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現実と向き合う準備をする①

目を覚ますと体が少し楽になっている様に感じた。

じっと自分の手を見つめた後、腹部に手を伸ばしてみる。

おや、先程とは違い手触りの良い布が巻かれている。

そして痛みもそこまで酷くはない。

そういえば治癒師と医師が頑張ってくれたと陛下が言っていた気がする。

そう思いながらもそもそと体を起こそうとしたのだが、腹筋に力が入らない。

その様子を見てか部屋の隅に待機していた侍女らしき人が近寄って来た。


「あまり無理をなさいませんように」


そう言って陛下と同じように介助をしてくれ、体を起こしてくれた。


「お加減はいかがでしょうか?ぬるめの白湯の用意が有ります。

 少しお飲みになられてはいかがでしょうか」


そう声をかけられてみれば確かに喉が渇いた気もするし、先程の様に吐血しても困るので貰う事にした。

喉に染みるかと思ったがそんな事は無かった。

おや?という表情が出ていたのだろう。


「治癒術を施されたと伺っておりますので

 幾分か痛みも抑えられているかと思います」


ニコリと微笑みながら教えてくれた。

幾分どころか喉の痛みはまったく感じない。

治癒術、ヒールだろうか。魔法が存在すると言う事だろう。凄いな魔法。

と妙なところで感動してしまっていた。

ゲームや小説、映画。空想の物だと思っていた物が存在する世界か。

凄い世界へ来てしまったんだなと思うもまだ実感は涌かない。


(儂にも使えたりは・・・せんのじゃろうなぁ。

 魔法とか皆無の世界じゃったし。

 ん?まてよ。そういった世界観ならば多種多様な亜人種もおるんじゃろか。

 おるんなら会ってみたいなぁ)


などと考えていれば再び声が掛けられた。


「体への負担が少なめの食事の用意もございますが召し上がられますか?」


体への負担が少ない・・病人食のような物だろうか。

そう言えば、どのくらいの時間が経ったのかは解らないが腹も減った気がする。

元々が畑仕事の帰りだった訳だしな?

そりゃ腹も減るわなぁ。



・・・・



ちょっと待て。畑仕事の帰りなら・・・作業着だったはず。

さすがにモンペとかじゃないけどツナギに長靴、手には草刈鎌と鍬。

しかも泥だらけ・・・うわぁ。

再び頭の中でチーンと音がし少しばかり遠い目になった。


「いかがなされました?どこか違和感や痛みでもございましたか?」


心配げに侍女らしき人が声を掛けてくる。


「あ、ごめんなさい。そうではないのですが。

 私がここに来た時の状況を思い出してしまいまして。

 その・・・私が身に着けていた衣服などはどうなったかなと・・・

 ほら、泥だらけだったと思うんですよね。

 おまけに刺されて大量出血も、あぁー。血痕洗っても落ちないんだろうなぁ」


動きやすくて気に入ってたのになと再び遠い目になる。


「左様でございましたか。

 招き人様が身に着けていらっしゃった衣装につきましては修復を試みたのですが

 なにぶん素材も未知の物ですし

 腹部の穴も大き過ぎておりまして修復は無理でございました。

 血痕も完全には落とすごとが出来ずで申し訳ありませんが処分するしか・・・」


うん、まぁそうだよね。

きっと貫通しただろう刺し傷の穴に血痕、おまけに道の素材で修復不可能とくれば儂でも捨てる。

となると、着る物が無い気がする。さて困った。


「代わりの衣装を用意してございます。確認なさいますか?」


代わりをご用意・・・・

そうは言われても嫌な予感しかしない。

何故ならここは王城。

この侍女っぽい人の服を見ても分る。簡素なワンピースに近いとは言えドレスだ・・・

いわゆる庶民な服なんてきっと無いだろう。

だがまずは見ない事には始まらないと思う、思い込みや先入観はよろしくない。

もしかしたら着ていた衣服で察してくれたかもと期待をしてみた。


「どのようなものがあるのか確認してみたいです」

「承知いたしました、では移動のお手伝いをさせて頂きますね」


そっと支えてベットから抜け出るのを手伝ってくれ、そのまま歩くのも支えてくれるのかと思ったら。

サッと抱えられてしまいお姫様抱っこされてしまった・・・


「あ、あの・・・これは一体・・・」

「ご心配なく、私は侍女ではありますが姫殿下や妃殿下の護衛も兼ねております。

 こう見えても腕力には自信がございますのでご安心を」


いやそうではなくてね、何故にお姫様抱っこなのかと聞きたかったが彼女に笑顔を向けられて何も言えなくなってしまう。


(軽々と抱えちょるけど儂そこまで軽い訳でじゃないと思うんじゃけどな)


