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パーティーから追放された僕の最弱スキル『武器強化』が、気付いたら最強スキル【武器錬成】に進化していた件  作者: 五月雨前線
第2章

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第37話 言い出しっぺ

※レインの喋り方を微修正しました

【ノルド視点】


 6階層に、九重塵羅の八鬧を名乗る怪物とフェアード教団の複数の戦闘員が出現した事件から、ちょうど2週間が経過していた。


 八鬧にとどめを刺したのはこの俺だが、あそこまで弱っている敵の息の根を止めたことなんて凄くもなんともない。

 凄いのは、八鬧を単独で瀕死まで追い詰めたミラエル様、神級スキルの力を以て極めて強力な武器を錬成したリューオとユミナ、そして常に3人をサポートしていたキュオルだ。


 ユミナはなんと、土壇場で神級スキル『超回復』を開眼し、そのお陰で八鬧を追い詰めうる性能の剣を2本錬成出来たのだと、1週間前に目を覚ましたキュオルが力説していた。

 まさに奇跡としか言いようがない出来事だが、その奇跡を踏まえても尚、本当にギリギリの状況だった。俺たちがあの場に辿り着くのがあと数秒でも遅れていたら、ミラエル様は八鬧に殺されていたに違いない。


 この一連の事象が示す事実はすなわち、「敵は極めて強大な存在である」ということだ。フェアード教団は最早、俺たちの存在を脅かしうる紛れもない「脅威」。これ以上教団の蛮行による被害者を出さないために、早急に手を打つ必要があるのは自明だ。

 その脅威にこれからどう対処していくかを話し合う会議が今、騎士団本部内の巨大な会議室で行われている。参加者は30人程度、俺のような戦闘部門の冒険者、騎士団の上層部の人間、国のお偉いさん方など様々な人間が集っている。

 

 ミラエル様は昨日目を覚ましたものの、ソードフレア家に代々伝わる絶技を限界まで使用した影響で酷く消耗していたため、俺が「会議に出なくていいので休んでいてください」と進言した。故にこの場にミラエル様はいない。

 ミラエル様は難色を示したものの、「いいから休んでください」と強めに言うと渋々受け入れてくれた。だいたい、ミラエル様はずっと働きすぎだった。この機会にしっかり休息をとった方がいい、と俺は強く思っている。


 尚、リューオとユミナはまだ目を覚ましていない。医療部門の人たちがスキルと医療技術を駆使して精一杯の治療は施していたのだが……。とても心配だ。


「えっと、先程も申し上げましたが……何か、意見がある人はいますでしょうか……? どんな意見でも大歓迎なので、是非……」


 司会を担当している、赤い髪の女が顔を引き攣らせながら言う。これだけ空気が重いのだから、顔が引き攣るのは当然だ。


 空気が重い理由は単純。会議に参加している全員は、この場で絶対に言わなきゃいけないことを分かってる。しかしそれを自分の口から言いたくない。誰かが言うのを待っている。だからここまで空気が重いのだ。


「はあ……」


 俺は盛大に溜め息をついた。気持ちは分かるが、誰かが勇気を出して言わないと話が進まないだろうに。しかし誰も言わない。誰も汚れ役を引き受けたくないのだ。

 ……しょうがない、ここはこの俺が言い出しっぺになってやるとするか。ミラエル様、リューオ、ユミナ、キュオルは2週間前、命を懸けて八鬧と戦った。それに比べれば言い出しっぺになるくらい些細なことだ。


「戦闘部門のノルド・ラローアです。意見というか、ここで話しておくべきだと思うことがあります」


「ひゃ、ひゃいっ! の、ノルドさん、ど、ど、どうぞっ!」


 俺が手を挙げて声を出すと、司会の赤髪があからさまにテンパリ始めた。何なんだこの女は……。


 大量の視線が俺に向けられる。俺は椅子から立ち上がり、深呼吸してから口を開いた。


「以前から違和感を感じていました。2週間前、何故フェアード教団は、6階層にリューオたちが足を運ぶことを知っていたのでしょうか? ご存知の通り、ダンジョンは全30階層で構成されており、各階層は極めて広大な面積を誇ります。加えて敵は、場所、更には日時までドンピシャで当て、リューオたちの前に姿を現しました。事前情報無しに出来る芸当だとはとても思えません。リューオたちがあの日、6階層でユミナのスキルの性能に関する実験を行うという情報を、事前に掴んでいたと考えるのが自然です」


