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パーティーから追放された僕の最弱スキル『武器強化』が、気付いたら最強スキル【武器錬成】に進化していた件  作者: 五月雨前線
第1章

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第2話 神級スキル

「ミ、ミラエル・ソードフレア!?」


 僕は目を丸くしながら叫び、数歩後ずさった。


「どうした?」


「い、いや、どうした、じゃないですよ! 貴方はこんなところでエンカウントするレベルの人じゃないでしょ!」


 ミラエル・ソードフレアは僅かに首を傾げる。その仕草めっちゃかわいい……って、今はそれどころじゃない。


「金級スキル『聖剣』とその圧倒的な剣技で、バッタバッタと魔物を薙ぎ倒す序列2位のSSランク冒険者! 選りすぐりの冒険者集団『聖帝騎士団』で団長を務める女騎士! 強さと美しさを兼ね備えた、まさに高嶺の花! そんな人が僕みたいな底辺冒険者の前に突然現れるなんておかしいですって!」


「……その、私についての口上は何なんだ?」


「シャーベっていう元パーティーメンバーが貴方の大ファンだったので、こういう口上をよく聞かされてたんですよ! 僕が考えたわけじゃないので!」


 シャーベは相当ミラエル・ソードフレアに入れ込んでいた。たしか、ミラエル・ソードフレアを題材にした18禁の同人誌をどこかから買い付けてた気が……っと、本人の前で思い出すことじゃなかった。


「……あの、それで、ミラエルさんはさっき変なこと言ってましたよね? 僕の神級スキルがなんとか、って」


「さん付けは不要だ、ミラエルでいい。変なことではないぞ。君は神級スキル『武器錬成』の持ち主だ。だからこうして声をかけてるんじゃないか」


「何を言ってるんですか? 僕のスキルは白級の『武器強化』です。自分や他の冒険者の武器を強化するだけの最弱スキルですよ。というか、そもそも神級スキルなんて御伽話の類って言われるくらい珍しいじゃないですか。なのに、神級スキルがどうとかいきなり言われても……」


 そう言うと、ミラエル・ソードフレア……長いからミラエルでいいか、ミラエルは「剣を錬成したのは君自身じゃないか。何故か今はその剣が消えているが」とやや不満げに言った。少しだけ頬が膨らんでいる。かわいい。


「って、あれ? 剣が消えてる……」


 ミラエルの言葉通り、先程まで地面に転がっていたはずの剣は消滅していた。何だこれ? 幻を見ていたのだろうか?


「君のスキルは『武器錬成』で、先程君は剣を錬成した。君は神級スキルの持ち主なんだ。恐らく元のスキルが進化したのだろう。古文書にはそう書いてあったからな」


「?????」


 本当に意味が分からない。素直に「ごめんなさい。意味が分かりません」と返すと、ミラエルは「ふむ……」と言って腕を組んだ。


「じゃあもう一度やってみればいい。今ここで、何でもいいから武器を錬成してみてくれ」


「武器を錬成、って、どうすればいいんですか?」


「私に聞かれても困る。さっきと同じようにすればいいだろう」


「そんなこと言われても……というか、僕が貴方の言うことを聞く必要ってあるんですか?」


 思いついたことを口にすると、ミラエルは息を呑み、その後僅かに口を尖らせた。これまた仕草がかわいい。


「君は……少し意地悪な男だな」


「意地悪というより、意味が分からないだけですよ。急に天下の騎士団長様に話しかけられて、君のスキルは神級の武器錬成だ、武器を作れ、ぐはは、とか言われたら誰だって混乱しますって」


「ぐはは、とは言ってない」


「すみません」


「ふむ……しかし、君の言い分にも一理ある。こちらから何も提示せず、一方的に要求を突きつけるのは良くないな。母上の教えにも反する。よし、じゃあ君も私に何か要求したまえ。お互いがお互いに要求をして、それぞれ応える。これなら平等だろう?」


「はあ……」


 要求……ぱっと思いつくのは「胸を揉ませてください」だけど、さすがにそれはまずい気がしないでもない。うーん……あ、そうだ、こういうのはどうだろう?


「じゃあ、僕と友達になってください」


「……!」


 ミラエルは大きな瞳を見開き、両手で口を覆った。


(え、なんかまずいこと言っちゃったかな……?)


