南の有翼人の国④
もっちゃんの傷も治し終えたのでさて戻ろうかと思ったマォだったが呼び止められた。
「マォ、そのまま帰るのか?」
「ん?」
声を掛けて来たのはコ・チラサンである。
後ろには数人のエルフが立っていた。
「チラサンさんも無事に仲間と会えたみたいじゃね、よかったよ。
儂も子供達と会えたからね、帰ろうと思うよ」
「そうか、無事会えて良かったな」
「まぁ無事じゃなかったんじゃけどね」
「ふむ。だがそのまま帰るのはいかがなものかと思うぞ?」
「え?駄目?」
「自分の状況が分かっておるか?」
「と言うと?」
「小枝だの葉っぱだのが髪にからまっておる。
ついでに服も泥だらけだ・・・」
「うぇっ、まじで?
嘘じゃー、儂そねぇな格好で人前で文句垂れたん?・・・」
チーンッ
頭の中で久しく聞いていなかったあの音が響く。
『マォ、改めて見るとボロボロの姿だよ・・・』
「かぁちゃ、あたまもっさごちゃ」
「もっさごちゃってなんだよ、なんとなく分かるけども・・・」
マォは自分の頭に触って確認をしてみた。
髪はゴワゴワしているし確かに小枝だの葉っぱだのが絡まっている。
どうしてこうなったと遠い目になってしまった。
もっとも低木の中を突っ切ったからなのだが・・・
「風呂を用意させた。腹も減っておるだろう。
身なりを整え腹を満たしてから帰るが良い」
「確かにこのまま帰ったらアルノーとか騒ぎそう・・・」
アルノーだけではなくルークやイザベラとて激怒するだろうし、プリローダに住む皆だって騒ぎそうだ。
余計な心配はかけたくないとマォはコ・チラサンの言葉に従う事にした。
(まぁガイアも綺麗にしちゃげたいし。
なんなんこの変な化粧は。子供の肌に悪かろうがよ・・・
もっちゃんも血汚れ洗わんとだめじゃし)
「あ、もっちゃんも洗っちゃげたいんじゃけど」
「ああそうだな。あのままではいかんだろう。
風呂は広いので自由に洗ってやってくれ」
「助かる。ありがとう」
案内された風呂場は確かに広かった。
風呂場と言うよりは大きな銭湯のようだが、ほんのりと硫黄の匂いがするので温泉かもしれない。
「かぁちゃ、おっきぃね。みじゅーみ?」
「違うね、うちにあるお風呂と同じだよ。こっちのが大きいけども」
「おぉ~、おふりょ・・・」
『もっちゃんも入れるよ』
「入る前にまずは体洗ってからね」
備え付けの石鹸をタオルで泡立てて、まずはガイアを洗ってやる。
もっちゃんは触手で器用に体を洗っていた。
「もっちゃんの触手って何気に便利じゃね」
『もっちゃん手足短いから!』
「あー、そ、そうね・・・」
確かにモ〇ラ系なので足は短い。
だが手は何処の事だろうかと考えてしまったのだが聞くのも憚られる。
その内解かるだろうと気にしない事にした。
汚れを落としサッパリとしたので風呂からあがれば、先程案内してくれたエルフが待っていた。
マォの服はボロボロになっていたしガイアはヘンテコな服を着させられていたので新しい服を用意してくれたようだ。
綿のシンプルなワンピースで着心地がよく、横にスリットも入っているので動きやすい。
ガイアの服は子供らしく丈が短めでチュニックワンピースのようになっている。
細身のズボンと合わせて着ているのでパンツが見える心配もなく可愛い。
着替え終わると食事の為の場所へと案内されたのだが宴会場のように広い。
「マォ、こちらへ。
我等は肉を喰わぬのだがマォ達は喰うだろう?
用意させたから食ってくれ。
そちらの魔獣は何を喰うのか分からぬでな、一通り用意させた。
喰えるものがあればよいのだが」
「もっちゃんなんでも食うけぇ大丈夫じゃよ。チラサンさん、ありがとね。
いっただきまーす」
「ただきみゃー」
某カップメンの謎肉同様何の肉だかは分からない。
味付けもしておらず焼いただけで肉その物の味なのだが、空腹だったマォは気にせず食べている。
空腹は最高の調味料とはよく言ったものだ。誰が言ったのかは知らないが・・・
「食べながらでよいので聞いてくれ。
巡回中の者から数名の人族と獣人族がこちらへ向かっていると報告があった。
マォの仲間だと思うのだがどうだろう」
「どうだろうと言われても特徴とか分からんにゃなんとも言えん」
「確かにな。特徴までは聞いておらぬ、すまない」
「特徴が分からんとなぁ。人族ちゅうてもよぉけおる訳じゃし。
あ、ここと交流がある人達とは違うって事じゃろ?
