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ブラックブレイド  作者: 冴木高
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10/11

クトゥルー

ブラックブレイド10 クトゥルー1





俺の目の前には女神がいた。


二人いた。


一人は背中に光の翼の生え、長い髪を優雅になびかせていた。


もう一人は黒髪のショーカットの髪に、うつろな目をしていた。


「おかえりなさい。九郎。いえ、


我がクトゥルーの息子、クロウ」


「俺の名前は九郎リアスだ。あんたの息子のクロウじゃない!」


「いえ、わたしの、白の王のクランツマンのクロウよ」


「なったつもりはない!」


「けれど、事実よ」


「……」


俺は反論できない。


事実、俺は階段を上がるたびに体内の闇の力、黒い炎が燃え上がるのを感じていたのだから。


だが、白のクランツマンという話は初耳だった。


「クロウ。少し試させてもらうわね」


クティーラと呼ばれた少女が、立ち上がる。


「クティーラ。殺さないでね」


「……分かった」


クティーラが消えた!


そして突然、目の前に現れた。


「……」


無言で殴られ、ふっ飛ばされる。


「ぐぁああああ!」


痛い。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


えぐり込まれるような打撃に身体中が悲鳴をあげる。


「……死んだ?」


クティーラが首をかしげる。


「クティーラ。殺しちゃダメって言ったでしょ」


「……まだだ」


俺は立ち上がった。





聖杯探索チーム。


ランスロットは聞いた。


「なあ、聖杯ってどんな形をしているんだ」


「聖杯なんだからさかずきなんだろう」


「ガラハッド。お前はどう思う?」


「やはり杯じゃないでしょうか。父さん」


「「父さん!?」」


王権者とリードは驚く。


「あれ、知らねえの。ガラハッドは俺様とエレインの子供なんだよ」


ノアが質問する。


「今、何歳なんですか?」


「ひ・み・つ」


ウザい。


初めてノアはそう思った。


「魔物が来たぞ!」


アーサーが叫ぶ。


「さて」


ボイドたちが剣を抜く。


「肩慣らしをしようぜ」





バンッ!


ババババン!


銃弾のようにこぶしを叩き込まれる。


「……」


「ぐふっ!」


無表情なクティーラに連続で殴られる。


「……まだだ」


「……しつこい」


目を閉じる。


そして、思い出す。


二周目の時雨のセリフを。





王の力は心の力だ。





「……王の力は心の力だ」


「……まだ、立つの?」


仮面が顔を覆う。


何色か分からない。


そして、


「……なに?」


クティーラは背筋がこおったのが分かった。


「……化け物」


呼び覚ましてはいけないものを起こしてしまった。


「……母様」


クティーラは助けを求め母親を見る。


クトゥルーは、笑っていた。





クトゥルー2





聖杯探索から一週間。


三人ずつ別れて探すことになった。


そして、ガウェイン、ガラハッド、パーシヴァルのチームが見つけることになる。


だが、それは……








「……母様」


クティーラは怯えて母親を見た。


クトゥルーは笑っていた。


「くっくっく。覚醒したのね。九郎リアス。いえ、神殺しのクロウ」


「……」


クロウは答えない。


目が虚ろだ。


だが、その背中から黒い翼が生えている。


「……」


「言葉もしゃべれないの?」


クトゥルーが無造作に自分の翼から羽根を抜き取る。


羽根は槍に変化した。


「遊びましょう」


槍はクロウに当たる寸前に砕けた。


「わお。すごい」


「……」


黒の羽根が舞う。


地面に触れると、地面が円形に消滅した。


「全てを無に還す闇の王の力。流石ね」








「聖杯を見つけたぞ!」


ガウェインが大声を出す。


「本当か?!」


アーサーたちの前に出てきたのは、ロウだった。


「LAW。聖杯とはわたしのことです……」


ノアがロウの肩を揺さぶる。


「ロウ。いったいどうしたんですか!?」


「そうだ。なぜ聖杯と名乗る?」


「わたしは願いを叶える願望機。そして、ロウは器。今日、あなたたちに出会うために生まれてきた」


「聖杯とは願望を叶える人物のことだったのか……」


「はい。わたしは願いを叶えます。それが、どんな願いでも。……ただし、叶えられる願いは一つだけ。そして、叶えてしまえば、以後1500年の間、再び願いを叶えることは出来ません」


