武器と戦術は仕上がった...いよいよ実戦?
ラスボス前に強敵を倒す流れになりそうですが...
週末になってふたりは基地へ向かった。ガンの火力は上がっているだろうか?
「いらっしゃい、温ちゃん、郁くん、武器は仕上がってるわ。」
「ありがとうございます、イリーナさん。」
「さっそく試してみましょう。変身してトレーニングエリアへ入ってちょうだい。」
トレーニングエリアでスタンバイしていたのは前回と同じ、中級ドローンが10体と巨大シミュラント1体だ。ふたりは増強されたガンを抜き中型ドローンを撃った。前回と違い、今回は1発で撃墜できる。10体の中型ドローンは3分もかからずに全滅した。
「良いわよ、その調子で!」
前回と同じように、大型シミュラントにガンシュートはあまり効果がなかったが、それでも関節部分などを狙えばダメージを与えられる。郁は美少女戦士の静音飛行で敵の背後に回り、頭部の接合部分にゼロ距離射撃を浴びせた。火が付いた油脂が飛び散り、目のランプの色が変わった。その間に温はソードを取り出して、脚の接合部分に突き刺した。ここでも火花が飛び、噴き上がる煙の中に焦げた油脂やゴムの匂いが籠もった。温は突き刺したソードを梃子のように動かして付けた傷を抉った。シミュラントは膝をつき何とか転倒を免れた。そのとき郁はロッドを取り出し、温の声で叫んだ。
「クリスタルブリッツ!」
ロッドから放たれた電撃が破れて剥き出しになったシミュラントの内部機構に吸い込まれ、複雑なショートを起こし、シミュラントは制御不能になって倒れた。
「やった!」
「良いわよ、郁くん、そこで電撃を叩き込んだのは正解だわ。ふたりとも変身を解いてこっちへ戻って。」
「どうやら実戦に投入しても大丈夫そうね。特別作戦を実行します。」
イリーナが特別作戦の詳細を説明しようとしたとき、ヒルデガルトが割って入った。
「イリーナさん、もう少ししっかり情報開示をしないといけませんよ。敵の概要を教えてあげないと危険です。」
「そうでした。お願いしてもよろしいですか?」
「わかりました。郁くん、ビブリア、今まで黙っていてごめんなさい。敵の情報を伝えます。敵は異星人です。“人”と言って良いのかわからないのですが、宇宙から飛来した敵性生物です。うちとWEECは別組織として個別の脅威に対応してきましたが、調査の末、同じ存在が敵であるということが判明しました。奇妙な敵です。宇宙怪獣のようなものなのでしょうか、敵は個体として1体です。ですが1体であると同時に多数です。つまり、常時群体として行動可能です。敵はこれまで人があまりいない状況で人間を襲ってきました。これは確定ではないのですが、敵の免疫と関係があると推定されます。あまり多すぎる人間を前にすると、免疫システムが耐えきれずに感染して死んでしまう可能性があると思われます。なので人間が少数でいるところを狙って襲い、免疫力を付ける作戦のようです。」
「そこまでわかっているなら大軍で攻め込めば何とかなるのでは?」
郁は腑に落ちないといった様子で質問した。
「そこなのですが、攻め込めないのです。敵の本拠地が確定できません。ある程度は掴んだのですが、そこから先、空中からの踏査は不可能になっています。どうやら敵の本拠地は、この基地のように地下にあります。そして、そこに迫るためには地上から突入する必要があります。そして、そこで問題になるのが、そこに至る道を守るガーディアンの存在です。強力なガーディアン、敵という宇宙怪獣の群体のひとつですが、突破できません。いままで一般部隊も美少女戦士部隊も、すべて敗退してます。戦死者も出ています。」
WEECのイリーナも話に加わった。
「私たちのWEECも近隣諸国から改造ヒーローを集めて攻撃させましたが、ことごとく敗退しました。どうやら敵は、この一本道を最終防衛ラインとみなしているようで、群体の最も強力なパートを配置しているようです。こちらも戦死者が出ました。」
話の筋が見えてきた。温も郁も、どうやらその最強の群体を相手にさせられるのだと予想した。戦死者を出した敵にぶつけられる。
「俺たちがその強力な敵を倒せというのですか?死ぬかも知れないのに?」
温は郁を見てしばし考えて言った。
「拒否はできるのですか?」
ヒルデガルトはすぐさま答えた。
「もちろんです。その場合、変身関係のアイテムはすべて返却してもらい、これまでの記憶は消すことになりますが。」
「戦闘と関係なく学園生活やバイトでふたりが知り合った記憶もですか?」
「はい、そこは深くつながってしまっているので、ふたりには全くの他人に戻っていただきます。」
「ちょっと二人きりで相談しても良いですか?すぐに答えは出せそうにありません。」
「かまいませんよ。今日はこのままお帰りください。明日、返事を聞かせていただきます。それから、任務を引き受けてもらう場合、同意書にサインしてもらう必要があります。国連のダミー機関との契約書を交わしていただきます。もし名誉の戦死を遂げた場合、ご家族に国連から高額の追討金が支払われます。」
郁は温を乗せて基地を出た。どうする?負けたら死ぬかもしれない。でもヒーローとして死ぬのも....いや、悪くないわけないだろう...俺は温を守り抜くって決めたんだ...
「郁さん...私...負けたくないよ...」
「でも、死んじゃうかも知れないんだぞ。」
「それでもだよ。私たち、正義のヒーローじゃん。私たちが退いたら誰が皆を守るの?」
「温....おまえ...強いな...」
「だけどね....郁さん....心残りを残したまま死にたくはないんだ。」
「え?心残り?」
「そう....恥ずかしいけど言っちゃうね。郁さん、お願い...死ぬ前に女として私を愛して。私を抱いて。それで最後の心残りが消えるから。」
「温...ちゃん...」
童貞と処女の営みなどあっという間だった。美しい思い出なんかない。ふたりとも最初はこれ以上ないといった感じの真剣な面持ちだったが、半笑いになるしかない場面が連続したので、この先に待つ死への恐怖はほぼ消えてしまった。ただ....ヒーローとして何かが変わった予感があった。
翌日、ふたりは基地へ向かった。イリーナとヒルデガルトに自分達の覚悟を告げるために。
はい、初々しい初体験に突入しちゃいました。まあ、みなさんも思い返してみれば、あれは半笑いになるしかないイベントですね。




