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プリローダ④

店を畳んで帰り支度を済ませ、モファームや騎獣が待機している場所まで移動しているとアルノーが何かに気付いたようだ。


「おかん、つけられているかもしれない」

「マジで? 面倒臭いなぁ・・・」

「5人くらいだな」


オーウェンも気が付いたようである。


「どうする、おかん」

「この場でやってしまってもよいが」

「ここだとまだ町に近いからせっかくの祭りに水を差す事になるけぇ。

 もっちゃん達に荷物と女性陣を先に運んで貰って、森の中でやっちゃうか」


以前なら馬車でしか移動をした事が無い侍女達も、ここでの暮らしにすっかり慣れてモファームに跨るのもお手の物である。

アムリタとミランダなんかは森で自分用の騎獣を捕まえて来ていたりする。


マォとしては二度と関わろうなどと思わない様にトラウマ級に脅せばいいかと思っていた。

だがエディの一言で気が変わる。


「マム、あの男指名手配書にあった気がするであります」

「そうなん?罪状は?」

「幼児誘拐と人身売買であります」

「よし、不運にも森で遭難してもらおう」

「どういうことだおかん」

「ぬっころす」

「待て待て、物騒な事を言うな」

「だってさ、アンナ達やニア達の事思い出してみてよ。

 被害に合う子供達が増えてもええん?」

「だが法に則ってさばかねば・・・」

「どの国の法で?まさかあの国とかいわないよね?

 儂にとっての法は森の掟だよ」

「森の掟とは?」

「弱肉強食。生きるも死ぬも自分次第」

「そうは言ってもだな・・・」


などと話しながらも森の中へと入って行く。


「マォ最低でも顔の判別が出来るように」


オーウェンが言い掛けた時、後方からぎゃぁと叫び声がした。


「儂まだなんもしちょらんよ?」

「分かっておる」


ガサガサと木が揺れ、叫び声は段々と近づいてくる。


「コッキョクウグウコーコォォォォ」

「ひぃぃぃ」

「く、くるな!」

「助けてくれ!」


茂みから現れたのはタンフルの作り方を教えろといっていたあの男達だった。

それらを突いて追い回しているのはササミだ。


「ササミ?」

「クキョ?」

「貴様等の仕業か!」

「いや違う。儂まだなんもしちょらん」

「なにを! うぎゃぁ」

 ごっくん・・・

「ササミさんや?・・・」


喚く男をササミが飲み込んでしまう。


「吐け!あんなもん飲み込んだらばっちぃじゃろ!

 ぴーぴーしゃっしゃになるまえに吐き出しんさい!」

「ぴーぴーしゃっしゃてなんだ・・・」

「え?言わない? 腹下す事」

「言わぬな・・・」

「マジか・・」


ササミはぴーぴーしゃっしゃを理解したようでオエッと吐き出している。

涎だか胃液だかわからない液体にまみれた男がゴロンと転がった。

仲間の男が駆け寄り助け起こすのだが・・・


「うぇっ、くせぇ!

 お前らよくもこんな非道な事が出来るな!」

「何を言う、助けてやっただろ?」

「あのまま消化されてた方がええらしい」

「クォーコッコッ」

「いや咥えるな、飲み込もうとするな!」

「そもそもさ、お前らなんで着いて来たん?

 この森がどんな場所か知っちょん?」

「ただの森ではないか!俺達をバカにしてるのか!」

「ただの森、ねぇ」

「現に貴様らが入っているのだから安全だという事だろう!」

「それはどうかな?

 まぁ教えてやる義理も無いんじゃけどね」

「どう言う事だ・・・」

「ササミ以外にも誰かおるんじゃろ?」


マォに呼ばれて頭上からドサッとチョコが現れ、背後の茂みからはクッキーがニョキリと顔を出す。


「「 うぎゃぁ! 」」

「なんでこんなに魔獣がいるんだ!」

「なんでって魔の森だもんよ、ここ」

「「「 ひっ 」」」

「じゃけぇさっきから聞きよったのに」

「た、たすけてくれ!」

「俺達が悪かった!」

「え?やだよ」

「「「 マォ?! 」」」

「マオーだと?!」

「へ?違う違う、そうじゃない!

 マオーじゃない!人の名を伸ばすんじゃない!」

「マオーの住む魔の森・・・

 二度と近づかないから助けてくれ!」

「いやだから、人の話聞けや!」

「「ひぃぃぃ」」


思わずゲシッとどついてしまったマォである。

男が目の前まで転がってきたのでチョコは前足を使って蹴り返す。


「取り合えずこいつ等を」

「ゲフッ」

「ゲフッじゃないね、誰よゲップしたのは」


3匹を見ればクッキーが視線を反らして尻尾をタシタシと動かしている。


「まさか? 1,2,3,4,5。5人おるね。

 クッキー? 何食べたん? こいつらみたいなん食べたんなら吐きんさいよ?

 こねぇなん食ったら馬鹿が移る」

「「「 酷でぇ・・・ 」」」


クッキーは男達を見た後で少し考える。

そしてケロロッと吐き戻そうとするのをマォは慌てて止めた。


「待て待て、ここで吐かんの!向こうの見えんとこで吐きんさい!」

「ここでもよいのでは?」

「ルーク、スプラッターみたい?」

「スプラッターとは?」

「グロテスクって事」

「 ・・・ 」

「ええかね?蛇ってのはね、獲物を丸飲みにするじゃろ?

