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ブラックブレイド  作者: 冴木高
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11/11

最終章

ブラックブレイド11 最終章1





ジリリリリ。


「分かったよ。起きる。起きるから……」


俺は目覚まし時計を叩く。


ガシャン!


音を立てて目覚まし時計は落ちた。


それと同時に意識がはっきりとする。


「ん、もう朝か……」


マーリンを倒してからしばらく経った。


何も変わらない。


神社で輝夜に監視されながら生活して、紫藤と学校へ行く。


ノアやロウは自分の国に帰った。


ロウは最後まで日本に居たいと粘ったが、王権者のによる世界のバランスを崩さないため、世界中に散り散りになったのだ。


それと、ボイドが再婚した。


結婚式には俺たちやリスカも参加した。


リードはリスカの親衛隊隊長になった。


紫炎のリードとして名前が畏怖と共に世界各地に伝わっている。





退屈な授業が終わる。


「九郎さん。起きて下さい」


「起きてるよ」


輝夜に急かされながら次の授業を受けに行く。


次は家庭科で移動教室だ。


「ふわぁあああ。眠い」


「最近眠りすぎです。夜のゲームは控えて下さい」


「は~い」





昼休み。


「なあ、紫藤」


「なんです。九郎くん」


紫藤と購買のパンを食べながら話す。


「マーリンの最後のセリフ。あれはいったい何だったんだろうな?」


「フェイクかもしれません。魔術師ですから」


「魔術師だから?」


「はい」


「そう言えば……」


「何です?」


「紫藤って結局あの剣はどうしたんだ?」


あの剣とは円卓の騎士の剣のことだ。


「あれならバベルに渡しました」


「へ~」


「高速移動は、すでに私のものですから」


木の葉が落ちる。


パン!


