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新王都エルケイム②

畑仕事が終わり騎獣達の所へ行こうとすれば何故か皆付いてくると言う。

ぞろぞろと移動してみれば普通に獣舎が立ち並んでいる場所へと到着した。


「もしかして騎獣って此処で寝てるん?」

「「「 イェスマム! 」」」

「狭くね?・・・」


ラッセルサーペントやラージタラントはもっちゃんよりも大型だ。

この獣舎だともっちゃんでさえギチギチになりそうである。

騎獣達のおねがいとはこの事だった。


「全員自分の騎獣の横に整列!」

「「「イェスマム!」」」

「「「 キュイ! 」」」


ずらっと並べばなかなかの見栄えである。

少しの間見惚れてしまったマォだったがすぐに気を取り直す。


「自分の相棒の姿よく見てみ?

 どう考えても獣舎とのサイズが合ってないよね?

 しかも床がむき出しの地面ってどうゆう事?

 自分達に置き換えて考えてみようか。

 勤務が終わって疲れ切って自室に戻ってきたら

 寝転べないような狭い部屋で硬い床しかない。

 んなところで寝れる?疲れが取れる?」

「無理であります!」

「じゃろ?

 しかもサーペント種とタラント種、モス種と種類ごとに

 適切な飼育環境って違うと思うんよ。

 当然コカトリスやマンバも違うね。

 ちゃんと個々に合わせて作っちゃげんにゃあ・・・

 ってマンバ? マンバがなんでおるん。

 マンバは騎獣じゃなかろう!」

「ぴ?」

「いや、ピじゃなくてね? 可愛いけども!そうじゃなくてね?!」

『マォの護衛で着いて来たんだって』

「儂の護衛・・・ あぁそう・・・

 ありがたいよ?ありがたいけどもね?

