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プリローダ⑦

マォの話を聞き終えた主はすこぶる上機嫌で森の奥深くへと姿を消した。


「さて主さんとも話せたし、やっと普通の生活に戻れるね」

「いやその前に、すまないが兄を見舞ってやってもらえぬか・・・」

「ん? スカイラーどうかしたん?」

「マォを捜索する際自分も行くと出張ったのはよいのだが

 あの特殊な行程を進んだであろう?

 腰を抜かし白目をむいて寝込んで居るのだ・・・」

「あー・・・

 分かったよ、明日にでも見舞いに行こう。

 ついでにエルフィン達の様子も聞きたいし」

「エルフィン達ならば心配いらぬ。

 古狸が居なくなったからなのか城に居た時よりも

 意欲的に書類仕事をこなしているらしい」

「へぇ、すっげぇ意外。

 あれか、今までだと規模が大きすぎてキャパオーバーしちょったんかね」

「キャパオーバーとは?」

「己の力量を見極められず、仕事などの処理が追い付かなくなる事」

「なるほど、まさにその通りだな」

「後はちゃんと報連相が出来るかどうかじゃね」

「法蓮草? 必要か? 確かに栄養価は高いと聞くが・・・

 そうか、体が資本という事か」

「ん? なんか違うホ(・)ウ(・)レ(・)ン(・)ソ(・)ウ(・)想像しちょらん?」

「違うのか?」

「なるほど、こっちには無い言葉じゃったんか」


そこでマォは報連相について説明をする。

報告・連絡・相談。この3つで報連相だ。

現状や結果、情報の共有。そして1人で結論を出す前に周囲にも意見を聞いてみる事。

仕事をしていく上での基本なのだが、この世界でも通用するのかは謎である。

なにせ身分制度という壁があるのだ。


「この世界に合うかどうかは知らんけども。

 新しく国を作るんじゃったら、新たな取り組みに挑戦してもええんじゃないん?

 あくまでも儂の考えじゃけぇ

 そこらは各領主とかで相談してみればええんじゃないん」

「そうだな、そうしてみよう。それでプリローダの代表は」

「このままルークでよろしく!」

「書面上だけでも・・・」

「儂の名前なんか書いてあってみろ。

 ぜったい担ぎ出そうとする輩が出てくるじゃろ」

「否定は出来ぬが・・・」

「じゃろ?って事でルークよろしく」

「わかった・・・」


マォとしては元の世界の様にのんびりスローライフを送りたいだけである。

色々と巻き込まれたりもしたが別に世直しをしたいとかも思っていない。

ひっそり、はすでに無理だと諦めてはいるがなるべくなら目立たぬように暮らしたい。

なので書類上と言えども名前が出れば、これ幸いとマォに絡んでくる輩が出てくる事が面倒なのである。


(いよいよ面倒になったら投げ出して夜逃げすっかな。

 でももっちゃんとアルノーは着いてくるっていいそうじゃし。

 なんならジャックとルークも着いてくるって言い出しそうじゃし。

 そうなるとリオルやダルクもになるじゃろ・・・

 駄目じゃん、此処と変わらんこなるじゃん)


そんな事を考えながら眠ったせいだろうか。

『藁の中の七面鳥』がBGMとして流れる中、湖を逃げ回るマォを追いかける一同という夢を見た。


目覚めたマォは思う。あの曲ってあんな歌詞だったのかと。

逃げ回るとか、追いかけるとか。歌詞よりほかに思う事はないのだろうか・・・



朝食を終えた後、外に出てみてマォは驚く。

元々季節感がおかしい庭だったがそれがさらにパワーアップしている。

見た事が無いカラフルな実を付けた木々が植わっているのだ。

正確に言えば実の形状自体は漫画やゲームなどで見た事はある。

だがマォの知るソレは大根の様に地中で育つ物なのだ。


「これ誰が植えたん・・・」

「イェスマム!自分であります!」


答えたのはアシーナだ。


「自分の家は元々農家であります!

 こちらへ来る際に栄養価も高いし育てやすく

 しかも美味なので持って行けと種を持たされたであります!」


昨年は植えるタイミングを逃してしまったので今年こそはと植えたのだと言う。


「一応確認の為に聞くんじゃけど、これマンドラゴラであってる?」

「イェスマム!マムはご存じでありましたか」

「一応知識としては?・・・

 でも儂が知っちょるんは地面に埋まっちょるんじゃけど」

「そうなのでありますか!

