最初で最後の本気モード②
『バ バァ マタキ サマカ』
「またき? さまか? 誰それ、儂そねぇな人知らんし」
『コ ロシ テヤル』
「うーん、日本語喋ってくれんかね。
あ、ここ日本じゃないんじゃった」
『ボ ボ ボク ヲ バ カニ スルナアァァア” アガッ』
アンデッドドラゴンの胸元から現れた顔が叫ぶと顎がずるりと崩れ落ちて行った。
「馬鹿じゃろ・・・」
『フるファひ ハふぁフィふンば』
マォはこの顔の正体に気付いていた。
その上で小馬鹿にしているいたのだ。
(なぁんでアレがまだ生きてっかな。しかもアンデッドドラゴンになって)
そう、マォをこの世界に呼び出した元凶のアレである。
そのアレが何故アンデッドドラゴンの姿をしているのか。
マォはアシーナが言っていた事を思い出す。
(確か淀みってのは負の感情が集まって産まれるんじゃったっけ。
んでその淀みから妖獣やダンジョンモンスターが生まれる。
って事は、コイツの負の感情が多すぎてモンスター化した?
ゲームのラスボスが2段階変身したみたいな?
ぅわぁ最低最悪のスカポンタンじゃん・・・)
考えながらもアレの顔を殴り続けているのだがヌルリベシャリと腐肉のせいで力が伝わらない。
しかもなんとか潰せても違う場所からひょこりと顔を出すのでモグラ叩き状態になってしまっている為に体力を消耗している。
「クソがっ!じっと出来んのかっ!ぜぇぜぇ・・・」
『バ バァ コソサ ッサトク タバレ ハァハァ・・・』
「なんでお前が息切れしちょんよ・・・」
『ボ ク ダッテ ツ カレル ンダ・・・』
「へぇ、アンデッドにも疲れるとかあるんじゃ」
となれば体力勝負だろうかと考えたマォだったがどのくらい時間が掛かるのか不明だ。
時間が掛かればその分汚物は撒き散らかるし雑魚アンデッドも増えてしまう。
(てことはやっぱあれよなぁ。ゴ〇ラの光線で一気にやらにゃぁ。
なんじゃったけぇ、確か放射能で突然変異だから・・・)
「思い出した!放射熱線!!」
叫んだ瞬間マォの体から カッ と青白い光が放たれた。
『グ オォォ ォォ バ カナ ボクガ マケルな ドアりえない!
ぼクワ セイじょ のチかラを てにイレて ゆいいツの オウにナるのだ!』
「まぁだそんな寝言言いよん!寝言は寝て言えーいっ!」
マォは思い切り息を吸い込み口から光線を吐き出した。
口から光線を吐き、全身から溢れ出た青白い粒子が蛍の様に舞う。
アレの顔を付けたアンデッドドラゴンが徐々に塵となって消えて行った。
「マォ・・・」
「おぉぉ、招き人殿が!」
「マォ殿が!!」
「「「 アンデッドドラゴンが消えていく! 」」」
防衛にあたっていたオーウェン達から歓喜の声が上がり、もっちゃんがマォに向かって走り出す。
「きゅぴっ!」
ジュゥ・・・
瞬間、もっちゃんの右半分が溶けた。
「も、もっちゃん!!」
(何がおきた?)
駆け寄ろうとしたマォの体に元の姿に戻った、いや腐乱死体の様な姿のアレがしがみ付いた。
「ババァもろとも全員吸収してやるぅぅぅ!!」
「オーウェン逃げろ!!」
もがきながら必死に、それはもぉ必死にもがきながらマォは叫ぶ。
腐臭と汚物まみれで臭いし気持ち悪い。
いつのまにかゴーグルも防臭マスクも無くなっている。
かろうじて残っているレインコートもすでにボロボロになっていて役に立たない。
「抱き着いてんじゃねぇよこのクソガキ!くっそ臭いしキモイし!」
「なっ、誰が貴様の様なババァに抱き着くか!」
「抱き着いてんじゃねぇか!」
「違う!これはしがみ付いているんだ!」
「どう違うんだよ!」
「 ・・・ 知らない」
「 ・・・ 」
「じゃあ貴様は知っているのか!」
「ニュアンスの違い?・・・」
「ちくしょー!知ってるのかよ!」
「抱き着く」は親愛を表す事が多く、「しがみ付く」は頼りにして掴まると言う意味があるのでアレの行動は意味合い的にはどちらにも当てはまらない。
が、そんな事は知らない2人はコントを繰り広げるハメになってしまった。
だがそのコントのお陰でマォは気付いた事がある。
アレの喋り方が戻っていたのだ。
(なるほど、人型に戻って弱体化したって事でええんじゃろうか。
じゃったらさっさと消した方がええね)
そう思いもう一度光線を吐こうとした時だった。
腐汁が意志を持った木の根のようにウネウネとオーウェン達の方へ走るのが見えた。
(マズイ!)