 先に教えておいてくれるかな?!」

「ぴ」

「はぁ、マンバはここ!そこじゃ踏まれたら危ないじゃろ」


マォは自分の肩をポンと叩いてマンバを呼んだ。

マンバは嬉しそうに飛び乗りスリスリ頬擦りをしている。


「話が反れたけども。

 取り合えず自分の騎獣にどういったのがいいか聞いて整えちゃげんさい」

「「「 イェスマム! 」」」


数日後、それぞれに合った環境が整えられた。

朽ち木や流木を飾り、落ち葉や藁を床に敷き詰め止まり木が用意されていた。

中には低木や花が植えられている場所もある。

本人達が喜んで居る様なのでよかったと思うマォだったがある物を見て仰け反った。


「なんでこねぇなもんが飾っちゃるん!!」

『皆の救世主だからみたい。よかったねマォ』

「よかねぇわぃ!勘弁してくれよ・・・」


誰が描いたのかは知らないがででんとマォの肖像画が獣舎の一角に飾られていたのである。

後年、城を訪れた者達の騎獣達がこぞって参拝するようになり聖地と呼ばれたとかなんとか・・・



その後も畑仕事をしつつ、騎士や兵士に基礎訓練を教えている。

準備運動がてらのストレッチに、訓練場の外周の走り込み。

スクワットに腹筋と背筋の運動。そして素振り。

但し普通の素振りではない。鍬で、である。

何故鍬なのか。 重心が先端にある為しっかりと握りまっすぐに振り下ろさなければ重心がぶれてよろけてしまう。

つまりは普通に模擬剣で素振りするよりも鍛えられるのだ。

慣れるまではフラつく騎士や兵士も多かった。

文句を言う者もいたのでマォがやって見せた。


「儂が出来て若い騎士や兵士が出来ないとかゆわんよね?」

「い、イェスマム!」


最初は普通に柄の中心部分を持ってやる。

慣れてブレなくなれば中心よりも下の部分を持つ。

それにも慣れたらさらに下を、というようにすれば腕も鍛えられる。

2人1組で打ち込み練習をする時などはさすがに模擬剣を使うのだが、剣の振りが早くなったと好評だった。


メイドや侍女、下働きの者達にはマォの講義を受ける事が必須となっている。

亜人種や騎獣への偏見を無くす為なのだが、まずはエウリケが4代前のウォール王の考え方について語った。

次にマォが人種差別がどんな悲劇をもたらすかを教える。

そう、国を出る事を決めたあの事件を話して聞かせたのだ。

亜人種、特に獣人族がどんな差別を受け迫害されているか。

しかもそれが日常的に行われていて幼い子供までが嫌悪の目を向ける。

罵倒され命を命とも思わずに奪われていった。

マォは今でも忘れる事が出来ずにいる。

そしてガイアの身に起きた事も話して聞かせる。

何故そうも簡単に命を軽視する事が出来るのか。

皆には噂や偏見、先入観などを持たず自分の目で見て耳で聞いて言葉を交わして判断して欲しい。

1人の人が悪だからその国すべてが悪と言う訳でもないし、その種族すべてが悪と言う訳でもない。

これから城には色々な国から色々な種族の人が訪れるだろう。

どうか今一度自分に問いかけてどうしても無理だ嫌だと思うなら退城してくれとマォは語った。


「まぁどこぞの古狸の様に一族揃って救いようが無い場合もあるけども」


マォがポソリとつぶやけば侍女さんズはうんうんと頷き、メイドーズは遠い目になっていた。

何か嫌な思い出でもあるのだろうか。

気にはなるが声は掛けずにおくマォだった。


最終的には3人の脱落者が出た。

亜人種うんぬん以前の問題で、1人は侍女でこともあろうかエウリケに夜這いを掛けて来た。

しかもその理由が王妃になりたいとかならまだよかった。ただ単にエウリケの声が好きだと言う声フェチで「どうしてもあの声で喘いで欲しかった」と言う理由である。

未遂で済んだのはマンバのお陰だ。頬に「変態」の烙印を押され追放となった。


次の1人は兵士だったのだが、これまたこともあろうかマォに夜這いを掛けようとした。

「どうかそのお声でわたくしめを罵倒しそのおみ足で踏みつけ蹴り倒してください!」とぬかしやがったのである。

マォが何かをする前にマンバが捕らえて事無きを得て居る。同じように頬に「変態」の烙印を押され追放された。


最後の1人はマトモな理由である。これまでなんともなかったのに玉葱アレルギーを発症してしまった料理補助の若者だ。なんとも気の毒だがどうしようもない。

実家に帰ってパン屋を手伝うと言うのでマォは餞別にとバターロールのレシピを渡してやった。

バターを使う為少し値が張ってしまうが、特別な日や旅行者には売れるだろう。

若者は何度もマォに頭を下げて退城していった。



なんやかんやであっという間に2か月が過ぎた。

ルーク達もおおよその基盤が出来上がったと言うので、後の事はエウリケ達に任せてプリローダに戻る事を決めた。

細かい事は実際に政に関わる人達で決めて行って欲しいと思うし、そこまで関わってしまうと何かある度に呼び出されそうだったからだ。

但しマォは2つだけ条件を出した。

各部署に必ず女性を2人以上配属する事。

ウォール国では女性が要職に就く事は無かった。

その為料理人や騎士ですら女性は少なかったのだが、女性ならではの視点で気付くことだってある。

いずれ王妃を迎える事となり王女だって誕生するかもしれない。

そうなれば女性でなければ警護が難しい場所だって出てくるだろう。

そして侍女やメイドを含めて、女性ならではの事情による休暇の取得も可能にするように。

男性陣はイマイチ分からないと言う顔をしていたのでマォは説明する。


「女性だと月に一回、ツキノモノがくるよね?

 個人差はあれど腹痛に腰痛も伴うんよ。酷いと頭痛まで出てくるし

 出血量が多い場合は貧血だって起こすん。

 じゃけぇ最低でも3日は休みがあった方がええじゃろうね。

 後は妊娠中や産後の休暇、乳幼児がいる場合の休暇も必要じゃないんかな」

「ツキノモノと言うがたいしたことではなかろう。病気ではあるまいし」

「出産も病気ではないからなぁ」


ぶつぶつと文句を言うのはいまだ独身の中年層である。

この条件はマォの経験に基づくものである。

どんなにつらくとも休みがもらえず、出勤してもトイレに籠る事も多かった。


「ほぉ、たいしたことはない、ねぇ・・・

 じゃあ体験してもらおうか。

 その上で同じ事が言えるなら休暇は無くてもええよ」


文句を言った者達に砂袋が取り付けられる。

妊婦体験をしてもらうのだ。

腹に6㎏、胸に3㎏、尻に2㎏。その状態で3日過ごせと言えば2日目には音を上げた。


「用足しがあれほど苦労するとは。おまけに肩こりが酷い」

「寝返りも打てぬし、腰が・・・」

「足元が見辛く階段がきつい。普通に歩くにしても浮腫みが酷い」

「じゃろ?妊婦の苦労が分かった?

 んじゃ次はツキノモノの苦労と出産の苦労を・・・」

「我等が悪かった、勘弁してくれ」

「いやいや、実際経験せんと分からんよね?

 今はそうやって言っててもすぐ忘れて文句ゆうても困るんよ」


そう言ってマォは魔法で疑似体験させる。


「ぐっ・・・耐えれるが・・・

 これが続くのは困る。集中力が・・・」

「バカを言うな、このような持続的な痛み耐えれぬ」

「ちなみに陣痛とか分娩の痛みはそれらの何十倍にもなるよ?

 そうじゃねぇ、例えるなら・・・

 尻から西瓜が出てくる感じ?」

「「「 ヒェッ 」」」


こんな感じで女性特有の事情による休暇は確保された。

なお男性陣でも出産に立ち会う場合や育児に参加する場合は休暇の取得が可能となった。


この制度が出来た事により、女性が働く場所も増えた。

なおかつ事情をくんで休みが貰えるとあって、女性達のやる気は漲り活気が溢れてくる。

書類の仕分けや誤字誤算のチェックなど男性陣が苦手だった部分もカバーしてもらえる。

結果としては効率もあがった訳で、この制度は後々周辺諸国でも取り入れられる事となるのだった。

読んで下さりありがとうございます。

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