紫藤が素早く残像を残さず、木の葉を殴る。


木の葉が木っ端微塵になった。


「すごい」


「いえ。この程度、まだまだです」





放課後。


下駄箱を開けると手紙があった。


可愛らしい字で書いてあるそれを読む。





明日の早朝。学校の屋上で待つ。





「なに読んでいるんですか?」


輝夜が聞いてくる。


「秘密」


「まさか果たし状ですか?! なら、止めて下さい。今のあなたは炎を使えないただの人なんですから」


「ああ、分かってる。ただのラブレターだよ」


手紙を輝夜に渡す。


「確かにラブレターっぽいですね」


「だろ?」


「でも、実は男が書いてたり……」


「止めてくれ。不快だ」


「すみません」





商店街。


俺と輝夜は晩ご飯の材料を買いに来ていた。


「今日は大根が安いんですよ」


「へ~」


「荷物、持って下さいね」


「えぇ~」


「持って下さいね」





最終章2





翌朝。早朝。学校の屋上。


輝夜と共に学校へ行き、輝夜は階段で待機している。





屋上に誰かいる。


顔は太陽の逆光で見えない。


だが、見覚えのある翼だ。


「クトゥルー?」


「正解」


クトゥルーはにっこりと笑って言った。


「世界が滅びかけている」


「な……!?」


想像の斜め上をいくセリフに息が出来ない。


「マーリンが地球に張っている結界が解け、宇宙から地球を狙う奴らがやって来る」


「宇宙から?」


「そう。バベルに咲畑時雨が行ったのは結界を張り直すため」


そういえば、時雨は日本を離れ、


バベルに向かったんだった。


「クロウ。あなたは過去に戻りやるべきことがある」


「なんだ?」


「王権者たちに剣を抜かせること」


「……」


「不思議に思ったことはない? なぜ、たった七本の剣の適合者が都合よく見つかったのか」


「確かに」


「あなたたちは、マーリンを倒したことで深淵の者たちに地球を狙わせた」


「……」


「他の王権者たちは、すでに世界各地で戦っている」


「そうか」


マーリンを倒した。


これは揺るぎない事実だ。


そして、事実は変えられない。


クトゥルーによれば、マーリンを封印したままでもいずれ結界は解けるらしい。


なら、やるしかない。


「行きなさい。クロウ」





白い仮面を付ける。


時間と空間を支配する仮面を。


そして、時間をさかのぼる。


雨の中。


一人の黒人が涙を流している。


ボイドだ。


「ボイド……」


「お前は、誰だ?」


「ただの人間だよ」


「……俺には夢も希望もない。妻を失った俺には生きる価値もない」


「いや、生きる価値はあるさ」


ボイドを遺跡に案内する。


「剣を抜け。ボイド」


「……剣?」


「そうだ。剣を抜き王権者になれ、ボイド」


「剣を抜いたら、何か変わるのか?」


「変わるさ。全てが」


ボイドは剣を抜いた。





時を遡る。


日本。咲畑家。


「はぁ」


「どうした?」


「うわ!? だれ? どうして家に入って来てるの」


「話は後だ」


時雨を遺跡に連れていく。


「ねぇ? ここどこ?」


「遺跡だ」


「あのさ。君、ひょっとして九郎くん?」


「……」





最終章3





ひょっとして九郎くん?


時雨はそう聞いた。


「……」


「まあ、答えなくていいよ」


「剣を抜け、時雨」


「剣を?」


「ああ、そうだ」


「抜いたら何か変わるの?」


「いや、時雨は変わらない」


そう、時雨は変わらずに接してくれた。


だから、俺は前に進める。


「断定的だね。まあいいや。抜くよ」


紫藤は剣を抜いた。





時を遡る。


日本。道場。


「はっ、はっ!」


紫藤は木刀を素振りしていた。


「紫藤。強くなりたいか?」


「あなたは?」


「ただの人だよ」


「なぜ来たのですか?」


「君を強くするために」


「なら、お願いします。私を強くして下さい」


「ああ」


遺跡に案内する。


「ここは?」


「遺跡だ」


「剣が刺さっているが?」


「剣を抜け。そして修行するんだ」


「剣を?」


「ああ」


紫藤は剣を抜いた。





バベル。


「貴様! どうやってここに?」


ノアは剣を抜く。


だが、俺は素手でそれを折る。


「な……」


「他人の痛みを知れ、そして強くなれ」


ノアを連れて遺跡へ向かう。


「ここは、バベルの秘密の……」


「剣を抜け。ノア」


「なぜ、私が剣を抜けると思う」


「君は未来で剣を使う」


「まさか、未来から来たのか?!」


「そうだ。ノア。剣を抜け」


「分かった」


ノアは剣を抜いた。





最終章4





ロウは祈っていた。


わたしの世界を変えてくれるように。


そして、


「ロウ」


「あなたはだれ?」


「俺か? 俺はただの人間だよ」


ロウは無邪気な目で見た。


「不思議。あなたとまた会える気がするの」





遺跡に案内する。


「剣を抜け。ロウ」


「剣を?」


「ああ」


「ねぇ。わたしたち、また会える?」


「ああ」


ロウは剣を抜いた。


そして、時を遡ろうとした時、ロウは聞いた。


「あなたの名前は?」


「……」


答えるべきだろうか?


