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プリローダ⑪

秋の終わり、この日は収穫祭である。

皆は町へと出かけて行ったのだがマォはアルノーやガイアとプリローダに残っている。


「おかん、大丈夫か?」

「なんとか。アルノーも祭り行きたかっただろうにごめんよ」

「いや、気にしなくていい」


なんのことはない。

いざ祭りに出掛けようと立ち上がった時に腰がグキッと音を立てたのだ。

所謂ギックリ腰である。


「情けない・・・

 いくら体を動かしちょっても、なるときゃなるんじゃねぇ・・・」

「かぁちゃ、だいじょうぶ?」

「うんうん。ガイアもごめんよ。

 明日には治っちょると思うけぇ・・・」


マォは腰に湿布を張って大人しく横になっている。

昼食は千秋がレタスチャーハンを作ってくれているので温め直せばいいだけだ。

温め直すだけならばアルノーでも出来る。


いつもの痛いの痛いの飛んでいけを使おうと思ったのだが送る相手が思い浮かばなかった。

アレは生きているか不明だし、狸とじらくりんぼはそろそろお陀仏になっているだろう。

では南の国のおバカはと言うとこちらもたぶん生きてはいない。

コ・チラサンが厳罰を与えると言っていた。

他に思い浮かぶ相手もいなかったのだ。



「そう言えばおかん、気付いていたか?」

「何が?」

「最近バックリーがコルディといい感じだ」

「いい感じ? はっ、そうゆう事?!

 そう言われてみりゃ今日も一緒に出掛けよったね。

 うわぁ、マジか。あれ、でもあの2人何がきっかけなんじゃろ」

「甘い物談義で盛り上がったそうだ」

「甘い物談義・・・ あ、そう。色気はないがまぁええか・・・」

「それにリオルも、いやこれは本人から聞く方がいいか」

「言い掛けて止めんなや、気になろうが」

「いやまぁ、そのうち分かるだろう・・・」


アルノーの歯切れの悪さからマォは考えてみる。

言い淀むような事とは何か。

しばらく考えて導き出した結論は・・・


(アルノーの歯切れが悪いって事は言いにくいんよな?

 って事は言いにくい相手・・・

 アシーナやイザベルであれば言うだろうし。

 まさかの侍女長?いやでもあの2人そんな雰囲気は皆無じゃし。

 となるともしかしてBL?

 エディは妻帯者だしバックリーはコルディとじゃろ?

 ルークとダルクは色恋に興味無さそうじゃったし。

 となると?・・・

 ガイアって事はさすがに無いよな。

 もしガイアだったらどつき倒す。

 となると? 残りはアルノー? うぇぇぇ、マジで?

 いやでもリオルの相手がアルノーならアルノーからは言いにくいか。

 なるほど、そうか。そうだったのか)


この世界でBLが容認されているのかは分からないが温かく見守ってやろうと思うマォであった。



日暮れになり土産を抱えた皆が戻ってくる。


「おかん、ただいまー!

 あんね、頼みがあるん。たい焼き作って!」

「おかえり。なんでたい焼き・・・」

「祭りの屋台と言えばたい焼きじゃろぉ!」

「まぁ言われてみればそうかも?」

「1個もないんじゃもん、たい焼きの屋台」

「そりゃまぁ異世界じゃしね?ある訳なかろう」

「じゃけぇ作って」

「今日は無理よ?・・・」

「えぇぇ・・・」

「えぇぇ、ってあんたねぇ・・・

 なんで儂が祭りに行けんかったんか考えてみ?」

「なんでってそりゃギックリで・・・

 あぁそうじゃった!すっかり忘れちょった、ごめんごめん。

 夕飯は色々買って来たけぇそれで許して?」てへっ

「治ったら作っちゃげよう。

 思い出したら儂も食べとぉなった・・・」

「おかん、たい焼きとは?」

「タイの形した饅頭?」

「タイとは?饅頭とは?」

「うん、説明めんどいけぇ作るまで待っちょきんさい・・・」


そんな3人の会話をリオルは穏やかに見守って居る。

それに気づいたマォはやっぱりアルノーと・・・と確信するのであった。


2日後、すっかりと腰も良くなりたい焼きを作る事にする。

どうやって作るのか?

昨日ダンジョンに潜ったジャック達が型を持ち帰ってきたのだ。


「いやマジでなんなん。おかしいじゃろ、タイミング良すぎじゃろ」

「おかん、おかしくてもええん。たい焼きが食べれれば!」

「千秋や・・・」


マォとしては型がないからどら焼きでいいかと思っていたのだが、ちゃっかりと型が手に入ってしまった。


「まぁええわ。餡子しかないけどええ?」

「大丈夫おかん! カスタードクリームとチョコクリームの瓶もあった!」

「ぶっ! マジかー」

「ついでに餡子1つカスタード1つってメモもあった!」

「は?! なにそれ。まさか鯵の人?! 人なんかは知らんけども!

 注文されても受け渡しどないするんよ!一応は作るけども!」


マォは「気にしたら負け」と呪文のように呟きながら準備を進めた。

たい焼きの型は竈にスポッとハマるようになっていた。


「いやだからなんでジャストフィットするん?!」

「サイズ合わんかったら作れんじゃん。おかん、気にしたら駄目なんじゃろ?」

「まぁそうじゃけど・・・」

「あ、私こっちの竈でたこ焼き作るけぇ」

「はいはい。

 ・・・

 ・・・・

 ん?今なんて? たこ焼き?!

