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プリローダ⑨

プリローダに戻ってみれば、何やら人が増えていた。


「え? どゆこと?」

「はて、人が増えるなどと聞いた覚えはないのだが」

「俺も聞いてないな」


マォ、ルーク、アルノーの3人は心当たりが無く頭を傾げているとエイダが駆け寄ってくる。


「お帰りなさいませ。食堂の方へどうぞ。

 そこで説明させていただきますので」

「そうなん?わかった」


荷解きするほどの荷物も無いのでそのまま食堂へと向かえば・・・


「あ、おかん。おかえり。えらいなごぉ留守じゃったね」

「「「 うぉっ! 」」」

「へ?! 千秋? は? え? 嘘、どないなっちょん」

「説明するけぇ、まぁ座りんさいや」

「あ、うん。そうじゃね?・・・」


食堂には椅子に座ってお茶を飲む千秋が居た。

但し、頭には小さな犬耳がある。マォはまだその事に気が付いてはいない。


「それにしてもおかん、全然変わらんね」

「そりゃね?まだこっちに来て1年くらいなのに老けちょったら嫌じゃろ」

「そりゃそうじゃね。ってまだ1年くらいなん?」

「そうよ。んで千秋はいつ来たん?

 っちゅうか頭に何つけちょんこれ」

「いたたたっ、なにするん」

「え?」


マォは千秋の頭に小さな犬耳を見つけたのだが、よくテーマパークで売っている様なカチューシャかと思い引っ張ったのだ。

当然取れる訳が無いので痛い。


「えー、これ千秋の耳なん?ええなぁ、羨ましい」

「そうじゃろそうじゃろ、えかろう?

 って、そうじゃないん・・・」


千秋によれば、カレフの西側で人族と獣人族のハーフとして生まれたらしい。

大病をする事も無くトラブルに巻き込まれることも無く元気に育ち、恋人と旅行でウォーカー領へ向かっていたところ大雨による土砂崩れに巻き込まれて千秋は助け出されたものの恋人は亡くなった。

と同時に千秋としての記憶も蘇ったらしい。


「結構大怪我じゃったみたいなんじゃけど

 アシーナさんとイザベルさんがずっと付き添って世話してくれちゃったん」

「そうなん。今は大丈夫なん?」

「うん。まだちょっと足が痛いけど大丈夫じゃよ」

「そっか、アシーナもイザベラもありがとう。

 んでなんで此処におるん?」

「私がもしやと思い此処へお連れしました」


エイダは皆に頼まれてマォに渡す為に千秋とゆっちゃんの肖像画を描いていた。

だからだろうか、どことなく千秋があの千秋なのではないかと感じたようだ。


「そうなんじゃ。エイダ、ありがとうね。

 千秋がここにおる訳は分かったとして他の人達は?」

「エディの伴侶とバックリーの両親と妹。私とアシーナの兄弟もおりまして。

 後はその・・・」


「おぉ、ルークやっと戻ったか」

「叔父上?!」

「へ? 叔父上?」


恰幅の良いどこぞの砂漠のキャラバンのような姿の男性がにこやかにやってくる。

ルークの叔父、つまりはエルフィンの叔父でもあり一応は元王族である。


「その姿はいったい・・・」

「どうだい、似合うだろう?僕は元々旅が好きだっただろ?

 ルークが独立したと聞いてね。

 何か力になりたくて貿易を担う商隊を作ったんだ」

「はぁ・・・私が独立したのではなくてマォですね」

「ああ、そちらが招き人のマォ殿か。

 確かルークの想いび・・・フガフガモガッ」

「何処情報ですかねそれ!余計な事は言わないでいただきたい!」

「あの、ルーク? せめて鼻の穴は塞がないであげて・・・」

「はっ・・・」


慌てるあまりに口のみならず鼻まで塞いでしまうルーク。

お決まりのパターンになっているような気がしないでもない。


この叔父、名はアナキンと言い先王の末の弟で歳はルークやエルフィンとも近い。

歳が離れた末の弟という事もあり割と自由に生きて来た男である。

旅好きで社交が得意。陰で兄王を支えていた人物である。

では何故エルフィンの手助けをしなかったのか。

しなかったのではない、古狸共が近づけないようにあれこれ手を廻していたのだ。


「僕が居ればこんな事にはさせなかったのだけどね。

 まぁあの古狸共も居なくなった事だし

 エウリケも頑張っているようだから必要なら手は貸すよ。

 そうそう、あの古狸達の末路聞いたかい?」

「いえ、特には聞いてませんが・・・」

「なんでもオチムシャハゲと言う厄介な病気にかかったとかで

 見るも無残な頭髪をしているらしいよ。

 後はタヌークィとジラクールは一族もろとも奇病に罹ったとかで

 全身の毛がないらしい。眉も睫毛も鼻毛すらないものだから

 病に掛かりやすくなったらしくてね。そろそろ血筋は絶えてるんじゃないかな」


それを聞いたマォは遠い目になってしまう。


(おかしいな、頭頂部だけでよかったんじゃけど)


