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追放された俺だけが、魔物の感情を見ることができる ~役立たずスキル《閲覧》で助けた魔物たちに慕われました~  作者: 浦嶋亀タロー


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《閲覧》・ごしゅじん

薬草採取を終えた俺は、辺境都市リーフェルへの街道を歩いていた。

腰の袋には依頼分の薬草が入っている。

これを納品すれば、今日の宿代くらいにはなるだろう。

「……一人でも、なんとかなるか。」

誰に聞かせるでもなく呟く。

昨日までなら、隣にはレオンたちがいた。

今は足音さえ一つしか聞こえない。

そう思った、その時だった。

ぷる。

「……ん?」

聞きなれない音に振り返る。

街道には誰もいない。

風で草が揺れているだけだ。

「気のせいか。」

歩き出す。

ぷる。

また聞こえた。

今度はすぐ後ろだ。

草むらをのぞき込むと、小さな青い身体がびくっと震えた。

「……お前。」

森で助けたスライムだった。

目が合うと、慌てて木の陰へ隠れる。

……つもりらしい。

半分以上見えていた。

「隠れてるつもりか?」

ぷる。

返事をするように身体が揺れる。

思わず吹き出した。

「全然隠れてないぞ。」

スライムは少しだけ身体を縮める。

それでも丸見えだった。

俺は自然と視線を向ける。

---

【スライム】

Lv.1

状態:健康

感情

・ごしゅじん

・ついていく

---

「……ごしゅじん?」

思わず眉をひそめた。

さっき森で見た時とは違う。

あの時は、

・みず

・くるしい

それしか表示されていなかったはずだ。

「見間違いだったか……?」

小さく首を傾げる。

まあ、考えても分からない。

そんなことより。

「なんでついてきた。」

スライムは、ぴょん、と俺の足元へ跳ねてくる。

「いや、来いって意味じゃない。」

一歩下がる。

スライムも一歩。

「近い。」

さらに下がる。

また近づく。

「……。」

「もしかして、本当についてくる気か?」

ぷるっ。

元気よく身体が揺れた。

「返事したよな、今。」

もちろん偶然だ。

偶然に決まっている。

そう思うことにした。

俺は森を指差す。

「あっち。」

スライムは森を見る。

それから俺を見る。

少し考えるように身体を揺らしたあと、また俺の隣へ。

「違う。」

もう一度指差す。

「あっち。」

ぷる。

「俺じゃない。」

ぷる。

「……帰る気ないな。」

諦めて歩き出す。

ぴょん。

ぴょん。

一定の距離を保ちながら、スライムもついてくる。

何度か振り返るたび、そのたびに慌てて草へ隠れようとする。

全部見えていた。

「お前、それ好きなのか。」

ぷる。

「隠れてる遊び。」

ぷるぷる。

「違うのか。」

何となく会話が成立している気がして、おかしくなる。

昨日までの俺なら、魔物と話すなんて考えもしなかった。

それなのに。

気づけば独り言が増えている。

街道を歩き続けるうちに、木々が少しずつ減っていく。

代わりに、高い城壁が見えてきた。

「……着いたか。」

辺境都市リーフェル。

俺が暮らす町。

門の前には今日も門番が立ち、冒険者や商人の荷物を確認している。

その光景を見た瞬間、

「まずい。」

ゆっくり振り返る。

スライムは何も知らず、嬉しそうに身体を揺らしていた。

ぷる。

「このままじゃ入れない。」

俺は街道を外れ、近くの木陰へ向かう。

沢が流れ、水もある。

人目につきにくい場所だ。

「ここなら……。」

水筒の水を浅い窪みに注ぐ。

スライムは不思議そうに眺めている。

「飲め。」

水を指差す。

スライムは窪みへ飛び込んだ。

ぽちゃん。

しばらく気持ちよさそうにぷかぷか浮かんでいる。

「やっぱり水は好きなんだな。」

安心したのも束の間だった。

スライムはまた飛び出し、俺の足元へ戻ってきた。

「だから戻ってくるなって。」

ぷる。

俺は苦笑しながら近くの枝を拾う。

枝を二本立て、外したマントをかける。

簡単な日よけだ。

「ほら。」

スライムをその下へ置く。

「今日は暑いからな。」

スライムは日陰へ入ると、小さく身体を揺らした。

ぷる。

どこか嬉しそうだった。

「いいか。」

俺はしゃがみ込み、指を一本立てる。

「待つ。」

胸を指差す。

「俺。」

町を指差す。

「行く。」

そして、自分を指差してから木陰を指差した。

「戻る。」

伝わるとは思っていない。

それでも伝えたかった。

スライムはじっと俺を見つめていた。

やがて、小さく一度だけ跳ねる。

ぷる。

俺は立ち上がる。

「すぐ戻る。」

歩き出す。

後ろから音はしなかった。

思わず振り返る。

スライムは日陰からじっとこちらを見ていた。

追いかけてこない。

「……偉いじゃないか。」

少しだけ笑う。

今なら町へ入れる。

そう思って歩き出した。

門まであと少し。

そこで、ふと気になった。

俺はもう一度だけ振り返り、《閲覧》を使う。

---

【スライム】

Lv.1

状態:健康

感情

・ごしゅじん

・まつ

---

「……待つ。」

その文字だけが、妙に胸に残った。

「本当に待ってるんだな。」

そう呟いて、俺は城門をくぐった。

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