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ブラックブレイド  作者: 冴木高
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9/11

円卓の騎士

ブラックブレイド9 円卓の騎士1





円卓がある。


そこには一人を除いて全員が着席していた。


「ランスロットはまた不在か」


誰かがつぶやいた。


「まあ、あの小僧は外見だけが取り柄みたいなものだからな」


「だが、剣の腕はケイ卿やアーサー王にも匹敵するぞ」


カン。


円卓を剣の柄で叩いた人物がいる。


外見は幼く、16、17くらいの少女に見える。


色白の肌に明るい緑色の瞳。


綺麗な金髪はお団子のように頭の後ろでまとめている。


「……ランスロットの話はいい」


「アーサー王?」


近くの騎士がつぶやいた。


そう。


彼女がアーサー王だ。


可憐な十代の少女がイングランドの王なのだ。


「今宵の問題はイングランドに侵入し、円卓の騎士と同じ剣を持つと言われる数名のぞくをどうするかだ」


「本当に賊なのでしょうか?」


「何が言いたい?」


「話を聞いてみるのも策かと。アーサー王。マーリンはこの件についてはなんと言っているのですか?」


「聖杯を早く探し出すように。それが、マーリンが最優先すべきと決めたことだ」








「……だそうだ」


パーシヴァル、ガラハッド、ボールスは俺と紫藤、咲畑にそう告げた。


「賊をかくまっていいのか?」


ガラハッドが応える。


「ボイド。君たちの話が本当ならマーリンを倒し、聖杯を破壊しなければならない」


「だから、本当だ。証拠に今は封印されているが、マーリンの力でそれぞれ能力を持っている」


「その封印。解けるかもよ?」


幼い少女が笑う。


彼女の名前はパーシヴァル。


「ねぇ? ボールス?」


ボールスは無言で頷いた。


俺は聞く。


「どうすれば解ける」


「……簡単だ。強くなり、剣を理解すれば、封印など解ける」


「マーリンが剣を作っても、能力の下地になったのは円卓の騎士の力だからね」


「つまり、」


ガラハッドが言った。


「修行だ」








「ここは?」


俺はまっさらな大地に連れて行かれた。


足元には巨大な穴がある。


パーシヴァルが笑う。


「君は200メートルの穴を登るんだよ」


「は?」


「じゃあね」


パーシヴァルが俺を穴へ突き落とす。


ボヨン!


ネットに助けられた。


ネットは地面すれすれに張ってある。


上から何かが降ってくる。


「よっと」


見ると、酒とパンだった。


「冗談じゃねえぞ! こんな穴登れるか!」


「じゃあ、そこで死ねば?」





ガラハッドは座禅をしている。


隣りでは紫藤も座禅をしている。


精神集中しろと言われ、座禅を教えたのは紫藤だが。ガラハッドの方がさまになっている。


ガラハッドが口を開いた。


「問う」


「なんですか?」


「強さとは?」


「心の強靭きょうじんさです」


「では二つ目。弱さとはなんだ?」


「それは……」


「なんだ?」


「加害者であることです」





円卓の騎士2





ボールスと私は会話していた。


「これが修行なのかい?」


「ああ。修行には三つある。体の修行。心の修行。そして技術の修行だ」


「なら、早く修行しようよ」


「焦るな、時雨。まずはお前に魔術を教える」


「魔術?」


「マーリンと戦うのだろう。なら、相手の手の内を知っておくのも重要だ」


「私の白銀の王の力なら……」


「制御しているのか?」


「……」


白銀の王の力は制御不可だ。


それは、望んだ未来、過去を見れないことを意味している。


「別の世界では制御に成功しているかもしれんが、まだ、この世界では制御に成功していないだろう」


「うん。だから、強くなりたい」


「なら、魔術師になれ。時雨」








黒い炎と黒い神はぶつかり合った。





『神殺しの炎』





「はぁ、はぁ……化け物」


アーガスは驚いているような顔をしている。


「……」


俺は黒い王の力に心をむしばまれないように必死だ。


限界が近い。


ピシリと、仮面にヒビが入る。


「人間……」


「アーガス……」


言葉はもういらない。


次で最後だ。


アーガスが力を右手に集めているのが分かる。


俺も黒の力を全て剣にそそぐ。





守るべき光と、


倒すべき悪と、


「正しき怒りを力に、魔を断つ剣となれ!」


現れたのは柄から剣先まで漆黒の魔剣。


「……」


「……」


同時に動く。


負荷で仮面が割れ始める。


持ってくれ!


