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プリローダ②

「笑いたければ笑えば?」


食事が終わる頃にはマォの目も幾分かはマシになった。

だがマシになったと言うだけで、微かにしか目は開かずなんとも言えない状態だ。

その為食堂に集まった皆は笑いをこらえて肩を揺らしているのだ。


「我慢するのは無駄な抵抗じゃと思うんよね。

 そねぃに面白い顔になっちょん?

 儂も見たいけぇ鏡持ってきてくれん?」

「鏡でしたらこちらに」


イザベラが手鏡を差し出す。

マォはそれを受け取り覗き込んで見る。


「ぶほっ、なんじゃこりゃぁ」


吹き出して叫んだ後に笑い始める。


「ぶっはははっ ひっでぇ、なんなんこれ」

「おかん、俺等が必死に耐えてるのに・・・」

「やめい、笑うでない・・・ぶふっ」

「ほぉーれほれほれ」

「やめろ!近くに来るな。ふひっぶふっ」


結局耐えきれずに皆で笑うのであった。


「あー、腹痛い。よぉわろぉた。

 笑いが収まったところでちょっと説明するね」


マォは夢で見た事を話して聞かせる。

アレのせいで時空のねじれってものが出来た事。

そのせいで千秋とゆっちゃんの運命が変わって死んでしまった事。

玄武と青龍の事。

そしていつになるかは分からないが、2人がこの世界に産まれて会いに来てくれる事。


「四獣神? つまりは神でよいのだろうか」

「すべての発端はアレのせいか!今すぐ乗り込んで殴ろう」

「コルディ過激な発言をするでない」

「しかし!あの可愛らしい小さなゆっちゃんは本来生きているはずなのだろ?」

「落ち着かぬか、皆殴りたい気持ちは同じだ」

「だったら!」

「あんね、関わらんのが一番なん。

 下手に関わってまた巻き込まれてもええ迷惑じゃからね。

 それにさ、道は封鎖されてどことも行き来出来んのじゃったら

 いずれ自滅するさ」

「だがなぁ、残された民の事を思うと・・・」

「エルフィン、マトモな民ならとっくに逃げ出してるさ。

 気になるんなら戻れば?

 あんたが気にせんといけん民はほかにおると思うんじゃけどね。

 そもそもあんたを助ける気はなかったん、自業自得じゃろうし!

 じゃけどエウリケやミランダの事を思えば不憫じゃとおもおたけぇ

 助けただけなん!

 いい加減にしてくれんかな?現実を見て事実を受け入れろよ!

 自分の都合のいい様に解釈せんでくれん?

 あの国に!どこに!助けてやらんにゃいけんような奴が残っちょると思うん!

 亜人種に、儂にしでかした事を忘れてんじゃねぇよ!」


アルフィンをどつきまくるマォをなんとかアルノーとリオルの2人掛かりで止める。


「父上!マォ様の気持ちを考えて下さい!

 何度言えばよいのですか!

 マォ様は被害者なのですよ!

 家族も友人も人生をも奪われてしまって此処に居るのですよ!」

「忘れている訳ではない・・・すまない・・・」

「エルフィン、今のあなたは国王でも貴族でもないの。

 まずは家族や仲間を守る事を考えてくれないかしらね」

「あ、ああ。そうだな、そうだった・・・」

「次馬鹿な事ぬかしたら放りだすけぇね。

 話がだっせんしてもぉたけど、戻そうか」

「エルフィン、お前はもう黙っておれ」


これまで同様、あの国とか一切関わらず此処でのんびりと楽しく暮らす。

いつか千秋とゆっちゃんに会えることを願って。

マォがそう言うと皆は勿論だと答える。


「とは言えこのままじゃちょっと儂の気が収まらんのよね」


そして外へでて以前教えて貰った城の方角へと向くと叫んだ。


「クソッタレ第二王子もいけ好かない古狸も落ち武者禿になってしまえ!

 ついでに耳毛と尻毛も癇癪起こす度に伸びてしまえ!

 オマケに1日10回机の角に足の小指ぶつけてしまえ!

 も1つオマケに痔にもなっちまえ! ハッハッハッ ざまぁみさらせ!」


ピカッ!ドドーンッ!と遠くに雷鳴が轟いた。


(おいアルノー。落ち武者禿とはなんだ)

(俺が知る訳ないだろう。ダルクは国外の情報にも詳しいよな?)

(私に聞かないで下さいよ、解る訳ないではありませんか)

(マォ様に聞いてみますか?)

(いや、聞かぬ方がよいのでは?

 残りの文言からしても悲惨な物だと想像できるだろう)

「マム!落ち武者禿とはなんでありますか!」

((( 聞きやがったよジャックの野郎・・・)))

「ん?ああ、落ち武者禿か。こっちにはないもんなぁ。

 よしエルフィン、ちょっと来いや」

「わ、私か?!」


声が上ずるが渋々とマォに近付く。

むんずとエルフィンの髪を掴みどこからか取り出した草刈鎌でじょりじょりと頭頂部の毛を刈る。


(ど、どこからあの鎌がっ)

(しれっとイザベルが渡したぞ・・・)

(なんと恐ろしい・・・)