 だって型も道具も・・・   あるんかーいっ!」


隣の竈には同じくジャストフィットしたたこ焼きの型が乗っている。

そして千秋の手にはひっくり返すための目打ちが握られていた。

まさかと思い後ろのカウンターもどきを確認すれば、紅ショウガに青のり、鰹節とみじん切りにしたキャベツが並べられていた。

ソースはダンジョン産に物があるのは知っている。鰹節もあるのは解っている。

だがまさか紅ショウガに青のりまであるとは思わなかった。


「ねぇ千秋。一応聞くけど蛸は?」

「あー、そうそう忘れちょった! おかんちょっと捌いて?」

「今?! はよ言いんさいや」

「へへへ、忘れちょったん。はいこれお願い」

「「「 ぶっ 」」」


手伝いに来ていたイザベルと侍女長がマォと同時に吹く。

はいと差し出された千秋の左腕にしっかりと蛸が絡みついていたのだ。


「ちぃーあーきぃー・・・

 アンタねぇ、なんで蛸くっつけたまま平然と準備せよん!

 あぁぁ、吸盤がこねぇにくっついてからに」

「えー、だって取れんかったんじゃもん・・・」

「じゃけぇ先に言やぁよかったろうがね」

「へへへ・・・」

「これ、生き物です?」


イザベルが恐る恐る蛸を突くと ブシュッと墨を吐かれてしまう。


「 ・・・ 」

「敵に襲われるとそうやって墨吐くん・・・」

「先に言って欲しかったです、マォ様・・・」

「すまん、つつくとは思わんかったん」


イザベルに洗い流してくるよう言ってマォは千秋の腕から蛸を剝がしにかかる。

強引に引っ張ると内出血が酷くなるのでまずは塩と小麦粉を振ってヌメリを取りつつ蛸の注意をこちらぬ向ける。

その後にゆっくりと1つずつ剥がしていく。

はがれた吸盤には侍女長が素早く小麦粉を掛けていき、再びくっつくのを防いだ。

すべての吸盤がはがれ千秋から蛸を引き剥がすと、小麦粉で揉んだ後に水洗いをして汚れを取って行く。

2~3度繰り返せば大丈夫だろう。蛸はすっかり脱力している。

胴にある嘴を取り除き内臓を引き抜いた後は綺麗に洗って足と同に切り分ければ完成である。


「あ、おかん。たこ焼きサイズにぶつ切りにしちょって」

「へいへい。って生のまんま入れるん?」

「駄目なん?」

「普通茹蛸なんじゃないん?」

「そうなん? じゃあ茹でちょって」

「あんたねぇ・・・」

「へへへ・・・」


本来は切り分ける前に茹でるのだがマォも久々なので忘れていた。

時間短縮になるしまぁええかと切り分けた蛸を茹でていく。

茹で上がればぶつ切りである。


そうしてやっと下準備が終わったので作り始めるのだが・・・


「おかん、揚げ玉忘れちょった」

「作らんよ・・・」

「えー・・・」

「えー、じゃないん。今回は諦めんさい。いつまでたっても完成せんじゃん!」

「はぁーい・・・」


揚げ玉があった方が確かに旨い。

旨いのだが揚げ玉を作るとなればまた時間がとられて遅くなってしまう。

いつまでたっても食べられないではないか・・・


焼き始めれば作業は順調に進んで行く。

たい焼きの生地は小麦粉と米粉を半々にしたのでもっちりと焼きあがるし、たい焼きの生地には長芋を摩り下ろしていれてあるのでフワフワに仕上がる。


くるっくるっ

たこ焼きをくるくる回す千秋。

侍女長とイザベルはその作業を不思議そうに見ている。

次々と出来上がるたこ焼きとたい焼き。

と同時に次々と皆の胃袋へと消えていくたこ焼きとたい焼き。


「おかん、これうちらの分って残るんじゃろうか」

「よけちょかんと残らんよ・・・」

「分かった、私のとおかんのはよけちょく・・・」


ガイアは食べれているのかとチラ見したマォは口の周りがアンコだらけになっている姿を確認出来た。

甲斐甲斐しくアルノーが世話をしているようだ。

そして忘れない内にたい焼きを別けておき、餡子1つとカスタードクリーム1つを小皿に入れておく。

すべてを焼き終えた時には小皿は空になっていた。


(いつのまに・・・)


「おかん、うちらも食べようや」

「そうじゃね、ってないんじゃけど?」

「え?ちゃんと別けて置いちょったよって、ホンマじゃぁ。なんで無いん?」


確かに置いてあったのだろう、さらには餡子の残骸とソースの残骸が残っている。


「どこいったよ儂等のたい焼きとたこ焼き!」

「えー、私が食べたくておかんに頼んだのにぃ・・・」


「ほっほっほっ、馳走になった。美味であったぞ。 ほっほっほっ」

「は?!マテこら玄武!」

「えー、ちょ。1個くらい残しちょってよ・・・」


こうして食べれなかった二人は後日の深夜にこっそりと作り直す事になったのであった。

読んで下さりありがとうございます。

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