第46話 研究
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「それでは、只今からリューオさんの神級スキル『武器錬成』についての研究を行いたいと思います。リューオさん、研究への協力ありがとうございます、本日はよろしくお願いします」
騎士団の研究部門に所属している、ウラナさんという長身の女性の研究員が僕に言い、深々と頭を下げた。他の複数の研究員もそれに倣う。僕も軽く頭を下げて返した。
ミラエルと一夜を共にした(こういう表現だけど決してえっちなことはしてないから! 最後まで手は出してないから!)日から2日が経ち、現在僕は聖帝騎士団の本部内に位置する巨大な研究所に足を運んでいた。
僕たち聖帝騎士団が望んでいる『フェアード教団の強制解体』は、残念ながらすぐに実現されそうにない。国会での議論が一向に進んでおらず、強制解体命令の発令に至ってないのだ(国会内の議員の中に教団の信者が複数いる影響、という予想が為されている)。
故に教団との戦いは今後も続き、さらに激化していくことが予想される。戦いに勝利するために、戦力を向上させることは不可欠だ。
その流れで、神級スキル『武器錬成』の研究に本腰を入れて取り組もう、と騎士団の上層部が判断したことで、僕はこうして研究所に招かれているわけだ。
上層部の判断は正しいと僕は思ってる。この前の八鬧との戦いは、本当に紙一重の勝負だった。研究部門の方々に神級スキルをしっかり研究してもらって、錬成後の消耗を減らす方法だったり、より効果的な運用方法が分かればそれに越したことはない。
余談だが、昨日の早朝、目を覚ましたミラエルは心底恥ずかしがり、申し訳なさそうにしていた。「リューオを呼びつけた私が先に寝ちゃうなんて……本当に恥ずかしい……ごめんね……」と。
「謝ることはないです、むしろお礼を言いたいくらいですよ」と素直に言ってみたら、ミラエルは照れくさそうな、恥ずかしそうな、それでいて少し嬉しそうな表情を浮かべてた。かわいかった。
そのやり取りの後におひらきとなり、時間が経って今に至る。ミラエルとのお家デートはなんだかんだ成功と言っていいだろう。
あとは、胸を触りかけたことがミラエルにバレてないことを願うだけだ。……バレてないよね? ミラエルは寝てたから、流石に大丈夫だよね?
「それでは事前にお伝えした手筈通り、武器を錬成してもらえますか?」
研究とは全く別のことで不安に駆られる僕に、白衣を纏うウラナさんは緊張の面持ちで言った。
広々とした研究室の中には、ウラナさんを含め30人程の研究員に加えて、研究員以外の人も何人かいるようで、その視線は一様に僕へ注がれている。
事前に聞いたところ、今日は ①僕が錬成した武器を回収し、時間をかけて観察、鑑定、研究②僕に対する様々なヒアリングと今後についての議論 の2つが予定されている。今から始まるのは1つ目の工程だ。
「取り敢えず、消耗が極めて少ない武器を錬成をすればいいんですよね?」
「そうです、よろしくお願いします」
「分かりました」
ウラナさんの言葉に僕は頷きを返す。
(というわけで、これから神級スキルについて研究してもらうから、武器の錬成よろしくね)
《研究ですか……気乗りしませんね……》
頭の中で神級スキルに話しかけると、なんとも嫌そうな感じで返答された。何、その反応……。
(何でそんなに嫌そうな感じなの?)
《以前にもお伝えしたとおり、明確な目的のない闇雲な力の行使は禁じられています。闇雲に力を使うことは、リューオ様の体に良くないですから》
たしかに、初めてミラエルと出会った時に神級スキルはそんなこと言ってた気がする。
(今後の戦いに備えて神級スキルについて研究してもらう、っていうのは明確な目的にならないの?)
