プリローダ③
朝食をすませ、皆で露天に並べる物を決めていく。
ジャック達は熊の木彫り人形に決めたようだ。
メドベーチェと言う神様を模した人形なのだがマォはある物を思い出す。
「口に鮭咥えてたら北海道土産じゃん・・・」
「北海道とはなんだ?」
「あー、地名だよ」
「なるほど、では似たような物があるという事なのだな」
「そうじゃねぇ。儂もこれ1つ欲しいな」
「イェスマム!マム用を作るであります!」
「え、わざわざ専用に作らんでも有るのでええんじゃけど」
「マォ、作らせてやれ」
「そう?じゃあお願いねバックリー」
「イェスマム!」
次に、アルノーとオーウェンは皮で作ったナイフケースを出す事にした。
女性陣は刺繍を施したハンカチやリボンなど庶民でも買えるものにしたようだ。
意外だったのはルークとダルクとエルフィンだった。
「我々は手先が器用な訳ではないからな。
コルディに教えて貰ったジャムを提供しようと思っている」
「幸い果物はたっぷりとありましたからね」
「なるほど、いいんじゃない?儂はタンフルでも作ろうかな」
「タンフル?」
「フルーツを飴でコーティングしたやつの事だよ。
ほら、一般的に砂糖は高価じゃろ?
でも儂等は有難い事にダンジョン産のが沢山あるじゃん。
お祭りんときくらいは甘いものを楽しんで欲しいん。
普通の飴よりは使う砂糖の量も少なくて済むしさ」
「なるほど。民は喜ぶであろうな」
食料保存庫には白糖・黒糖・三温糖・キビ糖・甜菜糖・氷砂糖・グラニュー糖・ザラメと種類も量もたんまりとある。
タンフルにはグラニュー糖を使う方が透明度が出るのでマォはグラニュー糖を使うつもりでいる。
値段はフルーツが2つの串が銅貨1枚、フルーツが5つの串が銅貨2枚。
材料費が掛かっていないので激安のお祭り価格である。
其々の品物が決まったのでマォは自宅へと戻りさっそく作り始める。
カットした果物を串に刺し、小鍋でグラニュー糖を溶かしてくぐらせて乾かせば完成だ。
飴が乾いたらマジックボックスにいれておけばよい。
祭りまで後3日。
手が空いたマォは絵を描くことにした。
この世界にもパステルのような物があるのでそれを使いデフォルメイラストを描こうと思ったのだ。
この世界に居ない動物を描いても面倒な事になりそうなので、魔獣や妖獣の中から似たような物を選ぶ事にした。
(ウサギはホーンラビ、リスはエキリュイユ。猫・・・サーベルキャット。
犬はヘルハウンドか。エルミヌはオコジョとかフェレットぽいかな)
丸っこくデフォルメし首元や頭にリボンをつけたり、花を持たせてみたり。
我ながら可愛いく描けたのではと満足するマォである。
余っていた小枝を使いフレームを作ってイラストをはめ込むと見栄えもなかなか良い。
「あら、素敵な仕上がりになりましたわね」
「ありがとう。自分でもそこそこいい出来だと思っちょるん」
「これは幾らで売り出すのかしら」
「ん~、銅貨1枚でいいかなぁ。小さいサイズだし」
「そうですのね。では当日に私も買わないとですわね」
「毎度ありー!」(笑)
アムリタや侍女長は気に入ってくれたようだ。
売れると良いなと思いながら迎えた当日。
此処をもぬけの殻にするわけにも行かず、留守番はくじ引きで決めリオルとダルクになった。
「くっ・・・無念」
「ええ、どうせこんな事だろうと思ってましたよ。トホホ・・・」
「土産は買ってくるから頼んだぞ」
「来年は2人共免除にするからさ。留守番宜しくね」
「よし、ガイア。おじちゃんと遊んで待ってような」
「おじちゃん・・・まぁお兄ちゃんという歳でもありませんしね」
「何か言ったか?」
「いえ、何も。皆さま気を付けていってらっしゃいませ」
「行って来るね」
モファームや騎獣達に乗り込んで町へと向かう。
祭りだけあって町の中はいつもより賑わっていた。
「我々の場所は、この奥だな。侍女長達はその右隣だ」
事前に参加申し込みをして露天の設置場所は振り分けられている。
品数が増えそうなので侍女長達の手芸品と別けて店を出す事になっていた。
いつもより出店数も増えているので巡回する兵士も多いようだった。
人混みをかき分けて進み、振り分けられた場所に到着する。
左隣は老夫婦のようでコップや皿などの木工品が置いてあった。
(品物が被ってなくてよかった)
アルノーとジャックが手際よく屋台骨を組み立てていく。
なんだか文化祭みたいだなとマォは懐かしく思う。
準備を進めている間にチラチラとこちらを気にする人が出始める。
「ママ~、あれなぁにぃ?イチゴが宝石みたいにキラキラしてる~」