アーガスに剣が届くまで。


そして、


「よく……やった……」


俺はアーガスの胸を貫いていた。


仮面が粉々に砕け散る。


「……人間。これが、クトゥルーへの道だ」


目の前に階段が現れる。


「俺は行く。ランスロットは早く剣にアーガスを封印しろ」


ランスロットが大声を出した。


「九郎!」


「なんだ?」


「生きて帰ってこい」





深夜。


アーサーの部屋に二人の客人が来ていた。


「リード、ルーク。未来からの来訪を歓迎する」


「さっそくだが、マーリンを倒すのを手伝ってくれ」


「先生を?」


「ああ、事情はルークが話す」


ルークは今までのことを話した。


「エクスカリバーは折れたままか」


「ああ、僕はアーサー王がエクスカリバーを修理した泉を探していたが、見つからなかった」


アーサーはルークたちを地下に連れて来た。


「ここが、泉だ」


「地下にあったのか?!」


「もしそれが本物のエクスカリバーなら、泉で修復されるはずだ」


「ああ」


エクスカリバーを泉へ投げ込む。


と、


「泉が……」





円卓の騎士3





私とケイはお互いの剣を置いて話をしていた。


「ノア。君が未来から来た理由も、方法も分かった」


「なら、協力してくれるのですか?」


「円卓の騎士として、マーリンの野望は止めたい。だが……」


「ケイ?」


「君たちはマーリンを倒した後、どうやって帰るつもりだ?」


「それは、日本のあの温泉の場所へ行って土地神に……」


「日本。話によれば極東に行く方法はない。それに、土地神はいつからまつられていた?」


1000年前?


500年前?


