表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックブレイド  作者: 冴木高
PR
3/11

祭り

ブラックブレイド3 祭り1





紫藤に勝った。


それで終わりだと思っていた。


だが、


「この骸骨共は、死者の書で呼び出された死者たちだ」


骸骨に囲まれながら、俺と紫藤は背中を合わせる。


「私の剣は使えません。いったん撤退しましょう」


「どこに?」


紫藤は俺にしがみつく。


「炎の翼を出してください。そして、神社へ向かって行くんです」


「分かった」


イメージする。


炎の翼を。


「わ?!」


ランスロットの剣から炎が一筋流れ、翼となった。


「頼みます」


「分かった」


教室のガラスをぶち破り、外に出る。


街中骸骨だらけだった。


空から見れば一目瞭然だ。


「助けが来ないのはこの変な空間のせいか」


「あの……」


紫藤が言いづらそうに言った。


「私が第五王権者に、あいつにきみと一対一の戦いがしたいと願ったから、第五王権者はこの異空間を作り上げた」


「まさか、自分のせいだと思ってないよな?」


「じゃあ、私じゃなきゃ……誰のせいなんですか!」


紫藤は叫ぶ。


俺は落ち着いて言った。


「誰も悪くない。これは誰も悪くないんだ」


「でも……」


「確かにすれ違いや勘違いをして不幸になるやつはいる。だがな」


「……」


「誰も、他人の不幸なんて望まない。だから、誰も悪くない」


「暴論です」


「暴論でも構わない。紫藤が悪くない証明になるなら何だっていいんだ」


「命を、奪おうとしたんですよ?」


「だが、俺も紫藤も生きている。それが答えだ」


「……九郎」


「さっさとこんなところ抜け出して、輝夜に説教されながら、晩飯食おうぜ」


「……はい」


神社へ降り立つ。


「なぜ神社なんだ?」


「ここには結界がありますから、死者は入れません」


「そうか」


紫藤が二本指を立てる。


「この空間から出る方法が二つあります」


「一つはこの空間を維持している宝具を停止させること」


「宝具ってなんだ?」


「死者の書などの魔術に関する宝のことです」


「ふーん」


「二つ目。第五王権者がおそらく作っているだろう外部への扉を見つけること」


「……」


「どっちにします?」





祭り2





さぁ、醜悪祭を始めよう。





「はぁ!」


炎の斬撃を飛ばし、骸骨を壊す。


隣りでは木刀で紫藤が骸骨を倒していた。


「第五王権者を見つけましょう」


「ああ」


骸骨を蹴散らしながら進んでいるのはワケがある。


それは、


「……見つけた」


変声機でも付けているかのような声で女は言った。


ローブを目深にかぶっているため、顔は見えない。


「第五王権者。見つけたぞ」


「そうか、わたしは誘い出されたというワケか」


「第五王権者。あなたには借りがあります。ですが、この空間を解かないなら、斬ります」


「くっくっく。折れた剣には用はないよ」


紫藤の足元に穴が開く。


「な……!?」


紫藤は穴に落ちていった。


「紫藤をどこに落としたんだ!」


「怒るなよ。この空間から出してやったんだよ」


「なんだと?」


「わたしが用があるのは九郎くんだけなんだよ」


「どういうことだ?」


「九郎くん。もっと強くなったら出してあげるよ」


ローブの女は飛ぶ。


「待て!」


炎の翼。炎翼を出して追いかける。


空中で接近する。


だが、


「炎が……」


雨が降っているのだ。


いや、突然降り出したのだ。


「雨乞いの指輪。水を支配する指輪よ」


「くっ」


炎はどんどん弱くなっていく。


そして、落ちた。


「痛てて」


とっさに受け身をとったのと、ランスロットの剣により身体能力が上がっていたこともあって無傷だった。


「行きなさい。死者たち」


骸骨共が群がってくる。


「戦略的撤退だ」


俺は神社に向かって走り出した。





雨が降っている。


私、紫藤みねねが穴から落ちた先は現実の世界だった。


「とりあえず、輝夜に電話しなきゃ」


輝夜に電話する。


そして、今までのことを全部伝えた。


輝夜は冷酷に言った。


『剣を折られた王権者は無力です。シルヴィアさんがそちらに向かったので、後は彼女に任せてください』


「分かり……ました」


男の声がする。


「落ち込んでいるみたいじゃないか」


私の肩にポンっと手が置かれる。


振り返ると、そこには第六王権者、ボイドがいた。


「今日こそは勝負してもらうぞ」


「無駄です。私の剣は……」








祭り3





神社で考える。


「炎翼はダメだ。それに炎の斬撃は効かない」


輝夜に電話しようと思ったが、


繋がらない。


「なら」


木刀を手にする。


「こいつに頼るしかないか」








「なんでボイドがいるのよ」


「それはこっちのセリフだ」


「まあ二人とも落ち着いてください」


私は二人をなだめる。


「で、九郎が捕まったのは事実なのね」


「そして、異空間に閉じ込められたというワケか」


「はい」


「ロウ。俺はやつに借りがある。悔しいが共同戦線だな」


「ええ」


「で、どうやって異空間へ行くんですか?」


「……」


「……」


どうやら、何も考えていなかったらしい。


静寂に凛とした声が響く。


「無様だな」


薬子くすこ!」


ロウが驚く。


知り合い、なのだろうか?


