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第14話 たった1つの方法

【ミラエル視点】


 今戦っている《ミュルヴォ》なる化け物は、完全に常軌を逸している。

 剣を振るいながら、私は背筋に冷たいものが走るのを感じた。


 紫色の歪な筋肉で構成されるミュルヴォは、驚異的な俊敏性と見たことのない異能を駆使して私に襲いかかってくる。この化け物が、つい先程まで人間だったなんて到底信じられない。


(ホーリー)(ソード)(サイクロン)!!!』


 2体のミュルヴォから繰り出される攻撃を回避しながら、私はスキルを発動して反撃を繰り出した。多対1専用のスキル攻撃がヒットするも、手応えは殆どない。


「グゴオオオオオ!!!!!!!」


「グゴオオアアアア!!!!!!」


 私の反撃に逆上したのか、2体のミュルヴォの攻撃はますます激しさを増す。長いリーチから繰り出されるパンチ、蹴り、そして異能による炎や氷、雷や風などの様々な属性攻撃。そのどれもが即死級の威力であることを私は肌で感じ取っていた。

 

 後者の属性攻撃に関しては違和感しかない。魔力の流れが滅茶苦茶だ。どう考えても普通ではない。先程のデルムアの言葉と、注射器。それらが関係しているのだろうか。


(ホーリー)(ゴッド)(スラッシュ)!!!』


 2体の内の1体に狙いを定めてスキル攻撃を放つも、肉を抉る程度で致命傷には至らない。私は剣を操りながら、致命傷に至らない理由を必死に考えていた。


 考えられる理由は2つ。1つ。この武器の性能が低い。新しく新調したこの剣も当然最高品質だが、上には上の武器があることをリューオの神級スキルから学んでいる。

 2つ。この剣が破壊されてしまうのではないか、という恐怖。ミノタウロス戦の二の舞を避けようと、武器破壊を避けて私は戦っている。そのような意識があると、その分微かに動きは鈍る。そしてその微かな乱れは、生死を争う戦闘において大きな影響を及ぼしかねない。


 そしてこれらを解決するたった1つの方法……それは、リューオに武器を錬成してもらうこと。ただ、今どこにリューオがいるのか分からない。ネミア王女の方へ向かっていくのは見えたが、その後どうなったんだろうか。


「ミラエルっっっっっ!!!!!」


 その時。私の鼓膜を震わせたのは、リューオの叫び声だった。次にリューオが何をしてくれるのか、私はもう分かっていた。例えようのない嬉しさを感じたのは言うまでもない。


 2体のミュルヴォの攻撃を寸前で回避し、私は声のした方向へ全力で飛び退いた。強烈な魔力を放つ物体が急接近してくる。私は元々装備していた剣を左手に移し替え、飛んできたものを右手でキャッチし、着地と同時に構えた。


「……!!」


 私は思わず息を呑んだ。前回のミノタウロス戦の際にリューオが錬成してくれた武器よりも、さらに魔力量が多い。異次元の性能であることはすぐに分かった。

 前回の剣は黒かったが、今回の剣は赤色と青色を纏っている。赤と青が対を成し、渦を巻くようにカラーリングされているその剣は、ただひたすらに美しかった。


「その剣で戦ってください!! その2体の化け物はミラエルに任せます! 僕は他のサポートに回ります!! 返事は結構なので必ず化け物を倒してください!!」


 背中にリューオの叫び声がぶつかる。返事は結構、か。戦闘中にも関わらず私は僅かに口角を上げた。


「ふううううう……」


 息を吐きながら、リューオが錬成してくれた剣を上段に、元々装備していた剣を中段に構える。リューオが武器強化をかけてくれているのがすぐ分かった。本当に頼りになる男だ。

