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第19話 友達ができた時に

※予定の時間より投稿が遅れてしまい申し訳ありませんm(_ _)m


 聖帝騎士団の本部、冒険者ギルド、その他様々な都市機能。それらが集約するこの一帯の巨大エリアは、『王都』という名称がつけられている。


 そして、王都から機関車で30分ほど移動したところにハスブルク王家の巨大な豪邸がある。というわけで僕とミラエルは現在、王家の豪邸に向かうべく機関車に揺られていた。


「いい景色だな」


 客車内で、僕の向かいの席に腰かけるミラエルは、窓の外を流れる景色を見て声を漏らす。


「そうですね。機関車に乗るのは久しぶりなので、なんだか新鮮な気持ちです」


「そうか。私はこうやって景色を眺めるのが好きなんだ。こうしてるとなんだか心が落ち着いてくる」


「へえ……」


 ……どうしよう。なんか、とても緊張している。


 思えば、今までの人生、女性と2人きりで外出することなんてなかった。いや、気炎万丈にいた頃はそういう場面があった気かもしれないけど、相手はミリネだったから何とも思わなかったしなぁ(失礼)……。


(ねえねえ、こういう時って何を意識したらいい? 変な奴だって思われないようにしたいんだけど……)


《基本的には共感を意識するべきです。ミラエル・ソードフレアはリューオ様に共感を求めていると推測します》


 神級スキルにこんな相談をするのはどうかと思うが、利用出来るものはなんでも利用しよう。


(共感ってことは、聞き手にまわればいいってこと? ミラエルの言葉に全部共感すればいい感じ?)


《基本的には聞き手に回る意識ですが、時と場合によります。リューオ様から積極的に話しかけたほうがいい場合も当然あります。また、聞き手に回る際、適当に相槌を打つのは絶対にNGです。そういうのはすぐにバレます》


(なんか難しいなぁ……)


《難しく考える必要はありません。自然体で、相手の心に寄り添えればそれでいいんです》


「リューオ、ちょっといいか?」


 神級スキル様に女心をご教授いただいている中、ミラエルに話しかけられた。自然体、自然体。


「何ですか?」


「確認なんだが、私とリューオは友達だよな?」


「はい」


「そうだよな……ありがとう。ふふふ、友達って響き、なんかいいな」


 ミラエルは柔らかな笑みを浮かべる。一応鎧を纏っているとはいえ、いつもよりは若干オフモードなのか、なんだか表情が柔らかいように見える。かわいい。


「昔から、暇さえあれば『友達ができた時にやりたいこと』というのを考えていたんだ。今、早速1個やってみたいんだが、いいか?」


「いいですよ。何をするんですか?」


「手遊び。手遊びがやってみたい」


 手遊び? 手とか指を使ってやる、あれのこと? 少し身構えていただけに、拍子抜け感が否めない。

 しかしミラエルは、きらきらと目を輝かせている。そんなに僕と手遊びをやりたいのだろうか。


《相手の心に寄り添う意識、ですよ》


 分かってるって。まあ、それでミラエルが喜ぶならいいか。


「分かりました、やりましょう」


「ありがとう! 前に本で読んで、やってみたいと思ってたんだ。 よし、じゃあワリバシをやろう」


 ワリバシ。各プレイヤーがそれぞれの手の指をいくつか伸ばし、交互に手をタップすることで本数を変化させる有名な手遊びだ。

 最後にワリバシをやったのはいつだろう。思い出せない。ここでミラエルとワリバシをやるのはなんだか不思議な感じだ。


「先攻後攻、どっちがいいですか?」


「私はどっちでもいいぞ。リューオが決めてくれ」


《こういうことはリューオ様がささっと決めるべきです。そういうものです》


 神級スキルのアドバイスが飛んでくる。了解。


「じゃあ僕が先攻でいきます。準備はいいですか?」


「よ、よし! いつでもかかってこい……!」


 右手と左手の人差し指を立てて声をかけると、ミラエルは何やら険しい表情で声を返してきた。気合いが入っているようだ。かわいい。


「じゃあ、はい」


 僕は右手の人差し指で、ミラエルの左手の人差し指に触れた。


「うむ……じゃあ、こうだ」


 ミラエルは右手の人差し指で、僕の右手の人差し指に触れてくる。


「ならこうします」


「なんだと……じゃあ、こうか」


「うーん、じゃあこうかな」


「むう……こうしよう」


「ならこうしようかな」


「うーむ……こうだ」


「じゃあ、こうしますね」


「意外と頭を使うな……よし、これでどうだ」


「ならこうします」


「ぐぬぬ……小癪な……こうしてやる」


「こうかな」


「うう……? なんかまずくないか……?」


「ミラエルの負けですね」


「なっ!?」


 ミラエルは右手の指1本のみ、対して僕は左手の指3本のみ。そして今はミラエルのターン。ミラエルの負けは確定だ。


「どうして負けたんだ……何故だ……?」


 ミラエルはがっくりと肩を落としている。


「僕が勝てたのはたまたまですよ」


「もう1回! もう1回だ! 次こそ勝つぞ!」


 ミラエルはそう言い、早くも右手と左手の人差し指を突き出して構えている。まるで負けず嫌いの子供のようだ。普段の姿とのギャップがすごい。これが俗に言うギャップ萌えというやつか。