「そうか……」


「聖杯を見つけましたか」


コウモリが集まり人の形になる。


「先生……」


「マーリン」


「初めまして。魔術師マーリンです」


「マーリン。残念だが、聖杯は渡せない」


「?」


マーリンは首を傾げる。


「先生。聖杯をなんに使うんですか?」


「もちろんイングランドの発展のために使います」


アーサーは『はぁー』と息を吐いた。


「全員、構えろ!」


全員が剣を構える。


「なんのつもりですか?」


「先生。嘘が下手ですね」


マーリンは笑い出す。


「くっくっく。バレましたか。いやはや、計算外ですね」


「御託はどうでもいい!」


ランスロットたちが突っ込む。


「その剣は誰から与えられたのか考えたことがありますか?」


マーリンは剣の能力を封印した。


だが、


「はっ!」


紫藤とガラハッドが高速移動で突っ込み、マーリンを斬った。


だが、寸前でコウモリに変身し人型に戻る。


「なぜ!? 剣の能力は封印したはず!?」


「……剣はただのカギだ」


「私たちの力は私たち自身の中にある!」





クトゥルー3





クトゥルーの異界。


そこでは二つの光が衝突していた。


光と闇。


白と黒。


対象的な二つの光がぶつかり合う。


そして、


白い槍と黒い羽根がぶつかった。


音が衝撃波より遅れてやって来る。


「やはり、力は互角みたいね」


「……俺は、クロウじゃない」


「ん?」


「俺は、人間の九郎リアスだ!」


仮面が、割れる。


「俺は、闇の王かもしれない。あんたの息子かもしれない。だが、九郎リアスだ! それが真実だ!」


力が集まるのを感じる。


「俺の怪力を持っていけ」


ボイド


「私の速さを貸しましょう」


紫藤


「僕の力を使え」


ルーク


「九郎くんに預けるよ」


時雨


「痛みも強さもあなたのものです」


ノア


「オレに手間をかけさせるな」


リード


そして、


「「九郎。必ず帰ってこい」」


ロウとランスロット。





「王の力は心の力。今、やっと理解した」


仮面は要らない。


仮面を付けて、自らを偽らなくていい。


だから、俺は……


「黒の王の力をランスロットにくれてやる」


「な……」








「なんだ?!」


ランスロットの顔を黒い破面が覆う。


「まさか!? 黒の王の力だと」


マーリンは動揺する。


そして、逃げようとする。


「逃がさねえ」


黒い炎がマーリンを包む。


「あがぁあああ!?」


「これで、トドメだ!」


ランスロットが魔剣をマーリンの胸に突き立てる。


「……」


マーリンはコウモリになって逃げようとする。


だが、コウモリは全てリードの紫炎に撃ち落とされた。


マーリンは人型に戻る。


ボールスが言った。


「死体。いや、仮死状態か。こうなったら手出しが出来ない」


「封印するしか、ない」


「そりゃいい。俺の魔剣も限界みたいだからな」


ランスロットの剣。その刀身が砂に変わっていく。


「で、アーサー。彼女に何を望む?」








「王の力を放棄した、ですって!?」


クトゥルーは驚く。


「ただの人間に戻ってもいいのか?」


「最初から、ただの人だ」


「なぜ、力を捨てた?」


「俺は俺の、俺たちの力で前に進む。それが九郎リアスの答えだからだ」


「なら、その答えを抱いたまま死ね!」


白い槍が迫る!





クトゥルー4





マーリンの死体を七つに分け、その上に石の台を置いた。


「後は、それぞれの剣を台に刺せば封印完了だ」


「わかった」


ランスロットは黒い炎の刀身の剣を石の台に刺す。


「さて、俺様は帰って昼寝でもするよ」


アーサーは問う。


「聖杯への願いはあれで良かったのか?」


「ああ、未来のマーリンを倒したい。それが俺たちの願いだ」


「そして、ロウは武器をくれた」


短剣。


マーリンを唯一倒せるはずの剣。


「過去のマーリンを倒さないのか?」


「タイムパラドックスが起きる。不可能だ」


「で、どうやって帰るつもりだ?」


「それは……」


言いよどむ。


と、


「未来に帰る方法ならある!」


人影が現れた。


それは、


「九郎!」


ロウが飛び込む。


「ロウ?!」








「……というわけで、俺は白の王、クトゥルーと契約している」


「結局、最後の白い槍はどうしたんだ?」


俺はリードの疑問を無視する。


「白の王の時間操作で、マーリンと戦った直後に飛ぶ」


「それより過去には飛べないの?」


マーリンはそもそも封印を解かれなければ害はないのだ。


過去に戻り封印を解かせなければいい。


だが、


「マーリンの魔術に邪魔されて不可能だ」


「そう」


「じゃあ、行くぞ」








現代。


「おやおや、これは、いつかの王権者と妖刀使いですか」


マーリンは笑う。


そして、ロウに向けて指を向ける。


俺は叫ぶ。


「避けろ! ロウ!」


「えっ!」


紫電がロウを貫いた。


パリン。


何かが砕ける音がした。


「すぐにエクスカリバーの鞘で蘇生させます!」


ルークが鞘を当てる。


「聖杯は破壊しました。あなたたちに勝機はありません」


「どうかな?」


短剣を取り出す。


「そ、それは!?」


「ああ、お前を倒すための剣だよ」


短剣をマーリンに向けて投げる。


「ぐふっ!?」


マーリンは吐血した。


「終わりだ」


「く、そ」


意外とあっけない最後だったな。


「……ワタシを倒したこと、後悔するがいい」


マーリンは砂に変わった。

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