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第40話 生き残るために戦う

ここまで来て初めて気づいたことがある。それは蒼炎の牙がいない!完全に忘れてた!!というわけで後方支援の補助やってます。

 「た・・・た、かう?」

 「うんそう!ごめん!ぼ、僕一人だとこのままじゃ死ぬ」


 事実、既にユウの視界は頭部からの出血のせいでぼやけはじめており、足元もおぼつかない程だった。

 そんな状態なのに剣は折れてしまっている。


 「で、でも・・・」

 「ギギ・・・ソイツ・・・ニハムリ」

 「ソイ・・・ツ・・・オクビョウ」

 「ひっ」


 ローブの少女もいくらゴブリンに育てられたからと言っても女の子であることは変わらない。

 父と慕っていたジェネラルゴブリンに見捨てられ、さらに追い打ちをかけるようにゴブリンに襲われ、既に少女の心は限界であった。


 「ギギ!」

 「くっ!やぁ!」


 飛んで距離を縮めながらの攻撃に対し、ギリギリのところでそれを受け止め、背後の少女を庇いながら奮闘するユウ。


 「このままじゃあ僕も君を殺される!いや、君はそれ以上の苦しみを味わうことになる!」

 「ッ!」


 脳裏に蘇るのは先程、ゴブリンに犯されかけた時の記憶。

 恐怖を感じ、体の震えが止まらなくなる。

 息継ぎするのも苦しくなる。

 今すぐにでも死にたくなる。


 「ギギ・・・モウ・・・ニゲレナイ」

 「あぅ」

 「しまった!」


 一匹のゴブリンに防戦一方となっているユウの隙を掻い潜り、ローブの少女の元まで辿り着いてしまった。


 「やらせない!」

 「ギギ・・・ムダ」

 「くそっ!逃げて!」


 何とかしてローブの少女を助けようと走り出すが、その進行をゴブリンが止める。

 その間にもジリジリとゴブリンはローブの少女に近づいていく。

 

 「ギギ・・・オマエ・・・モウダメ」

 「いやだ・・・め、いや・・・」

 「ギギッ!」


 このままではまたあの時のようにまた襲われる。もうダメだと、逃げる気力すら湧き上がらない。

 俯き、全てを諦めた時だった。


 「生き残るために戦うんだ!!!」


 洞窟に響き渡る声。

 ローブの少女はその声を聞き顔を上げる。


 「生き続けたいなら、生き残りたいなら武器を持て!!」

 「あ・・・ツ・・・」

 「それを一番理解しているのは君なんじゃないのか!?死にたくないなら!相手に、恐怖に打ち勝て!怖いのは一緒だ!戦えぇぇぇ!!!」

 「ギ、ギギ!?」


 進行を止め、自身を殺しにかかるゴブリンに最後の力を振り絞り、壁まで押し勝ち叩きつけた。

 

 「ほ、ほら!僕にだって出来たんだ!僕よりも強い君にもきっと出来る!」

 

 そうしてユウはローブの少女に向けて折れた剣を投げ、少女はそれを掴み取った。

 それはローブの少女が覚悟を、恐怖に打ち勝った証とでも言うべき瞬間だったのだろう。


 「はぁぁぁ!!!」


 折れた剣を両手で持ち、目の前にいたゴブリンの右から斜めに切り裂いた。

 真っ二つにされたゴブリンはそのまま上半身を地面に落とし、言葉も発さずにその命を終わらせた。


 「で、きた」

 「や、やった!」


 たった二体ではあったが、ゴブリンの猛攻を切り抜けた二人は、緊張の糸が切れたからかその場でへたり込んだ。

 

 「あ、はは・・・す、少し休憩しようか」

 「ごぶりんがまだ近くにいる」

 「え?わ、わかるの?」

 「においでわかる。直ぐに移動した方がいい」


 鼻をすんすんと動かし、先ほど走ってきた場所を指差す。

 

 「そ、そうだね。それじゃあギルドのみんなの場所も分かる?」

 「わかる。ッ!この・・・におい!?」

 「え?ど、どうかしたの?」


 ローブの少女の先程までとは比べ物にならない、尋常ならざる怯え方にユウの胸中に不安がよぎった。


 「パ・・・パパが・・・いる。ジェネラルゴブリンが」

 「え?ぱ、ぱぱ?じぇねらるごぶりん?」

 「しら・・・ないの?」


 ジェネラルゴブリン。

 その名は聞いたことがないが、それに該当する存在にユウは心当たりがあった。


 「それって細身で筋肉質のゴブリン?」

 「・・・そう」

 「ま、まさか、それがみんなのところにいるってこと!?」

 「・・・そう」

 「た、大変だ!い、急がなくちゃ!?」


 未だふらつく足に力を込めて立ち上がり、ユウは急いで走り出そうとした。

 しかし、それは少女の手に掴まれ止められてしまった。


 「だ・・・め。ぱ、パパは危険。今の貴方じゃあ、戦うことすら無理」

 「いやでも」

 「し・・・んでほしくない」


 ーー

 数十分前


 ユウがローブの少女と共に行動をしている時だった。

 それぞれのクランはゴブリン達を次々と退け、全てのクランがほぼ同時に最深部までたどり着いた。


 「おぉ、キッヒヒ!ほぼ同時か」

 「ふん。この程度の輩に遅れをとる我ら紅蓮の戦乙女ではない」

 「ん?おいアリサ、お前んところの団長は?」


 最深部についたクランの中で聖光の守護者のみが団長の姿がなく、アリサのみが来ていたことにレオンは疑問を抱いた。

 また、アリサの尋常ならざる雰囲気に何かがあったことをそれとなく察した。


 「・・・救助者がいたので団長に託しました」

 「そうか」

 「何だ。キッヒヒ、てっきり死んだかと思ったぜ」

 「つまらん冗談を言ってる場合か馬鹿者。それよりもここが最深部であってるのか?」


 侵入した四つのクランの団長とその部下達は、周囲を警戒しながら一際目立つ場所に目をやった。


 「あそこはどうやら親玉の座る席みたいだな」

 「ゴブリン達の王ってやつかぁ。キッヒヒ、雑魚共の王かぁ」

 「それにしてもゴブリンが一匹もいないのは不気味ですね。まさか、また外から襲ってるかも」

 「だとしても無駄でしょうね。なんせ、外には蒼炎の牙がいる」


 アレス・グレンウィンドが率いる蒼炎の牙は、全クラン内において鉄壁の守りを持つクランであり、その守りは未だ誰にも破られたことがない。

 

 「どうみるなっちゃん。な〜んか嫌な雰囲気醸し出しとるやん」

 「ん〜?罠なんじゃないの?」

 

 少し離れたところに団長達について来たクランの団員達が周囲の警戒をしていた。

 そしてそこにいたなおっちとなっちゃんは、余りにも不気味な程静かなこの場所に居心地の悪さを覚えていた。

 

 「お前達もか」

 「お、珍しいやん狂戦はん達が話しかけてくるなんて」

 「にいちゃん、じゃなかった副団長もお前らと同じこと考えてたんだよ」

 「なになに〜あんたらだけで密談〜?」

 「何だよ私ら紅蓮の戦乙女は除け者かよ?話に参加させろよー」


 そうして次々とクランの団員達も一箇所に集まりつつあった。

 それそのものがここにいる魔術師の魔法の効力であるとも知らずに・・・。

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