南の有翼人の国③
(今の声はもっちゃん?!)
マォは鎖を抱えながら叫び声がする方へと走り出す。
「もっちゃん?! もっちゃん、そこにおるん?!」
建ち並ぶ塔を抜け、生垣のような低木を抜けると開けた場所になっており、そこには人が集まっていた。
鎖を抱え小枝や葉っぱが頭に付いた状態のマォを見た人々はどよめく。
「あれは誰だ」
「人族が何故此処にいるのだ」
「あの鎖はなんだ」
「もっちゃん!!」
「ピィィィィ!」
もっちゃんの体にはいくつもの楔が撃ち込まれ鎖が巻き付いている。
「なんちゅうことを・・・」
もっちゃんであれば鎖ごとき簡単に砕きそうなものなのに、何故巻き付いたままなのだろうか。
マォは少し考えた後に魔封じかと気付いた。
お互いに魔法を封じられている為か会話が通じず、マォにはもっちゃんの鳴き声にしか聞こえないでいる。
そのことに余計腹が立つ。
ピィピィキュイキュイと何かを訴えている様で、もっちゃんの視線の先へと目を向ける。
「ちょ・・・ ガイア!!」
一段高くなった場所に置かれた椅子にガイアが座らされているのだが目の焦点が合っていない。
そのガイアの横にあの鏡餅、我儘放漫ボディの男が立っているのだがマォの姿を見つけて青ざめている。
「どうやって出て来た!」
「普通に出て来たけど何か?
鍵も掛かってなかったし、寧ろどうぞと言わんばかりに扉開いちょったけど?」
「な、なんだと・・・」
「んなこたぁどぉでもええん。
儂の大事なもっちゃんとガイアになにしてくれやがったよ、あぁん?!」
叫びながら大股で男に近付いていく。
人々はマォが移動するたびにササッと避けるのでモーゼの十戒みたいになっている。
「あの招き人を捕らえろ!逃してはならぬ!」
男の指示で取り巻きだか護衛だか分からない男達がマォへと向かって飛び掛かる。
だがマォに触れる事は出来なかった。
マォは手にした鎖をぶんぶんと大きく振り回しているのだ。
近付けば鎖に当たり弾き飛ばされている。
「いつまでもあの重い鎖を振り回せるものではあるまい!
疲れが見えた頃合いに一斉に飛び掛かれ!」
「非力なお前等と一緒にすんな!こちとら畑仕事で鍛えとんじゃい!」
そう言いながらマォは鎖の回し方を変える。
縁を描くように回していたのを斜めにクロスさせるようにと回す。
守りから攻めへと転じたのだ。
(これが鎖鎌じゃったらよかったのに)
などと思うマォだったが鎖の先に付いたままの楔が良い感じに凶器となっている。
ゴンと当たった男達はそのまま気絶しているのだ。
「なんで肉弾戦で来るかね。魔法使えるんなら魔法でくりゃえかろうに。
やっぱ馬鹿じゃろ」
「何を!貴様が魔封じの首輪をしているからこちらの魔法も弾いてしまうのだ!」
「は?! やっぱ馬鹿じゃん!なんでそんな変なの作ったよ!」
「首輪をつけたまま脱走した者などおらぬからだ!」
「今までおらんかったけぇこれからもおらんとは限らんのん。
ちゃんとした物も作れんし対策もとれん。
うん、やっぱ馬鹿だ。馬鹿で確定!」
「楔を引き抜く貴様の力がおかしいのだ。この怪力女め!」
「怪力・・・ 儂の世界じゃこんぐらい普通じゃけど?」
いや、けして普通ではない。
マォが気付いていないだけで、この世界に来てからパワーアップしているのだ。
それに元の世界でも畑仕事に薪割りにと動いていたので都会に住む同年代よりは力もあるのだ。
気が付けばマォは我儘放漫ボディの男の前まで来ていた。
「さぁて、まずはこの首輪を外してもらおうか」
「嫌だ」
「嫌だじゃねぇんだよ!外せ、てめぇの頭頂部毟るぞ」
サッと頭に手を当てる人々。
この男も頭に手をやろうとしたのだが肉が邪魔をして届かない。
ぶふっと吹いてしまうマォ。
「わ、笑うな!人の頭頂部を毟るなどよくもそんな非道な事が」
「どっちが非道なんじゃろうかね。
儂の大事なもっちゃんをあんな目に合わせちょいてよぉゆうわな。
しかもうちの子に何したん、あねぇな虚ろな目になっちょるし」
「あんな虫けらどうでもよかろう!
それにこの方は古代エルフなのだ。人族になどもったいない!
この方は私と共にこの国を導くのだ!」
「こぉんの、ド阿呆めが!
人を拉致って親子をひきさいといてなぁにが国を導くだ。
無理に決まっちょろうが!
犯罪者に付いて行く阿呆はおるかね?」
マォは人々に向かって問いかける。
「どういう事だ」
「古代エルフが生命の樹から生まれたのではないのか」
「招き人が自らの意志で訪れたのではないのか」
「あの魔封じの首輪は罪人に着けるものでは無いのか」
人々は口々にそう言いながら混乱する。
「皆の物騙されるでない!
私はこの手で古代エルフを迎えたのだ!
招き人も今は混乱しているだけでいずれ我が花嫁と」
「なるわきゃなかろう!!」 ゲシッ
マォは条件反射でどついて壇上から男を突き落とした。
「こいつ今なんつった?