「剣を出しな。紫藤みねね」





神社の結界が壊れた。


滝のような雨の中。


唇から血が流れる。


それを手の甲で拭いて、立ち上がる。


木刀を手に、骸骨を倒す。


言葉にするのは簡単だが、実行するのは大変だ。


「紫藤。頼りにしてるぞ」


太陽が沈みかけていた。








「刀鍛治の薬子だ」


「刀鍛治?」


私は聞く。


「ああ、お前の剣はなまくらだ。だから刀に叩き直す」


「待ってください!」


「なんだ?」


「偉大な円卓の騎士の剣を叩き直すなんて? そんなこと出来るわけが……」


「出来るわよ」


ロウは確かにつぶやいた。


「わたしのレイピアも薬子に叩き直してもらったもの」


「シルヴィアは斬れ味を上げただけだが、刀なら話は別だ。空間すら斬れる刀を作ってやる」


私は剣の残骸ざんがいを渡す。


「頼みます。早めに叩き直してください」


「任せろ」








祭り4





雨はまだ止まない。


俺は木刀で骸骨共を蹴散らす。


「どこにいやがる?」


斬っても斬ってもキリがない。


「第五王権者。どこにいる?」


木刀が折れる。


「しまった!?」


骸骨が群がって押し寄せてきた。


「くそ! こんなところで……」


『終わりじゃねぇよ』


「はっ……!」





目が覚めるとそこはビルが所狭しと並ぶ都会だった。


だが、空は黒い。


星の光すら見えない。


「よお、俺」


「お前は?」


そこには俺がいた。


ただし、仮面を付けた。


「紫藤の時、なんで仮面を使わなかった?」


「お前の力で勝っても意味がないからだ」


「綺麗事だな。それじゃあこの先には進めない」


「この先?」


「漆黒の魔剣。アーガスを持つに相応しくないってことだ」


「アーガス?」


「お前の剣に封印されている神様だよ」


「でも、あの闇のようなどす黒いものに支配されて動くのは、


嫌だ」


「なら、力づくで俺様から力を奪い取れ」


もう一人の俺は仮面を外した。


俺によく似た、他人だ。


俺と姿形は同じでも、その笑みは別人だ。


「ハンデだよ。俺様に一撃当てられたら力をくれてやる」


「だから、俺は自分自身の力で……」


「甘っちょろいな。そんなことだからシルヴィアや紫藤は死ぬんだぜ」


「なんだと?」


「俺様の予想だと、あいつらはお前を助けに来て、第五王権者にやられる」


「なぜ?」


「第五王権者の剣。いや、ボールスのナイフには今のあいつらではかなわないからな」


「なぜ、知っている」


「俺様の名前はランスロット。剣の守護者にして魔剣アーガスの所有者」


「ランスロット……だと?」


「ああ、俺様の肉体はすでに滅びたが、俺様の魂は魔剣アーガスに取り込まれ、生きている」


「……」


「俺様の話は終わりだ。仲間を救いたければ、俺様に一撃を当ててみせろ」


「だが、剣がない」


「剣ならあるぜ」


ぐらり。


視界が90度ズレる。


足元にビルのガラス張りの壁がくる。


そして、ビルのガラスに空中から降ってきた大量の剣が突き刺さる。


「使えよ」


ランスロットはすでに近くにあった大剣を手にしている。


「……」


俺が選んだのは奇しくもランスロットと同じ大剣だった。


「行くぜ」


「ああ」


二つの大剣がぶつかり合った。








祭り5





カンッ!


キンッ!


大剣と大剣がぶつかり合う。


火花を散らし、二人は戦う。


「なぜ? お前は俺に力を貸す?」


「お前は王だからだ」


「王?」


「アーサーと同じ、王だから、だから力を貸す」


「なら、なぜ素直に力を貸さない?」


「お前は自ら掴み取った力以外使おうとしないからな」


「じゃあ、俺がこんな無益な戦いを止めて仮面をよこせと言ったら?」


「叩き斬る」


「だろうな」


「この大剣はもう限界だな」


ガキッ!


