第42話 リューオとミラエル
これはやばい。やばすぎる。
普段からあれだけ美しいのだから、オフのミラエルはとんでもなくかわいいんだろうと予想はしていたが、目の前のミラエルはその予想を遥かに超えてきた。
リラックスモードのミラエルは、なんだかめちゃくちゃかわいい(語彙力)。いや、かわいいとしか言えないってこんなの! 絶妙に髪が乱れてる感じがなんか……やばい(語彙力)。
そして極め付けはオーバーサイズのパーカーだ。サイズが大きい故に、まるでパンツやズボンを履いてないように見えている。控えめに言ってかなりエロい。あまりにも刺激が強すぎる。
「どうしたの?」
一向に声を発さない僕を、ミラエルは不思議そうに見つめている。
「……あ、いや、えっと、なんでもないです」
貴方に見惚れていて言葉が出ませんでした、なんて言えるわけがない。ここは適当に誤魔化しておくことにする。
「リューオ、その袋は何?」
ミラエルは僕が手に持っている袋に視線を向けて言った。
「クッキーとチョコレートです。こういうのを持っていったら、ミラエルは喜んでくれるかなと思ったので」
「え、ほんと!? 私のためにわざわざ買ってくれたの!? 嬉しいなぁ……私甘いもの大好きなんだよ!」
えへへ、とミラエルは嬉しそうに笑う。神級スキルのアドバイスは間違っていなかったようだ。感謝しかない。
そしてミラエルの話し方がいつもと明らかに違う。いつもの厳格な話し方とのギャップがすごい。これが本来のミラエルの姿なのだろうか。
「立ち話もなんだから、取り敢えず入ってよ」
「あ、はい、お邪魔します……」
ミラエルはドアの鍵を閉めると、手で部屋の奥を指した。心臓が破裂しそうなほどの緊張を覚えながら、僕はおずおずとミラエルの部屋へ足を踏み入れる。
聖帝騎士団の団長の部屋は、予想よりもずっと質素だった。寮の僕の部屋と大きさはそこまで変わらない。リビングの中央にはテーブルと椅子が置かれており、端には冷蔵庫とキッチン、食器棚が鎮座している。
「奥の私の部屋で話したいんだけど、来てもらっていいかな?」
「大丈夫です」
「ありがとう。……こういうの初めてで、なんか緊張しちゃうなぁ」
照れくさそうに笑うミラエルは、かわいい、というありきたりな言葉では表現出来ないくらいかわいくて美しかった。僕はおずおずとミラエルの後に続く。
ミラエルの部屋は、いかにも女の子の部屋、という感じだった。全体が白で統一されていて、机に椅子、本棚、ベッド、カーテンがかかった窓等が視界に飛び込んでくる。
「ここ、来てほしい」
ミラエルはベッドに腰掛け、その隣を手でぽんぽんと叩いている。心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うくらいドキドキしながら、僕は指示通りミラエルの隣に座った。
「……改めて、色々ごめんね。私ってわがままだよね。リューオは2週間ぶりに目を覚ましたばかりなのに、リューオの気持ちを考えずにいきなり抱きついて、挙句自分の部屋に呼びつけちゃったから……」
「い、いえ、そんな、わがままだとは思ってませんよ。そういう風には、絶対に思ってませんから」
申し訳なさそうに言うミラエルに対して、緊張を覚えながらも僕は言葉を返した。「……ありがとう、リューオは優しいね」とミラエルは微笑む。ぐうう、かわいすぎる。
「それ、もらっていいかな?」
「も、勿論です。どうぞ」
ミラエルに言われ、僕はクッキーとチョコレートが入った袋を差し出した。ミラエルは袋を開け、容器の中からチョコを1つ指でつまみ、そっと口に含む。
「美味しい……! 美味しいよリューオ、本当にありがとう。まさかこんなことをしてくれるなんて思ってなかったよ」
「いえ、そんな……ミラエルが喜んでくれたなら僕も嬉しいです」
お菓子のプレゼントは神級スキルの発案で、僕はそれに従っただけなので、お礼を言われると少し複雑な気持ちになってしまう。
「リューオはとにかく優しいよね。優しすぎるくらい。こんなに優しい人を、私は今まで見たことがないよ」
「そんなことないですよ、普通です」
「そうかなぁ……あ、ごめん、今更だけど、私の喋り方違和感ある? 普段のは、騎士団の団長としてしっかり振る舞うために意図して作ってる喋り方で、今のこれが素の喋り方なんだけど……リューオが嫌だったら普段の喋り方に戻すよ」
「嫌じゃないです。大丈夫です。普段の喋り方も、今の喋り方も、どっちも素敵だと思ってるので」
「……! ……やめてよ、そんなこと言われたら照れちゃうよ……」
思ったことを素直に言葉にしてみると、ミラエルは恥ずかしげに言い、視線を逸らしてしまった。
「…………」
「…………」
部屋の中に沈黙が流れる。恋愛経験は全然無い僕だけど、こういう時は僕から積極的に話題を振った方がいいことくらいは分かる。
分かってるんだけど、緊張で言葉が出てこない……! いや、神級スキルの言葉を思い出せ。自然体、リラックス、自然体、リラックス……!