オーウェン達はまだ気づいていない。
マォは焦って雷を放ってしまう。
「「「 あばばばばっ 」」」
「「「 fぐいkxsr 」」」
マォとアレを含む全員が感電してしまい、口と鼻からふしゅぅと黒い煙が立ち上っている。
「バ、ババァ。だふぃぼずう」
「ふふぁふぉうひょふは」
自らをも巻き込んでしまったマォだがおかげで腐汁は蒸発したようだった。
幸いオーウェン達は黒焦げにはなっておらず少し痺れただけだった様で、痺れが取れた後はもっちゃんを回収して巻き込まれてはたまらんとばかりに離れたようだ。
(オーウェン達は逃げれたようじゃね、よかった。
はよ、こいつ消さんにゃ・・・)
そう思うがどうするのがよいか迷う。
馬鹿なのにしぶとくて再生能力が高い。そして腐乱しているので臭いしキモイ。
そして短時間のうちに悩んで悩んで悩みぬいて結論を出した。
「なぁクソガキ。一緒に地獄まで堕ちようぜ」
「何をっ」
そう言うとマォはアレの腐った首に嚙みつき、そのまま光線を吐き出した。
重低音の様な超高音の様な、不思議な音が鳴り響き2人の体が赤く発光していく。
その光はやがて青くなりさらに青白くと変化していく。
「ぐっ 貴様何をしている・・・」
「ふぇふふぉふぁふふ」
ニヤリと笑いマォは持てる限りの魔力を爆ぜさせた。
辺りが閃光に飲まれ、2人の体は溶けてボタリボタリと溶岩の様に地面へ落ちていく。
それでもまだ逃れようとするアレの溶けた物体をマォが溶けた物体が抑え込む。
しばらくもつれ合った後に其々の物体は塵と化して消えて行った。
それと同時に雑魚アンデッドたちも綺麗に消え去った。
「終わった・・・のか・・・」
「団長!マォ殿は・・・」
「マォ殿の姿が見当たりません!」
「なっ、まさか・・・
探せ!あたりをくまなく探すのだ!」
オーウェン達は閃光で視界を奪われて居た為最後の姿を見てはいなかった。
「マォ!!」
「おかん!」
「「「マォ殿!」」」
「「招き人殿!」」
駆け付けたアルノーやリオルと共にオーウェン達が必死にマォを探したが見つける事は出来ずにいた。
せめて骨の1つでも見つからないかと三日三晩探しても見つける事は出来なかった為捜索は打ち切られる事になった。
千秋にどう説明すればいいのかと帰路につくアルノーやリオル達の足取りは重い。
トボトボとプリローダに戻り千秋の元へと向かうアルノーとリオル。
他の者達は其々が仲間に報告へと向かった。
「おかえり。大丈夫じゃった?怪我はしちょらん?」
「「 千秋・・・ 」」
「あれ? おかんは一緒じゃないん?」
「「 ・・・ 」」
「え?なんなんその沈黙。止めてぇや、嫌な事考えるじゃん」
「「 ・・・ すまない」」
「ちょ、え、まさか・・・ 嘘じゃろ・・・」
「骨の欠片1つすら見つける事が出来なかった」
「すまない、俺達がもっと早く到着していれば・・・」
「嘘じゃろ。悪い冗談じゃろ。もぉおかん、はよ出て来てぇや」
「「 ・・・ 」」
「おかん、ふざけんさんなよ。
トリーとゆっちゃんが喋ったんよ。
なんと第一声は ばぁば じゃったんよ。
聞きたかろぉ?はよきんさいや」
「千秋・・・」
「もぉ、おかん。はよ出てこんにゃぁ・・・ 聞かせちゃげんよ」
千秋はそう言いながらその場に泣き崩れた。
リオルはそっと千秋を抱きしめ、アルノーは千秋の頭を優しく撫でる。
2人はどう声を掛けて良いのか分からずにそのまま黙って千秋が落ち着くのを待つ事にした。
読んで下さりありがとうございます。




