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ブラックブレイド  作者: 冴木高
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5/11

リード

ブラックブレイド5 リード1





「では、事態の説明をする」


バベル。


その会議室に俺たち王権者とリード、リスカはいた。


「魔術師マーリンを名乗る敵が各地に眠る魔獣を呼び覚ましている」


「魔獣?」


俺の疑問にリードは、


「魔力を持ち、知性を持つ獣のことだ」


と、丁寧に解説した。


「話を戻すぞ。無理やり呼び覚まされた魔獣は暴走状態にある。このままでは世界が滅亡しかねん」


「つまり、わたしたちに戦えということ?」


「ああ、ノアは剣の能力のため後方支援だが」


「そういえば、ノアの能力って?」


ノアは苦虫を噛み潰したような顔で言った。


「痛みの共有だ」


「痛みの……共有?」


「相手に与えた傷が自分にも反映されるんだ」


ロウが話を変える。


「そういえば、ルークは?」


「第一王権者は剣の修復のために泉へ行っている」


「泉?」


「ああ、そうだ。地脈が関係あるらしいがよくは知らん」


「じゃあ、実質4人で戦うのか」


「そうだ」


ドアがバンッと音を立てて開く。


「来たよ!」


「時雨!」


そこにいたのは時雨だった。


「第五王権者。咲畑時雨。世界のピンチに立ち向かいに来たよ」


リスカが驚く。


「な! ここまでいた警備員はどうしたんですか?!」


「大丈夫。眠っているだけだから」


リードが言った。


「とりあえず、戦えるやつが5人そろったな。行くぞ」


「「「ああ」」」





スペイン。


「なあ、リード。なぜついて来たんだ」


「監視だ。息子だろうと魔剣持ちは危険だからな」


「そうか」


目の前では闘牛に似た魔獣が暴れまわっていた。


「行くぞ」


「ああ」


紅蓮の炎を出し、剣と炎翼を出す。


そして、魔獣を斬るが傷一つつかない。


「ちっ! なら」


仮面を出す。


「まさか、それは仮面か!?」


リードが驚く。


仮面をかぶる。


炎が蒼くなり、威力が増す。


「はぁああああ!」


俺は魔獣をぶった斬った。


「はぁ、はぁ」


「確かに息子だな。俺の、蒼のクランツマンだ」


「クランツ……マン?」





リード2





「おかえり。リード。九郎!」


少女が飛びついてくる。


右目は藍色。


その左目は包帯に包まれており、前髪を伸ばし隠している。


鮮やかな金髪と16歳くらいに見える外見。


エル・リアス。


俺の母だ。


「ただいま。エル」


「もう、12年間も待たせて。一体どういうつもり!」


「すまない」


リードは母さんに謝ってから、俺を見た。


「エル。赤と蒼の王の話がしたい」


母さんはしばらく黙り込む。


そして、


「いいわよ」


と、言った。


リードは俺を居間に呼ぶと、話始めた。





赤と蒼の王の話を。





14年前。





オレ、リード・リアスは高校一年生だ。


そして、バベルの極秘部隊の一員でもある。


金髪に藍色の瞳。


そして、オレは赤のクランツマンだ。


クランツマンとは王に力を与えられた者たちのことだ。


仮面を出現させることで、王の力を借りる。


赤の王。


それは、オレの父親だ。


オレは父親に感謝し、憎む。


「リード! 式神が来るぞ」


「分かってる」


抜刀する。


名刀『なまくら』。


薬子くすこという刀鍛治が打った刀だ。


仮面を出現させる。


炎の意匠が刻まれたそれは、紅蓮の炎を支配する。


「紅蓮の炎よ」


仮面を付ける。


炎が刀を包み込む。


式神とは紙で出来たハリボテの人形だ。


個々の力は弱いが、数が多い。


「赤の炎の特性は拡散」


燃え散れ!


