#76 夜
東條カゲハルの倒錯した趣味は、時に有力な他家の娘も犠牲となっていた。
そうしたことから、公儀御庭番のほうでも情報が収集が進んでおり、天狗面であるアルムはこれを利用して一計を案じた。
東條家の親類の間でも悩みの種どころか災いの芽であり、下手を打てばお家そのものが取り潰しになる可能性も危惧していた。
表向きは東條カゲハルが本格的に狂ったことも相まって、飛鳥馬家の名の下に東條家への便宜を図ることを約束。
様々な条件と引き換えに、霧縫家へ波及することもなく……こたびの一件は密かに闇へと葬られることと相成った。
「イヤぁ……もう中は堪忍してぇ……こんな奴ので孕みとうないぃ、もうイギだぐなぃよぉ」
「体の相性はいいのに、いちいち突っかかるんだよなぁ。まぁこれはこれで新鮮だからいいんだけど」
敷き布団の上でアルムは仰向けに、同じく御幌メイも仰向けで上に重なるように──体中の穴という穴から垂れ流しながら──さめざめと泣く。
「よしよし、大丈夫だよぉ」
「う゛ぅ゛ーーー、ノエお゛ね゛え゛さ゛ま゛ぁ゛──」
「お、お姉さま……?」
東條カゲハルを相手に、ノエが結果的にがメイを庇った形になったこと。
また三人での情事において、ほんのちょっぴりの妬心からメイにかまけるアルムの気をちょこちょこ引いて、ノエへと矛先を変えさせたこと。
さらに"悪夢香"の所為で精神的に弱っていたこともあってか、短期間でメイからノエへの好感度と依存度が著しく上がってしまっていた。
そもそも一般人にとって夜伽は性愛の場であり、情が移ってしまうのもやむなしであった。
「ノエ、本気を魅してやれよ」
「んっん~、了解。ごめんねメイちゃん、ちょっとだけ苦しいかも。でも天国が見られるよ~」
探られるように何度か触れられていくと、今までとは違うナニカ別の扉が開いていくような感覚──未知の恐怖にメイの表情が染まる。
「ッへ、ぇへ……な、なに今の──?」
ノエは繊細な音を奏でるその指で、メイの体中を愛おしく撫であげ──まるで決められた順番があるかのように──高まっていき、緩急ある舌使いによって天頂まで強制的に運ばれていく。
感度が上がってきたのを見計らってアルムも速度をあげ、胎内を意識させるように腹を抑えながら、メイの弱い部分を執拗に責め立てていった。
「あっ、ひ……そこ、は──お゛っお゛ぉ゛、ぐぅ……ぎひっい゛──おごっぉ゛……ぉ゛ぉ゛ぁああ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛──ッ!!」
メイは獣のような叫びをあげ続ける。
抵抗できぬまま全身が底なし沼でもがき溺れるように、脳が火花を散らしながら焼かれていくような感覚。
それはメイが今までで味わったことのない、極上の体験であった。
「オ゛ッオ゛ッお゛ほっ、んぷっちゅ……ん゛ん゛ん゛ンん゛ン゛ン゛ン゛ン゛──!!」
呼吸すらもままならないままメイは口唇を強引にアルムに塞がれ──生と死の両方を極限にまで刻み込まれながら──逃げられない快楽に、全てを擲たせられるより他なかった。
『大丈夫だよ、ほらっ飛んじゃっていいからねぇ~』
ノエがメイの耳元で囁くと同時に痙攣を繰り返し、同時にアルムも絶頂に達するのだった。
「……うん、大丈夫だ生きてる」
「にゃっはは、さすがに可哀想だね──っともったいない」
ノエはメイの股間から漏れ出たものをすくい取りながら、アルムのモノをゆっくりと口で掃除をし始める。
「は~~、んっぷ……アルムもいっぱい出したねぇ……ん、ちゅっ──はい、元気になった」
キレイにするついでに再び臨戦態勢を整えさせたノエは、口に含まれたものを愛おしく嚥下し、ペロリと舌なめずりしてアルムを潤んだ瞳で見つめた。
「まったく恐ろしい技術だぜ……なぁに、まだまだ残ってるから安心しろ──っよ!」
意識が途絶したメイは雑に隅っこに追いやられ、アルムはノエの肩を掴んで押し倒す。
「おっアルムからしてくれるんだ?」
「……今日は敗けたくないからな」
「ん、いいよ」
そのままアルムを受け入れたノエは、首へと腕を回しながら妖艶に微笑みかける。
「メイちゃんかわいかったねぇ、なんだか妹ができたみたい」
「まぁ~~~なかなか弄り甲斐のある玩具だったな、壊れるまで遊べる」
「あはは、まーたそういうこと言ってぇ」
「ってか、他の女の話はしなくていい。今からは俺とノエだけの時間だ」
「その言葉、今の私には満点だよぉ」
アルムが動き、ノエが合わせる。閨においては互いが互いに、熟知している。
意識することもなく自然で滑らかに、本能だけで完結する二人だけの世界。
グッと足をホールドしたノエは、今までになく満たされた心地で身を委ねる。
「んっ、く……もうきそう」
「っぽいな。らしくないほど早い、でも少し待ってろ……一緒のがいいだろ」
「うん、あっ──ん、そうする」
ノエは快感の奔流を堪えるように貯め、アルムは速度を維持しながらも、気持ちの昂ぶりによって込み上げてくるものを感じる。
「ねぇねぇ、アルムが良ければさぁ……産んであげてもいいよ」
「バーカ、そんなのは10年か20年後くらいに考えりゃいい」
「……そだねぇ」
10年後も20年後も、死ぬまでずっと側で、共に同じ道を歩んでゆく。
「ぅ……あ──」
「ッふゥーーー……」
二人同時に達し、抜かないままゆったりと言葉を交わす。
「アルム……今夜はさ、私をメイちゃんみたいにグチャグチャにしていいよ。普段は暗示込みで抑えてるけど、今だけは解放してぜんぶ委ねてあげる」
「なん、だと……? お前今までそんな裏技使ってたのか!?」
「霧縫の女にとって、寝所では当然の嗜みです」
「真剣かよ、俺はずっと勝てない闘争に挑んでいたというのか──不覚、あまりにも不覚」
心底からアルムは悔しそうに歯噛みする様子に、ノエは穏やかな表情で宣言する。
「にゃっははは~、アルムのおかげで私はもう自由だから……霧縫の枷は外すことにする」
「なるほど、そりゃいい決断だ。やっとノエをあへあへ言わせられるわけか」
ニヤニヤと笑うアルムに対し、ノエは含みのある笑みで返す。
「ただしアルムも覚悟してよね」
「……は? 覚悟? どういうこった」
「秘めていた私をすべて解き放つってことは、正真正銘の全力でいくってことだから。逆にアルムが今のメイちゃんみたくなるかも」
「お、おう……まかせろ、俺に」
アルムは全身の汗が一瞬にして冷えるような感覚を覚えながら、しばらくして覚悟を決めてから行為を再開する。
夜が明けて、太陽が真上に差し掛かかり、傾き始め、メイが目覚めるまで──アルムとノエは無尽蔵とも思える体力で、お互いに"はじめての世界"を堪能し続けるのだった。




