南の有翼人の国①
いつもリアクションや誤字報告、本当にありがとうございます。
まだまだ残暑も厳しく、地域によっては線状降水帯の影響も出ているかと思いますが皆様体調には十分お気を付け下さいませ。
作者はすっかり夏バテです(;´Д`)
マォは背中と腰が痛くて目を覚ます。
見慣れぬ石造りの天井に石造りの壁、ついでに床も石畳のような感じだ。
(どこだ此処・・・ なんで儂こんな所におるんじゃっけ)
換気の為だか明り取りだか分からないが手の平サイズの窓に近寄り外の景色を確認しようとする。
ジャラジャラと鎖の音が聞こえ、それが自分の足物から聞こえたのだと気付く。
その鎖のせいで窓まで行く事が出来なかった。
(なんで鎖につながれちょんよ・・・)
邪魔臭いと魔法で壊そうとしたのだが魔法が発動しない。
「げっ」と小さく呟いて考える。
よくあるのは魔封じの首輪や腕輪だろうと自分の首を確認すれば、それらしき物がしっかりと確認できた。
それらしき物というのも自分の目で確認出来ないから確定が出来ないのである。
(こりゃこまったね・・・)
まずは自分の身に何が起こったのかを思い出してみようとベッドに腰掛ける。
何故かベッドは置いてあったのだ。
(確か、アレックス達に会いに行こうとして・・・・)
その日マォはガイアを連れてアレックスやニア・ソニアに会いに行く予定だった。
手土産にクッキーを数種類焼いて、もっちゃんに乗って出発したのだが・・・
(ああ、そうだ。思い出した。
森を抜けたところで罠にはまって網に捕まったんだ・・・
油断してたなぁ・・・ちくしょう。誰だよ罠仕掛けた奴。
罠を抜け出そうと暴れたら変な薬嗅がされたんだっけか。
たぶんあれだ、誘拐犯が使うような睡眠薬・・・
背後からじゃったけぇ顔も確認出来んかったしなぁ。
どっかに運ばれて閉じ込められたって事じゃろか。
魔封じの首輪(仮)まであるって事は儂の事をしっちょるって事じゃろかね)
夜になっても戻って来なければ皆が探し始めて、それでも見つからなければ攫われた事にも気が付くだろう。
きっとルークあたりがスカイラーに連絡をいれて捜索が始まるはずだ。
そう思いマォは体力温存の為に寝ておこうと思ったのだが、ガイアともっちゃんの事を思い出した。
(ガイアともっちゃんは何処におるんじゃろう・・・
もっちゃんはまぁ自力でなんとか出来るだろうとしても
ガイアは大丈夫じゃろうか。怪我とかしちょらんにゃええんじゃけど)
とは言えこの状態では自分で探しに行く事もままならない。
少し悩んだ後にやはり寝ておくことにした。
どのくらい時間がたったのか。
マォは息苦しくなり「ぷはっ」と声を出して目を覚ました。
「あ、生きてた」
「生きてたじゃねぇわ!」ぱこんっ
相手が誰かなど確かめもせずに条件反射でどついてしまったマォである。
相手はぐふっと唸った後に鼻を押さえて蹲っている。
「なにをふる・・・」
「こっちのセリフじゃい!人の鼻押さえてんじゃねぇわ!」
「いや生きてふぃるかの確認をだな・・・」
「押さえんでも近づけるだけでわかろうが!」
「なるほど、それもそうか」
「それもそうかじゃねぇんだわ。 んでどちらさん?」
「こちらさんだ」
「 ・・・ ふざけてる?」
「失敬な!コ・チラサンだ!」
「ぶ・・・ そうゆう名前じゃったんか。そりゃ失礼。
んでそのチラサンさんがなんで此処におるんかね?
ちゅうかなんで儂こないなとこで足かせに繋がれちょんじゃろか?
うちの子達はどこにおるん?怪我とかしちょらんじゃろね」
「質問が多いな」
「当たり前じゃろう。行き成り拉致られて・・・
あー、マジか!2回目の拉致かこれ!」
言わずとも知れた1回目の拉致はマォがこの世界に来る原因となったアレの召喚である。
「2回目の拉致か。そうか、2回も。そういう体質なのか?」
「どんな体質だよ。そうじゃなくて質問に答えてくれんかね?」
「そうであったな。
ええと、なんであったか。ああそうそう。
何故私が此処にいるのかだが、どうやら薬を盛られたようでな。
気が付けば此処に閉じ込められていた。
ベッドの上の其方を見つけたので生きているかの確認をしておったのだ」
「なるほど? つまりは同じ被害者って事でええんじゃろぉかね。
んでチラサンさんは閉じ込められた原因に心当たりはあるん?」
「ああ、ある」
コ・チラサンはこの国の情勢と自分の立ち位置についてマォに話し始める。
ここは北の大陸にある最南端の国で有翼人種が国民の8割を占めている。
王という物は建てずに代々長が国を纏めてきている。
自分は裕翼人種の中でもエルフ族で次期長候補の1人であり、穏健派である。
対立候補となる相手は強硬派で過激な面も多い為、自分が長に収まる可能性が高い。
それを快く思わない強硬派の連中が自分を此処へ閉じ込めたのだろうと。
「へぇ、なんか大変じゃね。
で?儂はなんで拉致られたんじゃろか。理由に心当たりがないんじゃけど。
そもそもこの国の事なんも知らんし」
「ところで其方、どこの国も者だ。名はなんと言う?」
「儂はマォ。まぁ阿呆に拉致られた異世界人じゃね。
どこの国にも所属はしちょらんよ」
「異世界人・・・ ああ、分かったぞ。
確か白羽の連中が使者を出そうとして断られたと騒いでおったな」
「使者は全部断ってるよ。まず挨拶状からじゃろ?