いや。


今はいい。


「いずれロウが好きになる男だよ」


「???」





そして、時を遡る。


ロンドン。


そのホテルに彼はいた。


「ルーク」


「誰だい? 僕は勉強で忙しい」


「アーサー・ペンドラゴンのエクスカリバーに興味はないか?」


「ない」


即答だった。


「なぜ?」


「エクスカリバーはただの伝説だ。それにアーサー王はただの空想上の人物だよ」


「そうか」


ルークを連れて過去に向かう。


行き先は……


「ここは?」


「ざっと1500年前のイングランドだ」


目の前で、ルークたちとマーリンが戦っている。


「スゴイ……」


「君は未来で戦うことになる」


「……」


「ルーク?」


「なぜ? 僕なんだ?」


「君がルーク・ペンドラゴンだからだ」


時の流れを進み。


遺跡に向かう。


「エクスカリバーを抜け、ルーク!」


「ああ、そして僕は王になる。最強の王に」


剣を、抜いた。





現代に戻る。


そこは人のいない、赤い空の世界だった。


クトゥルーが読んでいた本をパタンと閉じる。


「時雨が魔術で宇宙から来た者たちをこの異空間に閉じ込めたわ」


「そうか」


「時雨は結界を張り直そうとしている」


「あと、どのくらいで完了する」


「一ヶ月」


「分かった」





最終章5





クトゥルーは語った。


「私は別に地球がどうなろうとも構わないのよ」


「そうか」


「でも、私の寝床を荒らされるのは嫌なの」


「……」


「クロウ。私を倒したあの力を使いなさい」


「そうだな。だが……」


使い方が分からない。


「なら、こうしましょう」


クトゥルーの異界へ飛ばされる。


「私が、力ずくで取り戻させてあげる」








ボイドは嘆く。


「こんなに敵がいたんじゃ、編み物も出来やしない」


そう言うと、ビルを掴み、投げた。


投てきされた巨大なコンクリートのかたまりは大勢の深淵の者たちを潰した。


「さて、一仕事するか」


ボイドはコンクリートの塊を掴み、投げた。





雨の中。


閃光のように刀が舞う。


巨大な体を持つ種族の深淵の者たちは体を一寸刻みにされる。


音速を超え、近くの深淵の者たちを肉塊に変えているのは紫藤だった。


「私の刀は音速を超える」





紫藤のいるバベル周辺。


そこには三人がいた。


「行きます」


ノアがクルタナを手に突っ込む。


戦いの最中、体に切り傷が出来る。


だが、


「痛みを知りなさい」


ノアの付近の深淵の者たちが突然、体を刻まれる。


ノアの感覚共有の技だ。





「わたしも、やるか」


ロウは剣で深淵の者たちを斬っていく。


刃こぼれを気にする様子はない。


なぜなら、刃こぼれした瞬間に刃が再生するのだから。





「切断せよ。エクスカリバー!」


ルークが一振りする。


一度破壊され、泉に修復されたエクスカリバーの一撃により、辺り一面を灰塵かいじんと化した。


「さぁ、化け物共、僕たちが相手だ!」








「あなたはなぜ剣を握るの?」


クトゥルーは質問する。


その先にはボロボロになった九郎がいた。


「俺は、みんなのために……」


「違うでしょ」


九郎はクトゥルーに蹴り上げられ、宙を舞った。


「本音を言いなさい」








「ここは、どこだ?」


俺はクトゥルーの異界に居たはずだ。


「よぉ。俺」


「ランスロット……」


ランスロットがいた。


俺の姿ではなく、生前のランスロットの美少年の姿だ。


「俺はみんなのために剣を握る。それではダメなのか?」


「ダメだ」


ランスロットは非情に言った。


「じゃあ……」


「答えは自分で探せ」


「時間がないんだ」


「ここは異界。時間の概念はない」


「そうか」


「このままじゃいつまで経っても答えにたどり着けそうにないな」


「どうすれば……」


「九郎。お前の本音を言え」


「俺の、本音?」





最終章6





俺の本音ってなんだ?


