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夢③

「おかん、いつまで寝ちょん。起きんにゃぁ」

「ん~・・・ もぉちょっと・・・」

「いや、もぉちょっとじゃなくて私時間がないんじゃけぇさっさと起きて」

「うー・・・ん? 千秋?!」


ガバッと起き上がればマォの目の前には千秋が居た。


「うぁお! ゆっちゃんの次は千秋?!」

「何寝ぼけちょん、いつもの夢じゃけぇこれ」

「あ、なるほど。そっか・・・」


そう言えば千秋と会えるのは夢の中だったと思いだすマォは少し混乱していたのかもしれない。

自分の手元をじっと見つめ、大きく息を吐くと千秋を見つめ直した。


「あんね、千秋。驚かんでね・・・

 ゆっちゃんがさ・・・」

「ああ、知っちょるよ。コイ〇ングみたいなんに聞いたけぇ」

「ぶっ、コイ〇ング・・・

 あー、そっか。それたぶん青龍の見習の鯉かも」

「うんうん、ゆっちゃんに助けられたっていいよった」

「ちゅうか千秋、あんたなんかやつれてない?

 確かにゆっちゃんがおらんこなって心労はあるかもじゃけど

 それにしちゃあ顔色も悪すぎん?

 なんか白髪もチラホラ見える気がする・・・」

「そりゃぁね?

 あれからもぉ5年経っちょるんよ。私も年取るいーね」

「は?5年も経っちょるん?マジで?」

「ゆっちゃんの葬儀んときでさえ、おかんがおらんこなってから1年半よ?」

「マジか・・・

 儂まだこっちの世界に来てから4か月くらいなんじゃけど?

 しかもゆっちゃんが消えてから半日とかじゃと思うんじゃけど?」

「そうなん? 時間の流れが違うんかねぇ」

「そうなんかもしれん・・・」

「まぁええわ。時間がないけぇ要件ゆうわ。

 私、余命1か月なん。肺がんじゃったらしいん」

「は?!」

「そんでそのコイ〇ングが言うには、おかんを召喚した馬鹿王子のせいで

 時空のねじれちゅうんが発生したんて、よぉわからんけど。

 おかんなら映画とかよぉ見よったけぇ分かるんじゃないん?

 その時空のねじれの影響を一番受けてるのがここら辺なんて」

「待って待って?理解が追い付かんのじゃけど」

「後からゆっくり考えて今は聞くだけ聞いちょいて?

 んじゃけぇ、本当はゆっちゃんは死ぬはずじゃなかったし

 私もこうなるハズじゃなかったんて」

「儂は?」

「おかんは、どのみち異世界に飛ばされる運命じゃったらしいよ」

「うぇぇぇ、なんで儂だけ・・・」

「まぁそれはそうゆう運命じゃとあきらめんさい(笑)

 そんでね、そのコイ〇ングとおかんとこに行ったガ〇ラが

 なんか神様に掛け合ってくれたらしくてね?

 私とゆっちゃん、おかんのおる世界で生まれ変わる事になったらしい」

「マジで? ほんまに?

 儂異世界転移で千秋とゆっちゃんが異世界転生?

 マジかー、すげぇな。って、そうじゃなくて!」

「時空のねじれ直して時間を巻き戻すとか出来んのん?」

「無理じゃったって言いよった。

 詳しい事はあんま言えんのじゃっていいよったよ」

「はぁ・・・なんじゃろう、神様事情の守秘義務みたいなんがあるんかね。

 考えてもわからんじゃろうなぁ。

 まぁええか、ゆっちゃんの願いが叶うんならええわ・・・」

「ゆっちゃんは何て言いよったん?」

「またママんとこに産まれるけぇ待っちょって、って」

「そうなん。て事はおかんが頑張って私を産むん?」

「ぶはっ、無理じゃろ!」

「知っちょる。まぁ頑張っておかん探すけぇ長生きしちょって」

「が、がんばる・・・」

「たぶん、夢で逢えるのはこれが最後じゃろうけぇ。

 次はリアルで会おうやぁ。

 あ、家や畑は冬依が引き継ぐって言いよるけぇ心配しんさんな。

 じゃあね、おかん」

「そ、そっかぁ。なんか寂しいけど・・・ またね千秋」


千秋の姿が見えなくなるまで見つめながらマォは考える。

映画や小説の世界ならまだしも、まさか自分の身の回りでこんな事が起きるとは信じられないし理解も追いつかない。

まさかあの阿呆が原因だったなんて、あれのせいでゆっちゃんと千秋の人生が変わっただなんてと怒りが込み上げてくる。

やはりどつくだけではなく半殺しにしておくべきだったと手を握り締める。


「くそったれがぁぁ!

 儂はまだしもなんで千秋やゆっちゃんを巻き込みやがった!

 なんでゆっちゃんが死なんにゃあいけんかったん!

 なんで千秋も死なんにゃあいけんのん!

 もともとの運命ならまだしも時空のねじれってなんなん!

 全部アレのせいとか、ざけんなぁ!

 次に会う事があったら覚えてろよ

 ピィー(自主規制)握りつぶしてちょん切っててめぇの喉に突っ込んでやる!