「ミラエルは、ソードフレア家に伝わる絶技というものを使って、八鬧を追い詰めたんですよね。ノルドから聞きました。あんなに強かった八鬧とたった1人で戦い抜いたミラエルは、本当にすごいと思います」
「……私は何もすごくないよ。だって、八鬧を倒し切ることが出来なかったから」
咄嗟に思いついた話題を口にしてみたものの、返答するミラエルの声音は少し暗かった。ま、まずい、地雷を踏んだか? 僕の背筋に冷たいものが走る。
「あの時、ノルドたちが助けに来てくれるのがあと数秒遅かったら、私は間違いなく八鬧に殺されてた。リューオとユミナ、キュオルが命を賭けて私に2本の剣を届けてくれて、その剣で戦って、絶技まで使ったのに、倒せなかったんだよ。……私は聖帝騎士団の団長なのに……本当に情けないよ……」
「情けないって、そんな……」
「八鬧を倒しきれなかったことが本当に悔しくて……情けなくて……こんなに弱い私は、聖帝騎士団の団長に相応しくないんじゃないか、って……思ってて……この先、ちゃんと戦っていける気がしなくて……八鬧よりもっと強い敵と戦ったら死んじゃうんじゃないかって思うと……不安で……苦しくて……」
言葉を絞り出しながら、ミラエルは泣き出してしまった。一つ、また一つとミラエルの頬を大粒の涙が伝う。
体を震わせながら、静かに涙を流すミラエルを目の当たりにして、僕の胸がきゅううっと締め付けられた。
目の前で悲しみに打ちひしがれている女の子を、なんとかしてあげたいという思いがどんどん強くなり、膨れ上がっていく。僕は意を決してミラエルに体を近づけ、ミラエルの肩にそっと手を置いた。
「駄目です。そんな風に考えちゃ駄目です」
「…………」
「八鬧は規格外の強さを誇る怪物でした。13階層に現れたミノタウロスや11階層で戦ったミュルヴォよりも強かった。そんな怪物と、ミラエルはたった1人で互角以上に戦い抜いたんです。2週間前の戦いで勝利出来たのは、紛れもなくミラエルのお陰です。どれだけ強力な武器を錬成しても、その武器を使って敵を倒さないと意味が無いですから。1番凄かったのは、他ならぬミラエルなんです。だから自分を誇ってください。自分を卑下しないでください。過剰に未来を悲観しちゃ駄目です。……ミラエルが悲しんで泣いてるところを、僕は見たくないです。大丈夫です、絶対に大丈夫ですから」
「……リューオ……」
ミラエルに涙混じりの上目遣いで見つめられ、どくん、と僕の心臓が跳ねた。
「……そんな風に私に寄り添ってくれるのは、リューオだけだよ」
指で涙を拭いながら、ミラエルはそっと呟いた。
「ありがとう。少し元気出た」
「それならよかったです」
「……えっと、お願い続きで申し訳ないんだけど、もう1つだけお願いしてもいいかな……? 昔お母さんにしてもらったことを、今、リューオにやってほしくて……そうすれば、もっと元気が出せる気がするから……」
ミラエルは体をもじもじさせながら、ゆっくりと言葉を紡いでいる。断る理由なんてあるはずがない。
「大丈夫です。僕に出来ることは何でもやりますよ」
「……ありがとう。じゃあ、壁に背中をつけて座ってもらっていいかな。足を広げる感じで」
ミラエルの指示に従い、僕はベッドの上で壁に背中をくっつけるようにして座り直した。
「えっと、次はどうすれば……」
「よいしょ、っと」
流れが分からず戸惑う僕にミラエルは近づき、僕の胸板に自分の背中を押しつけるようにして座った。ミラエルが僕の足の間に座り、すっぽりと収まるような構図だ。
「え、あの、これは……!」
「はあ……こうしてもらえると、やっぱり落ち着くなぁ……」
予想外の事態に動揺を隠せない僕にミラエルは体を預け、深く息を吐いてリラックスしている。
これ……ほぼバッグハグじゃんっっっ!!
※第43話は2026年5月14日の午後5時50分に投稿します。お楽しみに
ポケポケが面白過ぎてつい課金をしてしまいました、どうも五月雨前線です。
カイリューデッキに不可欠なカードが何枚か見つかったので、そのカードを入手するべく毎日コツコツプレイしていこうと思います。
自分が昔やってた頃のハクリューと、最新のハクリューでは性能が違うんですよね。最新のハクリューは、なんと要求エネ1で2つのエネルギーを加速出来るぶっ壊れ技を使えるとついさっき知りました。そんなん手に入れて使うしかないやん!
カイリューファイティン! そしてロッテもファイティン!