「俺は……」


「お前の本音は?」


俺は、


「恐い」


「そうだな。何度も死にかけた」


「逃げたい」


「そうだな。全部投げ出したかった」


「もう、関わりたくない」


「そうだな。王権者やリードのような化け物とは、関わりたくない」


「でも」


「でも?」


「あいつらが好きなんだ」


「なぜ?」


「俺は、あいつらから学んだ」


「なにを?」


赤い光が現れる。


「ロウから節制を。相反する二人の結合に至る様子を」


青い光が現れる。


「ルークから賢明を。正しく道を歩くことを」


黄の光が現れる。


「ボイドから希望を。諦めない大切さを」


緑の光が現れる。


「時雨から信頼を。仲間との絆を」


橙の光が現れる。


「ノアから慈愛を。優しきことの素晴らしさを」


紫の光が現れる。


「リードから剛毅を。強く生きる意味を」


藍の光が現れる。


「紫藤から正義を。正しさの意味を」


「この光はこれまでの旅路たびじでお前がはぐくんだ絆だ」


光が集まり、虹色に変わる。


「さぁ、持って行け。九郎リアス」








「ん?」


クトゥルーは俺を見て言った。


「どうやら、間に合ったようね」


「時間の概念は無かったんじゃないのか?」


「けど、現実世界では一ヶ月も経っているわ」


「時間を支配するのが白の王じゃなかったのか?」


「あなたを異界へ隔離するだけで、大変だったのよ。時間の支配なんて出来ないわよ」


「そうか」


「さあ、行きましょう」


「そうだな」


「主役は遅れて登場するのが基本なんだから」





最終章7





赤い空の地球は荒れ果てていた。


青い空の地球を守るため、王権者たちが戦った結果だ。


青い空の地球ではリードたちが赤い空に入らなかった深淵の者たちと戦っている。


「ヤバイな」


ボイドはつぶやいた。


「数が多すぎる」


一ヶ月。


王権者たちが化け物だとしても、限界だ。


「大丈夫!」


バベルの内部にまで深淵の者たちの侵入を許しても、ロウは言った。


「九郎が来てくれる」


「でもよ……」


「信じましょう」


紫藤はそう言い、深淵の者たちを斬った。


「ボイド。ボヤッとしない」


ルークがエクスカリバーで斬り、鞘でノアたちの負傷を治す。


と、


「グァアアアア!!!」


大きな山程もある深淵の者が現れた。


バベルの数倍はある。


「ヤバイ!」


ボイドは即座に足元に蹴りを喰らわせる。


だが、微塵みじんも動かない。


「なら!」


ノアが自分の足の表面を薄く斬る。


「グォァオオオ!!」


深淵の者の足に傷が生まれるが、狙って振り下ろされた手はバベルを壊した。


時雨の生死は分からない。


だが、結界の準備が全て台無しになったのは確かだ。


だが、この深淵の者がラスボスなら話は別だ。


王権者たちは最後の希望に賭けた。


「ロウ!」


「ルーク!」


紫藤が、刀で深淵の者の体の表面に傷をつける。


そこをロウが傷を広げ、ルークがエクスカリバーで一刀両断する。


「はぁ、はぁ、これで終わりか?」


だが、


「「「グァアアアアア!!」」」


さっき倒したのより大きい二千体を超える巨大な深淵の者たちが迫ってきていた。


「くそっ!」


ボイドが毒づく。


「……勝てない」


紫藤は刀をだらりと下げる。


「無理です」


ノアはクルタナを見つめる。


「エクスカリバーでも、この数は……」


ルークは悔しそうに言った。


「まだよ」


ロウは、剣を握り直す。


「まだ、負けが決まったわけじゃない」


ロウ以外が諦めかけたその時、空中から声がした。


「そうだな」





九郎、登場。





最終章8





今、ことわりを変える。





「悪かった。遅くなって」


ロウは言った。


「待ってた……」





俺はつぶやいた


空中から赤い光が現れる。


「ロウから節制を。相反する二人の結合に至る様子を」


青い光が現れる。


「ルークから賢明を。正しく道を歩くことを」


黄の光が現れる。


「ボイドから希望を。諦めない大切さを」


緑の光が現れる。


「時雨から信頼を。仲間との絆を」


橙の光が現れる。


「ノアから慈愛を。優しきことの素晴らしさを」


紫の光が現れる。


「リードから剛毅を。強く生きる意味を」


藍の光が現れる。


「紫藤から正義を。正しさの意味を」


光が集まり、虹色に変わる。


俺の背中から生えた虹の巨大な翼が世界を覆う。


ロウはつぶやいた。


「……綺麗」


「グァアアアアア!」


「ああ、相手してやるよ」


虹色の羽根が舞い散る。


それは剣に変化し、深淵の者たちに突き刺さる。


「……みんな」


「なんだ?」


ボイドが問う。


「力を貸してくれるか?」


「「「ああ」」」





現実世界。


リードは体内の王の力が消えていくのを感じた。


いや、正確には王の力が誰かに流れ込んでいるのだ。


「まさか。九郎か?」





七枚の仮面が現れる。


「赤。紅蓮の炎」


仮面が砕ける。


「蒼。蒼炎」


仮面が砕ける。


「黄金。不死の力」


仮面が砕ける。


「新緑。恵みの力」


仮面が砕ける。


「白銀。予知の力」


仮面が砕ける。


「白。時間支配の力」


仮面が砕ける。


「黒。闇の消滅の力」


最後の仮面が砕ける。





「仮面はもういらない」


虹色の炎の模様が刻まれた仮面が現れる。


「虹の仮面の力はことわりの変更」


虹色の仮面が砕けた。


深淵の者たちが消滅し、世界が創りかえられる。


光が辺り一面を照らした。


「俺は、この世の理を書き換える!」





最終章9





新たな世界で。





ジリリリ!


