プリローダ⑭
多少のシモネタがあります。
卑猥な物ではありませんが苦手な方は飛ばしてくださいませ(;´Д`)
すっぽりと雪に覆われた日。
「うわぁ、今日は一段と寒いと思ったら凄い雪じゃね。雪掻きするん?」
「せん。無理じゃもん」
「そぉなん?でも外出れんじゃん」
「渡り廊下で繋がっちょるけぇ、皆んとことは行き来出来る」
「なるほど。んじゃええか。
ところでおかん。私もしかしたら漏らしたかも・・・」
「は?! なんて?! 漏ら・・・ふごふごっ」
「おかん、声デカい!」
「ごめん。漏らしたってアンタなんせよん・・・」
「いやなんか外見よったらヌルッともぁっと・・・」
「喋ってないで洗って着替えてきんさいよ・・・」
「そぉする」
そう言って風呂場へ移動しようとした千秋だったのだが、動くとさらに漏れた感じがした。
恐る恐る足元を見てみれば血だまりが出来ている。
「うわぁぁぁ、お、お、お、おか、おかん!」
「どうした千秋、ってうわぁぁぁ」
「おかん、どうし・・・ ぎゃぁ!」
「おかん、なんなんこれ。私死ぬんじゃろか・・・」
「馬鹿な事言いんさんな。アルノー、侍女長呼んで来て!」
動かすのはマズイだろうと判断したマォは千秋をそのまま横に寝かせてタオルをかき集めて千秋に掛けた。
下血と言えば何があっただろうかとマォは考える。
(潰瘍とか大腸がん? それとも・・・)
「痔?・・・」
「ちょ、おかん止めて、痔とか恥ずかしいじゃろ」
「どっか痛みとか無いん?」
「無い」
「そぉなん・・・」
マォが悩んで居るとアルノーが侍女長を連れて戻って来た。
話を聞いた侍女長は少し考えてから「失礼します」と千秋の腹部を触って行く。
「マォ様、千秋様。落ち着いて聞いて下さいませね」
「「 う、うん 」」
「出産が始まっております」
「「「 は?! 」」」
「え? いやだって結婚してからまだ3か月なんじゃけど?!」
「獣人族は妊娠期間が短いのですよ。犬人種だと確か2か月ほどでしたね」
「マジ?! 10ヶ月じゃぁないん・・・」
「千秋、犬や猫って2か月で産まれるけぇそれと同じなんじゃろ」
「そぉなん・・・じゃぁこれ漏らしたんじゃなくて」
「破水でございますね」
「「「 おぉぅ・・・ 」」」
「さぁさぁ急いで準備を!
マォ様は湯を大量に沸かして下さい。
アルノー殿は清潔なタオルや布を皆から集めて来て下さい
リオル殿は・・・あら、気を失ってるわ・・・」
「「 ・・・ 」」
「そこらに寝かせておく・・・」
どうやらリオルは血を見て失神してしまったようだ。
マォは竈で急いで湯を沸かし、アルノーは走り回ってタオルや布を集めた。
何か手伝う事はないかと皆が集まったのだが侍女長に一喝され男性陣は追い出される。
イザベルとコルディはマォの代わりに湯を沸かし、侍女さんズは軽食や飲み物の準備をしていく。
マォは千秋の側に居て千秋の汗をぬぐってやり、侍女長はせっせと産婆役を務めている。
「おかん、これ陣痛あるんかね?」
「痛くないん?」
「うん、なんもいとぉないん・・・」
「うーん。儂犬は産んだ事ないけぇなんとも言えん・・・」
「私だって無いんじゃけど・・・」
2人は侍女長を見つめる。
「わたくしだってございませんよ」
「あのぉ・・・マム、よろしいでしょうか」
声を上げたのはエディ嫁だった。
「陣痛は一瞬だけで、破水した後はしばらくすれば自然と産まれるかと」
「そうなんじゃ、じゃぁ見守るしかないんじゃね。
教えてくれてありがとう」
と言う訳で皆でのんびりとお茶でも飲みながら待つ事にした。
「ぶぇっ・・・くしょーいっ」
「ちょ、相変わらずおっさんくさいクシャミじゃねぇ・・・」
「へへへ。あ、おかん。出た見たい」
「なにが?」
「子供? もしくはンコ」
「ちょ・・・」
侍女長が確認すると手の平サイズの小さな子犬が産まれていた。
「女の子でございますね」
侍女長は臍の緒の処置をしながらマォに告げる。
「女の子・・・ゆっちゃんじゃろうか」
「わからんけど・・・ぶぇ・・・っくしょぉーい」
「ちょ!侍女長大丈夫?」
2匹目?2人目?の子犬が出て来たのだが、1匹目の体を拭いていた侍女長に体当たりした感じになった。
「大丈夫でございますよ。おや、こちらは男の子でございますね。
胎盤も出てきましたのでお子様は2人という事なのでしょう。
臍の緒の処置をしたら体を清めてまいりますね」
「え?もぉ終わったん?はやっ!ぶち楽じゃったんじゃけど」
「そうじゃね、犬は安産って言うけどホンマじゃったねぇ。
とは言え、しばらくはアンタも安静にしちょきんさいや」
「なんか妊婦とか出産とか実感がないんじゃけど?」
「まぁそうじゃろぉね・・・」
千秋は風呂に入りたいと言ったが実感は無くとも出産直後だ。
風呂は控えた方がよかろうとマォが洗浄魔法で身綺麗にしてやる。
汚れたタオルや布、床などは侍女さんズがテキパキと片付けてくれた。
片付いた後でリオルを呼び千秋をベッドへと運んで貰った。
「ところでさ、産まれたのってまんま子犬じゃったんじゃけど。
獣人じゃけぇもちぃと人間らしさもあるんかと思っちょった」
「あぁそれはですね」
エディ嫁が再び教えてくれる。
獣人は産まれた時は獣姿で成長と共に変化していくのだそうだ。
とは言ってもリオルやエディ達の様に二足歩行の獣っぽいタイプだとそこまで変化はないらしい。
先に産まれた女の子は千秋の様なベジュの毛色だったので成長しても千秋に似るだろう。
後から生まれた男の子はリオルと同じ黒毛だったのでリオルと同じ二足歩行の獣タイプになるだろうと皆は思った。
「たぶん、女の子がゆっちゃんよね?・・・」
「そう思いたいが、まだ産まれて来ていない可能性もあるからな」
「それもそうか。はよ産まれてくれんと儂困るんじゃけどなぁ」
「何故?」
「だってアルノー。儂春で61になるんよ?
