第45話 我慢
「……マジか……流石に無防備すぎるって……」
思わず僕は呟く。まさかこの状況でミラエルが寝てしまうとは思わなかった。
眠ってしまうほどリラックス出来ていた、と思うとなんだか嬉しいが、それはそれとしてこの状況は非常に問題だ。
「ここで僕が手を出したらどうするつもりなんですか、全く……」
呆れ混じりに呟く僕の視線が、無意識の内にミラエルの胸に移動していく。
(これはしょうがないでしょ! こんなにかわいい人がこんなに無防備な姿を晒してたら、胸を見ちゃうって! これは男の性だから! 決して僕が変態ってわけじゃないから!)
心の中で、誰に対してでもなく言い訳をかましてみる。
ミラエルが来ている黒のパーカーは、女性特有の胸の膨らみが際立つ構造にはなっていない。だが、それでもミラエルの胸の大きさ、膨らみははっきりと視認出来る(巨乳だからね)。綺麗な形をしたその膨らみは、あまりにもえっちだ。
「…………」
ミラエルの胸から目を離せない。ミラエルの体を軽く揺すってみるも、目を覚ます気配は全くない。ごくり、と僕は唾を飲み込む。
「…………いや、駄目だ! これは人として絶対に駄目だ、我慢我慢……!」
ミラエルの胸にすーっと伸びかけた右手を、左手で押さえながら僕は声を漏らした。
同意なく女性の体に触れるのは完全にアウトだ。そんなことをしたらミラエルに幻滅されるだろう。気付かれなければオーケー、ではないはずだ。
僕はミラエルの胸から視線を逸らした。変な気を起こす前に、違うことを考えて気持ちを切り替えよう。ミラエルのことだったらなんでもいい。
「……父さんと母さん、マミは元気かなぁ」
ミラエル以外のことで、ぱっと思いついたのは家族のことだった。
田舎で小さな飲食店を営む両親と、夢を叶えるために専門学校で勉強している妹。冒険者を生業にすべく、実家を飛び出してから数年が経った。家族とは全く顔を合わせていない。
最後に手紙でやり取りをしたのも1年くらい前だ。気炎万丈に所属していた時は辛いことばかりで、そんなことを報告しても心配をかけるだけだと思い、積極的に手紙を書いたりはしなかったし。
「家に帰るのは難しいけど、手紙でも出してみるか」
思いついたことを呟き、我ながら名案とばかりに僕は頷いた。
聖帝騎士団に入団したこと、序列2位のかわいくて強くて天然な冒険者と友達になったことを報告しよう。きっと驚いて、そして喜んでくれるはずだ。
ふう、と僕は息を吐いた。家族のことを思い出したことで、ようやく気持ちが落ち着いてきた。それに呼応するように、眠気がじんわりと僕を襲う。
「……このまま寝ちゃうか」
依然ミラエルと密着したままだが、もういいや、と僕は思った。ミラエルを放置して部屋から出て寮に戻るのはなんか違う気がするし、「……そんなに私といるの嫌だった……? だから帰ったの……?」と後に悲しまれでもしたら困る。
それに、ミラエルとこうして一緒にいられるのは嬉しい。幸せだ。予期せぬ舞い降りた幸福を目一杯享受することにしよう。
僕は壁のスイッチの手を伸ばして部屋の電気を消し、目を瞑って体から力を抜いた。
ミラエルの体温を感じながら、ミラエルと触れ合える幸せを噛み締めながら、僕の意識は暗闇へと沈んでいった。
※第46話は2026年5月17日の午後3時40分に投稿します。お楽しみに。段々タニからヤマへ移っていきます。
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