ゆっちゃん②
夏「さすがゆっちゃんというか」
秋「さすがおかんの孫じゃね」
冬「ガ〇ラに乗って登場とかモロにおかんの影響じゃん」
さっきまでの暗い雰囲気ががらりと変わる。
「そう言うけどね?
クリスマスにセー〇ームーンの人形よりゴジラ人形強請ったのは千夏だからね?
レンタルショップで白黒ガメラ持って来たのは5歳の千秋だからね?
わざわざサンシャ〇ンまでゴジラ展見に行ってモ〇ラに乗って写真撮りたいって
泣きじゃくったの冬依だからね?
ほら、皆の影響じゃと思うんよ」
夏「えー、記憶にございませんっ」
秋「私はなんとなく覚えちょる・・・」
冬「俺は覚えちょるよ、帰りにゴ〇ラのセット買ってもろぉた」
秋「でもそれって結局はおかんの影響なんじゃないん?」
「どうじゃろ、あんたらが生まれた頃はホラーばっかり見よった気がする」
夏「ジェイ〇ン!」
秋「フレ〇ィ!」
冬「ピ〇ヘッド!」
「よぉ覚えちょるね・・・」
秋「でも、ゆっちゃんがそっちで元気ならよかった・・・」
「そうじゃねぇ、なんで来れたんかは不明なんじゃけど!
そもそも会えたのだって奇跡的だよ。
訳の分からん違う世界だったり遠い国だったりな可能性もあったじゃろうし」
夏「ゆっちゃんはばぁちゃんっ子じゃったけぇかもね」
秋「ゆっちゃんは自分が死んだって知っちょるんじゃろうか」
「分かってないと思う。
校庭で遊びよって気が付いたら亀に乗って飛んじょったっていいよったけぇ」
冬「まぁ分からん方がええか・・・」
そんな話をしているとマォの視界がぼやけ始めた。
(あぁぁ、目が覚めるんかな)
「なんか伝える事ある?」
慌てて皆に聞いてみる。
秋「ばぁばの言う事聞いてええ子にしんさいてゆうちょって」
夏「好き嫌いせずに病気や怪我に気ぃつけるようゆぅちょいて」
冬「そっちでも勉強はするように。おかんが大変そうじゃけど・・・」
「分かったよ、また近い内に近況報告出来るよう頑張ってみるけぇ」
夏「たまにはこっちの夢にも来てよ」
「努力はしてみるけど期待はせんで」
冬「おかん、ギックリ腰に気ぃつけぇや」
「わかったわかった、今んとこ大丈夫じゃけぇ。んじゃねー!」
秋「またね、おかん」
もわもわと白い靄に包まれて子供達の姿が見えなくなる。
「・・・ん! ・・・かん! おかん!目を覚ませ!ゆっちゃんが!」
「うぅーん・・・なに?儂まだねむ・・・ ゆっちゃんがどした?!」
ゴツンッ
「いったぁ・・・」
「それは私のセリフだ・・・」
寝ぼけていたマォだったがゆっちゃんの名前に反応して飛び起きたので起こしに来たルークと顔面衝突してしまった。
「マォ、早くゆっちゃんの所に行け!」
「なに?なにかあったん?」
「いいから早く」
ええい、もどかしいとルークはマォを抱え上げて食堂へと向かう。
何がなんだか状況が掴めないマォはヒェと小さな叫びを漏らした。
食堂に到着すれば、ちょこんと椅子に座ったゆっちゃんの姿が透き通っている。
「は?・・・ え? なに? どうなったん?」
「おかん、先程までは一緒に遊んでいて普通だったんだが・・・」
「少しばかり休憩しようとジュースを飲んでいたらこうなったのだ・・・」
「でへへぇ・・・」
「でへへぇじゃなくてね?
ゆっちゃん、痛いとか苦しいとかないん?」
「ないよぉ!
あのね、ばぁば。ゆっちゃんね、そろそろ行かんにゃあいけんのんて」
「へ?行くって何処に?」
「よぉわからぁーん。
あんねぇ、ゆっちゃん亀さんと一緒に溺れたんて。
そんでぇ、お迎えが来るまで少しだけ寄り道してばぁばんとこに来たん」
「寄り道って・・・ゆっちゃんや、寄り道は駄目じゃね」
((( マォ、この場合はよいのでは?! )))
「だってゆっちゃんはばぁばに会いたかったん。
ばぁばはゆっちゃんに会いたくないん?」
「会いたかったけども・・・」
「でしょぉ、へへへっ。
ゆっちゃんお願いしたん、そしたら亀さんが連れて来てくれたん」
「そ、そうなん・・・ なんでガ〇ラっぽい登場になったん?」
「ばぁばが気付いてくれそうじゃから!」
「「「 ・・・ 」」」
会話をしながらもゆっちゃんの姿はさらに薄くなっていく。
「ばぁば、ゆっちゃんね、ばぁばの事だぁーい好きよ。
いっぱいいっぱいありがとぅね。
ゆっちゃんずっとばぁばの事忘れんけぇばぁばもゆっちゃんの事忘れんでよ?