そう思うも体重の話題は時に地雷を服場合もあるので黙ってなすがままになっておいた。

案内された巨大クローゼットの前で降ろしてもらう。


「こちらでございます」


と扉を開かれて見えた物は・・・


「うげっ・・・」


こんな声を出して申し訳ないとは思う。

思うが出てしまったものはどうしようもない。


ハハハ、王城に居るような人達に庶民感覚を察してとか無理だった。

うん、かすかな希望を抱いた儂が悪かった。

ドレスなんだよ、ドレスがズラーと並んでいるのだ。

乾いた笑いが出てしまう。


確かに西洋の王朝時代だと初老の人でもフリフリレースとかリボン付いてたりのドレスも着ていただろう。もしかしたらピンクのドレスだって着ていたかもしれない。

だがしかし、儂は無理。絶対無理。

背は高い方だし日焼けもしてるし普段からズボンしか履かないし。

結婚式ですらドレスなんぞ嫌だと言ってやらなかった。

いや試着はしたんだよ一応は。

コルセットでウエストはぎゅうぎゅう締め付けられるし、スカート部分を膨らませる為だとかでなんかヒラヒラしたのを何枚も履かせられるし、重いわ暑いわで却下したのである。

なのに、なのにだ。

目の前にはそれよりもはるかに重そうなゴテゴテのドレスがいくつも並んでいる。


「やはり間に合わせの既製品ではお気に召しませんか?」


侍女は不安げな表情になっている。

うげっと変な声を出したきり固まってしまっているのだから不安にもなるだろう。

が今なんつった?既製品? という事はまさかのオ-ダーメイドとかもあるのか。

いや王侯貴族ならオーダーメイドが当たり前か。


「申し訳ありません、眠っていらっしゃるので採寸が出来ずにおりまして」

「へ?採寸?いやいやいや、そうじゃないんです。

 あのですね、非常に申し訳ないのですが・・・

 ドレスと言う物に縁が無い生活をしておりましてですね。

 出来れば、庭師とか農夫とか平民が着るようなズボンがありがたいのですが・・・」

「ズボンでございますか・・・」

「えっと、乗馬の時はさすがにズボンですよね?

 なのでそういった類の・・・」


侍女はきょとんとしてしまっている。

まぁそうだよね、きっとズボンなんてものとは縁遠いのだろうし。

乗馬なんかもご令嬢はしないのかもしれない。


「スカート、ワンピースやお仕着せの様な物自体が学生の頃でしか履いた事もなくてですね・・・

 畑仕事、体を動かず作業をすることも多くズボンのほうが慣れているんです」


スカートがあるのかどうかも不明なのでありそうな物で説明してみた。


「左様でございましたか。

 確かに普段から慣れているものの方がようございますね。

 では少々衣装部へ相談するのでお時間をいただいても?」

「もちろんです。

 あ、靴も出来れば踵が高くない物があると有難いです」

「承知いたしました」

「お手数をおかけして申し訳ありません」

「何をおっしゃいますか。

 意見を口にしていただける方が助かります」


侍女さんに促されてベッドへと戻る。

勿論お姫様抱っこでだ。

さすがに寝巻のままでは不便だろうからと取り急ぎ2着ほど探してきてくれると侍女さんは言ってくれた。

見つけるまでの間に食事をする事になり準備をしてくれる。


「ご安心くださいませ、男性陣はしばらくここへは近寄らせませんので。

 扉の外で警護にあたっている騎士たちも女性ですから」


なるほど、女性騎士もいるのか。

それは安心だなとほっとして、用意してもらった食事に手をつける。

味は薄いが病人食なのだろうから仕方がない。

とにかく食べなければ体力も回復しないよなと思うのであった。



読んで下さりありがとうございます。

ブックマークやリアクションもありがとうございます(人'▽`)

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