行き成り会いたかねぇもん」
「普通はそうだろうな。これまで交流があった訳でもないだろうからな。
白羽の連中は強硬派の中でも厄介な一族だ。
おおかた会わせて貰えないならと連れて来たのだろう」
「連れてくるのとは違うじゃろ。儂の意志無視してんだから拉致じゃろ。
つうか、会う必要もないと思うんじゃけどねぇ・・・」
「言い伝えがあってな。
異世界人である招き人を招き入れた国は繁栄と安寧が齎される」
「またそれかー!」
以前にもダルクに聞かされたことがあるマォは思わず叫んでしまった。
そこに居るだけで繁栄や安寧が齎される訳がない。
お互いが良い関係を築けたからこそ、招き人もあれこれと手を貸したのではないだろうか。
きっとこの世界には無いような知恵や技術だって教えたりもしただろう。
結果的に繁栄や安寧が付いて来ただけである。
そもそも拉致監禁で繁栄や安寧が得られる訳ないだろう、頼まれても手なんぞ貸すものか。
マォは苛立って壁を殴った。
「手を傷めるから止めた方がよい」
「ムカつくんじゃもん!
ちゅうかさ、チラサンさんの仲間は助けに来んのん?」
「争いは好まぬ連中だからな」
「いやそうかもしれんけど、仲間じゃろ?」
「仲間であり家族であり友でもある」
「なのに助けに来んのん? それ仲間と言えるん?
まぁ考え方の違いなんかもしれんけど」
「マォの仲間は助けに来るのか?」
「来る。ただ遠いから少し時間は掛かるかもしれない。
だから儂はただ待つだけにはせんよ」
現在地がプリローダより遥か南だと分かったのだ。
ならばもっちゃんとガイアを見つけて逃げ出す方がいいだろうとマォは考えた。
とは言え魔法が使えないとなればどうすればよいのか。
マォはベッドの上に胡坐をかいてうんうんうなりながら考える。
コ・チラサンは床に寝転がっていた。
どのくらいの時間が過ぎただろうか。
外から足音が近づいてくる。
(もぉ嫌な予感しかせんのじゃけど。
どぉせ古狸達みたいなんが下衆顔で来るパターンな気がするんよね)
バンッと乱暴に扉が開けられ姿を見せたのはマォの想像通り我儘放漫ボディな鏡餅よろしくな男だった。
「お目覚めですかな、招き人様。
このような場所にお連れした事お詫び申し上げます。
なぁに、我々にご協力いただけるならすぐにでも
居心地の良い最上級の部屋へとご案内いたしますがいかがですかな?」
「 ・・・
アンタ馬鹿じゃろ?」
「「「 ぶっ 」」」
鏡餅、失礼。
我儘放漫ボディな男の背後にいる部下らしき男達が小さく吹き出す。
「な、な、なにを言い出すのだ!」
「あのさ、まずあんたが誰かもしらない。
どんな理由で此処へ拉致ったのかも知らない。
何に協力するのかの説明も無い。
そもそもうちの可愛い子達をどうした?何処へ連れて行った?
礼儀もなんも無い拉致犯に協力する訳がないって事すら分からんようじゃ
馬鹿か阿呆としか言いようがないんじゃけど?」
「拉致などしておらぬわ!丁重にお招きしたであろう!」
「あれが? 罠仕掛けて薬かがせて強制連行が丁重なお招き?
やっぱ馬鹿じゃん?
こっちの都合や意見ガン無視で気を失わさせて連れて来て
あげくに変な首輪付けて閉じ込めてんだから拉致監禁じゃん。
それって立派な犯罪じゃろうがね」
「なにを言うか!けがをさせぬようにとの配慮で眠っていただいたのだ!」
「配慮の仕方が違おうがよ。あんなの配慮とは言わんわい。
まぁええわ、それよりうちの子供達は何処?」
「会いたくば我等に協力を」
「だから馬鹿じゃね?説明なしに協力できるか!
説明されても拉致犯に協力する気はないけども!」
「先程から人の事を馬鹿呼ばわりしおって・・・
今にその口から協力させてくれという事になる。
それまで招き人様には此処でゆるりとお過ごし頂くとしよう」
我儘放漫ボディの男はニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながらその場を立ち去った。
男が立ち去った扉を見つめマォは思う。
(あの男の口ぶりからもっちゃんもガイアも生きてはいる。
なんとか抜け出して探し出さないとな)
読んで下さりありがとうございます。