だが今更気にしたところで狸とじらくりんぼである。

マォは気にしない事にした。


「それにあそこは貧民街よりも酷い有様になっているからね。

 後半年も持たないんじゃないかと僕は思っているよ」

「そうですか。それにしても叔父上よくそのような事知ってますね」

「あそこに残しておいた部下も撤収させたからね。

 今後の事は僕にも情報は入ってこないかな」

「なるほど。あの場所の事は気にしない方がよいです」


「おかん、そねぇに酷い場所があるん?」

「あー、元凶がおる場所じゃね・・・」

「あー、察し。元凶なら滅んでもえかろうね。 その方が世の為じゃろう」

「んだねぇ」


「そうだ。マォさんだったかな。

 僕は旅を続けながら貿易をするんだけど、ここにも店舗を置いておきたいんだ。

 許可を貰えるだろうか」

「見ての通り少数しか住んでませんよ?」

「うん、でもこれから人数も増えるんじゃないかな。

 家族連れの人も居るみたいだし、赤子の物も必要だと思うんだよね。

 それに諸外国、他大陸の物も入荷出来るし

 スェイキョウ商会とも連携出来ているから日用品なんかも取り扱えるよ」


そう言われてマォは少し考える。

確かに冬場なんかは町まで行くのに苦労する。

それにド・ウォール連邦国が軌道に乗れば往来する人も増えていくだろう。

そうなれば、ごったがえず町へは行きたくない・・・


「最小限の人数でならば受け入れます」

「うんうん、ありがとう。息子夫婦と下働きの合計3名でお願いするよ」

「分かりました」


アナキンは息子たちの家兼店舗が完成するまで滞在し、その後再び旅に出るという。


それにしてもアナキンにしろ獣人達の家族にしろ、よくあの森を抜けて来れたものだと思う。


『皆ちゃんと判別してるから大丈夫。マォに害のある奴はペッてしてる』

「ぺっ? ペッてなにかな?もっちゃんや・・・」

『知らない方がいいと思う・・・』

「そ、そっか・・・」


マォの頭に浮かんだのは寝起きのおっさんがよくやる「カーッ( ゜д゜)、ペッ」だった。

さすがにそれは無いなと思ったのだが実際はそれに近い物がある。

ラージタラントのような昆虫型は無理だが他の魔獣達は不届きな侵入者を一旦口に含み、カーッ( ゜д゜)、ペッと吐き出していたのだ。

ちなみにササミなんかは「ガラガラガラッ」とウガイ付きである。


「おかん、なんか騎獣や魔獣っておもろいね」

「あんね千秋や。ここの子達が変わり者なだけで全部がそうじゃないからね?」

「そうなん?まぁおかんがおかんじゃけぇ類友なんかね?」

「ちょ、それどぉゆぅ意味?」

「まぁええじゃ。気にしんさんな。

 あ、私このまま此処に住むけぇよろしくね」

「そりゃかまわんけど、あんたの生みの親とか大丈夫なん?」

「あー、親おらんのんよ。孤児院育ちなん」

「マジか・・・」

「ゆうてぶち楽しい孤児院じゃったけぇね?

 おかんが想像しちょるような事なかったけぇね?」

「そうなん?まぁそれならええけど。家はどうしようか」

「おかんとこ部屋あいちょんじゃろ?そこでええよ」

「アルノーとガイアもおるけど大丈夫?」

「イケメンお兄じゃろ?大歓迎!

 ガイアはあの天使みたいな子じゃろ、もぉ仲良しになったよ」

「うん、あんたはそうゆう子じゃった・・・」


話が終わった頃合いにはちょうど夕食も出来上がったようだった。

ガヤガヤと人も集まり始める。

エディには照れくさそうに「自分の妻であります!」と伴侶を紹介され、バックリーには「両親と妹であります!」と家族を紹介された。

エイダの兄2人は有難い事に薬師だと言い、アシーナの兄と弟は冒険者なのだと言う。

マォ達がよろしくと挨拶をすれば皆丁寧に挨拶を返してくれていた。


「ほかに婚約者とか家族とか呼びたい人はおる?」


夕食を食べながら王都手伝い組にマォは聞いてみた。


「わたくしの家族と言えば皆様ご存じの様に

 スェイキョウ商会の会長と支店長でございますから呼ぶまでもありませんね」

「自分も特に呼びたい人はいないであります!」

「私もだな。スカイラーなんぞ呼んでみろ・・・」

「私がどうかしたか?」

「ぐえsxcdrtfvgh」

「何をそんなに驚いておるのだルーク」

「な、な、なんでもごじゃりゃん・・・」

「ルーク、動揺しすぎじゃろ・・・

 喋り方がおかしなことになっちょるよ」

「スカイラー様はどうしてこちらに?」

「皆が無事戻ったというので顔を見に来ただけだ」

「左様で・・・」

「それでルークは何故動揺を?」


マォは王都手伝い組に此処へ呼びたい人が居るかを聞いていたところだと説明した。


「なるほど、ルークは私が来るのではと思ったのだな。

 心配するな。地中走行にも慣れたし来ようと思えばすぐに来れるからな私は。

 それに私がここへ住むと他の領主達も来てしまいそうではないか」

「「「 あー・・・ 確かに 」」」


王都手伝い組からは特に呼び寄せる相手は居ないという事で、マォはこれ以上は余程の事情がない限り移住受け入れを拒否する事にしたのだった。

読んで下さりありがとうございます。

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