剣と巫女
ブラックブレイド2 剣と巫女1
ピピピ。
アラームが鳴る。
「起きる。起きるから」
アラームを止める。
「おはよう。九郎」
「えーっと、ロウ。なんで家にいるの?」
「彼女だから」
どうやら昨日の告白じみた叫びは告白と受け取られたらしい。
まあ、ロウのことが好きになったのは事実なのだが、順序というものがあるだろう。
「とりあえず……学校に行かせてくれ」
学校。
「転校生を二人紹介するぞ」
担任の先生がそう言った。
「シルヴィア・ロウです。よろしくお願いします」
「皇輝夜です。よろしくお願いします」
俺の両隣りが空いていたので、必然的に二人は両隣りに座ることになった。
「あの……」
輝夜がしゃべりかけてきた。
「私はバベルの日本支部の巫女です」
「はぁ……?」
「あなたの監視と援助が私の仕事です」
「そうですか」
放課後。
「さっそくですが、剣の修行をしましょう」
輝夜はそう言って俺を神社に連れて行った。
神社の近くには道場があり、そこには着物を着た女の子がいた。
黒髪をポニーテールにして、凛とした雰囲気を醸し出している。
「第四王権者。紫藤みねねです」
「はぁ……?」
紫藤は竹刀を手に取った。
「あなたに剣を教えましょう」
剣。
あまり考えこまずに話を変える。
「あなたは誰の剣なんですか?」
「ガラハッド卿の剣です。いえ、刀でしょうか」
そう言って紫藤が取り出したのは刀に似た両刃の剣だった。
細く。
綺麗だ。
「まだ、私は一度もこの剣を使ったことはありません」
「なぜ?」
聞く。
「修行だからです」
「修行?」
「私はまだ、この剣を持つに相応しくありません。故に使いません」
「で、俺の剣の修行と何か関係あるのか?」
「あります。あなたの剣術の完成をもって、私の修行を完成とします」
「はぁ……」
「堅苦しい礼儀はいりません。どうぞ、竹刀で斬りかかって下さい」
竹刀を持つ。
「本当にいいんだな?」
「ええ」
「行くぞ!」
三時間後。
「勝てない」
「まだ、まだまだです。こんなもので終わりのはずがありません」
「くっ……」
竹刀で斬りかかる。
と、
バキッ!
竹刀が折れた。
これで四本目だ。
「第七王権者。九郎リアス。赤い靴でも履いたがごとく、死ぬまで踊ってください」
剣と巫女2
人を活かし、人を殺す。
それが剣術。
故に私は……剣を嫌う。
「……剣は凶器。剣術は殺人術」
「何か言ったか?」
紫藤と輝夜と晩飯を食いながら聞く。
「いえ。何も。それでなぜここで晩ご飯を食べているのですか?」
紫藤の質問に、輝夜が答えた。
「九郎リアスは私の監視下におく必要があります。だから、今日から私たちは同じ屋根の下で生活することにしたんです」
「だそうだ」
紫藤と輝夜は幼馴染みらしく、仲良く喧嘩している。
紫藤が聞く。
「第七王権者。九郎リアス。あなたはそれでいいのですか?」
「うん。まあ特に異論はない」
剣と巫女3
翌日、ボイドが訪ねてきた。
「第四王権者。紫藤みねね。俺と勝負しろ」
はぁ……。
めんどうな事になったな。
「九郎さん。ボイドさんのお相手をしてください」
「はぁ?」
ボイドは唖然としている。
「了解」
俺は片手にランスロットの剣を持ち、右手に木刀を持った。
「……行くぞ」
ボイドは大剣を構える。
「ああ」
一時間後。
「はぁ、はぁ……なぜ、勝てない」
「修行したからな」
ボイドは大剣を放り投げた。
「降参だよ」
ボイドは帰っていく。
そして、気付いた。
「あいつ、手加減しやがった」
左手が利き手の九郎が右手で木刀を握ったのだ。
手加減と言わずしてなんと言うのか。
剣と巫女4
あり得ない。
そう思う。
剣の修行を三時間程度したくらいでもう私並みの力量を手にしている。
「ボイドには勝てない。そう思った」
けれど、
「勝ってしまった」
あり得ない。
あり得るはずがない。
だって、
「そんな、完全に私と同じ実力だなんて」
今までの修行はなんだったのだ。
それを三時間程で吸収し、自らの力とした化け物、九郎リアスとは一体……?