巨大な炎の塊を出現させ、式神たちを同時に焼き尽くした。


「まだ生き残りがいるぞ」


蒼の王。伏見は刀に纏わせた蒼の炎で式神たちを斬っていく。


「終わったな」


伏見の両目は蒼い。


それは王の証であり。


嫌いな色でもある。


同僚が駆け寄ってくる。


「伏見さん。新潟県で新たな怪異です。危険度B。来てください」


「分かった。ここは任せるぞ。リード」


「分かった」


オレの任務は最近になって活発化してきた怪異の原因を調べることだ。


さっさと終わらせたいが、そうはいかない。


この怪異の裏には秘密結社『葬儀屋』という組織が糸を引いている。


そこまでは分かった。


だが、


「葬儀屋の居場所が分からない」


車で次の怪異の元に向かう間につぶやく。


「リードさん。どうして蒼のクランツマンにならないんですか?」


運転席に座る一護いちごが話しかけてきた。


「あの炎は嫌いなんだ」


悪を憎む。


赤の王である父親を殺した伏見を。


正義を憎む。


伏見以外の昔の蒼のクランツマン全員を殺した父親を。


「矛盾だろうか……?」


「リードさん。敵襲です」


車の前に式神が大量に現れる。


「仮面よ!」


仮面を出現させ、手から炎弾を飛ばす。


赤の炎の利点はその汎用性の高さにある。


そして、


「仮面……開放」


一護が仮面をかぶった。


オレは車に乗り込む。


車が蒼の炎に包まれる。


「強行突破します!」


車は式神を燃やしながら道を走り出した。





「ん。女の子?」


車の先に着物姿の女の子がいた。


年は16歳くらいか?


左目は前髪を伸ばして隠している。


と、


「一護!」


一護が避ける。


さっきまで一護の頭があったところには鉛の弾がめり込んでいた。


「敵だ。斬るぞ」


仮面を出し、かぶる。


一護も遅れて仮面を出す。


「お前。葬儀屋の一員か?」


「……」


女の子は答えない。


両手には銃を持っている。


そして、返事の代わりに鉛の弾が来た。


炎盾!


円形に広がった紅蓮の炎が鉛の弾を止める。


「一護! 今だ」


「分かりました!」


一護が飛び出す。


銃口が一護を狙う。


「炎翼!」


蒼い翼が背中から生え、一護は空中で弾を避ける。


「正面がガラ空きだぞ!」


紅蓮の炎翼で一気に加速し、女の子に迫る。


女の子は腕でガードする。


「斬る!」


腕ごと斬るつもりで刀を振り下ろす。


だが、


「リーくん……」





リード3





女の子は確かにリーくんと呼んだ。


それは幼い頃、葬儀屋に捕まった双子の妹がオレを呼ぶ時に使っていた名前だ。


「まさか? エルか?」


「うん」


「リードさん! なんで殺さないんですか!」


一護が吠える。


「待て!」


仮面を取る。


「やっぱり、リーくんだ」


「やはり、エルなのか?」


「うん」


「なんで、オレたちを殺そうとした」


エルは黙る。


「エル!」


「そう、プログラムされたから」


「プログラム?」


「わたし、身体がほとんど機械なの。だから、子どもも産めないし、殺せと命令されたら逆らえない」


「身体が、機械?」


見た目は人間そのものだ。


だが、


「機械なの」


左目をあらわにする。


そこにあったのは機械のカメラだった。


「ね?」


「じゃあ、なんでオレをすぐに殺さない」


「なんでだろう。リーくんと一緒にいると命令に逆らえる」


「リード!」


一護の声にとっさに抜刀する。


カキンッ!