 その後、ワリバシで数回戦い、さらに目的の駅に到着するまで他の手遊びも幾つかやってみたが、なんと僕が全て勝ってしまった。


「うう……まさか1回も勝てないとはな……」


 駅に到着し、客車からホームに降りたミラエルは、あからさまに落ち込んでいる。


(わざと手加減して、負けてあげたほうがよかったのかな?)


《いえ、手加減するのは却って失礼です。ただ単にミラエル・ソードフレアがクソ雑魚だっただけなので、気にする必要はないかと》


 なんか急に口が悪くなった。まあ、僕もこういう時に変に手加減されるのは嫌だし、これはこれでよかったのかな。


「でも、すごく楽しかったよ。友達とこういうことをするのが夢だったんだ。ありがとう、リューオ」


 落ち込む様子から一転、ミラエルは明るい笑顔を向けてきた。楽しいと言ってもらえて悪い気はしない。いや、むしろめちゃくちゃ嬉しい。


「僕も楽しかったです。たまにはいいですよね、こういうことするの」


「ああ。他にも、友達ができたらやりたいことは沢山考えてあるから、また付き合ってほしい」


「いつでもいいですよ」


「ありがとう。リューオと一緒にいると、なんだか幸せな気持ちになってくるよ。これからもよろしくな」


「…………」


 それだけの美貌を持っていて、男にそういうことを平気で言えちゃうミラエルは、やっぱり天然だと僕は思う。


 その後、僕とミラエルは駅のホームから外に出て、ハスブルク王家の豪邸へ向かった。近くに看板が立っているおかげで、進むべき方向がすぐに分かった。ありがたい。


「……うわ、やば」


 しばらく歩を進めた後、飛び込んできた景色に僕は思わず声を漏らした。


 目の前には、巨大で豪華な豪邸がそびえ立っていた。白い壁に青い屋根、さらには建物の前に広がるお洒落な庭園が視界に飛び込んでくる。


「すごいですね、ハスブルク王家って」


「有力な王家だからな。行こう」


 僕とミラエルは庭園を通り抜け、巨大な扉の傍に佇む門番に声をかけて要件を伝える。すると中に通され、応接室に案内され、ここで待っているように、と指示を受けた。


「どれくらいで終わりますかね?」


「どうだろうな。そんなに時間はかからないと思うが……」


 豪勢な応接室のソファに並んで腰掛け、そのような雑談をしながら時間を潰す。やがて、応接室の巨大な扉が開け放たれ、ぞろぞろと大量の人が入ってきた。

 ジャケットの上からマントを羽織る男性、メイド服のようなものを纏う女性、etc……。いかにも、王家、って感じの人だらけだ。


 そして気になるのは、最後にやってきたネミア王女が、やけに気合の入った白いドレスを纏っていることだ。なんか、ウェディングドレスのようにも見えるのは気のせいだろうか。


「よ、よく来てくれたわね、リューオ! 私は、あ、貴方に再び会えて、すごく嬉しいわ!」


 ネミアが口を開いた。なんか顔が赤い。どうしたんだろう?

 さて、話しかけられている以上、言葉を返さないわけないにはいかないな。自然体、自然体。


「こんにちは、6日ぶりですね。あのような事件に巻き込まれた後ですけど、体の方はどうですか?」


「だ、大丈夫よ! ……私を気遣ってくれているのね、さすがだわ……! よ、よし、リューオ! 単刀直入に言うわよ!」


「何ですか?」


 ネミアは胸に手を当て、深呼吸し、じっと僕を見つめてきた。え、何この空気?


「6日前、ダンジョンで、私はリューオからの気持ちをしかと受け取ったわ。そして……その後じっくり考えて、この人になら全てを捧げてもいいと思えたの! リューオ、私と結婚しましょう! 私がリューオを幸せにしてあげるわ!」


???????????


※第20話は2026年4月23日14時20分に投稿します。お楽しみに

ドヒドイデ選手が我がチームに加入。優秀な耐性と豊富な妨害技で、状況によっては完封勝ちも可能!

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