再構成された〇〇
うーん
再構成された死体 — The Reconstructed Corpse —
地下棟の検証室。
壁際に並ぶホログラム・プロジェクターが、淡い光を放ちながら被害者の“再構成データ”を映し出していた。
空中に浮かぶのは、30代前半の男性。
目を閉じたまま静止しているその姿は、まるで眠っているかのようだった。
助手の詩織が端末を操作する。
「AI《Cassandra》が現場データから再構築した死体映像です。
外傷、毒物反応、DNA照合……すべて異常なし。死亡原因、特定不能」
秋山亮一教授は無言でホログラムの周囲を歩いた。
光の粒が肌をかすめ、男の形が微かに揺らぐ。
「……心停止ではないな」
詩織が顔を上げる。
「え?」
「これは“肉体の死”ではない。
意識そのものが、切り取られた痕跡だ」
教授の言葉に、室内の空気が重くなる。
ホログラムを解析すると、脳波データの一部が“反転”していた。
活動していたはずの時間帯が、まるで“存在しなかった”ことになっている。
「意識を抜かれた……?」
「正確には、観測の対象から外された。
アトラスのシステムは“認識されないもの”を記録できない。
つまり、誰かが意図的に観測システムを欺いた」
教授はテーブルに投影された都市地図に目をやる。
被害者が最後に確認された地点――C-12連絡通路の点が赤く瞬いた。
「この男の死は、“完全犯罪”の実験だ」
詩織が息を呑む。
「実験……?」
「観測されない行動、観測されない死――
そして、誰も罪に問われない構造。
奴らは、“Black Sign”の技術を都市規模で試している」
その時、ホログラムの男の目が一瞬、開いた。
詩織が悲鳴を上げる。
「うそっ、データは停止状態のはず!」
「落ち着け」
秋山は冷静に画面を操作するが、データ反応は異常。
“死者”の瞳の奥から、かすかな声が漏れた。
「……観測者を……観測せよ……」
そして、ホログラムが一気に崩壊した。
白光が室内を包み、解析装置が軋む。
「教授っ!」
秋山は冷たい空気の中で目を細めた。
「……奴らは、死者の記憶にまで触れ始めた。
“観測”の定義そのものを壊している」
詩織は震える手でデータログを開く。
そこに残されていた最後の記録は、ただ一行。
【Next Target:Observer】
秋山亮一教授――
“観測者”が、次の標的にされた。
ウーン




