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変身ヒーローカップルの、人に言えない悩み――変身すると男女が入れ替わる  作者: 青い水


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浴衣と特別演習と密着のタンデム

難関を乗り越えてやり遂げたプールデートのおかげでふたりの距離はますます縮まった。そして基地では何やら動きが...

 8月に入り,夏休みも後半になった。仕送りも来たし、デートも終わったので、郁の重労働は終わった。真夏の引っ越しは地獄だった。地獄の作業に耐えている労働者に支えられてこの社会は回っているのだと、郁は改めて感謝の気持ちを強めた。一方温は、接客の仕事が楽しくなったので、夜のバイトを続けていた。ただしシフトを週3回に減らして、受験勉強の時間を確保した。世界史の勉強は単なる暗記では味気ないので、勉強している時代を描いた小説を読むようにした。こうすると人名も単なる記号ではなくて生きた人間と結びつく。


「来週はお盆か。そろそろ浴衣を買いに行こうかな。資金はっと.....ほう、4万円もある。いや、4万円も、じゃないな。浴衣は,それだけじゃ済まない。ちょっとネットで調べよう。………… 何々...着付け小物セットだと?これがないと着崩れする必須アイテム。なるほど、それから肌着...ブラとパンツじゃダメなのか、知らなかった。危なかった。....それから巾着、そう浴衣と来たら巾着は必須だね。4万円で足りるのかなあ?いや、足りたとしてもすっからかんになるのは避けたい。………… 仕方がない。これまで禁じ手としてきたが、ここは親にねだろう。日本の夏の伝統衣装だ。所有させずに放置したということになれば、ランドセルを買わずに小学校に行かせたみたいになる...ほどではないにしても...ううむ、良い比喩が見つからない。ともかくねだろう。親もきっと喜ぶ。高校に入ってから一緒にデパートに行ったことがないんだ。」


 温の目論見通り、親は大喜びで一緒にデパートに行ってくれた。親と一緒だと見て取ると,店員は巧妙に虚栄心を刺激して高いものを買わせようとする。温としては、浴衣にブランド性を求めていないので、高級品ではなく、身の丈に合った可愛らしいものが欲しかった。店員は、これならお嫁に行っても着られます、などとふざけたことを言うが、嫁に行ったら嫁らしいのを買うから、今はJKらしいのを買わせてくれと温は思った。


「ねえ温、せっかくだから長く使えるものが良いんじゃない?」


「いえ、お母さん、浴衣は着物と違って子々孫々まで伝えられる資産ではありません。今ここ、hic et nuc が命なのです。いまのは受験勉強で身に付けたラテン語です。たまに英文の中に紛れ込みます。」


「おまえは本当に昔からよく口が回るわね。口語と文語が混在するのが温らしいわ。わかった。好きなの選びなさい。」


 こうして温は値段を気にすることなく浴衣セットを買うことができ、キャッシャーで母親のクレジットカードが支払った金額は4万円を少し下回った。自腹で買っていたらけっこうな惨事になっていた。


 郁の元に基地から連絡が入った。ヒルデガルトさんとイリーナさん両方からである。温と共同で特別な訓練をするらしい。場所は施設が充実しているWEECだ。基地に向かうと、イリーナさんとヒルデガルトさん両名が待ち受けていた。


「いらっしゃい、温さんと郁くん。」


「こんにちは、ヒルデガルトさん、お久しぶりです。」


「イリーナさん、長らく顔も出さずに失礼しました。」


「では訓練の概要はこの基地の代表者であるイリーナさんから話していただきます。」


「きょうの訓練は特別作戦の事前演習です。ふたりで挑んでもらいます。仮想敵は10体の中級飛行ドローンとそれに守られる1体の巨大シミュラントです。ふたりでこれを倒すのですが、巨大シミュラントは中級ドローンによって守られていますから、まずすみやかにこの10体を撃墜し、巨大シミュラントに挑みます。巨大シミュラントはHPが中級ドローンの50倍、そして攻撃力は10倍です。攻撃を食らえばかなりのダメージになります。もちろん戦闘不能直前に回収しますから命を失うことはありませんが。」



「了解しました。行ってきます。」



挿絵(By みてみん)