刀とナイフがぶつかり合う。


「ふふふ。エルちゃんは渡さないよ」


蒼い髪にメガネの女性がいた。


「葬儀屋か」


「正解。綿貫わたぬきだよ」


「悪は滅ぼす」


仮面を出現させ、かぶる。


「やっちゃいなさい。エル」


「嫌です」


「じゃあ、命令するわ。二人を殺しなさい」


「……」


エルの目が虚ろになる。


「エル!」


「抹殺します」


「くっ!」


弾丸は仮面を狙う。


当たり前だ。


クランツマンは仮面を破壊されると再び王から仮面を与えられるまで、力を使えないのだから。


「リード。引きますよ!」


一護が車に乗り込む。


「ちっ!」


オレたちは逃げた。








「そうですか」


伏見は報告を聞き、しばらく目を閉じた。


「リードくん。来なさい」


「なんだ?」


オレはリスカの親衛隊のため、伏見と権限は同じだ。


「あなたに蒼のクランツマンになってもらいます」





リード4





「で、それからどうなったんだ?」


「オレは蒼のクランツマンにさせられ、エルを救い出した」


「いや、もっと詳しく教えてよ」


「直接見たらどうです?」


何時の間にか時雨がいた。


「明鏡の鏡。記憶を追体験する鏡です」


「時雨……」


「説明はめんどくさいからな。助かる」


時雨が明鏡の鏡を使う。


俺の意識は遠くなる。





気を失った九郎の前で時雨とリードは話し合う。


「マーリンが動き出した」


「だから、なんだ?」


「あなたに紫炎しえんを取り戻させる」


「なぜだ?」


「マーリンは普通の手段じゃ倒せない」


「普通の手段?」


「簡単に言えば、九郎くん以外の王権者にマーリンは倒せない」


「なぜ?」


「マーリンがランスロットを除く全ての剣を作ったから」


「なぜ九郎なんだ?」


「九郎くんは特別な子。混沌より産まれし悪魔の子。闇の王」


「なぜ? 知っている?」


「秘密。と言いたいところだけど、教えてあげる」


時雨が瞳を閉じ、開いた。


その目は白銀だった。


「白銀の王」


「そう、過去未来現在を知る白銀の力。だから、マーリンを倒すために九郎くんを強くしたい。けど、保険もかけたい」


「保険?」


「紫炎。あれならマーリンを退けることが出来る」


「分かった。九郎に貸していた王の力を返してもらう」


九郎に近付き、手で額をさわる。


九郎から紅蓮の炎が生まれ、リードの左目、赤い目に吸い込まれていく。


「王の力の移譲は完了した」


「じゃあ……」


突然家が揺れた。


「ちっ!」


リードは家から出る。


大量の魔獣がこの家を目指して進んできていた。


「赤の炎」


王の本気。王の仮面である破面マスカレードを出し、かぶったリードは炎翼で飛ぶ。


「炎弾!」


炎翼から大量の炎の弾丸が放たれる。


時雨は素直に感心する。


「すごい……」


「二枚目」


二つ目の破面。水の意匠が凝らされたそれをかぶる。


二枚の破面が溶け合い、融合する。


現れたのは新たな破面。


「紫炎!」


紫の炎が空を覆う。


それは世界中の空を覆い尽くし、地上に神の雷のように降り注いだ炎は世界中の魔獣を焼き尽くした。


「……」


時雨は紫炎を実際に見るのは初めてだが、これほどとは思わなかった。


「これなら、マーリンに勝てる」





リード5





俺はリードの視線で見ていた。


葬儀屋。


そしてエルといくつもの戦いをして、けれどエルには手が届かない。


だが、それも今日までだと俺は思う。


いくつもの犠牲者を出しながら、とうとうリードは葬儀屋のアジトを突き止めたのだ。





葬儀屋のアジト。


「とうとう追い詰めたぞ」


オレはそう言って足を踏み入れた。


途端にむわっとした血の匂いがする。


「なにが……起きたんだ?!」


葬儀屋は壊滅していた。


呆気なく。


簡単に。


砂の城のように。


葬儀屋は潰滅していた。


「ありゃありゃ」


一護が天を仰ぐ。


と、


「助……けて」


生き残りがいた。


それは、目の前でエルに命令を出した綿貫と名乗る女性だった。


「綿貫! なにがあった?」


「エルちゃん……の整備中にエルちゃんが……黄金の王の力を……目覚めさせて……勝手に暴走したの……」


「黄金の王?」


「そう。……今のエルちゃんは機械じゃない。……黄金の王の力で不老不死なの。……お願い。……エルちゃんを助けてあげて」


「一護」


「はい」


「綿貫を救護班に助けさせろ」


「分かりました。リードさんは?」


「エルを止める」


「私も行きましょう」


後ろから声が掛けられる。


「伏見」


「王を倒せるのは王だけ。簡単な話です」


「分かった。行こう」


葬儀屋の奥深くに行く。


「伏見」


「なんです」


「オレはエルを救いたい」


「無理です」


「だが、やる。たとえ相打ちになっても、エルを救う」


「頑固ですね」


伏見がオレの頭に手をかざす。


「何をした?」


「保険です」





葬儀屋。


最深部。


「あ、リーくんだ!」


「エル!」


エルの服は返り血で赤く染まっていた。


そして、銃口をオレたちに向ける。


「助けて……」


「ああ、分かった」


弾丸を撃つ。


「伏見!」


「破面!」


伏見の、蒼の王の破面を初めて見た。


伏見の周りに炎の壁が出来た。


弾丸を燃やし尽くす。


「行け! リード」


「すまない」


伏見がエルと戦っている間、オレはエルに話しかける。


「エル! なぜ戦うんだ!」





リード6





