新王都エルケイム③
ド・ウォール連邦国。
これがエウリケが治める国の名前だ。
とは言え4つの領とプリローダと王都エルケイムで構成されているので、基本的には各領主が自治を行う。
勿論国としての決まりごとは存在する。
判り易く言えば、憲法があり、その下に領毎の条例があると言えばいいだろうか。
王都エルケイムには各領の領事館があり、領主に代わり国との連絡役を担っている。
また各領同士の交易交渉なども領事館で行われる。
ウォーカー領からはスカイラーの息子であるアンソロが領事館へと出向している。
プリローダは領事館を作らない。あくまでも独立特区でありすべてウォーカー領経由で行うからだ。
それに対して何故マォが代表者として出てこないのかと不満を漏らす国はあった。
「嫌がる者を引きずり出して何がしたいのか。
己の都合を押し付ける者がマォ殿は一番お嫌いだ。
無理を強いるのであれば国交は取りやめても良いのだがな」
エウリケの一言でそれらの国は口を閉ざす事になる。
そして建国を祝う祭りが開催された。
3日間にわたって盛り上がる祭りで多くの露天が立ち並び、王都は一気に活気づいた。
特に大きな問題が起きる事も無く、人々も皆笑顔である。
周辺国からも足を運ぶ人々が居た。
当然ながら入国審査は厳しくしてあるので不届きな者は現れずに済んだのだが、他大陸にある魔族の国の王が現れた時はちょっとした騒ぎになった。
背には黒く大きな翼と頭には羊の様な角。目は海の様な青で肌は日焼けしたような小麦色だ。
地面に付くほど伸ばした髪はマォと同じ黒髪でメッシュの様に所々に蛇が絡んでいた。
鋭い目つきで長身、いかにも異形と言った感じなのだが両手で巨大な果物籠を抱えて現れた。
「招き人はフルーツがお好きだと伺ったのでな。
鮮度が大事なので我が持参したのだが、迷惑だっただろうか・・・」
(なんだろう、しょぼくれた耳とシッポが見える気がする)
入国審査官の1人は思わず報告書にそう記入してしまった。
特に問題も無く、マォとは挨拶状も交わしたと言うので入国を許可したのだが審査官は後になって気付く。
(魔族の国の王なのにお供も連れずに1人で来たのかよ!)
1人で来たところで身を守れるだけの力はあるのだから心配は無用である。
すぐにエウリケに報告が入り、相手が国王なので無視も出来まいと昼食へと招待する。
その様子を見ていたマォはデザートとして持ってきてくれたフルーツでタンフルを作ってやることにした。
「だってフルーツをてんこ盛りで持ってきたって事は食べたいんじゃないんかね」
マスカットや巨峰、白苺に黒苺。オレンジ色の林檎に青りんご。そう、青い林檎・・・
「青林檎って儂の感覚じゃと黄緑なんじゃけど
こっちじゃとホンマに青いんじゃねぇ。
しかも皮だけじゃなく中までかいっ!」
色合いとしてはカラフルになって綺麗である。
だが見慣れない青い林檎を口にするのは勇気がいる。
「マォ殿の世界には青い林檎は無かったのですか。
これ、美味しいんですよ。めったに手に入りませんけどね」
この大陸では採れない品種らしく、ごくたまに輸入品として出回る事があるのだと料理人が教えてくれる。
なるほどと思いながらマォは切り分けた1つを口に入れた。
(んまっ! なんこれ、まんま蜜入りのフジじゃん!
うわぁ、この味とまた出会えるとかぶち嬉しいんじゃけど!)
