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第17話 極めて大事なお願い

【リューオ視点】


「……つまり教団は、人間を兵器にする技術を研究、開発していて、この前のミュルヴォもその兵器の一種だった。そういうことですね?」


 ネミア王女救出作戦が成功してから6日後のこと。騎士団と提携している病院の病室で目を覚ました僕は、病室に来てくれたラルドと情報の共有をしていた。ラルドはこの6日間で判明したことを包み隠さず話してくれたのだった。


「確証は得られていないがその可能性が高い、というのが、研究部門が出した結論だ」


 ラルドは重々しい口調で言葉を返す。


 聖帝騎士団は数万人の人間が所属している一大組織であり、ミラエルやノルドが所属している戦闘部門の他、研究部門や医療部門、情報部門など様々な部門があるのだとノルドがさっき教えてくれた。


「前から教団は、信者に対して非人道的な行為を何度も行なっているという疑いがかけられていた。今回の人間兵器云々もその類だろう」


「つまりミュルヴォは、元々はフェアード教団の信者だった、と」


「恐らくな」


 ノルドは短く言葉を返す。背筋に冷たいものを感じ、僕は右手で口を覆った。


「……何なんですか、フェアード教団って。人間を兵器にするとか、どう考えても異常です。一斉摘発とか、そういうことをして壊滅させることは出来ないんですか?」


「今までに何度も試みているが、全て失敗に終わっている。責任を追及しようにも、『あいつら(事件を起こす、起こした人)は既に教団から追放されているので、我々が責任を問われる筋合いはない』と突き返されるんだ。悔しいが、そう主張されるとどうしようもない。さらに教団は武力を持っている。迂闊に手を出せないんだよ。……ただ」


「ただ?」


「今回、ネミア王女が襲撃されたことで、潮流が変わるかもしれない。少し嫌な言い方をすれば、今回は被害者がかなりの大物だった。ハスブルク家の娘だからな。これを機に国の上層部が重い腰を上げる可能性はある」


 僕はネミアの姿を思い浮かべた。少々生意気なところはあったが、とてもかわいい12歳の女の子だった。そんなネミアが、理不尽に殺されていたかもしれないと思うととても恐ろしい。

 そもそも、ネミアに付き添っていた人々は1人残さず殺されている。教団は人を殺すことをなんとも思っていない。そんな奴らを野放しにすることなんて、出来るわけがない。


「そうだ、リューオ、体の方はどうだ? 動けそうか?」


「はい、大丈夫です。騎士団の方が治療をしてくれたお陰です。感謝しかありません」


 騎士団の医療部門には、傷を癒す系のスキルを持った冒険者が何十人も所属しており、必要に応じてスキルを使ってくれる。

 さらには通常の医療技術を使える環境も整っているため、戦う冒険者をバックアップする体制は完璧といえるようだ。


「よかった。2本の剣と、盾と鎧を錬成してくれたリューオは、本当にしんどそうだったからな。悪いな、いつもリューオに負担をかけてしまって」


「大丈夫です、それが僕の仕事ですから」


「そうか、ありがとう。1つ気になってたんだが、リューオは武器を錬成すると消耗するよな? それを医療部門の冒険者のスキルでなんとかすることは出来ないのか?」


「あ、たしかに。うーん、どうなんだろう……」


《不可能です。騎士団の医療部門に所属している人間のスキルでは、錬成の消耗に干渉することは出来ません》


 突然頭の中で武器錬成の声が聞こえた。


「え、そうなの?」


《はい》


「そっかぁ、残念だなぁ……」


「急にどうした? ああ、神級スキルと会話をしてるのか。理屈は分かってるんだが、どうにも慣れないな」


 ノルドは苦笑を浮かべている。たしかに、神級スキルの声は外部には全く聞こえてないわけで。不審に思われないよう、神級スキルと会話する時は声を出さないように気をつけなきゃ。