「ほ、本当か? 本当に私と、友達になってくれるのか?」


 ミラエルは何故か動揺しているように見えた。


「はい。パーティーを追放されたばかりで寂しかったので、なんとなく、友達が欲しいなぁと思って」


「そ、そうか、なるほど……よ、よし、では今から私と君は、と、友達だ……!」


 ミラエルは言い、おずおずと右手を差し出した。一拍遅れて僕も右手を差し出し、握手を交わす。ミラエルの手はほんのりと温かった。

 こうして、僕は聖帝騎士団の団長と友達になった。……何だこれ? さっきから怒涛の展開が続いて理解が追いつかない。


「ミラエル様っ! やっと見つけた……! 探しましたよ!」


 その時、前方から1人の男性が走り寄ってきた。ミラエルと同様に、銀色の戦闘服を纏っている。青い紋章が確認出来ることから、同じ騎士団の人だと僕は推測した。


「すまないノルド、心配をかけたな」


 ミラエルは僕の手を離し、男性に視線を向けた。


「魔力の乱れを感じる、とだけ言い残して突然走り去ってしまうんですから……もう少し騎士団長としての自覚を……って、ミラエル様、この男は誰ですか?」


 ノルド、と呼ばれた男は僕に気付き、訝しげな視線を向けてくる。面長のノルドはがっしりとした体格をしていて、身長は僕より10センチほど大きい。


「魔力の乱れの原因はこの男だった。そして安心しろノルド、この男は味方だ。私の友達だからな。名前は……っと、名前を聞いてなかったな。君の名前を教えてもらえるか?」


「リューオ・アルブレードです」


「リューオか、いい名前だ。いいかノルド、このリューオは神級スキルの持ち主だ。あの古文書に書かれていた、武器錬成のスキルを持ってる」


「なっ……! 本当なのですか?」


 ノルドは目を見開いて言った。「本当だ」とミラエルが返す。


「先程この目で確認した。間違いない」


「僕は未だに何が何だか分からないんですが……」


「これから説明する。リューオ、ノルド、今からギルドに行こう。クエストを受注してダンジョンに向かう。そこでリューオのスキルの性能を確かめるんだ」


 そう言ってミラエルは歩き出した。「相変わらず展開が急ですね……」とぼやきつつ、ノルドも後に続く。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「どうした?」


 慌てて声を出した僕に、ミラエルは振り返って視線を向ける。


「ギルドに行くなんて聞いてませんよ! だ、ダンジョン!? 今からダンジョンに潜るつもりですか!? どういうつもりですか!」


「私は君の要求に応えて、君と友達になった。次は君が私の要求に応える番だ。勿論クエストの報酬は3等分する。悪い話ではないと思うが」


 僕の事情を見透かしたかのようにミラエルは言葉を紡ぐ。


「たしかにお金には困ってますけど……要求は『武器をもう一度錬成しろ』だったはずです! 話が違います!」


「私の要求が1つとは誰も言ってない。そうだろう?」


 ミラエルはそう言い、にやっと笑った。

 ……どうやら僕は、とんでもない人に目をつけられてしまったようだ。


 

 こうして、僕は成り行きでミラエルとノルドと一緒にギルドへ行き、ダンジョンへ潜ることになってしまった。

 突然の出来事に僕は混乱しっぱなしだったが、道中2人に事情を説明してもらい、なんとなく状況を把握することが出来た。


 まとめると、僕の元々の白級スキル『武器強化』が、神級スキル『武器錬成』に進化したらしい。スキルの進化は極低確率で起こる、とのこと。

 武器錬成は読んで字の如く、無から武器を錬成出来るとんでもないスキル。ミラエル曰く、錬成出来る武器の性能がとんでもないらしい(語彙力)。

 そして、ミラエルとノルド、特にミラエルは、その力を貸してほしいと僕に要求している。理由は、最近勢力を増しているフェアード教団へ対抗するためだ。


 フェアード教団。生まれ持ったスキルの性能によって人生が左右されるこの世界を「悪」と捉え、真の平等を実現するべく活動している団体だ。ここ数年で急速に規模を拡大させ、世界中の様々な地域に信者がいるとされている。

 

 ただ活動しているだけなら、信仰の自由の範疇として大きく取り沙汰されることはない。しかし……1年前、金級スキルを持つとある著名な冒険者が殺され、逮捕された犯人が「フェアード教団の使命のために殺した」と自白したことで潮流が変わる。


『生まれ持ったスキルの強弱で人生が左右されるこの狂った世界を正し、新の平等な世界を実現するためにランクが高いスキルを持つ人間を殺す。そうすることで不平等を是正し、新世界を作る』


 要約すると、教団は上記のイかれた思想を掲げており、1年前の事件を機に次々と凶行に及ぶようになったらしい。よって『公共の安全と秩序の維持』を活動理念として掲げている聖帝騎士団は、悪事を企む教団関係者の摘発、撲滅のために活動しており、その一環として僕に協力を要請しているようだ。