《微妙ですね……騎士団の研究部門に、私を研究する程の研究力があるのか疑問ですし……》
(研究力はきっとあるって。とにかく錬成頼むよ)
《むう……というか、今この空間に教団の内通者がいる可能性は考慮しないのですか?》
神級スキルは冷ややかな声音で言う。その返答はなんとなく予想していた。
2日前、目を覚ました直後にノルドと話をした中で、教団の内通者がいる可能性についても教えてもらっていた。この騎士団の内部に不特定多数の内通者がいて、その内通者を通じて教団に情報が漏れている可能性が高い、と。
たしかに、この研究室の中に内通者がいた場合、僕の神級スキルについての研究の情報は敵に筒抜けになってしまう。そうなったらかなりの痛手だ。
しかし、そういう思考に囚われすぎると何も行動出来なくなる。「敵はそれを狙っている、だからこそ必要以上に考えすぎないことが重要だ」とノルドは力説していた。
(大丈夫だよ。それに関しては割り切ってるから)
《承知しました。ですが他にも問題はあります。私が錬成した武器を研究してもらうということは、研究が終わるまで武器を消滅させずに残しておくことになりますよね?》
(まあ、そうだね。途中で武器が消えちゃったら研究にならないだろうし)
《戦いの際は、戦闘が終了した時点で武器を消滅させればそれでいいのですが、仮にずっと残しておくとなった場合、リューオ様は継続的に消耗を負ってしまうんですよ。スリップダメージのようなものだと思ってもらっても構いません。その消耗は大丈夫なのか、という不安があるわけです》
(うわ、そういうことか……難しいね……)
「あ、あの、リューオさん……? 大丈夫ですか……?」
声をかけられ視線を向ける。ウラナさんは困惑している様子だった。
「あ、ごめんなさい。頭の中で神級スキルと話してたんですよ。説明不足ですみません」
僕は言い、胸の前で両手を合わせて謝罪の意を示す。神級スキルの声が聞こえるのは僕だけ、という事実が気を抜くと頭から抜け落ちてしまう。
「なるほど、そういうことでしたか。やはり事前の情報通り、神級スキルとは脳内で会話が出来るんですね。それで、どういう会話をしてるんでしょうか?」
「うーん、それが……言いにくいんですけど、神級スキルはあまり錬成に乗り気ではないようで……」
正直に現状を共有すると、研究員の方々が「スキルに感情があるのか!?」「そんなの聞いたことないぞ……!」と俄かに騒ぎ始めた。おほん、とウラナさんが咳払いをすると、瞬時に喧騒が収まる。
「神級スキルの感情云々は一度置くとして、取り敢えず武器を錬成していただきたいのですが、なんとかならないでしょうか……?」
ウラナさんは懇願するような口調で言った。まあ、そうお願いするのは当然だろう。この実験は、僕が武器を錬成しないことには何も始まらないのだから。
(ほら、ウラナさん困ってるじゃん! いいから武器を錬成してよ! 消耗は我慢するから! 頼むよ、いつもやってることじゃんか!)
《……仕方ないですね。では武器を錬成します。武器の品質や性能は如何いたしますか?》
ウラナさんに聞いてみると、「武器としての最低限の性能は担保されつつ、1番性能が低く、錬成の負担が少ない武器でお願いします」とのことだった。
(だそうです)
《承知しました。では0.2秒で<ノーマルソード>の錬成が完了します》
神級スキルの声が聞こえた次の瞬間には、僕の右手に一対の剣が握られていた。おおお、という歓声が研究室内に響き渡る。
なんだ今のは、速すぎて見えなかったぞ、どういう原理なんだ、などなど、様々な反応が聞こえてきた。
「いざ目の前で見ると、実に不思議なスキルですね……無から武器を錬成するなんて聞いたことがない……ではリューオさん、その剣を研究のために提供していただけますか?」
「勿論です、どうぞ」
僕はウラナさんに剣を差し出した。ウラナさんは慎重に剣を受け取ると、「リューオさんが提供してくれたこの剣を無駄にするな! 研究開始! 手筈通りに動け!」と叫んだ。