 私は基本的に一刀流だが、同時に二刀流の使い手であることを知る人は、恐らく数人しかいない。ここぞの時のために温存しておいた二刀流を、今こそ活用するんだ。


 姿勢は半身、左足を前に向け、私は上下太刀の構えをとった。2体のミュルヴォが私の命を奪わんと接近してくる。私は全力で地面を蹴った。


 狙いは、私から見て左側のミュルヴォ……と見せかけて本命は右側。命と命の奪い合いにおいては、一見単純なフェイントが時に効果的であることを私は知っていた。


「はっ!!!」


 鋭く放った声とともに私は全力で方向転換し、左側から右側のミュルヴォに狙いを定める。


「グゴオッ!?!」


 フェイントが効いた。知能は高くない。生まれた隙は僅かに一瞬。しかしそれは私にとって、充分すぎるほどの一瞬だった。


(デュアル)(ホーリー)(ウィル)(ウィンド)(ソード)(ブレイク)!!!』


 瞬きの間に、斬撃と斬撃が折り重なって放たれる21連撃。私が放った二刀流専用のスキル攻撃は、今まで致命傷を与えられていなかったミュルヴォの体を、深く切り裂いた。


「グガオ”オ”オ”オ”ア“ア“ア“ア”!!!!!!!」


「っ!?」


 21連撃を喰らったミュルヴォはしかし、まだ倒れなかった。この技を喰らって即死しなかった魔物は今までいないというのに。

 歪な紫色の体は崩壊しかけていたが、最後のあがきとばかりに絶叫しながら私に殴りかかってきたのだ。


「ぐっ……!!」


 攻撃を放った後の体勢から、かなり無茶な動きでなんとか攻撃を回避し、さらに一太刀を浴びせる。そこまでして、ようやくミュルヴォは動かなくなった。完全に消滅することはなく、紫色の肉塊が僅かに残っている。魔石はドロップしない。


「グゴオオアアアアアア!!!!!!」


「ちっ……!」


 迫ってくるもう1体のミュルヴォを睨みつけ、私は舌打ちした。体が痛い。さっき無理な体勢で攻撃をかわしたせいで、どこかを痛めてしまったようだ。しかし戦いは避けられない。

 

 1体倒したことで負担は幾分か減っているが、ここで気を抜くことは死へと直結する。こういう時こそ気を引き締め、短期決戦で終わらせる必要がある。私は痛みを堪えながら、半身で左手の剣を下段に、右手の剣を中段に構えた。


「グゴガアアアアアア!!!!!!」


『双聖・旋風……っ!?』


 スキル攻撃を放とうとした私は、ミュルヴォの口から突然巨大な火球が放たれたのに気付き、慌てて回避した。少しでも回避が遅れていたら私は丸焦げになっていただろう。


 予期せぬ反撃によって体勢を崩した私を、ミュルヴォは執拗に攻撃してくる。異常に素早い攻撃を捌くので精一杯で、反撃に転じることが出来ない。これでは21連撃のスキル攻撃を放つことは難しい。

 ……ならば、博打に打って出るしかない。私は腹を括った。チャンスはすぐに訪れた。互いの攻撃が交錯する激戦の刹那、ミュルヴォが放った右ストレートに、私は左手の剣を思い切り叩きつけた。


「グゴオオオアアッッ!?!?!?」


 私が放った予想外の攻撃に、ミュルヴォは驚きを隠せない。当然だ。今やったのは、武器破壊を恐れず攻撃を受け止め、無理矢理隙を作り出す非常手段。今の今まで私が一度たりとも行わなかった過激な行動だ。

 

 力と力が衝突し、耐えきれずに左手の剣が砕け散った。砕けた刀身の、数多の破片が四散し、私の体にも複数の破片が突き刺さる。剣の被破壊、そして自身の負傷。その代償を予想していながら、隙を作り出すために博打に打って出たのだ。


 そしてその博打は、成功した。


 『(ホーリー)(ゴッド)(スラッシュ)!!!』

 

 非常手段によって生まれた一瞬の隙を逃さず、私は渾身のスキル攻撃を放った。リューオが錬成してくれた剣で放った8連撃はミュルヴォにクリーンヒットし、歪な体を斬り刻んでいく。ミュルヴォの討伐を確認した私は、その場に膝をついて顔を歪めた。


「ぐ……ぐうう……! くそっ……!」


 博打の代償は予想以上だった。砕け散った剣の破片は私の体を深く傷つけていた。それだけではない。規格外の化け物である、2体のミュルヴォとの激戦により私は著しく体力を消耗していた。

 それでも、聖帝騎士団の団長という肩書きが、戦いを止めることを決して許さない。私はよろよろと立ち上がり戦況に目を向けた。


 そして、息を呑んだ。


 尚も動いているミュルヴォは、1体だけだった。レインとノルドがその最後の1体と戦っている。ノルドは見慣れぬ緑色の剣を手にしていた。恐らくリューオが錬成した剣だろう。見た限りレインとノルドが優勢だ。


 そして……リューオは、そこから離れたところでぴくりとも動かず、大量の血を吐いて倒れていた。


「リューオっっっっっ!!!!!」


 戦場に、私の絶叫が響き渡った。


※第15話は2026年4月18日8時10分に投稿します。お楽しみに

千葉ロッテマリーンズの上田希由翔選手をご存知ですか? 2023年にドラフト1位で千葉ロッテマリーンズに入団したプロ野球選手です。そして、上田選手と五月雨前線は、なんと誕生日が同じ! こんな偶然があるでしょうか! 奇跡としか言いようがありません!


そして……上田選手は、自分がポケモンのカイリューに似ていることを自認しており、自身のチャームポイントにも挙げています! プロ野球の入寮時にはカイリューの人形を持参したほどです!


誕生日が同じ……カイリューに似ている……ポケモンチャンピオンズでカイリューを使わないわけにはいかないじゃないですか! というわけでこれからカイリューを使用します! メガカイリューで暴れ回るっ!

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