二人の大剣が同時に砕ける。


ランスロットはレイピアを、俺は刀を手にした。


「刀か。日本の斬れ味のいい刃物」


「知らないのか?」


「この剣たちは俺様とお前の記憶から作られる。だから、俺様の知らない刀があるんだよ」


「なあ、ランスロット」


火花を散らしながら、聞く。


「お前はなぜ。笑っているんだ?」


ランスロットは砕けたレイピアを捨て、長剣を手にした。


「くっふふ。楽しいさ」


「楽しい?」


「この殺し合いが、互いの命すら天秤にかけた戦いが。楽しいのさ」


「俺は嫌いだよ。傷付く人が出るのは嫌なんだ」


「なら」


「?」


「なぜ、お前は笑っている」


唇へ手を当てる。


それはどうしようもなく、笑みの形に歪んでいた。


「なんで……」


「お前は戦いが好きだ。認めろよ」


「嫌。……嫌だ」


「俺様は剣から見てたぜ。お前は自分より強い相手、それも強ければ強いほど戦いを楽しんでいた」


「嘘だ……」


「ルークと戦っていた時、お前は笑っていたぜ」


「うわぁああああああ!」


フラッシュバックする。


ルークに刺された時、死にかけた時、仮面を付けた時、仮面の内側で、確かに俺は笑っていた。


「そうか……」





祭り6





祭りは、終わりだ。





「そうか。そうだったのか」


俺は座り、孤独に笑う。


「ようやく気付いたか。自分の王としての異常性に」


「ああ、俺は戦いが嫌いだ。だけど、それ以上に殺し合いが好きなんだ」


「なら、立てよ」


「ああ」


刀から手を離す。


「なんのつもりだ?」


ランスロットは首を傾げた。


「ここは俺たちの記憶で作られた剣の存在する世界」


「ああ」


「なら、あるはずだ」


「まさか!?」


「そう、お前の剣が」


見つけた。


白い刀身を持つ、剣を。


剣を、持つ。


「これが、ランスロット。お前の剣だ」


「ああ」


「だが、半分だ」


分かる。


この剣は半分しかない。


そして、もう一つは、


「俺様が持っている」


ランスロットが黒い刀身の剣を出す。


その刀身に、炎はない。


だが、俺の剣には、


「紅蓮の炎、だと」


紅蓮の炎が巻きついている。


「まだだ。まだ力が足りない」


右手に異変が起こる。


周囲から光を集め、何かを形創ろうとしている。


それは、


仮面。


右手に仮面が現れる。


それはランスロットの仮面のネガのように色が反転していた。


「仮面を出す、だと!?」


初めて、ランスロットが動揺する。


俺は仮面をかぶる。


「……」


紅蓮の炎が青く、蒼く、碧く染まる。


紅蓮の炎を全てを焼き尽くす地獄の業火とするなら、


「蒼く、全てを消し尽くす天壌の炎」


「蒼炎!?」


ランスロットは仮面を出す。


「楽しいぜ。楽しい殺し合いだ!」


それはどちらの言葉だったのか?


蒼と黒の炎がぶつかり合った。


しかし、だんだんと黒の炎が押す。