 そんで木とかに巻き付いたり身を捩じらしたりして獲物の骨を砕くん。

 後は胃の中の消化液が溶かすんよ。つまりね、今吐き出すと」

「「「 ぅおえぇ・・・ 」」」


聞いていた男達は嘔吐しルーク達はそれ以上は説明するなと耳を押さえた。

離れた場所から ケロケロロッ ドサッ という音が聞こえ、男たちは気を失ってしまったようだ。


「これしきで気失うとかだらしなっ!

 チョコ、こいつ等身動きできんように縛り上げて

 スカイラーんとこに放り投げてきてくれん?」

「きゅいっ」

「顔が分かれば指名手配犯かの判別はつくじゃろうから

 顔が無事なら後は適当でええけぇね」

「きゅいっ」


チョコが男達5人を簀巻きにしていき、3匹で転がしながら森を出て行った。


「まさかとは思うけどあのまま町中通ったりはせんよね?」

「さすがに大丈夫だろう?・・・」

「自分、付き添ってくるであります!」


ジャックがそう言って慌てて後を追いかける。

そのジャックの肩に小さなホワイトマンバが乗っていた事に誰も気づかない。



「やれやれ、儂等もさっさと帰ろうか」

『迎えにきたよ!』

「うぉっ」


もっちゃんが地面から姿を現すと次々と他のモッフルも姿を現す。

あの男達のせいで変な疲れ方をしてしまったのでもっちゃん達の迎えはありがたい。

もっちゃんにまたがりプリローダへと戻るとマォ達はそのままぐったりと寝たのであった。



祭りが終わり数日、スカイラーがやって来た。


「各国からの挨拶状を持ってきたのだが、どうした?

 疲れた顔をしておるな、マォ殿」

「あー・・・

 エルフィンがとことんおぼっちゃまなんだなぁと・・・」

「どういう事だ?」


この数日、改めて庶民の感覚と言うのをマォとアルノーで教えようとした。

獣人達は別に問題ない。ルーク達も金銭感覚以外は問題ない。

アムリタやエウリケ達もまぁなんとか大丈夫だった。

ただエルフィンはなかなか受け入れる事が出来ないでいた。

城ではなんでも使用人がやってくれていた。

ここに来てからは自分で身の回りの事はやるようにと言ったにも関わらず、元侍女達にこっそりやって貰っていたようだ。


「やってもらってあたりまえって感覚が抜けんのじゃねぇ・・・」

「エルフィンに庶民の感覚と言うのは無理があるだろうな。

 ふむ、ならばちょうど良いのかもしれぬな」

「なにが?」

「諸国からの挨拶状が届いたと言っただろう?

 中にはやはり高圧的な国もあってな。

 こちらが国ではなく独立区だからと侮っているのだろう。

 なのでいっそのこと4領とプリローダで国にしてしまってはどうか

 という案が出ていてな。

 その代表者をエルフィンにしてはどうだろうか」

「なるほど・・・」

「待ってくれ。自分で言うのも情けない事だが

 私は国王には向いてないと思うのだ。

 だからエウリケではどうだろう。

 勿論私も補佐として力添えはする」

「「「 おぉぉ、エルフィンが少し進歩した・・・ 」」」

「客観的に見れるようになったのか・・・」

「それだけこれまでの私がひどかったという事か・・・」

「古狸達にいいようにあしらわれちょったもんねぇ」

「ハハハ・・・ まったく情けない」

「まぁそこら辺は皆の判断に任せるよ。

 儂はそうゆうのにうといけぇ」

「まぁ国と言っても形だけで王の仕事は主に外交となるだろう。

 今私がやっているような事だな」

「では細々とした事はこれから話し合うとして、エルフィン。

 エウリケと共にしばらくは兄上の所で勉強すると良いだろう」

「スカイラー、すまないが色々と手解きを頼めるだろうか」

「伯父上お願いします!」

「ああ、わかった」


他の3領からも代表者を招いて話し合う事となり、プリローダからはルークが代表として参加する事になった。


「そうそう、報告があってな。

 アレが王になって古狸の1人が摂政になっているらしい。

 国名もペルダンになったそうだ」

「へえぇ、まぁご勝手にって感じじゃね。関わる事ないし」

「んむ、数年もすれば廃れるであろうな。

 それとな、プリローダに魔王が降臨したといううわさがあってな。

 心当たりはあるか?」

「「「 ぶぅーっ 」」」


心当たりしかない一同は一斉に吹く。


「兄上、解ってて言ってますよね?」

「まぁな」

「聞き間違いつーか勘違いで噂を広げんでほしいんじゃけど」

「その内噂も収まるだろう。

 収まらなければそれはそれで良いではないか」

「よかねぇよ・・・」


その後スカイラーはエルフィンとエウリケを連れて帰って行った。

アムリタとミランダも行くのかと思えば、ここに残って料理を習うのだと言う。

オーウェンは自分も補佐としてエウリケを支えるといい、3領を周ってってくると騎士を連れて旅に出ていった。


読んで下さりありがとうございます。

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