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パーティーから追放された僕の最弱スキル『武器強化』が、気付いたら最強スキル【武器錬成】に進化していた件  作者: 五月雨前線
第2章

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第44話 何がまずいの?

※第42話の終了時点の続きです

【リューオ視点】



「ちょ、あの、流石にこれはまずいですって……!」


 我慢出来ず、僕はミラエルに声をかけた。さながらバックハグをしている今の構図は、ラインを超えているような気がしたから。


「何がまずいの?」


 ミラエルは僕に視線を向け、首を傾げている。距離が近い。あまりにも距離が近い。少しでも気を抜くと変な気を起こしてしまいそうだ。


「えっと、それは、その……」


 何で、と聞かれると上手く言葉が出てこない。ごにょごにょと口籠る僕を尻目に、「昔を思い出すなぁ」とミラエルはしみじみとした口調で言った。


「昔ね、お父さんとよく剣術の稽古をしてたんだけど、それがあまりにも厳しくてさ。本当に辛くて、稽古終わりによく泣いてたんだよ。そういう時によくお母さんが、こうやって私を後ろから抱きしめてくれて、ミラエルは偉いね、すごいね、って言ってくれた。そうしてもらえると、すーっと心が落ち着いて、元気が出た。だから今、同じことをリューオにやってほしいなぁって思ったんだよ」


 そういう経緯があったんですね……なんて冷静に言葉を返せる状況じゃない。幾らなんでもこの状況はやばすぎる。

 触れ合う部分からミラエルの温かな体温が伝わってくる。そして仄かに甘い匂いが鼻腔をくすぐる。香水をつけているのだろうか。

 さらに、ミラエルの微かな息遣いが至近距離から聞こえてくるのだ。とんでもなく恥ずかしい。理性を保つので精一杯だ。


「あ、それ……」


 その時、フードの袖から出ているミラエルの手首に、紫色の染みのような何かがあることに気付いた。今の今まで気付かなかったそれの発見に、思わず僕は声を漏らしてしまう。


「やっぱり気付いちゃうか、そうだよね。八鬧と戦った傷痕、もしくは後遺症って言えばいいのかな、そんな感じ」


 ミラエルはパーカーの袖をまくって僕に見せた。右手の手首から二の腕にかけて、紫色の火傷痕のようなものが刻まれている。


「ブレスの中を突っ切ったりとか、ちょっと無茶しすぎちゃったよ。治療部門の人たちは頑張って治してくれたんだけど、この傷痕だけはどうにもならなかったみたい」


 ミラエルは苦笑を浮かべながら言う。一方の僕は、緊張と恥ずかしさでうまく言葉を返すことが出来なかった。


 そのやり取りの後も、緊張でガチガチに固まり続けている僕を不審に思ったのか、ミラエルは「……もしかして、私とこういうことするの、嫌?」と問いかけてきた。その声音には、不安や怯えが微かに滲んでいるように聞こえた。


「い、嫌じゃないです! 決してそういうわけではないんです! ただ……こういうことに全く慣れてないので、緊張してしまうというか、なんというか……」


 隠してもしょうがないと腹を括り、僕は正直に気持ちを打ち明けた。「緊張、か。そうだよね」とミラエルはやわらな笑みを讃えながら言う。


「嫌じゃない、って言ってくれたことが嬉しいし、リューオが私と同じ気持ちだって分かったのも嬉しいな」


「同じ気持ち?」


「うん。私も今すごく緊張して、ドキドキしてるもん」


 恥ずかしげに言うミラエルの頬は赤く染まっている。その恥じらいの表情もまた、とんでもなくかわいい。僕は何回ミラエルに見惚れれば気が済むんだろうか。


「なんだか心がぽかぽかして温かい感じがする。こんな気持ちになったのは久しぶりだよ。1ヶ月くらい前までは全くの他人だったリューオに、今こうやって優しくしてもらってるんだから、人生って不思議だよね」


 ミラエルは僕に全身を預け、リラックスしながら言葉を紡いでいる。

 一方の僕はというと、心臓が押し潰れそうなほどの極度の緊張や恥ずかしさは少しずつ収まっており、代わりに新しい感情が芽生え始めていた。


 その感情について、本や雑誌で読んだことはあった。なんとなく知識は頭に入っているつもりだった。とはいえ、僕は今までの人生で、他人に対して本気でその感情を抱いたことがなかった。だからいまいち勝手が分からなかったのだ。

 その感情が芽生えたこと自体に、僕は驚きを抱いていた。自分で自分にびっくりする、というのも不思議な話だけど。


 ついさっきまで抱いていた、緊張と恥ずかしさからくるそれとはまた少し違う、胸の高鳴り。その感情に赴き、素直に行動するか少しだけ迷った。こんなことしたら駄目かもしれない、嫌われたらどうしよう、と。


 でも、そんなこと考えてもしょうがない、と吹っ切れた。「自然体でリラックス」、神級スキルからのアドバイスだ。自然体、それすなわち、芽生えた感情に素直に向き合うってことなんじゃないだろうか。


 今芽生えた感情が、一過性のものなのか、それとも本物なのかは分からない。そもそも経験が無さすぎて何も分からない。どうせ分からないなら……心の赴くままにやってみよう。 僕はミラエルの腰にそっと両腕を回し、軽く力を入れてみた。


「っ……」


 するとミラエルは小さく息を呑んだ。しかし拒絶することはなく、むしろ僕の腕にそっと自分の腕を絡めてくれた。その反応が何よりも嬉しかった。


「……前までは、休養から復帰することが怖かった。聖帝騎士団の団長として、SSランク冒険者のミラエル・ソードフレアとして、これからちゃんと戦えるのかどうか不安だった。でも、今はもう怖くない。だって今の私には、支えてくれるリューオがいるからね。私はリューオのための戦うよ。そう思うと、なんだか勇気が湧いてくるからさ」


 ミラエルはそう言ってくれた。僕は言葉を返す代わりに、ミラエルを抱きしめる力をほんの少しだけ強くした。


 会話が途切れた。お互いの微かな息遣いだけが聞こえる。なんだか少し眠たくなってきた。それくらい今の僕はリラックスしていて、穏やかな気持ちになっていた。


「……まずい、寝ちゃうところだった」


 どれくらい時間が経っただろうか。眠気が強まって目を閉じかけたところで、僕はぶんぶんと首を振って呟いた。


 さすがにここで寝てしまい、夜を明かすのはまずいだろう。キリがいいタイミングで帰らないと、だよね。


「あれ? ミラエル?」


 様子がおかしいことに気付き、僕はミラエルに声をかけてみた。返答はない。ミラエルの目は閉じ、微かに口が開かれている。呼吸に合わせて僅かに胸が上下していた。


 ……寝てる?


 え、うそでしょ、寝てるのっ!?!?


※第45話は2026年5月16日の午後7時20分に投稿します。お楽しみに

今からZOZOマリンスタジアムに行きます!


連勝するぞ!


マリーンズファイティン!


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