その叫びが引き金となり、大量の研究員が一斉に動き始めた。剣を詳細に観察する人、何かを記録している人、書物で情報を確認している人。傍目からでもひしひしと伝わってくる、研究に対するとてつもない熱量に僕は圧倒されていた。
「では次にヒアリングを行いましょう。こちらに移動してください」
先程叫んでいた時とはまるで違う穏やかな口調で、ウラナさんは僕に声をかけた。指示に従い、机と椅子がある場所に移動する。
まず僕が椅子に座り、テーブルを挟んでその向かいに3人が座った。3人の内1人がウラナさん、あとの2人は見たことがない。
片方の男性はきっちりとしたスーツを着ている若い男性、もう1人は黒いチュニックや革のエプロンを纏っている壮年の男性だ。
「はじめましてリューオさん、私はコミ・アルンマと申します。国会議員です。よろしくお願いします」
「俺はジカヤ・スイアン。冒険者の武器を作ることを生業にしてる職人だ。ミラエルの剣を作ってるのもこの俺ってわけだ。よろしくな」
2人の男性が僕に自己紹介をしてくれた。議員と職人、まさに見た目通りって感じだ。
その後のウラナさんの説明によって、2人とも僕とコンタクトを取ることを強く望んでいたことを教えてもらった。
コミさんは国会議員として、フェアード教団が暴れているこの現状を政治の側面からなんとかしたいと強く思っており、僕と話すことで情報を得たいようだ。
一方のジカヤさんは武器職人として、ミラエルの剣が戦闘の際に壊れてしまったことを強く気にしており、職人としてより強靭な武器を作りたいと思っている。僕から情報を得て、武器作りに役立てたいらしい。
研究員のウラナさん、議員のコミさん、武器職人のジカヤさん。3人とも立場は違えど、それぞれの目的のために僕と向き合い、現状を変えようとしていることがひしひしと伝わってきた。
その熱に感化されるように、僕は求められるままひたすら話しまくった。神級スキルのこと、今までの戦いこと、それを通じて気付いたこと、気になることなどなど。
時に3人と議論を交わすこともあった。思えば他人とこんなに真剣に話すのは久しぶりかもしれない、と思うくらい僕は真面目に取り組んだ。
「ふう、かなり話し合えましたね。リューオさんが真剣に取り組んでくれているのが非常に嬉しいです。ここで一度休憩にしましょう」
ウラナさんはそう言い、額の汗を拭って立ち上がった。僕はテーブルの上のコップの手を伸ばし、お茶で喉を潤す。
「なかなか熱いモンを持ってるじゃねえか、坊主。気に入ったぜ」
ジカヤさんは僕を見て言い、口角を上げた。
「いえ、そんなことないですよ。普通です」
「そうか? 色々なことについて熱く語ってたじゃねえか。10代のガキにしちゃあ頭が切れる方だと感じたが、議員さんはどう思うよ?」
ジカヤさんは威勢の良い口調で話し、コミさんに視線を向ける。さっき沢山話して分かった。ジカヤさんは癖が強い系の人だ。
「頭が良い人だと感じましたよ。リューオさんなら信頼出来る、とも思いました」
一方のコミさんの口調は対照的で、どこまでも丁寧だ。物腰が柔らかくスマートな感じで、いかにも優秀な議員って感じがする。
「それでは休憩はここまでにして、話し合いの続きを……」
「皆さん! 緊急速報です!」
戻ってきたウラナさんが声を発したその瞬間、研究室の扉が開け放たれ、叫び声と同時に1人の女性が入ってきた。ネミア救出作戦の直前に会ったことがある、赤髪の女性だ。
「あの、今は大事な研究中で……」
「それは分かってますけど、こっちも大事なお知らせを持ってきたんですから!」
ウラナさんに声をかけられた赤髪の女性は、両手を拳にして胸の前でぶんぶん振っている。なんだか元気な人だ。
「いいから聞いてください! 6階層の襲撃事件以降、ずっと意識を失ってたユミナ・ブルークイーンが、ついさっき目を覚ましたんですよ!」
※第47話は2026年5月18日の午後8時40分に投稿します。お楽しみに。
ポケポケ最高です。現在私はセレナのアイコンを手に入れるために紅蓮ブレイズを引きまくってます。
セレナは髪型と服装が変わった後の方が好きですね。ショートカットの方が好きだから!