「事情はなんとなく分かったんですけど……僕なんかが力になれるんですかね?」


 一通り話を聞き終え、質問してみると、ノルドは「全く……」と溜め息を漏らした。


「話を聞いてたのか? 教団はふざけた思想を掲げて、ランクの高いスキルを持つ人間を目の敵にしてる。そしてお前は最高ランクの神級スキル持ち。そんなお前を教団が放っておくと思うか? お前は重要人物であり、教団から狙われるかもしれない危険な状態ってわけだ。俺とミラエル様は可能な限りお前を守る、その代わりにお前はその力を以って俺たちに協力する。力になれるどうこうじゃなくて、これがお互いにとって最善の選択ってことなんだよ」


「……マジか」


 僕は思わず声を漏らす。今のノルドの説明でようやく合点がいった。でも……


「命が狙われるなんて嫌ですよ……そもそも神級スキルがどうとか、よく分かってませんし……」


「気持ちは分かるが、君が神級スキル持ちである以上しょうがない。協力してくれ」


 漏らした呟きに、横を歩くミラエルが反応する。未だに混乱しているが、ミラエルとノルドが嘘をついているようには見えない。ここはひとまず、おとなしく2人に従った方がいいと僕は判断した。

 

 そうしている内にギルドの建物に辿り着いた。縦にも横にも長い、石造りの巨大な建物だ。冒険者はここでクエストの受注や報酬の受け渡しなどの諸々の手続きを行う。冒険者とは切っても切り離せない場所だ。


「……騒がしいな」


 建物内に足を踏み入れ、ミラエルがぽつりと呟いた。その言葉通り、夜にも関わらずギルド内はやけに騒がしい。


「何でミノタウロスが13階層に出るんだよ!」


「知るか馬鹿! こんなこと前代未聞だぞ!」


「誰か、誰かSランク以上の冒険者様はいませんか!?」


 巨大なギルドの建物の中で、複数の叫び声や怒号が飛び交っていた。何かしらの異常事態が起きていることは一目瞭然だ。


「話を聞いてきます」


 ノルドは神妙な面持ちで言い、ギルドのカウンターに向かう。依然騒がしさに包まれている中、建物内の冒険者の視線が1つ、また1つ、ミラエルに注がれていく。


「お、おい、ミラエル・ソードフレアがいるぞ……!」


「剣聖がこんなところに……!」


 そんな呟きが聞こえてくるも、当のミラエルは気にする素振りを一切見せない。むしろ、その表情は少し寂しげにすら見えた。


「ミラエル様、緊急事態です。現在13階層にミノタウロスが3体出現し、多数の冒険者が被害を被っています。加えて、ミノタウロスの様子がおかしく、通常より危険性が増しているとのことです」


 戻ってきたノルドが神妙な面持ちで状況を報告してくれた。

 ミノタウロス。冒険者の間では、凶暴で強力なSランクの魔物としてかなり有名だ。そして、全30階層ある内の13階層には、ミノタウロスは出現しないはず。何かがおかしい。


「分かった。聖帝騎士団に属する冒険者として、この異常事態を見過ごすことは出来ない。今からすぐに13階層に向かい、ミノタウロスを討伐する」


 ミラエルは事もなげに言う。その言葉に、おお、と周りの冒険者たちが驚きの声を上げた。


「行くぞ、リューオ」


「え!? 僕も行くんですか!?」


「当たり前だろう。一緒にダンジョンに向かうと言ってたじゃないか。報酬は弾むぞ」


 ミラエルは事もなげに言う。「いやいやいや!」と僕は慌てて胸の前で両手を振った。


「たしかに言ってましたけど、ミノタウロスを討伐しに行くだなんて聞いてませんよ! 僕なんかじゃ太刀打ち出来ませんって! 足手纏いになるに決まってます!」


「ならない。君の実力は傍目からなんとなく分かってる。一緒に来てもらう。もし危険に陥ったら君だけ逃げればいい」


「無理です! ミノタウロスは無理ですって!」


「……友達の頼みを、聞いてくれないのか?」


 ミラエルは静かに言い、上目遣いで僕を見つめた。


 ……友達。そんな。だって僕と貴方は、ついさっき出会ったばかりで、そもそも冒険者としての格が天と地ほど違う。そんな人と一緒に、ミノタウロスと戦うなんて……。


「……分かりました」


 結局、僕の口をついたのはその言葉だった。

 まあいい、どうせ僕は、パーティーを追放されて路頭を彷徨う身だ。何も失うものはない。ここはひとまず、ちょっと変な騎士団長様に従ってあげることにしよう。



*第3話は2026年4月6日(月)15時20分に投稿します。お楽しみに。



友達という単語が出てきましたね。皆さんは友達は多い方がいいと思いますか? 自分は、友達は量より質だと思ってます。親友が数人いれば十分です(何の話?)。

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