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第3話 人魔戦争

西暦2269年。


人類は、かつてない危機に直面していた。


その始まりは、世界各地で相次いで報告された奇妙な現象だった。


森林の奥深くや、人の立ち入らない山間部。そこに、周囲の生物とは明らかに異なる存在が現れ始めたのだ。


最初に発見されたのは、通常の動物よりもはるかに巨大な獣だった。


体長は数メートル。全身を覆う筋肉は異常なほど発達し、鋭い牙と爪を持つ。その姿は、かつて図鑑でしか見られなかった古代の肉食獣を思わせた。


しかし、それだけではなかった。


人間を襲うだけでなく、集団で行動し、罠を見抜き、武器を使う個体まで確認されたのである。


人類は、それらを魔物と呼ぶようになった。


当初、各国政府は新種の動物、あるいは遺伝子の突然変異だと考えていた。


だが、調査が進むにつれて、従来の科学では説明できない事実が明らかになっていく。


魔物が発見された場所には、例外なく高濃度のマナが観測されていたのだ。


マナマシンが世界中に普及してから、すでに半世紀以上が経過していた。


人間の体内に取り込まれたマナマシンは、微弱な生体電気信号を読み取り、人間の意思に反応する。


その仕組みを利用して、一部の人間は炎や水を操る能力を手に入れた。


人々は、それを魔法と呼んだ。


しかし、マナマシンの影響を受けていたのは、人間だけではなかった。


動物も、植物も、そして人間の意識が生み出すイメージさえも、マナの影響を受けていたのである。


人類がその事実に気づいたときには、すでに手遅れだった。


最初の大規模な襲撃は、山間部の都市で発生した。


警察と軍が出動し、最新式の銃火器や装甲車を投入したものの、魔物たちは想定を超える速度と耐久力を見せた。


銃弾を受けても倒れない個体。


爆発の中から立ち上がる個体。


仲間が倒されると、攻撃方法を変えて人間の防衛線を突破する個体。


それらは、単なる獣ではなかった。


人間の戦術を学習し、対策を講じていたのである。


さらに恐ろしいことに、魔物の出現は一か所にとどまらなかった。


世界各地で同様の事件が相次ぎ、各国の軍隊は対応に追われた。


マナスポットと呼ばれる高濃度のマナが集まる場所では、特に強力な魔物が確認された。


そこから離れた地域でも、野生動物の凶暴化や異常な植物の繁殖が報告されるようになった。


人類は、見えない敵に包囲されつつあった。


もちろん、人間も無抵抗だったわけではない。


魔法を使える人間が軍に協力し、炎や水を操る能力で魔物に対抗した。


しかし、魔法を使える者は人口のごく一部に限られていた。


しかも、能力には個人差があり、強力な魔物を倒せるほどの力を持つ者は少なかった。


人類が誇る科学技術と、マナによって生まれた新たな力。


その両方を駆使しても、戦況を覆すことはできなかった。


防衛線は次々と突破され、都市が放棄されていく。


各国政府は住民の避難を進めたが、交通網が寸断され、避難民が殺到したことで混乱は拡大した。


やがて、国家同士の連携にも支障が生じ始めた。


通信設備が破壊され、電力供給が不安定になり、物流が停止する。


人類が長い年月をかけて築き上げてきた文明は、少しずつ崩壊していった。


政府は、一般向けのインターネット通信を制限するなど、情報の統制を試みた。


だが、情報を制限したところで、魔物の出現そのものを止めることはできない。


すでに世界中に広がったマナマシンを回収することも不可能だった。


人々の不安と恐怖は、さらに状況を悪化させていく。


人間が想像する怪物の姿。


人々が信じる、魔物が生まれる場所。


そして、マナが集まれば不思議な現象が起こるという噂。


そうした人々の意識が、マナマシンを通じて現実に影響を与えている可能性が浮かび上がった。


人間が恐れるほど、未知の存在は増えていく。


人類は、自らの想像力さえも制御できなくなっていたのだ。


そして、戦争が始まってから数年後。


世界人口は、かつての半分にまで減少していた。


人類は滅亡こそ免れていたものの、もはや世界の支配者ではなかった。


かつて人々が暮らしていた都市は放棄され、道路や建造物は魔物の縄張りに取り込まれていく。


高度な機械を維持するための部品も、食料を運ぶための物流も、次第に失われていった。


生き残った人々は、安全な場所を求めて移動を繰り返した。


文明の恩恵を受けていた人々が、再び自然の中で生きることを強いられたのである。


後世、この時代は人魔戦争と呼ばれるようになった。


だが、それは人類と魔物が対等に戦った時代という意味ではない。


人類が、自分たちの築き上げた世界を失っていった時代。


そして、かつての文明を知る者たちが、次の世代へ何も残せなくなっていった時代だった。


この世界が、なぜこのような姿になったのか。


マナマシンを生み出した男は、何を考えていたのか。


その答えを知る者は、ほとんど残されていなかった。


ただ一人、すべての始まりに関わった男を除いては。


四ノ宮零士。


後にドクターゼロと呼ばれる男である。


なんとか復旧出来ました

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