九郎とルークを除く王権者たちはバベルへ集まっていた。


「王権者にマーリンは倒せないですって」


ロウが興奮気味に言った。


「ああ。そうだよ」


「やってみなきゃわからないじゃないか」


ボイドはそう言った。


「マーリンは世界を滅亡させようとしている。だけど、それを防げるのは九郎かリードだけ。紫炎の威力は見たでしょ」


「……」


「……」


「……」


一同は黙る。


「じゃあ、マーリンを倒しに行こうか」


「どこへ行くんだ?」


時雨は歩き出した足を止めて言った。


「私たちが剣を抜いた遺跡。やつは今も昔もそこにいる」





遺跡。


「マーリン。いるんでしょ。出てきなさい」


「くっくっく。ワタシに何か用かな」


コウモリが集まり、人の形をとった。


「魔術師マーリン。あなたを倒しに来た」


「出来るかな?」


ロウたちは剣を構える。


「ミカエラの剣よ!」


時雨の出したミカエラの剣の効果により、時雨たちとマーリンは赤い空の世界へ隔離される。


「はぁあああ!」


ボイドが突っ込む。


「無駄ですね」


パチンと指を鳴らす。


途端に、ボイドは大剣の重さによろめく。


「それぞれの剣の能力を封印しました」


「くそっ」


ボイドが毒づく。


「オレの妖刀『さび』には効かないぞ」


リードが紫炎でマーリンを燃やす。


だが、マーリンは炎を飲み込んだ。


「な……」


「ワタシの無色の王の権能。その他の王の力を飲み込み、自身の力に変える」


「くっ……」


「さあ、どうする?」








「さて、どうしましょうか?」


伏見は攻撃を防ぎ続けている。


無論、リードがエルに話しかける時間を作るためだ。


「エル。葬儀屋は潰れた。お前を縛る鎖はもう無い!」


「でも、わたしは機械。壊すための機械」


「違う。黄金の王の力で変わったんだ」


動いたため、左目があらわになる。


生身の目だった。


金色の。


「リード。手遅れです。私が倒します」


「待て……」


無情に伏見は一撃を加えようとする。


「止めろぉおおお!」


パンッ!


乾いた音が鳴る。


「な……」


伏見を後ろから撃ったのは一護だった。





リード7





勝てない。


そう思ったら負けだ。





「一護……くん」


伏見が後ろを振り返る。


「ああ、俺ですよ。伏見さん」


二発目が撃ち込まれる。


「ぐはっ……」


口から吐血し、オレの方を向いた。


「リード。後は任せます」


その言葉を最後に、伏見は死んだ。


「一護。なんで?」


「なんで? だって俺は無色の王だから。無色の王の力は代ごとに変わる。そして、俺の力は王に気付かれない力。暗殺にもってこいだろう?」


「一護!」


赤の仮面を出す。


が、


「破壊っと」


赤の仮面を拳銃の弾丸で粉々に砕かれる。


「く……」


蒼の仮面を出す。


が、


「仮面が、崩壊していく?!」


「当たり前だろ。王が居なければ仮面は無力だ」


なら、なぜ赤の仮面は使えたのか?


簡単だ。新たな王が居たからだ。


誰が?


誰だ?


「ってわけで死んでくれ、リード」


弾丸が迫る。


オレはこんなところで死ぬのか?


嫌だ。


「……大丈夫」


前から声がする。


エルがいた。


弾丸を喰らった左目から血を流しながら、微笑んでいた。


「私。やっぱりリーくんのことが好きだから。だから、私、頑張って操り人形を止めたよ」


「ああ」


エルが倒れる。


不老不死だが、ダメージは普通に受けるらしい。


このままでは二人ともやられる。


いや、不老不死のエルは生き残るだろうが、オレは確実にやられる。


なら、


「やるしかない」


伏見の刀『さび』を左手に、鈍を右手に持つ。


「無駄だ」


弾丸が発射される。


駄目だ!


刀を振るがかすりもしない。


「死ね!」


『いえ、あなたは死にません』


蒼の炎が盾となり、弾丸を燃やし尽くした。


「なん……だと……?!」


「伏見。何をした?」


頭の中で声がする。


『あなたに蒼の王の権能を受け継がせました。赤の王よ』


「オレが、赤の王?」


一護が驚く。


「なんで!? お前の目は赤と蒼なんだ!?」


全てを理解する。


父親が死ぬ間際にオレに遺したのが赤の王の権能。なら、オレが赤の王の力を使えた理由も分かる。


次に、蒼の王の権能。


これは伏見から受け継いだものだ。


だから、赤と蒼の目になった。


「なら……」


一護の気配が消える。


一護の王の能力か。


「伏見。親父。オレに力を貸してくれ」


二つの破面を出す。


二つの破面は重なり合い、一つの仮面となった。


仮面をつける。


「赤でもなく」


紅蓮の炎が身を包む。


「蒼でもなく」


刀を蒼の炎が包む。


「紫炎」


赤と蒼が混ざり合い、紫の炎と化した。


弾丸が飛んでくる。


だが、身に包んだ炎により身体には触れない。


「そこだ!」


紫炎の斬撃を飛ばす。


「ぐはっ!」


小規模のクレーターが出来た。


一護が倒れる。


気絶したのか、王の力は感じない。


「伏見。かたきはうつぞ」


オレは一護を鈍と錆で斬った。





「エル。大丈夫か?」


「う、うん。リーくんは?」


「大丈夫だ」


「あのさ。葬儀屋でずっと考えていたんだけど……」


「なんだ?」


「任務も仕事も止めて、どこか遠くで二人でずっと暮らそう?」


「そうだな」

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