を揺らした。
一歩。
また一歩。
門の前まで歩み寄る。
すると、槍を持った狼獣人が静かに一歩前へ出る。
「止まれ。」
鋭い金色の瞳が俺を射抜く。
「人間が、この町に何の用だ。」
俺はゆっくりとギルドカードを取り出した。