こっちの世界の寿命超えたんよ?いつ死ぬかわからんじゃん」
「あー、人族は平均寿命が60だったな」
「最高齢は何歳くらいなんじゃろうねぇ」
「最高齢の記録は確か64でしたかと」
「ってことは後3年?・・・」
「おかんならまだまだ大丈夫そうだがな」
「ええ、そうですとも」
「そうじゃったらええんじゃけどなぁ」
そんなマォの心配は無用だった。
ゆっちゃんはちゃんと生まれて来ていた。
但し男の子の方だった。
「おかん!この子変なんじゃけど!」
「変ってなにが?」
「だって、見てよほら」
黒毛の子犬はまだ目も見えないのにフンフンと自分の股をかいで前足でポンポン叩いた後「でへへっ」と笑っているのだ。
「 ・・・ 」
「ね?変じゃろ?」
「千秋や、この子がゆっちゃんなんじゃないん・・・」
「えぇぇ、だって男の子じゃん」
「じゃけどこの笑い方、ゆっちゃんじゃん?」
「確かに・・・でも男の子じゃん」
「思い出してみ。ゆっちゃんがまだハイハイしてた頃。
うちの猫のタマタマ突いて、でへへ言いよったよね・・・」
「・・・
ゆっちゃんなん?・・・」
「おかん、千秋。考えるより先に遊ぶのを止めさせた方がよいのでは」
言われて止めるのだが黒毛の子は「でへへぇ」と笑うだけである。
その瞬間2人はこの子がゆっちゃんだと確信したのであった。
数日後、名前が決まった。
千秋似の女の子はトリー。ゴールデンレトリバーに似ているからと言う理由だ。
(アンタもなんじゃけどね)と突っ込みたいマォである。
リオル似の男の子はユヅキ。ゆっちゃんの名前だが結局はユヅキと呼ばれるよりもゆっちゃんと呼ばれる事の方が多くなる。
2人はまだ目も開いていないのにモソモソと這い回ってよく動く。
トリーはヒクヒクと鼻を動かしながら千秋の匂いをかぎ分けているようで、後追いをよくしている。
ゆっちゃんはというと何故かアルノーの後追いをしていてリオルが少し寂しそうだった。
この冬、マォの家は大賑わいで忙しかった。
カレフの国王夫妻は度々地中からやってくるし、エルフィン達も度々やってくる。
スカイラーまでちょくちょくやってくるのだが、いずれも供を付けて来ないのでマォに毎度説教を食らっている。
「だぁーかぁーらぁー。
揃いも揃って国の要人が供も付けずにホイホイ出歩かんでくれん?」
落ち武者禿にしてやろうかと思ったマォだが皆が必死で止めるのでグリグリ攻撃で我慢している。
握り締めた拳で頭を挟んでぐーりぐり。
「あだだだだっ、だがなマォ殿。ぞろぞろと人を連れ歩いてもだな・・・」
「イダダダッ そうだぞマォ。目立たぬようにちゃんと地中を・・・」
「んだったらそねぇにしょっちゅう来んなし!
雪解けまで出禁!政務に励みやがれ!」
「「「 えぇぇ、そんな殺生なぁ・・・ 」」」
「次こっそり来てみろ、電気あんまの刑じゃけぇね!」
「「「 電気あんまの刑とは?・・・ 」」」
「エルフィン、おいで?」
にっこりと手招きするマォ。
「嫌な予感しかしないんだが・・・」
「いいからおいで?それとも刈る?」
すかさずガイアが草刈鎌をマォに渡す。
それを見て渋々とマォに近寄るエルフィン。
「えfbんきおgzh・・・・」
マォが電気あんまを仕掛けるとエルフィンは声にならない悲鳴をあげた。
「「「 なんて恐ろしい・・・ 」」」
それを見ていた男性陣はそっと股間を手で隠すのであった。
なおエウリケはきちんと政務を熟しており雪解けを待ってからやって来るので難を逃れたのであった。
読んで下さりありがとうございます。