我が花嫁とかきもっ!ナイナイナイナイ、うえぇぇぇぇぇ!」
マォの全身に鳥肌が立つ。
その様子を見て人々はやっと状況を理解した。
「なんと言う事だ。すぐにその魔獣の鎖を外さねば!」
「古代エルフが招き人の子であるのか。なんという非礼を・・・」
「すぐに招き人の首輪を外すのだ!」
「誰か回復ポーションと傷薬を!」
すぐさま行動に移しもっちゃんの楔を抜いてくれるのだが、楔には釣り針の様な返しがついていた。
そのまま抜くので肉が裂けてしまう。
かなりの痛みが伴うだろうに、もっちゃんは自分を助けてくれる人を傷つけないようにじっと耐えている。
マォの方にも1人の女性が駆け付けて、なにやら呪文を唱えて首輪を外してくれた。
「この男の言う事を信じてしまい
このような目に合わせてしまって申し訳ありません」
「気にするなとは言えんし許すとも言えん、悪いね。
さて首輪も外れた事じゃし?儂全力で暴れてもええじゃろうか」
「え、と言いますと?」
「行き成り拉致られて、監禁されるわもっちゃん傷付けられるわ
ガイアは変な状態にされるわで儂ぶち頭にきちょんよね。
殺しはせんけどこの町だか都市だか半壊するくらいはええよね?」
「ええよねと言われましても・・・
わたくし共としてはお許しくださいとしか言いようが・・・」
「ねぇ、もし自分の子供が同じように傷付けられたら貴方は許せる?」
「半殺しですかね」
「そぉじゃろ?」
「ですがわたしく共も騙されていたのですから・・・」
「都合のいい言い訳じゃん?
話をよく聞いてれば矛盾や疑問点があったはずだよね?
ガイアの様子がおかしいのだってわかったんじゃないんかね?
もっちゃんにいたってはあそこまでやる必要ないんじゃないかね?
誰も止めんかったんじゃろ?
あの男の言う事を鵜吞みにして傍観しちょったんじゃろ?
同罪だよね」
「 ・・・ 」
マォは話すのを止めてガイアの側に行き抱き上げた。
反応は薄く目も虚ろなままだ。
何か変な物でも飲まされたのだろうかと考えマォは例の呪文を唱える。
「痛いの痛いのそこの変態鏡餅男に飛んでいけー!」
ホワンと淡く光りガイアの目の焦点が戻ってくる。
そしてマォの姿を確認すると抱き着いてきた。
「かぁちゃ!変なおじしゃ、お口くちゃくてもわってくちゃってなって
ガイもっちゃ、まりもれなきゃったの。
もっちゃはガイまりもろうとちて、いっぱい怪我して・・・
もっちゃ、もっちゃちんじゃぅ・・・ぅわぁんっ」
「ガイア、落ち着いて。ほら、泣くの止めて見てごらん。
あそこにもっちゃん居るでしょう。
怪我はしてるけどちゃんと生きてるから。大丈夫だから」
「うぅっ・・・ ひっく。
もっ、もっちゃ・・・
いっぱい血でてぅ・・・ もっちゃぁぁ、ぅわぁーんっ」
「大丈夫じゃけぇ、ね?かぁちゃんがすぐ治すけぇ大丈夫よ」
「たいたいとんでけ? ひっく」
「そうそう、痛いの痛いの飛んでいけしようね」
ぐずっているガイアをなだめながらもっちゃんの側へと移動する。
人々はビクつきながら道を開ける。
どうやら「頭頂部を毟る」と「半壊」の言葉に恐れているようだ。
過激派とは言う割には腰抜けじゃないかと思うマォである。
「もっちゃん、今治すからね」
『マォ無事でよかった。ガイアも無事でよかった』
「もっちゃんが全然無事じゃないけどね」
マォが呪文を唱えようとすると周囲に炎が上がった。
「我が物にならぬのならば燃え尽きてしまえ!」
「 ・・・ やっぱ馬鹿だ・・・」
今はマォの首輪ももっちゃんの楔も外れている。
つまりはマォももっちゃんもスキルが使えるのである。
そんな事も分らず勝ち誇った顔で言われても困るのだがと思うマォともっちゃんはあきれ顔のまま魔法を放つ。
ダバッとゲリラ豪雨の様な雨が降り、ヒュンッと小さな竜巻が我儘放漫ボディの男を巻き上げ何処かへと運び去る。
豪雨の様な雨はマォの魔法であの小さな竜巻はもっちゃんが出したようだ。
何気に色々と使えるもっちゃんである。
「もっちゃん、あのミニ竜巻何処行ったん?」
『もっちゃんわかんなぁーい』
「 ・・・ まぁいっか。
よしもっちゃんの怪我直したらさっさと帰ろう」
「かえりょー」
今度こそと呪文を唱えて治療する。
飛ばした先はあのアレ様だ。
(なんか思い出したらムカつくからアレに飛ばすのでええか)
なお、あれだけのもっちゃんの傷を飛ばしたにも関わらずしぶとく生き残るアレ様である・・・
読んで下さりありがとうございます。
ガイアはまだ舌ったらずの幼児言葉です。
「まりもれなきゃった」は守れなかった。
「まりもろう」は守ろう。
きっと皆さん理解してくれていると思いますが念の為誤字ではありません(;´Д`)
なおネタ元は友人の子供です(*'ω'*)
ブックマークや評価、リアクションに誤字報告とありがとうございます!
とても励みになり感謝しております(*'ω'*)




