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第15話 決壊

「なっ……何で……そんな……!」


 私は思わず声を漏らしながら、急いでリューオの元へ駆け寄った。戦いで負った傷により全身から痛みを感じるが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


「リューオ! しっかりしろ! 大丈夫か!」


 リューオの元へ辿り着いた私は、リューオの体を抱き抱えて叫んだ。

 

 脈はあるものの、微弱だ。口から大量に出血した痕跡がある。全身には汗が滲んでおり、顔色がとても悪い。さらに何故か体温が異常に低い。冷たいくらいだ。


「ミラエル様! 無事ですか!」


 その時、ノルドの声が飛び込んできた。視線を向ける。目の前に佇むノルドは見慣れぬ緑色の剣を手にしていた。私と同様に、激戦を繰り広げて消耗しているのが一目で分かった。


「ミラエル様、その負傷はっ……!」


「私のことなんてどうでもいい。それよりもリューオだ。……リューオがここまで消耗して倒れている理由は、私たちのために何度も武器を錬成してくれたから、か」


 ノルドの剣を横目に、私は声を低くして言った。「……恐らくは」とノルドは沈痛な面持ちで返す。


「リューオは、俺にも武器を錬成してくれたんです。この剣は化け物を人間に戻す能力が込められている特殊な剣だから、有効活用して欲しいとリューオは叫んでいました。その言葉通り、攻撃を加えていく中で化け物がどんどん人間に戻っていったんです。奇跡としか言えませんよ。今ではあの通り、人質の確保、拘束に成功しています」


 ノルドが後方を指差した。視線を向けると、下着だけを身につけた細身の男が地面に横たわっていた。

 その男の傍らにはレインが佇んでおり、男の四肢には黒い霧がまとわりついている。ノルドの言い草からして、あの男はつい先程までミュルヴォだったのだろう。俄には信じがたいが、今はそれを受け入れるしかない。

 

 男が微動だにしないところを見るに、レインのスキルの効果によって男を生け捕りにしているに違いない。金級スキル『幻影』、極めて汎用性の高いスキルだ。


「ね……ねえ……そのリューオって人、まさか死んでないわよね……?」


 レミア王女の声が聞こえた。驚きつつ視線を向けると、見慣れぬ金色の鎧と盾を纏う王女の姿がそこにはあった。王女の瞳には涙が滲み、声は震えている。


「リューオは……私を大切な存在だと言ってくれて、鎧と盾をくれたわ。あの化け物の遠距離攻撃の流れ弾が何回も飛んできたけど、この鎧と盾が全部守ってくれた。最初は変な奴だって思ってたけど……リューオは紛れもなく、私の命の恩人よ。だから、ちゃんとお礼を言いたいのに……死んじゃうなんて……そんなのいや……!」


 そう言った後、わああああ、と王女は泣き出してしまった。


 ミノタウロスとの戦いで1本の剣を錬成したリューオは、その後ひどく消耗して1週間目を覚まさなかった。錬成に伴う消耗はかなりきついに違いない。

 なら、2本の剣と、鎧と盾を錬成した今回の代償は……どうなるというのだろう。ずきん、と私の胸が、心が傷む。


「……リューオ、すまない……君にばかり負担をかけて、本当にすまない……」


 そう呟く私の頬を、一筋の涙が伝った。そんなこと考えちゃ駄目だと思いつつ、最悪の事態を想定してしまう。私は冷たいリューオを抱き上げ、ぎゅっとその体を抱きしめた。


「リューオは私に、友達になろうって言ってくれたのに……そんな君に私は何も出来ず……今回もまた君に頼って……君に負担をかけて……ごめんなさい……本当にごめんなさい……」


 一筋、また一筋と涙が私の頬を伝う。


 私は幼い頃に大切な両親を失った。そして今、再び大切な人を失ってしまうのだろうか。私と友達の関係を求めてくれた初めての人を、ここで失ってしまうのだろうか……。


「うっ……ううっ……リューオ……」


「あっ、あれ? リューオの手が……」


 悲しみに暮れる中、王女の声が聞こえた。手? 不思議に思いつつ視線を動かすと……リューオの右手が、鎧越しに私の胸に触れていた。


「っ……!?」


 心が押しつぶされそうな悲しみや不安と、女性として感じる本能的な恥ずかしさがせめぎあい、私の心が強く乱されていく。そしていつの間にか、先程まで冷たかったはずのリューオの体は、健康的な温かさを取り戻していた。


「……リューオ……?」


「……あっ! ミラエル、えっと、これは違うんです! なんか、気付いたらこうなってて、本能で手が動いちゃったというか、この状況ならワンチャン触ってオッケーなのかなとかそういう邪なこと考えちゃっただけで、だけっていうのもなんかおかしいですけど、そのっ……!」


 私の鼓膜に唐突に飛び込んだ、リューオの声。何よりも聞きたかった、リューオの声。その瞬間、私の感情のリミッターは完全に崩壊し、抑えていたものが一気に溢れ出した。


「馬鹿っっっ!!!!!」


 私はリューオの体をぐっと両手で押し、ほぼ同時にリューオの頬を右手で平手打ちした。一切の手加減のない全力の平手打ち。ぱちいいいん、という乾いた音が響き、「うぐええっ!?」とリューオが驚きの声を漏らす。


「ミラエル!? な、何をっ……!?」


「馬鹿っ!!! 馬鹿っ!!! やっとできた、初めてできた友達が死んじゃったかと思ったじゃん!!! 心配させないでよ!!! もう私を1人にしないでよ!!! うわあああああん!!!」


 私は叫び、泣き、再びリューオを強く抱きしめた。


 両親を失ってから、私は強く生きると決めた。強力な神級スキルを授かった選ばれし人間として、聖帝騎士団の団長を務める冒険者として、常に強く、正しくあるように振る舞ってきた。それが正しいことだと、ずっと思っていたから。


 ずっと自分に課していたその誓約が今、完全に壊れた。今の私は、SSランク冒険者でもなく、聖帝騎士団の団長でもなく、決壊した感情をただ露にすることしか出来ない18歳の女の子になっていた。


 こんなの駄目だ、こんなのミラエル・ソードフレアじゃない、今すぐやめろ、と理性が叫ぶ。


 でも。


 私は泣きながらリューオの体を抱きしめ続けた。今の私にはもう、そうすることしか出来なかった。


※第16話は2026年4月19日18時30分に投稿します。お楽しみに

先日妹とポケモンカードで対戦し、敗北してしまいました。悔しい。リベンジのために、デッキをしっかり作っていこうと思います。


ポケモンカードはとんでもない人気で、構築済みのスターターデッキを手に入れるのも一苦労だとか。臨むところだ、最高のデッキを作ってみせる! 青が好きだから水タイプとか氷タイプのポケモンを使いたいなぁ!

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