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パーティーから追放された僕の最弱スキル『武器強化』が、気付いたら最強スキル【武器錬成】に進化していた件  作者: 五月雨前線
第2章

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第38話 教団の本質

【リューオ視点】


「リューオ、おまっ、いつの間に!?」


 びくん、と僕は体を震わせた。びっくりした。誰かが病室にいるようだ。この声は……ノルドだ。


「あ……ノルド……」


 僕は声の方向に視線を向ける。案の定、そこには戦闘服を纏ったノルドが佇んでいた。


「悪い、声がでかかったな。ついさっき目を覚ました感じか? まあ、なんにしろ目が覚めてよかったよ。リューオは2週間目を覚まさなかったからな……」


 ノルドは僕が横たわるベッドに歩み寄り、表情を崩す。


「2週間……?」


「ああ。6階層でフェアード教団の八鬧と複数の戦闘員が現れた事件から、ちょうど2週間経ってる」


 フェアード教団。八鬧。その言葉を聞くと同時に、眠っていた記憶が次々と脳裏で蘇っていく。

 八鬧の出現。ユミナの神級スキルの覚醒。僕は2本の剣を持ってミラエルとキュオルの元へ走り、キュオルに剣を渡したところで意識が途切れて、そして……


「八鬧!! 八鬧はどうなったんですか!? ミラエルは八鬧を倒せたんですか!?」


 僕はベッドから跳ね起き、叫んだ。直後、胸の苦しさを感じて激しく咳き込む。


「リューオ、落ち着け。今から全部説明するから。ほら、これ飲めよ」


 ノルドは僕の背中をさすった後、ベッドサイドテーブルの上に置いてあった容器を僕に差し出した。中には黄金色の液体が入っている。


 容器を受け取り、傾けて液体を口に含むと、清涼感のある果実の味が口いっぱいに広がった。不思議な味だけど、なんだか美味しい。そのままごくごくと液体を飲むと、ようやく咳が治まった。


「すみません、落ち着きました」


「大丈夫だ。よし、あの後の事を説明するぞ」


 ノルドはベッドの傍らに置いてあった椅子に腰を下ろす。僕は姿勢を正し、ノルドの話に耳を傾けた。


 神級スキルの能力を限界まで使って気を失った僕とユミナを、キュオルは安全圏まで運んでくれた。とはいえキュオルの消耗も激しく、安全圏まで逃げた後にキュオルも気を失った。3人で気絶して固まっている所を後に助けてもらったらしい。

 そして、僕たちが託した2本の剣でミラエルは戦い、ソードフレア家に伝わる絶技まで使用して八鬧を追い詰めたが、倒し切るまでには至らなかったようだ。土壇場でノルドたちが駆けつけ、ノルドが八鬧に止めを刺し、教団の残党も全員殺すか捕虜にするかをして、事件は終息を迎えたらしい。


「……そんな……ミラエルが、絶技まで使用して戦ったのに、八鬧を倒し切ることは出来なかったんですか……?」


「まあ、そういうことになるな」


 僕の呟きに、ノルドは苦々しい表情を浮かべながら言葉を返す。

 仮に、ノルドたちの到着がほんの少しでも遅れていたら、ミラエルは殺されていたかもしれない。そう思うと背筋に冷たいものが走った。


「説明を続けるぞ」


 その後、僕たち4人は騎士団本部の病院に運ばれて治療を受けた。キュオルは1週間前、ミラエルは昨日目を覚ました一方、ユミナはまだ目を覚ましてないようだ。

 2週間前の事件の情報はメディアを通じて世間に広く届けられた。勇敢に戦い抜いたミラエルを賞賛する声が多く、聖帝騎士団の評価がさらに上がったらしい。


「まあ、これはあくまで表向きの側面に過ぎないんだがな」


「表向き? どういうことですか?」


「口で説明するよりも、実際に見てもらった方が……お、あったあった。リューオ、これを読んでみてくれ」


 ノルドは病室の壁際の新聞棚に視線を向け、棚から新聞を1部取り出して僕に手渡した。受け取り、僕は新聞に目を通す。


「フェアード教団の刺客、八鬧が死に際に残した言葉についての考察……現代社会へ一石を投じる言動との見方あり……フェアード教団の本当の価値とは……な、何ですかこれ? フェアード教や八鬧の肩を持つような記事じゃないですか」


 文章を目で追っていた僕は思わず眉を顰めた。


「その新聞を出してる新聞社は、大手と比べると小規模で、なんというか、少し思想が強めの新聞社なんだ。勿論、他の大手の新聞ではこんなこと書かれてないぞ」


「そうなんですね、よかった」


「だからといって見過ごすことは出来ない。こういう新聞が発行されているのもそうだし、自警団曰く、フェアード教団の思想に賛同する人が少しずつ増えているそうなんだ。厄介なことだ」