こそこそと話す男性陣は完成したエルフィンの頭を見て顔を青ざめさす。


「これが落ち武者禿」


ドヤ顔で答えるマォに対し一同は揃って頭を押さえるのだがエルフィンは自分の頭が見えない。

そっとイザベルが手鏡を差し出しそれで確認すると「ぎゃぁ!」と叫んで気を失ったエルフィンである。


「心配せんでも鎌で刈った後剃っただけじゃけぇすぐ生えるじゃろうよ」

「もしかして古狸共は生えないでありますか」

「生えたら禿じゃないじゃん」

「なるほどであります!」

「んじゃ明日からは通常通りでよろしく。

 雪解けも進んじょるし

 祭りに出店する露天の準備もせんにゃあね。

 儂はもぉ寝るから皆も寝てね。

 心配かけてごめんね、ありがとう」

「ゆっくりと寝てくれ」

「ああ、また明日から宜しく頼む」


まだ目が腫れているのでアルノーがマォを送り届ける。

その後ろ姿を見送り、見えなくなったところで皆が相談を始めた。


「誰か肖像画を描ける者は居ないか」


言い出したのはオーウェンである。


「肖像画などどうするのだ」

「娘殿の姿は解からぬがゆっちゃんであれば皆解かるだろう。

 せめてもの慰めにならぬかと思ってな」

「なるほど、それはよいな」

「だけど僕は絵心がないからね」

「自分、マムの娘さんの姿を知っているであります!

 アルノー殿も知っているかと思うであります!」

「なんだと?!」

「自分とアルノー殿は夢の中でお会いしております!」

「では肖像画は描けるか?」

「無理であります!」

「僭越ながら、私がお描きしてもよろしいでしょうか?」


名乗りを上げたのはエイダである。

エイダは趣味として絵を習ったことがあるのだと言うので皆は任せる事にした。

エイダもゆっちゃんとは会っており一緒にお絵かきをして遊んでいる。

千秋の特徴はジャックとアルノーが説明する事となった。


「完成するまではマォには隠しておくように」


そうしてこの日からエイダは肖像画に取り組む事となる。




翌朝、マォの目はやっと腫れが収まっていた。

だか気持ちの整理もつかず、頭の中もごちゃごちゃとしている。


(寝て起きたら実はすべて夢でしたなんて夢オチ期待したんじゃけど

 無理じゃったかぁ、まぁそうじゃろうね・・・)


夢で逢う事も無くなったのかと少し寂しく感じる。

だからと言ってふさぎ込んでも仕方がない、割り切るしかないのだとペシッとほほを叩いて気合を入れた。

さすがに今朝は自分で作る気力も無く食堂へ向かえば、焼き立てのパンのいい匂いが漂っている。


「おはようマォ。目の腫れは収まったみたいだな」

「おはよコルディ。ええ匂いがするね」

「ああ、ちょうど今パンが焼きあがったところだ」

「マォ様おはようございます。コーヒーをどうぞ」

「おはよカトル。ありがとう」


カトルからコーヒーを受け取り窓辺の席へと向かう。

椅子へ腰掛けて外の景色を眺めながらコーヒーを口にする。


「ぶぅーっ」


窓に向かって思い切り吹いた。


「マォ様大丈夫ですか?」

「どうしたおかん」

「あ、あれ見て!なんかデジャブなんじゃけど!」


言われて窓の外を見たカトルとアルノーも吹く。


「ぶほっ、あれは先日の・・・」

「ぐっ・・・ごほっごほっ」


マォが指さした先には空飛ぶ亀がこっちへと向かってくるのが見える。

キィーンと轟音が響き、他の皆も慌てて食堂へと集まって来た。

一同が見守る中、カメは上空に到着するとシュルルッと身を縮めてポフンと着地した。

縁日でよく見かける小さなサイズのミドリガメ。

その小さな手足でよちよちとこちらへ歩いてくる。

よろよろ、ちゃぽっ。

溶けた雪の水たまりにハマってしまったのを見かねてエディが迎えに出た。

水たまりから救い出し、掌に載せたまま戻ってくる。


「取り合えずお湯・・・でいいのか?」

「人肌程度のぬるま湯がえかろうね」


コルディが急いで盥にお湯を入れて持ってくると、エディは亀をその中に入れ汚れを落としてやった。

綺麗に汚れが落ちた後はタオルで拭いてやる。


「我とした事がかたじけない。先日ぶりであるな」

「うぉっ、やっぱりあの亀殿か」

「確か玄武殿だったか」

「話し方がカタコトじゃなくなってる!」

「うむうむ、だが今は玄武ではない。勿論見習でもないぞ。

 アストータスというこの世界の存在へとなったようじゃ」

「アストータス・・・」

「うむ、我はゆがみをこちらから閉じる役目を果たしたのでな。

 元の世界には戻れなんだのじゃ。ほっほっほ」

「いやいや、ほっほっほじゃなかろう・・・」

「今後はこの地でそなた等を守うてやろう。

 と言う訳でな、この地に住むのでよしなに頼む」

「と言う訳って、ちょ・・・ どんな訳よ」

「ここは北の地であろう?

 ほれ、玄武は北の守りだでちょうどよかろう。ではな」

「待て待て待て待って。アストータスとか呼びにくいんじゃけども?」

「ならばこれまで通り亀でも玄武でもよいぞ」

「ええんかい! じゃあ玄武さんで・・・」

「どうせこの世界には玄武はおらんでな」


ほっほっほと笑いながら地面へと消えて行く玄武を見ながら、やっぱりなんでもありなんだと思うマォであった。


読んで下さりありがとうございます。

いつもブックマークやリアクション、ありがとうございます。

励みになり感謝しております!(*'ω'*)

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