シャキッとした実で噛めばじゅわっと果汁が溢れ爽やかな酸味と甘さが口の中に広がる。
マォがこよなく愛した蜜入りフジそのものである、色以外は。
余りにも嬉しかったマォは大量にタンフルを作り上げ、保存箱に詰めて土産として渡すようにエウリケに預けた。
受け取った魔族の国の王は殊の外喜び、我が国の子供達に食わせてやてると嬉々として帰って行ったらしい。
祭りも終わり王都も落ち着きを取り戻したある日、マォ達は城を後にしプリローダヘと帰路に就く。
本当ならば祭りも見てみたかったし、エルケイムの町を散策もしたかった。
だが最初からマォが姿を見せてしまえばよからぬ輩が住み着いてしまっても困ると考えて控えた。
少し離れた小高い丘から町を一望する。
城を取り囲むように家々が立ち並び、その家々を取り囲むように畑や牧草地が広がっている。
道も整備され並木も植えられている。
まだまだ発展と中途いった雰囲気だが活気は溢れている。
色々な種族の人々が道を行きかっているのが見える。
「このままなんの問題も無く穏やかに発展してくれるとええね」
「大丈夫だろう。エウリケもオーウェンも分かっているさ」
「ええ。エルフィン様も身に染みておられるでしょうしね」
「それに、もし同じ轍を踏むようであれば完全に見捨ててしまえばよいのです」
「まぁそうじゃね。
ほんと、儂これ以上はどねぇに頼まれても関わらんからね?」
「ええ、マォ殿は十分に手を貸して下さいましたからね」
「さて、名残惜しいけど行こうか。また来年にでも様子見に来ようや」
王都にはチョコやササミの仲間がこっそりと紛れている。
小さな蜘蛛だったりコケコになりすましていたり。
何かあればチョコやササミに連絡があるだろう。
「アンナとハンナにも会いたかったなぁ」
マォはボソリと呟く。
アンナとハンナは城を出てウォーカー領へと向かう途中で狸とじらくりんぼから助け出した幼い姉妹だ。
元エルム、今は首都となったこのエルケイムで暮らしている。
別れてから1年近く経った今、成長したのだろうなと思いを馳せる。
「うん、会いたかったぁ」
「私も会いたかったよ、お姉ちゃん」
「ふへっ?!」
思いもよらず声が聞こえて変な声が漏れてしまったマォである。
声をした背後に振り向けば、ほんの少し背が伸びたアンナとハンナが母親と共に立っている。
「うっそ、マジで? アンナ?ハンナ?」
「うん、アンナだよっ」
「ハンナだよ、お姉ちゃん!」
「なんでここにおるん? どうやって来たん?
元気じゃった? 病気とかしちょらんかった?」
「元気だよ!あのね、お母さんがね、新しい町長さんのところでお仕事してるの」
「違うよアンナ。町長じゃなくて、えーと管理関取者だよ」
「関取? 管理関取ってなんじゃろか・・・」
「申し訳ありません。ハンナが言っているのは管理責任者の事でございます」
ここで母親のカンナが説明してくれる。
王都は王家直轄の地となる為、領主は不在となるが管理する代表者は必要となる。
町長という役職名では心許ないと言う訳で管理責任者を置く事とし、ミランダがその位置に付いた。
王妹と言う立場では微妙な場面も出てくるため公爵となった。
ミランダは自分の屋敷の使用人を雇う際、マォが気に掛けていたアンナとハンナの事を思い出しカンナに声を掛けてくれたのだとか。
「わたし共は貧しくて鑑定の儀は受けておりませんでした。
ですがこの度ミランダ様に雇っていただき
配属先の適性を見る為に鑑定の儀も受けさせて頂けました。
わたしは土属性で植物系のスキルを持っているそうで
今は屋敷内にある薬草園で働いております。
これもマォ様が娘達を救ってくださったご縁から得た物です。
本当に、本当にありがとうございます」
「あのね、あのね。今はね、お母さんと一緒にお手伝いしてるの」
「おうちもね、お屋敷の中にあるの。お勉強も教えてもらってるの」
「そっか、じゃあ安心じゃね。よかったぁ。
それにミランダの屋敷にいるならまた会えるじゃろうし」
「わぁい、やったぁ」
「よかったぁ」
ルークやダルク、アルノーにジャックも安心したようで顔が綻んでいる。
しかしどうやって此処まで来たのか。
「あのね、もっちゃんのお友達に連れて来てもらったの!」
「そうなの!」
「もっちゃんの友達?」
「うきゅっ」
言われてみればもっちゃんの横にオレンジがかった色合いのモファームが居る。
「あれはミランダ王女のモファームだな」
「名はなんだったか忘れたが・・・」
『名前はふぃーちゃんだよ!』
「ふぃーちゃんらしいよ・・・」
「「「 ふぃぃーちゃん! 」」」
「うきゅっ」
「ふぃーちゃん、連れて来てくれてありがとね。帰りもお願い出来るじゃろか」
「うきゅっ!」
余り遅くなると暗くなってしまう。
マォはアンナとハンナを抱きしめて別れを告げた。
カンナは深々と頭を下げた後子供達とふぃーちゃんに乗り込み帰って行った。
当然の様に地中へ潜って・・・
「大丈夫なんですかね、あれ・・・」
「確かに人眼にはつかないだろうが・・・」
「子供達は経験済みでしょうけど、カンナさん大丈夫だろうか」
「来た時も地中だったんじゃろうし、別に驚いた様子も無かったし。
大丈夫なんじゃね?・・・」
見送った後にマォ達も騎獣に乗り込んで出発するのだが、やはり地中へ潜っての疾走であった。
読んで下さりありがとうございます。
リアクションやブックマーク、評価ありがとうございます。
☆1つでも増えているとすこぶる喜びます。
誤字報告もいつも助かっております、(人'▽`)ありがとう!
なお、先日保護したバブ猫は月末で生後2か月を迎えます。
まだトイレは砂で遊んでしまうのでシートを使っていますが順調に育っております(*'ω'*)b