ほかにここへ来る可能性があったりする人族や獣人族は?」
「我等は閉鎖的だからな・・・」
「自分で閉鎖的ゆうなし!
まぁこんな高所で暮らしてりゃそうもなるか・・・
まぁそうだとするとアルノー達の可能性が高いじゃなかろうか」
そんな話をしていると遠くから悲鳴のような雄叫びの様な騒がしい声が聞こえる。
そしてその声は段々と近づいてくる。
嫌な予感しかしないマォである。
「大変だ!大量の虫ケラが押し寄せて来ている!
すぐにここまで到達するだろう。
コ・チラサン。逃げろ!」
「いやいや、まず落ち着こうよ。
大量の虫ってなにさ?
人族と獣人族がこっちに来よるんじゃないん?」
「そこに虫ケラ共が混ざっておるのだ!」
「あのさ、さっきから虫ケラ虫ケラ言いよるけど。
虫ケラっちゅうのは儂等を拉致った馬鹿共の事をゆうん。
あんたが言いよるんは魔獣であってタブンもっちゃんと同じ騎獣じゃと思う。
つまりは儂の仲間なんよね。
それを虫ケラとか言うなや」
「いや、だが、しかし・・・」
「あー、もぉイラつく!
チラサンさん、風呂と食事をありがとう。
儂帰るわ。たぶん皆が迎えに来たんじゃろうし」
「そうか。何かとすまなかったな」
「あのさ。
考え方がまったく違うみたいじゃし、自分等で閉鎖的ゆうんじゃったら
二度と儂等に関わらんでくれる?」
「だが外交面などもある。そういう訳には」
「外交?する必要ないじゃろ、閉鎖的なんじゃし。
考え方がこうも違う国と外交して何の意味があるん」
「そうは言うがな・・・」
食料や布などの素材など輸入しなければならない物もあるのだとコ・チラサンは言う。
自分達は狩りで得た妖獣や魔獣の素材や魔石を輸出して金を得て居る。
だから外交は必要なのだとも。
「それ別に輸出入だけに限定して関わればええだけじゃん。
外交する必要なかろう。
外交って意味わかる?会話をしてお互いの問題点を解決したり
友好関係を深めましょうって事なん。
つまりね、お互いの事を知って助け合って仲良くしましょうって事なん。
今現在で外交出来ちょらんじゃんけ。
まぁゆうても無駄じゃろうけどね。
兎に角儂等に二度と関わるな。じゃあね!」
マォはそう言い放つとガイアを抱えてもっちゃんに乗った。
『マォ、ちょっとだけ仕返ししてもいーい?』
「ええよ。でもさっさと帰ろう」
『すぐ終わる~。あ、マォとガイア息止めて?』
「ん? 息とめりゃええんじゃね?」
マォが自分とガイアの鼻を手で覆うのを確認して、もっちゃんは思い切り力んだ。
ばふんっ!
放屁した後もっちゃんは素早く地中へと潜った。
『もぉ大丈夫~』
「もっちゃんや、えらい強力な屁じゃったね・・・」
『しばらく匂い取れないと思うからざまぁみろなの、ンフフフッ』
「ガイもぷっぷすりぇばよかったぁ」
「変な事覚えんでよろしい・・・」
しばらく地中を走った後、もっちゃんはもふりんの匂いがするからと地上へと出た。
「うわぁっ! もっちゃんか・・・」
「行き成り現れるでない・・・」
「ごめんごめん、もふりんの匂いがするってゆうからさ・・・」
「おかん!」 「「マォ!」」 「「「マム!!」」」
「ただいま!ってまだ着いてないけど。
取り合えず無事だから詳しくは帰ってからにしよう」
「帰ってから・・・ 最短コースでも3日は掛かるぞ?」
「3日なんてすぐじゃん」
最短コース。それは地中や水中は勿論の事、切り立った崖を垂直に上り下りし、バンジージャンプがごとく高所から飛び降りる道ならぬ道を進むコースだ。
通常のルートを通るならプリローダからここまで2週間は掛かる。
それが3日で済むのだからと今回は緊急事態でもあった為最短コースが採用されたのだ。
なおスカイラーも当初来るはずだったのだが、あまりの衝撃で体調を崩してしまい初日にリタイヤしている。
『マォ寝てていいよ。休憩場所に付いたら起こしてあげる』
「そぉ?じゃぁ頼んでいいかな。ぶち眠い・・・」
皆と合流出来た事で安心したのかマォはうつらうつらとしていたのだ。
それもそのはず、マォは夢中過ぎて気付いていなかったがあの楔を引き抜くだけで2日を要している。
そしてその後のガイアともっちゃんの救出。
疲れも溜まり眠くない訳がないのだった。
読んで下さりありがとうございます。