ゆっちゃん、ちゃんと神様にお願いしてママんとこに産まれるけぇ。
ばぁば、待っちょってよ?」
「うんうん、ばぁばもゆっちゃんが大好きじゃよ。
ちゃんと忘れずに覚えちょくけぇね。
長生きして待っちょくよ」
「あの、マム。割り込んで申し訳ないのですが・・・
その、という事はマムがまたゆっちゃんのママさんを産むでありますか?」
「「「 ・・・ 」」」
「うん、無理じゃね!
ゆっちゃん、ばぁばもぉママ産むのは無理よ。
って、ゆっちゃん?!」
ゆっちゃんは今にも消えそうなほど薄くなって手を振っている。
「イケメンおじちゃんもハチのお兄ちゃんも、インテリじぃじも
綺麗なお姉ちゃんもコックのおねえちゃんも、ほかのみんなも!
ゆっちゃん会えて嬉しい!ありがとねぇ!皆大好きよぉ~」
ちゅっと投げKISSをしてゆっちゃんは消えて行った。
体の力が抜けてドサリと床に座り込むマォの目の前に、半透明になった掌サイズの亀が見えた。
「え?亀?! ちょ、亀まで消えるん?えぇぇ・・・」
「チカラ オヨバズ モウシワケ ナイ・・・」
「亀が喋った?!」
亀は弱弱しい声で説明する。
助けて貰った鯉と自分は見習の青龍と玄武であり、こっそり下界の視察に降りたところであの事件が起きた。
自分達を助けようとして死んでしまったゆっちゃんに、せめてもの償いをと最後の願いを叶える為に頑張ってここに連れて来たのだと語った。
ただかなり無理をする必要があったため、神力を使い果たし亀の命も尽きるのだと言う。
「なっ、ダメだよ!なんとかならんのん?何か方法は無いん?」
「ヨイ キニスルデ ナイ
コレハ ワレラガ ノゾンダ コト
イマワ キエタ トテ イズレ マタ アラタニ ウマレル」
「でも・・・だけどっ」
「サラバ ダ」
亀の姿が解けるように消えた瞬間、マォの涙腺は崩壊した。
やはりあの男の子を蹴り殺せばよかったと、見習とは言え玄武まで殺してなにしてくれてんだと。
たった今夢の中でゆっちゃんは元気だと伝えたばかりなのに、娘にどういえばいいのかと。
こんな事なら夢なんぞ後回しにしてもっとゆっちゃんと遊べばよかったと・・・
ゆっちゃんは生まれた時から小さな子で、見た目も性格も千秋とそっくりだった。
つまりはマォとも似ている訳で。
勉強はちょっと苦手だったけど、ゲームと生き物が大好きな女の子だった。
よく動物園やサファリにも一緒に行っていたし、水族館にも行っていた。
子猫を拾ってきては千秋に怒られ、マォの所に鳴きながら持ってくる。
「だってひとりぼっちで泣いてて可哀そうじゃもん!」
「カラスにつつかれちょったんじゃもん!」
そう言われてしまえばダメとは言えないマォである。
そうかと思えば夜に電話してきて
「ばぁば、イー〇イがゲットできんー!どこにおるん?」
と電話を掛けて来てマォに攻略方法を教えて貰っていた。
「ゆっちゃん!あんた宿題は?終わってからじゃないとだめっちゅうたじゃろ!
もぉおかんもおかんで電話に出んでもええんじゃけぇね?
まったく、ゲーム好きなんはおかんのせいじゃけぇね!」
などと2人で怒られたりもした。
負けず嫌いな癖に下手で某カートゲームなんかは何度もやらされたマォや冬依。
マォがオンラインゲームをやってると膝に乗って来てキーボードのよからぬキーをカチャカチャ押しまくりPTが壊滅した事もある。
その説明を仲間にしていれば、すっかりマォのゲーム仲間とも仲良くなっていたゆっちゃんである。
マォが居ない時にも勝手にボイスチャットをしていた事もあった。
(コーヒー淹れてくれたら砂糖と塩間違えてぶちしょっぱかったな・・・
あれから砂糖は三温糖に変えて色で解るようにしたんじゃった。
畑に麦茶持って来てくれた時はめんつゆだった事もあったなぁ
千秋の口紅でいたずらしてオバQみたいになってた事もあったっけなぁ
熱出して寝込んだ時は看病してくれて・・・
おでこに乗せられたのはタオルじゃなくて雑巾じゃったなぁ・・・
あれ? ゆっちゃんけっこう色々やらかしてる?
いや幼児あるあるだよね?たぶん・・・
千夏も千秋も小さい頃は・・・
猫の餌食べたくらい?・・・あれ?)
あれこれと想い出しているうちにマォは泣き疲れて眠ってしまっていた。
読んで下さりありがとうございます。