「九郎リアスは化け物よね」
後ろから声をかけられる。
気配がしなかった。
相手は相当な手練れだ。
「誰ですか?」
「第五王権者。レイン」
前を向いたまま会話する。
後ろから声をかけたということは、顔を見られたくないということなのだろう。
礼には礼を、無礼には無礼を。
「九郎リアスと戦いたくない?」
それはとても魅力的な提案だった。
剣と巫女5
空がおかしい。
空の色がおかしい。
「赤い……」
真っ赤な空。
そして……
「人がいない」
誰一人としていない。
が、無視して学校に行く。
「おはようございます」
シーン。
教室には誰もいない。
「自習でもするか」
ノートを開いた瞬間、呼び止められる。
「勝負してください」
「紫藤……?」
紫藤は朱色の鞘を持ち、こちらを見る。
「あなたを斬るために、私は剣を初めて使う」
「どういうつもりだ」
聞く。
「あなたを対等と認めたからこそ。私の最後の修行のために、戦ってください」
剣と巫女6
「あなたの刀です」
抜き身の刀が渡される。
「村正。かつては妖刀と呼ばれた名刀です」
「本当にやるのか?」
「はい」
迷いはない。
だが、
「この刀、柄が無いんだけど?」
「ランスロットの柄を差し込んでください」
言われて気付く。
そして、ランスロットの剣、その柄を村正に差し込んだ。
「では、勝負しましょう」
めちゃくちゃな理由だ。
だが、
「ああ、そうだな」
紫藤が剣を抜く。
相変わらず綺麗な剣だ。
例えるならガラス細工。
だが、今はそんなことを考えているヒマはない。
剣と巫女7
「いきます」
紫藤は鞘に再び剣を戻す。
そして、構えた。
「抜刀か……」
剣術の奥義にして基本。
間合いに入った瞬間、斬られる。
だが、やるしかない。
「行くぞ」
踏み込む。
シュン!
音速に近い速度で剣が振るわれる。
間一髪、避ける。
まともに刀で受けていたら真っ二つだ。
「私の剣の能力は高速移動。速さでは負けません」
足で机を蹴り上げる。
「ちっ!」
机が真っ二つになった。
「流石だな」
斬れ味じゃない。
あの速度が異常だ。
そして、その速度についてこれる反射神経が異常だ。
剣の能力か。
「なら、俺も出し惜しみなしだ」
集中する。
炎をイメージする。
溢れる紅蓮の炎を。
「炎が……!?」
紅蓮の炎が剣から、溢れ出す。
それは村正の刀身にヘビのように絡みつく。
「紅蓮剣。あらゆるものを燃やし尽くす、紅蓮の炎」
指先が熱い。
炎の制御はまだ出来ない。
このままだと自身の炎で燃える可能性すらある。
だが、
「本気なんだな」
「そうですよ」
「なら……」
俺は紫藤に突っ込んだ。
キンッ!
剣と刀がぶつかり合う。
炎で強化された村正と、高速で振られるガラハッドの剣。
だが、経験が両者の実力を分ける。
「はぁ!」
剣を避ける。
剣は衝撃波を生み、校舎に大穴を開けた。
そして、その穴に俺は落ちていく。
「こんなところで死ぬのか?」
紫藤は本気で殺しにきている。
なら、本気を出すしかない。
けれど、本気でも勝てなかったら?
『使えよ』
右手に仮面が現れる。
だが、
「これは一対一の勝負だ。手をだすな!」
仮面を握り潰す。
「紅蓮の炎よ」
集中する。
そして、左手で持っていた柄を両手で持つ。
炎の制御。
出来なければやられるだけだ。
頼む。
応えてくれ、ランスロットの剣よ。
「ん……」
炎が変わる。
それは、翼。
炎で出来た、一対の翼。
「くっ」
地面すれすれで止まる。
そして、飛ぶ。
「な!?」
紫藤が驚く。
「炎の翼?!」
翼から炎が一筋、刀身に流れこむ。
炎と刀身が、完全に一体化した。
「こい、第七王権者。九郎リアス!」
「ああ、第四王権者、紫藤みねね」
剣と刀が交わる。
分かる。
「勝てる」
だが、紫藤は死ぬ。
それだけは嫌だ。
「だけど……」
死にたくない。
殺したくない。
矛盾。
だけど、
どうすれば?
「紫藤。俺は、好きだったんだぜ、お前のこと」
俺は決意した。
「私も、嫌いではありませんでした」
炎を全て刀に注ぐ。
翼は消え、重力に引かれて落下する。
「最後の一撃だ」
「なら、私も」
紫藤が抜刀の構えをとる。
「いざ」
「「勝負」」
学校。
校庭。
「あらあら、九郎くんは紫藤を殺さなかったのね」
第五王権者。レインは嘆息する。
「紫藤の剣のみを折るなんて」
あの一撃で両者の剣、刀は折れた。
だが、九郎の勝利には違いない。
「九郎くん。もっと強くならなくちゃいけないよ」
手元にはルークから奪った死者の書がある。
「さぁ、まだ祭りは終わらないよ」




