新王都エルケイム①
のんびりと暮したい、そう侍女長と話した3日後マォはエルムの町へと来ていた。
勿論マォだけではない。
ルーク・ダルク・アルノー・リオル・ジャック・侍女長・マリア・カトルも一緒にだ。
イザベル達も来ると言っていたのだがそれだとプリローダに人が居なくなってしまう。
用が用なだけにガイアを連れてくる訳にも行かず留守番組として残って貰っている。
何をしに来ているのかと言えば、周辺国の意見もあり国として立ち上げる事になったので新王都を作るための手伝いを頼まれてしまったのだ。
城と言ってもエウリケの希望で小さな城になってはいるがそれでも城である事には変わりなく、そうなれば人手が必要となる為雇うしかない。
雇うにしても為人を確かめねばならずエウリケやエルフィンだけでは心許ないと頼まれた。
また騎士や兵士を雇うにしても人選に困ってしまう。
オーウェンも戻って来ては居るのだが1人では限界がある為、これまた手伝ってほしいと頼まれた。
ルークとダルクは文官など書類仕事を受け持つ面々や各大臣などの幹部候補を選別し手解きをする。
アルノーはオーウェンと共に騎士の選別をし護衛や警護などに振り分けていく。
リオルとジャックは兵士の選別と訓練を、侍女長とマリアは侍女やメイド、侍従などの選別と担当部署の振り分けを。
カトルはこのまま料理長となる事になったので料理人や補助の選別と調理を。
ではマォは何をするのか。
城勤めが確定した人物達に亜人種や騎獣に対する偏見をなくすための講義を行う事になったのだ。
講義といっても小難しい話をするのではない。
皆等しく同じ命であり種族が違うからと軽視してはならないと話すだけである。
マォの話を聞いて受け入れる事が出来ないと反発する者は国外へと追い出される事となる。
つまりは最終試験の様な物だ。
それと同時に騎士や兵士に基礎訓練を付けて欲しいとも頼まれている。
何故儂が、と思うマォだがスカイラーの館で足腰を鍛えろと言った事が原因である。
どう鍛えればよいのかが分からず騎士団長と各小隊長が教えをこいに来た事があったのだ。
だったらその小隊長たちが教えに来ればよいのではと思わなくもないが自領を離れるのは無理なのだろう。
すこぶる面倒臭いと思うマォだが最初が肝心だ。
ここで意識改革をさせなければ結局は元のウォール国と同じになってしまうだろうと考え渋々引き受けたのだ。
新王都となるのはエルムとケイルを統合させた町となる。
名前はエルケイムとなった。
元々住んでいる住民はそのままの生活を続けて貰う。
王都なので領主も必要ないが纏め役は必要となってくる。
出来れば信用のおける昔馴染みの方がよい。
エウリケは誰か居ないかと頭を悩ませていたのだが心当たりがミランダしか浮かばない。
駄目元で手紙を出してみれば二つ返事で引き受けてくれる事になった。
爵位があったほうがいいだろうという事になり後日検討する事となった。
「冬支度もあるけぇ最長で3か月しか手伝わんからね?」
「はい、ありがとうございます」
「無理を言ってすまない。だがどうしても基盤は整えておきたいのだ」
「何事も最初が肝心なん。アレの国と同じ事になるようじゃったら
今度は遠慮なくどつき倒すよ?」
「ご心配には及びません。マォ殿の手を煩わせるまでもなく
その前に私の手でトドメを差しますから」(ニコリ)
「うん、エウリケ任せた」
エウリケは何処からか持ち出した草刈鎌を手に持ちすこぶるいい笑顔だ。
サッと頭に手をやるエルフィン。
「人材募集は済んでるん?」
「使用人に関しては侍女長に一任してあります。彼女の目は確かですから」
「すでに元使用人には声を掛けてありますが、さらに厳選する予定でございます。
侍女やメイドに関しましてはわたくしとマリアで。
侍従に関しましてはダルク様に。
料理人に関しましては最終判断をカトルに任せてございます」
「なるほど、じゃあ安心じゃね」
「雇用契約書も魔法紙を使った物で作りましたのでご安心を」
「前にも魔法紙とか魔法契約とかって聞いた気がするんじゃけど
なんか違うん?」
「魔法紙を使った契約書は魔法契約書となります。
魔法契約と同様互いの魔力を流して交わす契約となりますので
反した場合は、まぁそれ相応の・・・死ですかね」
「さらっとゆうたね。ダルク・・・」
もっとも契約違反しなければ良いだけの事だし嫌なら契約しなければよいのだ。
嫌がるという事は違反する可能性が高いのだからこちらとしても雇いたくはない。
「騎士や兵士についても同様に魔法契約書を交わす。
すでに人選も粗方終わっているよ」
「ジャックには申し訳なかったが
ジャックを見て舌打ちする者や顔を顰める様な奴は弾いたからな」
「残ったのはほぼオーウェン殿とアルノー殿の部下であります!
