閑話24 武聖
マリィとアデルの邂逅の、1週間前。
ある報告が、十二将主席ユフィナの元へ届いた。
「こ、こ、こうしちゃいられないわっ!!!」
バタバタと書類を用意し、書きしたためる。
「どうかしたのですか、ユフィナさん。」
丁度そこへ、執務室に入ってきたエリス。
そのエリスに飛びつくように近づき、肩を、ガッと掴む。
「来たのよ!!」
「な、何がですか……って、まさか。」
この、既視感のあるやり取り。
それは7年前のことだ。
ガルランド公爵国の南東に位置するスタビア村というところで、【剣聖】が誕生したという一報が入った、あの日と、同じだった。
目を輝かせるユフィナ。
「現れたのよ! またしても、ガルランド公爵国!! 【武聖】が、現れた!!」
盛大にため息をつくエリス。
「はい。貴女の役職はなんですか?」
「十二将主席!」
「今はどういう状況ですか?」
「戦時中!」
呆れる、エリス。
「それが分かっているのに、また、飛び出そうというのですか?」
「もちろん! 同盟国であって連合軍の幹部たるラーグ公爵令嬢のこの私が直接交渉しなければ、【聖】の加護を持つ方に、失礼だわっ!」
ダメだ、これは。
自分が行く気、満々だ。
「直接なんて必要は無いのでは? 貴女や私、それにマリィさんとレオンさんの書状を持たせて、軍団長の誰かに向かわせれば事が足りますよ?」
「ダメ! こういうのは、形が大事なの!」
あぁ、これはダメだ。
前と全く同じ事を言っている。
「はぁ……。で、今度はどこですか?」
諦めたエリス。
こうなったら、何言っても聞かないのがユフィナだ。
ユフィナは目を輝かせながら、伝える。
「ガルランド公爵国の南西。レメネーテ村ってところよ!!」
--――
場所は変わり、ガルランド公爵国南西、レメネーテ村。
【星の神子】ユウネが育った村だ。
8カ月程前に、盗賊団の襲撃を受けて危機に瀕したが、通りかかった旅の剣客によって救われた。
そして、【神子】をグレバディス教国までお連れすることを、頼んだのであった。
そして先日、新たな英雄の【加護】を授かった者が、誕生した。
「素晴らしい! スタビア村のような、奇跡の村として名を馳せるぞ!!」
大喜びの村人たち。
【覚醒の儀】を行った司祭も笑顔だ。
「まさか……本当に、こんな凄い【加護】を授かっちゃうなんて、驚いたわ。」
呆れる、村娘。
その目の前には、日課の鍛錬を続ける抜群のスタイルを持つ、茶髪の娘。
レメネーテ村の村長の孫娘、マヤナであった。
「これで、私もディール様の、お役に、立てる、わ!」
鍛錬を止めず、答えるマヤナ。
そう、村が襲撃された日。
盗賊に身体を蹂躙されそうになったところを、英雄ディールが救ってくれたのだ。
心を射抜かれた。
一目惚れだった。
王子様って、本当に居たんだ!
だがその王子様は、【神子】を授かった友人ユウネと共にグレバディス教国への旅路に付いた。
嬉しい反面、悔しかった。
嫉妬の心で、涙を流した夜もあった。
だが、こうして鍛錬をすると、その気持ちが晴れた。
そして先日。
成人を迎え【覚醒の儀】を得た。
そこで授かった【加護】
5大英雄が一人“ウォークス・ラーグ”が授かった、【聖】
マヤナは、今代の【武聖】を授かったのだ。
後日、【武聖】の勧誘にとてつもない大物がレメネーテ村にやってきた。
連合軍十二将のトップ、“主席”からの勧誘。
二つ返事で了承する、マヤナであったのだ。
「ユウネ。そしてディール様。待っていてください。マヤナも、行きます!」
「マヤナって誰?」との方へ補足。
第17話にて主人公に助けられて【第19話 ラーカル町への道中】に名前が登場。
今後、ちょこちょこと活躍してもらう予定です。