 自分が知る限りはこのように木になるであります!」

「そ、そうなんじゃ・・・」

「人族の方々には馴染みがないかと思われますが

 色によって味も含まれる栄養も違うであります」

「へぇ、そうなんじゃ」

「食べてみるでありますか?」

「うん。どねぇな味なんか試してみたい」


林檎の様に木からもぎ取るらしいのだが、子供達には聞かせぬようにと注意を受けた。

マォのイメージとしては引き抜くと「ギャァァァ」という叫び声があがる。

恐怖心を与えない様に子供達には聞かせるなと言うのだろうと思い、ガイアには部屋へ戻るように言っておいた。

ミランダが一緒に居てくれると言うので安心だ。

ガイアの姿が見えなくなったのを確認し、マンドラゴラをもぎ取ろうと手を伸ばして固まった。


「ちょ!アシーナ!これ雄雌とあるん?!」

「イェスマム、あるであります!」


マォの声に他の皆も集まってくる。


「ぶっ」


まずダルクが鼻血を吹いた。


「ぐふっ」


次にルークとアルノーが鼻を押さえて俯いた。


「きゃぁ♡」


アムリタはきゃぁと言いながらも顔を覆った手の指の隙間からチラ見をしている。

侍女長と侍女さんズに至っては顔を隠しもせずにきゃぁきゃぁ騒いでいる。


マォがもぎ取ろうとしたマンドラゴラ。

パッと見はまるまるとしたデフォルメ系で姫林檎サイズのかわいらしい物だ。

マォが手を伸ばしたソレは雄でりっぱな男のシンボルがドドンと聳え立っていたのだ。

マォの頭に浮かんだのは『まりもっこり』である・・・


「なんか触りにくいんじゃけどぉ!」

「慣れれば平気であります!」

「いや確かにセクシー大根とかは普通に触ってたけどもっ!

 でもこれはなんかちょっと・・・」

 パチンッ


戸惑うマォにマンドラゴラがウィンクを飛ばす。


「ひぃっ!」


ゾワゾワと鳥肌が立ってしまい、思わずベシッと叩き落としてしまう。


「いっ、やぁ~んっ」

「「「 ぶっ 」」」

「いっやぁ~ん、じゃねぇんだわっ!なんじゃこりゃぁよぉ」


つま先でちょいちょい突いてみるも反応は無い。

どうやら枝から離れた瞬間に声を上げるらしい。


「ちなみに確認するけど、植物でええんよね? これ」

「イェスマム!」

「生き物じゃったらどうしようかと思ったよ・・・」


ならばアシーナの言う通り慣れればいいのだろうとマォは気を取り直し他の実に手を伸ばす。

その様子を見ていた皆も怖いもの見たさと言う名の好奇心で手を伸ばしてみる。


ペキッ

「あぁ~んっ♡」

「いやぁ~んっ♡」

「うっふぅ~んっ♡」

「あっはぁ~んっ♡」


「「「 ・・・ 」」」

「待て待て待て待てぇーい!揃いも揃って色気まき散らすな!」

「雌だと何故か個性豊かなのであります!」

「雌?! お前等皆雌に手出したんかーいっ!」

「待ってくれおかん。その言い方だと語弊が・・・」

「語弊もなにも実際手出したじゃろうが」

「それはそうなんだが・・・」

「先程の声が雄だと言うからつい雌を選んでしまったのだ」

「気になるじゃあありませんか・・・」


好奇心に負け皆雌に手を出したと・・・

本当か?と疑いたくなるマォ。

なにせ雌のマンドラゴラはボンキュンボンッのナイスボディなのである。

ナイスボディとは言え所詮はデフォルメ姿なのだが、何故か色気が漂う。


「これ食べるん・・・ 結構勇気が要るかも」

「枝から切り離してしまえば静かであります。

 一口でぱくっと行くでありますよ!」


ぱくりとアシーナが手本を見せる。


「色で味と栄養価が違うんだっけか・・・」


マォは無難に赤いのを選んで摘まみ上げ、ぽいと口へ放り込んだ。

ふわっと口の中に広がったのは甘酸っぱいアメリカンチェリーの味だった。


「うぉっ、マジか!うまっ!」

「旨いのか・・・」

「マォが口にしたのであれば私も・・・」

「どれ、俺も・・・」


思い思いの色を選び口へと運ぶと一斉に旨いの声が湧く。


「私が食べたのはオレンジに近い味がした」

「俺が選んだのはグースベリーに近いか・・・」

「私の物はなんでしょうね・・・ 苦瓜のような感じでしょうか」

「苦瓜・・・」


どうやらダルクは引きが悪かったようだ。

苦瓜とはゴーヤの事である。アクヌキさえすれば美味しく食べる事も可能である。

生食は・・・あまりお勧めできない。


食べてみるまで味は分からないらしい。

同じ赤でもトマトだったり苺だったりと味は違うようだ。


「野菜嫌いの子供でもこれを食べていれば大丈夫であります!」

「「「 え?! 」」」

「これ子供に食べさせるん?!」

「イェスマム!我々獣人はこの様な見た目には興味ありませんので!」


そう言われてみれば納得する。

この世界の獣人は人の姿に獣耳と言う訳ではない。

2足歩行の動物と言った方が近いのだ。

人族やマンドラゴラの裸体に興味が湧くはずもないだろう。

と納得しかけたマォだったが・・・


「それでも子供にゃあ駄目じゃろう!」

「大丈夫でありますよ?摩り下ろして与えるであります!」

「なるほど、それならまあええか・・・」


この時はそれで納得したのだが。

いざ自分がガイアに与える為に摩り下ろそうとしてなんとも言えない気持ちになる。


(なんか人体摩り下ろしてるみたいで嫌じゃぁ・・・)


ならばと魔法でフードプロフェッサーみたいにやってみたのだが・・・

それはそれでなんとも表現しがたいスプラッターに見えた。

結局マォは食用花やレタスなどで胴体部分を隠して食べさせる事にした。

そんなマォの気苦労など知らずガイアはンマンマと喜んで食べるのであった。


読んで下さりありがとうございます。

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