そんな女の子の声にマォが笑顔で答える。
「これはねぇ、遠い国のお菓子でタンフルって言うんだよぉ。
イチゴとかオレンジに薄く飴が塗ってあって食べるとパリパリするんだよぉ」
実際は塗っているのではないのだが子供に判り易く説明する為に塗ると言ったのだった。
女の子は欲しいと母親にねだっている。
「でも飴が使ってあるなら高そうよ?」
「小さいほうが銅貨1枚、大きい方は銅貨2枚ですよ」
「え?そんなに安くて大丈夫なの?」
「お祭りですからね。普段頑張っている自分へのご褒美や
奥さんや子供へのお土産で笑顔になって欲しくてお手頃価格にしてるんです」
そう答えれば母親はありがとうと言って小さのと大きいのを1つずつ購入していった。
2人共すこぶる良い笑顔でタンフルを食べている。
その様子をマォもまた笑顔で見送った。
それを皮切りにまだ準備途中にも関わらずタンフルは飛ぶように売れていく。
マォの描いたデフォルメイラストも順調に売れていく。
メドベージェの木彫り人形も厄除けとして人気なのだそうで売れ行きがよい。
ナイフケースは冒険者達に人気だったし、ジャムはご婦人方に人気だった。
ジャムなら各家庭でも作っているのではとマォは思ったのだが、ここへ来るまでの道中で採った果物もあるため珍しいようだった。
コルディが作ったクッキーも人気だった。さすが元王城の料理長、お菓子作りもお手の物である。
「なんかすぐ売り切れそうじゃね。
コルディ、クッキー儂の分取り置きしちょって」
「すまん、また作るから今日は諦めてくれ」
「えぇぇ・・・」
「私だってタンフルを諦めたんだ」
「わかったよ・・・」
予定していた午前中の分はすでに完売してしまっていた。
午前と午後に売り物を別けておいてよかったと思う一同である。
「今のうちに交代で休憩せん?」
「そうだな、腹ごしらえもしたいし」
3人1組で30分ずつ休憩を取る事にした。
マォはアルノー・ジャックと一緒に休憩する事になった。
「おかんは露天も見て回りたいんだろ?」
「うん。お祭りならではの物もあるだろうしね」
「イエスマム!食べながら見て回れる物を買うでありますか」
「あー、それもいいね。食べ歩きも祭りならではだし!」
露天を見て回れば串焼きやパンがやはり多い。
なかにはケバブの様な物もあるしビビンバっぽいものまであった。
「おかん、あれなんかどうだ?」
「どれ? あれか!なんかブリトーみたいじゃね」
「ブリートと言う南の方の食べ物だ。
唐黍の粉で作った薄いパンで肉や野菜、チーズなんかを巻いてあるんだ」
「まんまブリトーじゃった」
どうやら中の具材は自分で選べるようだ。
マォは肉、レタスとトマトにチーズを選んだ。
アルノーとジャックはお任せで3つずつ買っていた。
「味付けはなんなんじゃろう、ピリ辛で旨いね」
「酸味と辛さのバランスがよいな」
「確かブリーソースと言う名前だと思うであります!」
「へぇー、コルディも知ってるのかな。今度作ってもらおう」
食べながら露天を見て回り、マォは卵焼きによさそうな長方形の小さなフライパンを購入した。
アルノーとジャックも何かを購入したようだった。
そろそろ交代する時間になるので自分達の露天の前まで戻ってみればなにやらもめている様子が見えた。
「ただいまー。どうしたん?」
「おかえりなさいませ。
タンフルの作り方を教えろとこちらの方々がおっしゃってまして。
お断りしたのですがこのように大声を出されてしまって・・・」
「なるほど」
「おい、ばばぁ。貴様が店主か」
ピキッとマォのこめかみに青筋が立つ。
「誰がババァか誰が!
アンタに言われたかないね!作り方?教える訳ねぇだろ!失せろ!」
殴りたいのを我慢しデコピンを食らわせる。
「ぃたっ! 貴様よくも・・・
貴様等平民がめったに拝めない金貨1枚で買い取ってやると言っているのだ!
有難く思え!」
「どこの世間知らずなん?
金貨なんぞちょっとがんばりゃすぐ貯まるわい!
そもそもそれが物を教わる態度か!1から勉強し直して出直しやがれ!」
ゲシッとどついて通りかかった巡回中の兵士に押し付ける。
「礼儀知らずの世間知らずで恫喝野郎だから町から追い出してくれん?」
「イェスマム!承知いたしました」
この兵士達、以前の領主館での出来事を知っているのであっさりとマォの指示に従う。
(何故に兵士までがイェスマム・・・)
疑問に思うアルノーだったりする。
その後は特に問題なく、並べてあった商品は大人気で完売したのだった。
読んで下さりありがとうございます。