そして、俺の視界を黒が覆い尽くした。


だが、


「確かに、お前の炎は届いたぜ」


ランスロットの頬から血が一滴流れた。








「完成したぞ。お前の新しい刀だ」


薬子から刀を受け取る。


柄から全部が違う。


完全に刀だ。


「鞘はサービスだ。その刀なら歪んだ空間を斬ることが出来る」


「分かりました。行きましょう。ロウ、ボイド」


「うん」


「俺に命令するな」


私は私が落ちて来た場所に来た。


そして、刀を出す。


「ガラハッド。応えて」


刀で空間を斬り裂いた。


赤い空の空間に出る。


「行きましょう」





祭り7





醜悪祭。終了。





「第五王権者。やっと見つけた」


「雨の中よくここが分かったわね」


「第五王権者。いや、咲畑さきはた時雨しぐれ。俺の幼馴染みは学校の屋上が好きだったからな」


時雨はフードを脱いだ。


「バレてたか」


ちろっと舌を出す。


「俺のことを九郎くんと呼ぶのは時雨だけだからな」


「あーあ、せっかく声まで変えたのに、失敗かー。残念」


「なぜこんなことを?」


「九郎くんのせいで大変なことになったの。そして、それを何とか出来るのは九郎くんしかいないの」


「なぜ?」


「ランスロットは魔剣を作った」


「何の話だ?」


「魔剣にはクトゥルフ神話の神、アーガスが封印されている」


「ああ、聞いた」


「でもね。クトゥルフ神話は1900年くらいに出来た新しい神話なんだよ」


「だから、なんだ?」


「なぜ昔のランスロットが未来の神話を知っているの?」


「あ……」


盲点だった。


確かに、おかしい。


「だからね。私は考えたの。そして、結論を出した。だから試させて」


時雨の後ろから三人が現れる。


ロウ。


ボイド。


紫藤。


「私のボールスのナイフの能力は斬った相手の支配。さあ、行きなさい」


「くっ……」


紅蓮の炎翼で逃げる。


「雨乞いの指輪よ」


土砂降りの雨が降る。


炎翼が消える。


なら、


「一瞬でかたをつける」


「やってみなさい」


「……」


「……」


「……」


右手に意識を集中させる。


「……仮面よ」


仮面が現れる。


「三秒だ」


「ん?」


「三秒だけ、本気を出す」


仮面をかぶる。


蒼い炎が噴き出し、剣の形になる。


紫藤が高速移動で突っ込んできた。


蒼い炎翼を出現させ、かわす。


雨は、炎翼に触れた瞬間蒸発していく。


一秒。


「……」


ボイドの大剣を足場にして飛ぶ。


ロウのレイピアの攻撃を空中でかわす。


二秒。


「……」


時雨の元にたどり着き、時雨の首に剣先を突きつける。


「負けた。降参」


三秒。


仮面が砕ける。


三秒。


それが、この仮面の限界だ。


時雨はつぶやいた。


「祭りは、終わりみたいだね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