「それは……」


「君たちは一方通行なんだよ」


「……」


「覚悟もないなら逃げなさい。剣の封印は解いておいた」


「相手の痛みを自身に反映する剣なんて、剣として失敗作です」


「どうして、俺とノアの剣に剣先が無いか知っているか?」


クルタナ。


剣先の無い剣。


「王の慈悲、ですか?」


「正解だ。それと……ちょっとついて来なさい」


養豚場に来る。


「試験的に飼っているんだ」


「で、何を見せてくれるんですか?」


「痛みは一方通行か?」


「え?」


「人の痛みを理解出来る人になりなさいと言われたことは?」


「あります」


「実際に人の痛みを肌で感じた感想は?」


「人はとても、とても脆く弱い生き物です」


「うん。合格」


ケイは頭をポンっと優しく叩く。


「じゃあ、こちらの痛みも相手に伝えよう」


「え!?」


ケイはクルタナで指先をかすかに斬った。


すると、


「豚が!?」


豚の足が一本切断された。


「今日はこいつを料理しよう」


「何を……したんですか?」


「痛みを伝えた。それだけだよ」





円卓の騎士4





ボイドは穴の壁を登っていた。


何度失敗しただろう。


何度挫折しかけただろう。


だが、ボイドが登っている理由は怒りだ。


「パーシヴァル! あの小僧!」


壁の表面がボロボロと崩れる。


あと、50メートル。


「俺は絶対に登ってやる!」


「そして、やつをぶん殴る!」


ボイドは地獄の底のような場所で叫んだ。


「パーシヴァル!!!」





一方、ガラハッドと紫藤は、目を閉じていた。


「無とは?」


「虚無。何も無いことです」


「目を開け」


紫藤は目を開く。


「両手を閉じろ」


言われて、合掌する。


「閉じた両の手の間には何が見える?」


「闇が見えます」


「闇だけか?」


「はい」


「そこに無はないのか?」


「はい。間違えました。無もあります」


「再度問う、無とはなんだ?」


「闇。虚空です」





ボールス、時雨の二人は魔術書を読みあさっていた。


「マーリンは今世紀最強の魔術師だ。だが、元はただの人だ」


「ええ。そうだね」


「なら、弱点は必ずある」


「弱点?」


「例えば魔術の元になる、血液や眼球などだ」


「そういえば、最初はコウモリに変身していたのに、リードの紫炎は正面から受けた」


「もしかして、王の力が弱点なのかもしれないな」


「でも、無色の王の力で王の力は


吸収されるんだよ」


「それは、未来で聖杯を持ったマーリンが、だ。聖杯を先に見つけて破壊すればいいだけの話だ」


「王の力」


「試す価値はあるな」


「じゃあ」


「ああ、歴代の王については俺が調べる。時雨は魔術の勉強をしろ」


「分かった」








「マズイかな?」


ケイは不安げに聞いた。


「いえ、とても美味しいです」


「良かった」


二人は豚の丸焼きをフォークとナイフで切り分けて食べていた。


「命をいただくってのは残酷だ」


「……」


「でもね。生きるために食べなきゃいけない。だから、命に感謝して食べるんだよ」





円卓の騎士5





地下の泉。


「確かにエクスカリバーだ。修復されたな」


「ああ」


ルークはエクスカリバーを見た。


新品のように傷ひとつない。


「リード。話がある」


リードとアーサーは外に出る。


「私の剣を使うのは私以外あり得ないと思っている」


「彼の名前はルーク・ペンドラゴン。君の子孫だ」


「そうか。だが、私は女だ。妻のグウィネヴィアとは子を宿せない」


「だが、君はたくさんの女性と関係を結んだ。そう歴史書に書かれている」


「それは、こういうからくりだ」


パチン。


指を鳴らす。


「お呼びでしょうか?」


アーサーそっくりの美少年が現れた。


執事しつじ兼影武者のベルモットだ。女性との関係はこいつが結んだ」


「なるほど」


「だが、ベルモットと関係を結んだやからにペンドラゴンを名乗らせたことはない」


「どういうことだ」


「こういうことだ」


リードの唇をアーサーが奪った。


「……え?!」


リードが動揺する。


「え、いや、オレにはエルという妻がいてな……」


「私の初めてを捧げたのだ。責任はとってもらうぞ」


「えぇえええ!」


アーサーは顔を赤らめてリードを部屋に引っ張っていく。


リードは抵抗しない。


いや、出来ない。


リードにとっても、初めてのキスだったのだから。





ベルモットはルークを別室へ案内した。


そして、トランプを取り出す。


「あなたがペンドラゴンの名に相応しいかどうか。これで確かめます」


「トランプが武器だなんて、マンガの読み過ぎだよ」


ルークは剣を抜く。


「では」


「ああ」


開始の合図もなく。


火ぶたは切って落とされた。





階段を歩く。


歩く。