「すみません。えっと、医療部門の冒険者のスキルでは、武器錬成の消耗をどうこうするのは無理らしいです」


「マジかよ……かなり期待してたんだがな……。本当に無理なのか? 試しにやってみたら出来ちゃった、みたいなことはないのか?」


《絶対にありません》


 わざわざ“絶対に”をつけるあたり、本当に無理なんだろう。残念だが受け入れるしかない。


「絶対にない、らしいです」


「そうか。まあそれに関しても、焦らずじっくりいこう。今からすぐに動けるか?」


「はい、大丈夫です」


「なら、ミラエル様の部屋に行ってほしい。リューオと話がしたいそうだ」


「ミラエルはもう元気なんですか? 6日前の戦いで負傷していたと思いますが」


「大丈夫だ、傷は全て完治している」


「安心しました。今から行きます」


 僕は腰掛けていたベッドから立ち上がり、外に出る準備を始めた。


 ミラエル。その名前を聞くと、自然と6日前のことを思い出してしまう。

 あの時のミラエルはまるで幼子のように泣きじゃくり、ずっと僕に抱きついていた。今までのミラエルとは明らかに様子が異なっていた。あの後、騎士団の増援が来てもミラエルはしばらく僕から離れようとしなかったし。


 その後僕は着慣れた鎧に身を包み、ノルドと一緒に病室から出た。病院から出て、騎士団の本部へと向かう。6日前は色々とゴタゴタしていて気付かなかったが、病院といい本部といい、とんでもない大きさだ。


 本部に足を踏み入れ、ミラエルの部屋に向かう道中、ノルドは建物内を色々と紹介してくれた。ここが武器庫、とかここが会議室、とか。

 ノルド曰く、市民からの税金や、ハスブルク王家をはじめとした外部機関からの援助によって騎士団は成り立っているようだ。


「ここがミラエル様の部屋だ」


 しばらく歩いた後、とある部屋の前でノルドが足を止めた。黒い扉には白いネームプレートが取り付けられており、黒い文字で『ミラエル・ソードフレア』と書かれている。


「ノルドです。リューオを連れてきました」


 ノルドは扉をノックした後、張りのある声で言う。一瞬の間の後、「入ってくれ」と扉の向こうからミラエルの声がした。


「ミラエル様のこと、色々と頼んだぞ。ミラエル様の心に1番寄り添えるのは、歳の近いリューオだからな」


 ノルドはそう言い、ぽん、と僕の肩を叩く。僕は頷きを返し、部屋の中に足を踏み入れた。


 聖帝騎士団の団長の部屋なのだから、めちゃくちゃ豪華なのかと思っていたが意外とそんなことはなかった。

 部屋全体が黒色で統一されている。本棚、作業用の机と椅子、そして応接用の机とソファ。壁際のかなり大きな窓からは陽光が差し込んでいた。


 そして……ミラエルは、その窓の前で佇んでいた。6日前と同じ銀色の鎧を纏っている。僕の存在には気付いているのだろうが、依然僕に背中を向けたままだ。


「あの、ミラエル、えっと……」


「体の具合はどうだ? 傷は癒えたか? 錬成の消耗は回復したか?」


 突然ミラエルが声を発した。尚も僕に背中を向けている。


「はい、お陰様ですっかり元気になりました」


 僕がそう返すと、ふーっ、とミラエルは息を吐いた。


「よかった、安心したよ。……本題に入ろう。私がリューオをここに呼んだのは、極めて大事なお願いがあるからだ」


「お願い?」


「ああ。単刀直入に言う。6日前のことを全て忘れて欲しい。私がリューオにぶつけた言葉、私がリューオにしたこと。その全てを忘れて、無かったことにしてもらえないだろうか」



※第18話は2026年4月21日13時10分に投稿します。お楽しみに

2026年4月23日の夜、妹とポケモンカードで対戦します! 絶対に勝つ! 


決戦に備えてデッキを構築中(^○^)


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