「うん。起きる。起きるから」


「さっさと起きなさい!」


布団を奪われる。


「時雨。酷い」


「今日から新学期だよ。早く準備して」


「は~い」


服を着替える。


「ほら、トースト」


「お、ありがとう」


母さんが俺とリードにバターを塗ったトーストを渡す。


「バター。苦手なんだよな」


リードが癒そうな顔をする。


「リーくん!」


「九郎!」


リードが投げたトーストを口で受け取る。


「ふぃってふぃます(行ってきます)」


「九郎。早く! 遅刻するよ!」


「ふぉう!」





学校。


「紫藤。輝夜。おはよう」


「おはようございます」


紫藤があいさつを返してくる。


「右に同じ」


輝夜は笑って言った。





ホームルーム。


「転校生を三人紹介する」


担任の先生が言った。


「三人?!」


「いきなり三人かよ!」


「女の子?」


「可愛い?」


「はい。静かに!」


先生が教室のドアを開ける。


一人目が入ってきた。


「ルーク・ペンドラゴンです。よろしくお願いします」


二人目が入ってきた。


「ノア・ペティリオーネです。母の仕事の都合で転校してきました。よろしくお願いします」


そして、三人目。


「シルヴィア・ロウです。よろしくお願いします」





放課後。


輝夜が提案する。


「ねぇ。一緒にボイドの家で転校生歓迎パーティーしない?」


ボイドは子どもが大好きな黒人だ。妻の編み物の手袋を付けているのを最近見かけた。


輝夜が携帯電話を閉じる。


「ボイド。オッケーだってさ」


「九郎くん。誘ってきて」


時雨に背中を押される。








「……というわけなんだけど。パーティーに来る?」


ルークは聞く。


「いいの?」


「うん」


ノアは携帯電話で誰かと話している。


「母に許可をもらいました。私も行けます」


「ロウは?」


「わたしも、行く」





最終章10





ボイドの家。


「おお、みんな来たな。待ってたぞ」


「ボイドさん。お邪魔します」


俺は頭を下げる。


「自分の家みたいにくつろいでくれ」


ボイドの奥さんが菓子とジュースを持ってきた。


「じゃあ……」


みんながコップを持つ。


「「「乾杯!」」」








「こういう場面も可能性としてあったのか」


クトゥルーは笑う。


「今のあなたは同時に世界に干渉出来る。望めばあの中に入れるのよ」


「そうだな」


「どうする?」


「あと、3000年ほど考えてみる。ここには時間の概念がないからな」


「そう」





それからしばらく経って、


「乾杯!」


俺はジュースを飲む。


誰も、憶えていない。


世界を救うために戦ったことを。


あの日々を。


「そろそろいいか?」


ボイドが意味深な発言をする。


「ん? なに?」








「「「九郎! おかえり!」」」





「え!?」


ロウは俺に抱きつく。


「忘れるわけないじゃない」


「え……」


紫藤が言った。


「みんな。憶えてますよ」


「そんな。世界の改変で記憶は失ったはずなのに……」


「クトゥルーってやつが思い出させてくれたんだ」


「クトゥルー……」





『神様からのプレゼントよ』





「さて、みんな揃ったし、二次会をするか!」


「いいですね。カラオケとかどうです?」


「紫藤。それいいな」


「ケーキも買いたいわね」


「じゃあ、帰りにケーキ屋に寄るか」


「ボイドの車に全員乗れますか?」


「ルーク。大丈夫だ。八人乗りだから」


「さぁ」


ロウが手を引く。


「行きましょう」


「そうだな」


俺は一歩を踏み出した。

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