 はあ、とノルドは溜め息をつく。


「うーん……フェアード教団はどう考えてもヤバい団体だと思うんですが……」


「教団と戦ったことがある俺やリューオからすれば、当然そういう見方になるが一般人は違う。教団の悪い側面を肌身で体験してないから、教団の本質が分かってないんだよ。それに、『不平等を是正して新世界を作る』っていう教団の思想は、社会問題やら何やらで苦しんでる一般市民からすれば耳障りが良いんだろうな。人間は生まれながらに差がつくので不平等、という主張も一応的を得ているし」


「なるほど……難しいですね」


「入るよ……って、リューオ!! いつ目を覚ましたんだい!!」


 その時ドアが開き、ナース服を纏った2人の女性が病室に入ってきた。2人の内、恰幅のいい方の女性が驚きの声を上げる。

 ……ああ、思い出した、恰幅がいい女性はスーナ・リズマさんだ。以前病室で言葉を交わしたことがある。もう一方、スレンダーな若い女性は見覚えがない。


「スーナさん、お疲れ様です。リューオはついさっき目を覚ましたんですよ」


 ノルドは椅子から立ち上がり、小さく会釈した。そんなノルドにスーナさんはずんずんと歩み寄っていく。


「ついさっき? ついさっきって具体的にいつなんだい」


「ええっと、20分前くらいですかね」


「その時から今まで、ノルドは何をしてたんだい」


「リューオと色々話してました。2週間前から今に至るまで何があったか、とか……」


「何で真っ先にリューオが目を覚ました事を報告しないんだい、どアホ!!!」


「あいたっ!!!」


 スーナさんは突然、ノルドの肩をかなり強めにどついた。ノルドはどつかれた箇所を手でさすりながら、「すみません……」と苦笑を浮かべている。


「全く……腕は立つのに、そういうところは相変わらず馬鹿だね……これで一家の父なんだから聞いて呆れるよ……」


 突然の出来事に唖然とする僕の前で、スーナさんは呆れた口調で言った。


「アンタ、リューオが目を覚ましたことを皆に伝えてきな」


「はい、分かりました!」


 スーナさんがスレンダーな女性に指示を出すと、女性は勢いよく部屋から出て行った。スーナさんは僕に視線を向け、「何はともあれ、目が覚めて本当に良かったよ」と言う。


「2週間前は本当に酷い状態だったからね……って、何だいその顔は」


「あ、いや、なんというか、ノルドがこういう感じになるのを初めて見たのでびっくりしちゃって……」


 僕がおずおず言うと、「がっはっはっは、何だいそれは!」とスーナさんは豪快に笑った。


「私とノルドは長い付き合いなんだよ。こういうやりとりは日常茶飯事さ。そんなことより、体の調子はどうだい?」


「えっと……なんとなく大丈夫そうです。お陰様で」


 僕は両腕を軽く回し、体を見下ろしながら答えた。スーナさんは医療機器に目を向け、「うん、確かに数値に異常はないね」と呟く。


「私たちが全力で治療したとはいえ、あの状態から2週間でここまで回復するとはねえ。若さって素晴らしいとは思わないかい、ノルド」


「はい、仰る通りです……」


 先程どつかれたのが効いてるのか、スーナさんに話しかけられたノルドはなんだかオドオドしている。こういうノルドを見るのはとても新鮮だ。


「しっかしまあ、リューオはすごいねえ本当に。ユミナっていう女の子と協力して、ものすごい性能の剣を2本錬成したんだって? 命懸けの錬成だったらしいじゃないか。よく頑張ったねえ、偉いよ」


 スーナさんは穏やかな笑みを讃えながら言い、僕の頭を優しく撫でてくれた。そういう風に言ってもらえるとなんだか嬉しい。


「ありがとうございます。よいしょ、っと」


「ちょちょ、急に立たない方がいいよ。目を覚ましたばかりなんだから」


 徐にベッドから立ち上がった僕に、スーナさんは心配そうな表情を向けてくる。


「分かってます。でも、なんか体の調子が良いんですよ」


「おやまあ、そうかい。その若さが羨ましいよ。私は……」


「リューオっっっ!!!!!!!」


 その時、叫び声とともに病室のドアが勢いよく開け放たれた。あ、ミラエルの声だ、と思った次の瞬間、僕は部屋に飛び込んできたミラエルに抱きつかれていた。



※第39話は2026年5月10日の午後5時10分に投稿します。お楽しみに

今からZOZOマリンスタジアムに行って2軍戦観てきます!!!


マリーンズファイティン!!!


石垣くんファイティン!!!

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