 ふたりはソードを構えたが、まず飛行ドローンを撃墜しなければならないので、ソードを収納してガンを取りだした。着弾1回では墜ちない。ふたりで協力して敵の攻撃をかわしながら何とかすべて撃墜した。顔を見合わせてグーでタッチ。次はボス戦だ。銃器の攻撃はほとんど効いていない。温はバーニアを全開にして突撃したが、敵は巨体のくせに素早い。ソードが装甲に触れる前に太い腕でガードされ、あやうく叩き落とされそうになった。その隙に郁は,無音の美少女戦士の飛行能力を活かして背後に回り、ブラウリヒトを頭部と胴部の接続部分、つまり首に叩き込んだ。火花が飛んだが、首が切り落とされることもなく、巨大シミュラントは郁を叩き落とそうと太い腕をぶんぶん回した。


「ダメだ、温ちゃん、何とかやつを転ばせよう。小回りがきくぼくが何とか翻弄して敵の注意を引くから、温ちゃんはやつの脚部...そうだな、膝かっくんの要領で、膝裏に一撃を加えてくれ。」


 郁は敵の周りを飛び回ってブラウリヒトで小さな傷を付けまくった。邪魔な羽虫を追い払うように巨大シミュラントが郁を殴りつけようとしている隙に温は敵の視界から離れた場所から膝裏にアプローチし、重い一撃を加えた。敵は膝をついたが倒れなかった。


「ストップ、そこまで!」


 イリーナの声が通信機越しに響いた。


「動きは悪くないけれど、火力が圧倒的に足りないわ。基地に戻ったらふたりともガンを渡して。火力を上げる改造をします。今のままでは人間にとっての豆鉄砲みたいなものだわ。」


 続いてヒルデガルトの講評も聞こえた。


「ふたりの連携はとても良かったわ。美少女戦士と変身ヒーローの動き方の特徴も良く活かせてました。たぶん日常のふたりの関係が深くなっているからなのでしょうね。良い傾向だわ。」


 ふたりはこれを聞いて照れくさかったがまんざらでもなかった。なんだか祝福されているような気持ちになった。


「あ、そうだ。忘れるところでした。イリーナさんとも話し合ったのですが、週末の訓練に対して報酬が支払われることになりました。アルバイトが大変だという話を聞いたので,本来ならアルバイトで収入を得られる時間を拘束しているのだから、そのぶんの対価を払うことになりました。1日1万円でたいした額ではありませんが、通常のアルバイト収入に合わせました。7月の夏休みに入って週末の土日は必ず来ていただいたので、遡って支払います。今日で3度目の週末なので、それぞれ6万円が支払われます。有意義に使ってください。」


「本当ですか。ありがたいです。」


 ふたりは喜色満面で頭を下げた。


「ところでイリーナさん、久しぶりにWEECの基地に来たのでお願いがあるのです。」


「何でしょう?」


「このバイク、ブラックボックスが仕込まれているから街のバイク屋に触らせるわけにもいかないので、収納スペースが付けられません。ちょっとした買物に行くにも不便なので,トランク的なものを付けてください。」


「リヤボックスね、良いわよ、ちょっと待っててね。タンデムの邪魔にならないように付けるから。」


「郁さん、良かったね。これでタンデムのときにふたりを隔てるバイカーリュックが消えて密着度が上がるね。」


「お、おう...」


 プールで見た白ビキニの中に収められた脂肪の双峰が郁の頭に浮かんだが,郁は頭を振って脳内画像をすぐ消した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 リヤボックスが付いたバイクでふたりは基地を後にした。来るときに着けていたバイカーリュックはリヤボックスに収納され、温と郁は密着のタンデムで街に戻ってきた。


「温ちゃん、訓練のあとの甘味補給しよう。」


「賛成!資金も潤沢だし、私パフェ食べたい。」


「いいねえ。じゃあサクッとファミレスへ行こう。」



挿絵(By みてみん)



「今回の訓練は特別作戦のための演習だったんでしょ。特別作戦ってあんな巨大ロボと戦うのかな?」


「そうかもしれないね。勝てるのかなあ。」


「火器の火力を上げてくれると言ってたし、勝てると判断してから作戦を実行すると思うから大丈夫だよ。」


「そうだね。司令部を信用しよう。」



これで温は思いきり郁の背中に抱きついて甘えられますね。

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