 ぬぁぁぁぁ、どちくしょうめがぁ!」


怒りが収まらずに思い切り叫んだのだがある事に気付く。

時空のねじれとかの影響をあの家の周辺に受けたというのなら、冬依達にも影響が出るのではないだろうかと。


「心配はいらぬ。

 次元のねじれは修復された。

 時間が掛かった故に、其方の子や孫に被害が出てしもうた。

 まことに申し訳ない」

「ほぇ?! うぉっ、龍?!

 え?! 龍って事はゆっちゃんの青龍の鯉?!」


混乱しておかしなことを口走ってしまうマォ。


「其方の孫が助けたのは我が同胞。

 今後はこのような事態が二度と起こらぬよう管理者に念を押しておいた。

 だが其方達への影響を無に戻す事は我等にも出来ぬ。

 重ね重ね申し訳ない」

「いえいえいえいえいえ。

 どうか頭を上げて下さい。

 玄武さんも青龍さんも神獣で四方を守る守護神じゃないですか。

 神様が簡単に頭下げちゃ駄目だと思うんですよ。

 それにあなた方は何も悪くないじゃないですか。

 全部あの阿呆が悪いんじゃないですか!

 なのに色々掛け合ってくれて

 またゆっちゃんや千秋とも会えるようにして下さったんですよね?

 あのガ〇ラよろしくな玄武さんだって自分の力使いきってまで

 ゆっちゃんの願い叶えて会わせて下さったじゃないですか。

 それに今後同じような被害にあう人が出ない様にもして下さったんでしょ。

 ならば感謝しかありません」

「其方はそれでよいのか」

「良いも悪いもどうにもならないじゃないですか。

 納得はしないけど受け入れるしかないですよね。

 それなりにあの世界でも楽しくやってますし・・・

 まぁ阿呆には怒りしかないんですけどね。

 くよくよしたってどうにもならないなら楽しんだ方がいいんです。

 千秋やゆっちゃんに会えた時に笑顔でいたいじゃないですか」

「左様か。

 何か望みがあれば我で叶えられるものであれば叶えよう」

「うーん・・・

 ではその管理者だかこの世界の神だかに言伝をお願いします」

「何を伝えればよい」

「あんな阿呆に好き勝手されるようでは困るんですが?

 目ん玉ひん剥いてしっかり管理しやがれでございますよ!

 と、お願いします」

「ふむ、承知した。それだけで良いのか?」

「うーん、欲を出せば切りが無いんですよね。

 だから他は特にないです」

「左様か、あいわかった。しかと伝えおこう」


青龍と別れれば目を覚まし現実へと戻ってくる。


(夢ちゅうかなんちゅうか・・・

 時空のねじれとか言われてもよぉ分からんけど

 儂は千秋とゆっちゃんが生まれ変わるのを待ちょきゃええんじゃね?)


怒りすぎてどっと疲れた体を起こそうとして、目が開かない事に気付く。


「うぇっ、マジかぁ・・・」


どうたら泣き過ぎて目が腫れたらしい。

仕方がないのでゆっくりと手探りでベッドから降りてドアの方へと進む。


(確か食堂で泣き疲れて寝落ちしたような気がする。

 アルノーが運んでくれたんじゃろか・・・)


自分でベッドまで歩いた記憶がないのでマォはそう思う事にした。

ノロノロと進んでいるとアルノーの声が聞こえる。


「おかん、起きたのか。

 ん? どうし・・・ 目が凄い事になってるな・・・」

「うん、目が開かんで見えんのんよ・・・」

「そうか、よし食堂まで俺が運ぼう」


アルノーはマォを抱きかかえ食堂へと向かう。

歩きながらマォが4日も目を覚まさず皆心配しているのだと教えてくれた。

どうやら熱も出していたようで、日中はイザベルとアムリタが交代で付き添ってくれていたらしい。

夜間はアルノーが付き添っていたのだが、今はたまたま用足しに言っていた。


「そっか、タイミングが悪かったんじゃね。

 皆にも心配掛けてもぉたなぁ」


夢で見た事を皆にも説明しなければと思うマォだったが、キュルルと腹が鳴った。

話よりもまずは何か食べるようにとアルノーに言われ、食堂に付けばコルディが胃に優しいパンがゆを用意してくれていた。


「マォ、目が覚めたの・・・どうしたその目は・・・」

「マォ様気が付か・・・れ・・」

「マォ殿!目が・・・」


マォの意識が戻り食堂に来ていると知らせを受けた皆が集まって来たのだが、マォの目を見て言葉を失う。

よく漫画にあるような数字の3のような感じで腫れているのだ。

此処まで酷く腫れた目を見た事など誰も無い。

勿論当事者であるマォも漫画以外で見た事などない。

が、マォは目が開かないので腫れを確認する事も出来ずにいる。

見る事が出来たならば吹き出していた事だろう。


「取り合えず、氷で冷やしましょうか」


イザベルが魔法で氷を作り、タオルで包んでそっとマォの目に押し当てる。

その間に侍女長がマォの食事を手伝い、アムリタは髪を整えていた。

読んで下さりありがとうございます。

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