「……つまり、何が言いたい?」


 近くに座る、国のお偉い方の老人がわざとらしく先を促してきた。言わなくてもとっくに分かってるだろジジイ、と思いながら俺は言葉を続ける。


「つまり……誰かが教団に情報をリークしていたのだと私は考えています。もっと踏み込んで言えば、こちら側の中に、教団の内通者が存在していると思っています」


 変に躊躇してもしょうがないので、全て言い切った。会議室の中の重々しい空気が揺れ、至る所から声にならない溜め息やら何やらが聞こえてくる。


「なるほど……実は私も同じことを考えていた。内通者がいるとしか思えないからな」


 騎士団の上層部のおっさんがそう言うと、堰を切ったように至る所から同調の声が飛んできた。先程までどいつもこいつも黙りこくっていたというのに。滑稽だ。


「内通者がいると仮定した場合、その内通者を排除しない限り、教団に情報が筒抜けになってしまいます。今ここで、内通者を特定し、排除するための施策を考案し、即座に実行する必要があると思います」


 俺がやや低めの声で言うと、喧騒はすぐに収まった。

 とはいえ、内通者の特定なんてすぐに出来ないことくらい重々承知だ。大事なのは「内通者を特定して必ず排除する」という意識を全体で共有すること。個々人が内通者の特定に尽力する以外道はない。


 その後、内通者を特定するための施策について議論が交わされたものの、案の定まともな施策は浮かんでこなかった。取り敢えず「内通者特定捜査本部」なる組織が臨時で設置され、俺がその組織に加わることになってしまった。めんどくさいが、しょうがない。


 会議は続き、最終的に「国会で改めて教団の強制解体命令の発令有無を議論すること」「リューオとユミナの神級スキルについて本格的に研究を進めること」「教団への対抗に伴い予算を拡充すること」「教団の本拠地を探る調査活動を実行すること」「引き続き教団の動向に注視すること」などが決定事項となり、会議はおひらきとなった。


「はあ……疲れた……」


「ノルド、先程はすまなかったなのう」


 会議室から退出していく参加者を横目に体を伸ばしていると、レインさんに声をかけられた。


「ああ、レインさん、お疲れ様です。内通者云々は俺に言わせないで、レインさんが言ってくださいよ」


 俺は苦笑混じりに言葉を返す。あの時レインさんは黙りこくっていたからなぁ……。


「言おう言おうとは思っていたものの、どうにも空気が重くてのう……ノルドに押し付けてしまったのが心苦しいわい」


「まあいいですよ、誰かが言わないといけなかったことですし」


「相変わらず頼りになる男じゃ。それにしても……内通者か、厄介なことになったのう」


 レインさんの視線が俄かに鋭くなった。その視線は、退出していく人々の背中に向けられている。


「こうやって俺たちを疑心暗鬼にさせて、内部崩壊を引き起こすのが敵の作戦の一種でしょう。考えすぎないことが重要だと思います」


「そうじゃな。儂はこれから任務に行くが、ノルドはこれからどうする?」


「次の任務まで時間があるので、リューオの病室に顔を出そうと思ってます」


「分かった、じゃあな」


「はい、ご武運を」


 俺はレインさんと別れ、リューオが眠っている病室に向かった。

 

 リューオとユミナは神級スキルの能力を限界まで使った代償で、筆舌に尽くし難い程消耗していた。キュオル曰く、リューオとユミナが命を賭けて神級スキルを使ってくれなければ、強力な武器を錬成することは叶わず、ミラエル様があそこまで踏ん張ることは出来なかったようだ。


 俺よりずっと若いリューオとユミナがあれだけ頑張ったのに、ベテランの俺は大した活躍が出来ていない。もどかしさを胸に秘めながら、病室に入る許可を得て、俺はリューオの病室に足を踏み入れた。


 白い壁、白いベッド、白い医療機器。ベッドに横たわるリューオは病衣を纏っていた。リューオは薄らと目を開け、天井に視線を向けている……って、ちょっと待ておい!


 リューオ、目を覚ましてるじゃん!!!!!


※第38話は2026年5月9日の午後7時20分に投稿します。お楽しみに

明日、ZOZOマリンスタジアムに行きます(唐突)。


何故か? ドラフト1位ルーキーの石垣元気選手が投げるからです!


石垣くんには非常に期待しています!


マリーンズファイティン!

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