すでに3000段は登った。


だが、まだまだ出口は遠い。


「クトゥルー。待ってろよ」





深夜。


「はぁ、はぁ」


ボイドは穴を登りきった。


その手には土の汚れが染み付き、顔は泥で汚れている。


「地獄から生還おめでとう」


パーシヴァルが笑う。


「……」


ボイドは無言でパーシヴァルを殴る。


パーシヴァルは吹っ飛びながら言った。


「合格だよ」


「何がだ?」


「失った筋力。戻っているだろう」


「どういうことだ?」


「封印なんてペテンさ。君たちなの力は剣じゃなく、持ち主に宿るんだから」


「つまり、剣に能力があるんじゃなくて、俺に能力がある?」


「ご名答。剣はそれを強制的に引き出すだけなんだよ」


「分かった」


「どこに行くの?」


ボイドは酒を飲みながら言った。


「風呂だよ」





円卓の騎士6





ガラハッドは紫藤に剣を渡した。


「剣はただのカギだ。高速移動の力自体は君の中にある」


「では、なぜ剣を持たなければ力を使えないのですか?」


「君は、心の内面を旅した」


「はい。自らのドス黒い欲を見ました」


「だから分かるだろう」


「?」


「剣を握らねば大事な人に出会えない。剣を握ったままでは大事な人を抱きしめられない」


「つまり、脳のスイッチを切り替えるカギが剣だということですか?」


「ああ、難解な問いだったが、君は確かに正しい答えにたどり着いた」


紫藤は剣を持つ。


否、刀を持つ。


自らをはかる。刀を。


「今なら高速移動が使えるはずだ」


「ありがとうございます」


「合格だ。今日は休みなさい」





ボールスは時雨のナイフを改造していた。


ボールスではなく、時雨が扱いやすいように。


少女に使いやすいように、錬金術で形を変えていく。


時雨は本を読んでいる。


「時雨」


「なに?」


「どのくらい魔術を覚えた?」


「対魔術師戦闘はほとんど。あとは怪我の治療の白魔法を少し」


「上出来、と言いたいが、まだ魔術の解除と薬草関連がまだだ」


「魔術師って大変ね」


「ああ、だが、あと三日で君を立派な魔術師にする」


「三日後に何があるの?」


「聖杯探索だ」





すっかり眠ってしまった時雨を見て、ボールスはつぶやく。


「数日間でこれだけの魔術を理解するなんて、マーリンと同格の魔術師だ」


「……すぅ、すぅ」


「もうとっくに合格だよ。時雨」





ケイは墓を作っていた。


小型の墓で3センチもない。


「ノア。これがなんの墓か分かるかい?」


「今日食べた豚のですか?」


「正解。いつもまるごと食べた時は神に感謝して墓を作っている」


「なぜ?」


「なぜ作るのかって? これは罪のあかしだからだよ」


「罪の……証?」


「人は生きるために生物を殺している」


「……」


「出来ることなら誰も、何も傷付けたくない。それがクルタナに込めた思いだ。君は傷付けない覚悟。傷つける覚悟はあるかい?」


「………………はい」


「よし、合格だ」





円卓の騎士7





三日間。


それが、修行の。


いや、マーリンとの決戦の、タイムリミットだった。





ボイドは風呂に入っていた。


風呂はないとパーシヴァルが言ったので即席の風呂を作ったのだ。


人並み外れた怪力を持つボイドにとっては簡単だった。


「ふ~、日本に来て初めて風呂に入ったけど、慣れると風呂無しでは入れないな」





円卓会議。


「では、聖杯探索のチーム分けを発表する」


アーサーが言った。


「まず、第一のチームは……」





「というわけで、アーサーと俺たちは共に聖杯を探すことになった」


小さな円卓に彼らはいた。


ガウェイン


パーシヴァル


ボイド


ガラハッド


紫藤


ボールス


時雨


ケイ


ノア


アーサー


ルーク


リード


そして、


「遅くなってすまん」


ランスロットがやって来た。


「このメンバーで行くのか? 円卓の騎士じゃないやつもいるみたいだが?」


「彼らも騎士だよ。未来のね」


「私たちが認め、合格を出した者たちだ」


「未来か。九郎もそんなこと言っていたな」


「「「九郎!」」」


王権者とリードが大声をあげる。


「なんだよ?」


「今どこに?」


「クトゥルーの前だよ」





「……」


「ねぇ、クティーラ」


「……」


「あなたはどう思う。九郎のこと」


「……」


「ねぇ、応えてよ」


「……いいと、思う」


「でしょう。わたしが、クティーラの次に産み落とした闇の王なんだから」


「……」


「ねぇ、そうでしょ」


彼女は階段の方を見る。


「……」


「九郎リアス。わたしの愛しい息子」


九郎は手に武器も持たず、宣言した。


「会いに来たぜ。クトゥルー」

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