あ、新規で自分の弟の小隊が加わったであります!」
「へぇ、ジャックの弟か。じゃったら安心じゃね」
事はちゃくちゃくと進んでいるようだった。
「こちらの方も少しずつではあるが進んでいるぞ。
宰相職には弟のバッカスが就く事になった。
他の要職もそれぞれの公爵家の縁者から就く事になる。
当然ながら魔法契約書は交わすがな」
「弟居たんだ」
「ほら、あの無表情男の父親ですよ」
コソリとマォに囁くダルク。
「無表情男・・・ 誰だっけ・・・
あぁぁ、思い出した!あの最初の男か!」
「父親はいたって真面目な普通の男だぞ、念の為言っておくが・・・」
「分かってるって」
こうやって皆揃って夕食を食べながら報告や相談をしていく。
流石にすべての要職が集まってと言うのは無理だろうが各部署毎に週1でいいからランチ兼会議みたいにしたらどうかとマォは提案してみた。
そうすればお互いの顔を知る事も出来るしコミュニケーションだって取れる。
仕事に没頭して昼食を取り忘れる事だって防げるのだ。
そしてこの提案は受け入れられ、各部署に小さな食堂を設置する事に決まった。
基本的にマォは細かい事に口を出さない。
王侯貴族だの要職だのの細かい決まりを知らないし、政に関わる気も無いからだ。
だが皆の話を聞きながら、思いついた事があれば口にする。
採用するかしないかは相手の自由だ。
「いい人材により長く勤めてもらうには福利厚生大事じゃろ。
健康第一!睡眠不足や栄養不足は頭の回転ニブるし体の動きもニブるよ。
徹夜で仕事とか缶詰状態で仕事とか禿げるんじゃけぇ止めんさいね?」
うんうんと一斉に首を振る一同は身に染みているのかもしれない。
禿げるの部分に・・・
思ったよりも多くのマトモな人材が集まりつつある。
なのでマォは騎士や兵士を連れて体力作りと言う名の畑仕事をしている。
何故城の中に畑を作るのか。
エウリケ・エルフィン・オーウェン・カトルの希望である。
「「「 マォ殿の所で食べた採れたて野菜が美味かったんだ! 」」」
町で売っている野菜だって十分美味いと思うのだが本人達が是非にと言うのだ。
手が空いている時は作業も手伝うからとまで言われれば断るのも気が引ける。
普段の畑管理は非番の兵士や騎士が交代で受け持つと言ってくれたのでこうやって畑仕事を始めた訳だ。
「マォ殿、畝の高さはこのくらいでしょうか」
「根菜類の畝はもす少し高くして」
「イェスマム!」
「マォ殿、種をまく穴はこのくらいでありますか」
「葉物野菜の種はもちっと浅くして」
「イェスマム!」
「マォ殿、土の中に居るこの小さな魔獣はどうすれば」
「土の中の小さな魔獣ってなんだよ・・・」
「マム、これはトードワームと言う魔獣でありますね。
トードワームが居る土は作物の育ちが良くなるであります」
「へぇ、どんなんじゃろ。 ぶっ、ミミズじゃんけ!」
トードワーム。見た目は確かにミミズではあるのだがサイズがデカい。
直径3㎝長さ30㎝。
これにはさすがのマォも悲鳴こそ上げずに済んだが鳥肌が立った。
(ミミズはあのサイズじゃけぇ触れるん・・・さすがにこのサイズは無理)
だがミミズは畑や花壇には必須と言ってもいいくらい土壌にはいい。
土中を動く事で土が柔らかくなり空気が取り込まれやすくなし水捌けも良くなる。
おまけに有機物を分解してリンなどの栄養たっぷりな土を作り出してくれるのだ。
「あれ、儂の畑にあねぇにデカいんおったっかいね・・・」
『マォに気を使って隠れてる』
「へぇ、そうなんじゃ。なんか気ぃ使わせて悪いね。
って、もっちゃんなんで畑におるん?」
『ここに住む事になるサーペント達がマォにお願いがあるって』
「お願い?なんじゃろか。畑が終わった後でええ?」
『うん、終わるまでもっちゃん待ってる』
そう言って畑仕事が終わるまで、もっちゃんは周辺の草引きと言う名のオヤツを食べていた。
(もっちゃんや?助かるけども食い過ぎじゃないか?・・・)
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